執務室に戻りいつもの日課を始める
机の上の端末を起動させる。そしていつもの様にある情報を開く。
1つは各エリアで撃破されたテロリストが使用していた機体の最新情報。
1つは各エリアで見つけられた身元不明者の遺体写真
1つは各エリアでテロリストに拉致、監禁、暴行、拷問され、そこから救出された人物写真
そのファイルを見落としがないように何回も、何回も確認を繰り返す。
「今日も大丈夫か…‥」
その情報にある人物の情報が載っていないことに胸を撫で下ろす。ここに載っいないと言うことは少なくともまだ生存している可能性があるということになる。
毎日この情報を確認する事がナイトオブラウンズになってから一番大事な日課になっている。
本当ならこんな物見たくもない。
過去の光景がフラッシュバックし、胸が苦しくなる。
こんな情報誰だって好き好んで見るやつなどいない…‥いや一人いるか…‥
でも見ないと安心できない。見ないと嫌な想像が頭の中をいっぱいにする。
赤い機体が全焼している想像
赤い髪しか判別出来ない状態になっている想像
心も身体も壊され、もて遊ばれてしまった大切な者の姿…‥
それが現実になっていない事を祈り、毎日確認してから仕事を始める。ここ半年近くはそれを毎日やっている。
「…‥無事だよな…‥カレン…‥」
そう呟いたとき、執務室の扉が開き、明るい声と共に一人の少女が入ってきた。
「ライ様!おはようございます!マリーカ・ソレイシィただいま参りました。」
「…‥10分遅刻だ…‥マリーカ」
すみませんと笑いながら謝る少女はマリーカ・ソレイシィ
ショートカットの茶髪とその髪につけられた花のヘアピンがとても似合う少女はライの大事な副官だ。
少し前までブラッドリー卿の親衛隊『グラウサム・ヴァルキリエ隊』に所属していたが、ある作戦で彼女がミスをし、彼女の部隊を危険にさらしてしまい、除隊させられていた。
そんな時にノネットさんに紹介されライと出会った
当時本国に知り合いのいないライは自分の副官を見つけるのに難航していた。新聞やネットでは『史上最速ラウンズ』などと書かれ、もてはやされていたが、実際は軍内部でかなり肩身の狭い思いをしていた。端から見れば『鳴り物入りで出世した目障りなやつ』と思われていた。
そんな時にノネットさんがライの所に来て
「少し面倒を見て欲しいやつがいる。私の妹分で有能なんだが少し生き急いでいるところがある…‥お前に仕方ない頼めないんだ」っとライに紹介してくれた。
彼女は元純血派のキューエル・ソレイシィの妹で、兄の死後家のために…‥兄の名誉挽回のために…‥それが彼女の生き急いでいた理由だった。
今はその考えを完全に忘れた訳ではないが、少なくとも生き急いではいなくなった。
「またそんな気分の悪くなる情報を見ていたんですか?そんな物を毎日欠かさず見ているとしたらライ様とブラッドリー卿くらいですよ!」
「『ブリタニアの吸血鬼』と僕ぐらいか…‥そうかもね。何せ僕は『亡霊』だからね…‥」
『亡霊』それがこの半年間あらゆる戦場で敵を倒してきたライに敵が着けた名称…‥『戦場の蒼い亡霊』と
「またそんな皮肉を言って!私は『亡霊』よりも『銀麗の聖騎士』の方がライ様のイメージにピッタリだと思いますよ♪」
『銀麗の聖騎士』それはブリタニア軍人や貴族がライに着けた名称 ただライの見た目からつけられた単純なもの
でもその愛称の方が自分にふさわしいとは思わない。
「今日のスケジュールはどうなっているんだい?マリーカ?」彼女に今日の行動内容を確認すると、彼女は自分のトレードマークとなりつつあるヘアピンの花と同じ色の手帳を開き今日の予定を発表した。
「今日は午前中にキャメロットへ行き、例の新装備と新機構の確認とテスト、その後にライ様の進めているプロジェクトの進捗状況を確認。あと、今日の夜にシュナイゼル殿下の元にくるようにとカノン様から連絡をいただきました。」
