エリア11
そこはかつて日本と呼ばれていた。
ブリタニアが宣戦布告すると瞬く間に支配されてしまった。
理由は当時のブリタニアが主力戦力として導入した自立自走型兵器「ナイトメアフレーム」通称KMFだ
当時の軍隊の主力兵器といえば戦車や戦闘機などだった。
そんな中各国がしのぎを削り開発をしていた次世代の主力兵器として目をつけていた人形自走兵器をブリタニアはいち速く実戦導入した。「グラスゴー」と名前を与えられたそれは次世代の主力戦力としての実力を世界に見せつけた。
その日から「日本」は「エリア11」と名前を変えた……
ライは今、単身でエリア11に向かっていた。自分の第二の故郷であり、親友ど出会ったエリアであり、二度目の悲劇を防げなかったエリアでもあり……愛する女性に出会い……別れてしまった……大切なエリアである。
なぜライがそこに向かっているかと言うと、時は数日前…‥
スザクに自分の想いについて問われた日の夜にある。
ライは自分の心に整理がついたが、それをスザクに伝えることはなかった……伝える訳にはいかなかった……それは自分で解決しないとならない問題だからだ。スザクもその事を察し
「……どうやら答えは出たようだね……」
そう言い残し去っていった。
ライは昼間の事から気持ちを切り替えてある場所にいた。朝、自分の副官マリーカから伝えられた重大な用事を済ませるためシュナイゼル殿下の宮に足を運んでいた。
着いた時、そこには自分を呼んだ相手……ブリタニアの実質的No.2シュナイゼル・エル・ブリタニアと、その副官で中性的な顔立ちと女性の用な口調が印象的な男性カノン・マルディーニがいた。そこまではライの想定していた状況ではあったが、すぐにライが想定していた以上の状況になった。理由はそこにいた自分と彼ら以外の人物達にあった。
そこにいた男性の方を見てライは一度目の衝撃を受けた。
そこにいた人物はシュナイゼル殿下と同じ皇族だ。そしてシュナイゼル殿下と同じ位にライとは親しい人物だ。
穏やかで争い事を好まない性格は彼の雰囲気と彼の顔からにじみ出ていた。彼の名前はオデュッセウス・ウ・ブリタニアブリタニア帝国第一皇子で、皇位継承権第一位、つまり次期皇帝である。彼はライを見るとにこやかにライに微笑みかけた。そしてライはその横にいる一人の少女に目がいった。
栗色のウェーブのかかった髪、まだ幼さの残る顔立ち、両目は閉じ、車椅子に乗った少女を見てライは二度目の衝撃を受けた。そこに居たのは自分のよく知る人物。自分の親友がこよなく愛していた親友の妹、自分の記憶がないときに優しく接してくれた少女がそこに居た。
「ナナリー……」
「はい。お久しぶりですねライ様」
彼女はライの呼び掛けに答えると優しく微笑んだ。
ライと三人の皇族は同じテーブルに座り、ライに今回呼んだ理由を説明した。簡単に説明するなら主に二つの要件をライに頼むためにこのような場所を設けたらしい。
ひとつ目の要件は皇族に復帰したばかりのナナリーの力になって欲しいというものだ。それは別に依頼されなくても喜んで力になるつもりだ。ナナリーは自分がまだ記憶がないときに優しく接してくれた人物で、ライ自身その対応に救われた事を覚えていたので二つ返事でその要件を受け入れた。問題は二つ目の要件だ。それは今ライが気になっていたことに関係する要件だ。
「ライ様……兄を……お兄様を助けて下さい!」
ナナリーの心からの叫びをライは聞いた。ライ自身も気になっていた。ナナリーを溺愛しすぎていた親友。ルルーシュか見当たらない事に。ナナリーが皇女なら当然兄であるルルーシュもブリタニア帝国の皇子ということになる。
あのルルーシュがナナリーから離れる事はライの経験上あり得ないことだった
「ナナリーはブラックリベリオンの時にブリタニア軍によって発見。保護されたんだよ。どうやらその様子だと知らなかったようだね」
オデュッセウス殿下は優しい口調でライに話しかけた。そしてライはあることシュナイゼル殿下に確認を取った。
「スザクは……スザクはこの事をしっているんですか!?」
「もちろん知っているさ。何故ならナナリーを保護したあとブリタニアに連れてきたのは彼だからね」
シュナイゼル殿下の言葉にライは絶句した。
(スザクは何故僕にナナリーの事を黙っていた?)