「夜にシュナイゼル殿下の宮に?何で急にそんな話が…‥」
「はい。なんでも最近皇族に復帰された異母妹をぜひライ様に紹介したいと。」
なんで僕に?ライは動揺していた。ここ最近になって復帰された皇族は今現在で公表されていない。
そんな人物をわざわざライに合わせる理由が見当たらなかった。
ライに合わせるというのはシュナイゼル殿下が「個人的なお願い」を頼みたいということだろう。
あの人はまた何かを画策しているのだろう。最近なにやら中華連邦にもちょっかい出しているらしいが…‥
「仕方ない。あの人の頼みとなれば断れないな…‥そうと決まれば直ぐに行動しよう。ロイドさんの所に行くよマリーカ」
「イエス!マイロー…‥」マリーカが全てを言い終わる前にライはマリーカの唇に指をあて、その深蒼の瞳で彼女を見つめながら言った。
「任務中でないときは堅苦しいのは無し!だろう?マリーカ?」優しくささやかれたマリーカはなにも言えず、固まってしまった。
(この人はなんでこんな事を平気でするのだろう)っとマリーカは心の中で呟いた
王宮のすぐ近くにある大きな研究所
そこはナイトオブラウンズの特権であるラウンズ直属開発機関が集まる施設だ。
ナイトオブラウンズに与えられる特権の1つ
ナイトオブラウンズはラウンズ個人直属の開発チームを持つことが許されている。その開発チームが全てこの研究所で新しい技術の開発、運用実験、兵器開発を行っている。
ライはその研究所の奥にあるKMFを待機させるためガレージに向かっていた。
そこには研究員らしき男性と軍服に身を包む女性が口論していた。そしてそれを笑いながら仲裁している人物。
ライと同じ白い騎士服に身を包み、ライとは違う青いマントを羽織っていた。
枢木スザクだ。
ライはその光景が懐かしく思いながらその輪に加わる事にした。
「また何をやらかしたんですか。ロイドさん」
「ライ君。まるで僕が悪いみたいな言い方だね~」
「実際に悪いんですよ!ロイドさん!久しぶりねライ君」
「ライ!久しぶりだね!いつ本土に戻ったんだい?」
「昨日さ。所で一体何を…‥」
そう言いかけた時、ライはそこにある物に気がついた。白と青のカラーリング、頭部にある角、それはライの専用機であるKMF、「ランスロット・クラブ」だ。…‥いやだった物だ…‥
どう見てもそうだ…‥印象的な頭部とコックピットブロックだけだけど…‥それを見てライは言葉を失った…‥
ライの様子を見て、状況を飲み込めない事に気が付いたロイドの同僚セシル・クルーミーは状況を説明した。
昨日、クラブば此処に運びこまれた。理由はここ最近の任務による連戦であらよる箇所にガタがきていたため、修理と調整をするつもりでセシルに届けられた。
そんな時に不運にもスザクのランスロットも新しい装備を運用するために此処に運びこまれた。
スザクはすぐに任務に戻るためセシルはランスロットの改修を優先し、クラブの修理を後回しにした。
それがマズかった…‥
翌日、セシルが戻ってくるとそこにはロイドがいた。昨日と同じ服を着ていた事に気が付いて背筋が凍りついた…‥昨日からずっと此処にいたのだ…‥理由はすぐに想像が着いた…‥昨日受け取った時とは違う変わり果てた姿のクラブを見て…‥
「ごめんなさいライ君。ロイドさんには私がちゃんと言い聞かせておくから」
ライは忘れていた訳ではなかった…‥ロイドこと、ロイド・アスプルンドの性格を…‥
ロイド・アスプルンド
爵位は伯爵、自分と同じ銀髪で異常なテンションと子供の様に無邪気な表情をする男性
そして何よりもKMFを優先するマッドサイエンティストでもあり、突如人の心境を見抜いたりもする。一言で表現するなら「変人」である。
そんな人物だからこそロイドの同僚で、唯一ロイドを制御出来る人物。セシル・クルーミーにクラブを預けたのだ。
だか不運がいくつも重なり、結果今に至る。