ライが軍に戻った時に真っ先にスザクにルルーシュ達の事を聞いていた。その時スザクからはルルーシュ達は行方不明になったと聞かされていたからだ。ライはスザクが自分にナナリーの事を隠していた事実に憤りを感じていた。そして1つの疑問を抱き、その疑問の答えを知っている可能性があるシュナイゼル殿下に疑問点をぶつけてみた。
「スザクにはルルーシュの事を確認したんですか?」
そう彼はルルーシュの親友である事をライは知っていた。
その彼がナナリーだけを保護してルルーシュを探さない事に違和感を覚えた。
「……残念な事に知らないようだよ」
オデュッセウス殿下が申し訳なさそうに答えた時に、ライは理解した。何故こんな席を設けてまで自分に「個人的なお願い」をするのかを……それを画策したであろう人物の見ながらライは言葉を発した。
「なるほど……つまりスザクに知られないようにルルーシュを捜索し、本国へつれてきて欲しい……それも内密に……そういう事でよろしいですか?シュナイゼル殿下」
その言葉を聞いたシュナイゼルは、小さく笑みをこぼした。そしてライから目を反らす事なく話し出した。
「実はもう目星を幾つかつけてあってね。それを君に確認してきて欲しいんだ。ルルーシュと面識のある君に」
「やはりそうですか……でも何故内密に?皇族の捜索なら軍を使って大々的にやる方が効果的のはずですが」
その会話にシュナイゼル殿下の副官カノンが割り込んできた。
「実はその人物はある部隊の監視下にいるのよ。だからこちらから近づきたくても近づけないのよ…」とカノンは説明してくれた。そしてライさらに疑問に思った事を状況を説明してくれたカノンに聞いた。
「ある部隊とはどこの部隊で?」
「機密情報局よ…」っとカノンは答えた
『機密情報局』とはナイトオブラウンズと同じ皇帝直轄の機関であり、場合によってはナイトオブラウンズより強い権限をもつ部隊である。
その部隊が動いているという事は皇帝陛下直々の任務ということになる。
「……わかりました……本来ならこのような行為は皇帝陛下への反逆ともとられる可能性があるためお断りしますが、他ならぬシュナイゼル殿下とオデュッセウス殿下、そしてナナリーからのお願いなら断る訳にはいきませんね」
ライはこのお願いを聞き入れることにした。他ならぬナナリーのお願いであること。そしてスザクが何故自分に隠しているのか。それを確かめずにはいられなかった。
「では君にはエリア11に行ってもらうわ。その人物は数日後ある場所に行く事が機密情報局のデータをハッキングしてわかっているからそこで彼と接触して、ルルーシュ殿下か確認をしてちょうだい」カノンはそういうとエリア11行きのチケットと偽造したパスポートをライに渡した。
「ライさん!どうかお兄様の事をお願いします!」
ナナリーはそういうと泣きながらライに頭を下げた。
それを見てライはナナリーを慰めるため、ナナリーの体をそっと抱きしめ、優しく微笑みかけ
「イエス・ユア・ハイネス」とナナリーに告げた。
それを回りの人物達は微笑みながら見ていた。
それに気が付きライは恥ずかしくなり、すぐ抱きしめるのをやめ、シュナイゼル殿下に目的地を確認した
「…で目的地は何処なんですか?」
シュナイゼル殿下は笑みを浮かべ目的地を告げた
「エリア11……トウキョウ祖界の外縁部にあるビルさ。名前は……バベルタワー」
ライはエリア11に着いて直ぐにあるところに向かった。場所はトウキョウ祖界の外れのゲット-
そこであるものを受け取る手はずになっていた。シュナイゼル殿下の副官カノンから聞いていた人相の男を発見し、接触した。その人物に封筒を渡し、代わりに車の鍵と地図をもらいその地図の示すところに向かった。十分ほど歩いたところに一台のトラックがあった。その中にあるものを受け取るのが目的だった。トラックに乗り込みライは持ってきた荷物からカツラとカラーコンタクトを取り出した。ライの容姿は目立ち過ぎるため、変装する必要があった。カツラを被り、コンタクトをつけた後トラックのエンジンをかけた。
バベルタワーの地下にトラックを停めるとタワーの中に入り一目散にエレベーターに乗った。目的の階に着き、エレベーターから降りた。そこはあらゆる賭博がおこなわれているカジノフロアーだ。
賭けの内容は多種にわたる。ルーレット、ブラックジャック、ポーカー、賭けチェス、殺し合いすら賭けの対象になっていた。
(腐ってやがるなここの連中は……バベルタワーか……まさにその通りだな……)
そこでおこなわれている内容はエリアの国民、名誉ブリタニア人の救済プロジェクトを行うライにとっては許せない内容だった。ブラックリベリオン後、エリア11は粛正エリアに格下げされていた。粛正エリアになってしまったエリアがどうなるかは知っていたが、自分の目で見るのは初めてだった……
以前ノネットさんが「あれは胸糞悪いぞ……」っと言っていた事を思い出した。
タワーの中心では沢山のバニー姿の日本人と警護の人間を引き連れている人間が目にはいった。
その男は日本人を賭けの対象にチェスをやっていた。まるで日本人を物のように扱うその態度にさすがに堪忍袋のおが切れてしまった。気がつけばその人物に向かって歩いていた。
ライは回りが見えていなかった。ただひたすらにその男に向かっていた。その時一人のバニー姿の人間が駆け足できていることに気が付かずぶつかってしまった。
「申し訳ありません!!」
「大丈夫ですよ。少し服が汚れただけです。手伝いますよ。」そう言って赤毛のバニーと一緒に割れたグラスを拾う事にした。
「……ライ……」
「え!?」
その時自分が頭に血が上り回りが見えていなかった事にライは気が付いた。そこに居たのは……自分が最も愛する女性だった
「……カレン何で!?何で君がこんなところに!?」ライは動揺を隠せなかった。何でカレンがここにいるか皆目検討がつかなかったからだ。
「……それは……ここにゼっ!?きゃ!?」不意にカレンは髪を引っ張られた。中心で賭けチェスをしていた黒人の男だ。
ぶつかった時に割れたグラスの音でここにいるカレンの事に気が付いたのだ
「ここにも一匹ウサギちゃんがいるじゃないか。こいつをもらうぞ」そう言ってその男は支配人らしき男を睨んだ。
支配人らしき男は見るからに腰を引くしてお目が高いとそいつに媚びを売っていた。
「私は違っ!?」
「何が違う?ここにいるイレブンは皆商品だ。ならお前も商品という事だ。良いカラダをしているじゃないか」
そう言ってその男はカレンの体をなめ回すように見ていた。
ライの目の前で……愛する女性を蔑んだのだ。
ライはもう我慢する気などなかった。
「薄汚い手を離せ……下郎が……」
ライは昔の自分のように喋った……かつて皇帝だった時のように……その男が許せなかった……カレンを……愛する者を蔑んだのだ男を……その言葉はその男の耳にちゃんと届いた。
「私に言っていたのかね?この『黒のキング』である私に?」その男はライの挑発に乗ってきた。
ライもその男に言っていた
「そうだ貴様にいったのだゲスが!何が『黒のキング』だ。!馬鹿らしい!」ライはあえて挑発的な言葉で喋り続けた。理由は2つある。ひとつはこの男の下らないプライドに火をつけ、同じ勝負の場に引きずり出すため。もうひとつはこの会場にいる人間の目を自分達に向け、男が逃げられないようにするためだ。そしてその思惑は上手くいった。
「そこまで私を馬鹿にするなら覚悟は出来ているようだな」
そう言って男はライとカレンの回りを警護の人間で固めた。逃がさないために。それを見たライは心の中で自分が仕掛けさ罠にかかった事を確信した。
「……ルールはなんだ?」
「当然チェスだ。賭けるものはこちらはこのウサギだ。君は何を賭ける?」
「俺を賭けよう」そう言ってライはその男にあるものを渡した。それは貴族階級を表す指輪だ。その指輪を確認した時、男はライの正体に気が付いた。
「良いだろう。こちらにきたまえ。『白馬の騎士』」
「あぁ。受けて立つ!」
回りにギャラリーが集まる。ギャラリー皆が黒のキングが勝利すると思っていた。だか、結果は違う物になっていた。
チェスが始まり30分後……
「チェック」ライはそう宣言した。
ギャラリーは唖然とした。あの『黒のキング』が見ず知らずの男に手も足も出なかったのだから。ライの正体を知っていれば別だが今この場でライの正体を知っているのはカレンと目の前の男だけだった。
いつもならこういった時に『黒のキング』がとる行動は、相手を陥れる事だか、目の前にいるのは帝国最強の騎士ナイトオブラウンズ。とても手に負える相手ではない。素直に敗けを認めるしかなかったのだ……
「……すごいライが勝っちゃった」カレンも驚いていた。潜入前に渡された資料で『黒のキング』の事は知っていた。
たちが悪いブリタニア貴族でチェスが強い出来るだけ関わらないように言われた人物だった。それをライはものともせず勝利した。自分の為に勝負し勝利したライにカレンは熱いまなざしを送っていた。
「彼女は俺がもらうぞ!いいな!」
そう言って彼女の手を取ろうとした時、バベルタワーに爆音が響き、ビルを揺らした。タワー上層で爆発が起きたのだ。
いつもの癖で回りを見回し、警戒体制になっていた。
それはほんの一瞬の出来事だった……
ふと気が付くとそこに居たはずのカレンが居なくなっていた。見回した一瞬の隙にカレンは彼の前から姿を消した……