「ライ。すまない僕がランスロットを預けたのだばっかりに…‥」スザクは申し訳なさそうに言った。
「気にするなよ。スザクは任務があるんだし、キャメロットは君の専属機関でもあるんだからランスロットが優先されて当然だろ。それにロイドさんは成敗されたようだからね…‥」
ガレージの隅ですみませんと何度も謝るロイドの姿が目にはいる。セシルさんは仁王立ちだ…‥
「という事は午前中の予定はキャンセルということでよいのでしょうかライ様?」
そう言えばマリーカが居ることを忘れていた。
「そうだね…‥クラブがこれじゃあね…‥はぁ…‥」
ライはため息をつくしかなかった。
マリーカに昨日までの任務を報告書にまとめるように頼み、ライはスザクと共に王宮内部にあるラウンズ専用のリラクゼーションスペースに向かっていた。
「今日は災難だったね。ライ」
「あぁ。だがお陰で夜まで暇が出来た。スザク良かったら一緒に食事でもどうだ?」
それを聞いてスザクは目をそらし
「すまない…‥このあとジノと一緒に鍛練する事になってて…‥」
ジノとはライ達の同僚のナイトオブスリー ジノヴァインベルグのことだ。名門貴族ヴァインベルグの出身だが陽気な性格で自信家の自由人でとても貴族だとは思えないほど人懐っこい性格をしていて、ライやスザクにも気さくに話かけてくれるいいヤツだ。
「そうか…‥仕方ない1人で行くか…」と呟くと
「なら、クルシェフスキー卿を誘えばいいじゃないか。彼女も本国に戻ってるはずだよ」っとスザクが食い気味に提案した。
モニカ・クルシェフスキー
ライの同僚でナイトオブトゥエルブの称号を持つ女性
オレンジ色を混ぜたような美しい金髪を腰の辺りまで伸ばし、自分と年齢は変わらないのに年上の女性のような清らかさと、年下の女性のような無邪気さを感じさせる不思議な魅力を放つ女性だ。そして彼女は…ライの今の「大切な女性」だ…‥
「何でそこでモニカの名前が出るんだ…」
「何でってライ。恋人だよね」
「それはそうだが……」っと言葉を詰まらせた…
それを見てスザクはライの心の中を見抜いた…
「……まだカレンを愛しているのかい……ライ……彼女はテロリスト……僕達の敵で……ゼロの……ユフィの仇であるゼロの右腕だ!」スザクは声をあらげて言った。
スザクの言うことは最もだ。カレンはテロリストで敵だ。それは理解している。だからこそライはモニカと交際している。だか、どれだけモニカと居ようと、どれだけモニカと愛し逢おうと、ライはカレンを忘れることが出来ないでいた。
それはモニカも見抜いていた。それを見抜いてモニカは
「あなたは優しいのね。かつて愛した女性を想ってあげるなんて……なんか妬けちゃうわ」と言っていた。ライはモニカに申し訳ない気持ちでいた……最低だとわかっていた……今付き合っている女性にかつて愛した女性を想っていると言うのは…‥
でもどうしてもこの気持ちを捨てることが出来なかった。
「…‥そうだね…‥モニカを誘うよ。恋人だからね…‥」
「ライ…‥忘れろとは言わないよ…‥カレンはライにとって今のライを作ってくれた恩人なんだから…‥大切に想うのは分かる…‥でもその気持ちは…‥愛ではないと思うよ…‥」
スザクはライの目を見ながら真剣に訴えてきた。
ライはその事を真剣に考えてみた。
紅月カレン
かつて自分が愛した人…‥世界で一番大切だった女性…‥
モニカ・クルシェフスキー
今の自分が愛している人…‥世界で一番大切な女性…‥
(僕は…‥僕が愛しているのは…‥)
a…‥紅月カレン b…‥モニカ・クルシェフスキー
5話、6話の展開を考えているうちにライモニカの小説も書きたくなってしまったので急遽分岐をつくりました。
こちらはタイトルに「紅の花嫁」とあるようにライカレンで進めていきます。
ライモニカは近いうちに別タイトルで連載させてもらいます。
これみるとなんかライが最低なヤツになってしまった気が…‥