窓から朝日が射し込み部屋を明るくする
ライは見覚えのない天井がある部屋で目が覚めた。
身を起こそうとした時、ふいに自分の片腕だけにかかる重さを感じた。
それは愛しい者の重さだった
隣に彼女はいた。
生まれたままの姿で、自分も一糸纏わない姿で同じベッドの中にいた。
ここはアッシュフォード学園の向かいにある大学研究所
かつて特派が使っていた研究室にライとカレンはいた。
理由はアッシュフォード学園に復学するためだ。
エリア11に戻ることが決まった時、ナナリーが手配してくれた。
ルルーシュを探すためにやはり学園は一番怪しいからとナナリーはカレンとライの復学の手配をしてくれた。
「カレン。もう起きないとマズイよ。初日から遅刻は良くないよ」
ライは隣で可愛い寝顔で寝ているカレンを起こした
「ぅうん……ラぁイ……おはよぉ~。ん…」
そう言ってカレンはライとキスをした。
いわゆるおはようのキスだ
「早く起きないと遅刻だよ」
そう言ってライは制服に着替え始めた。
少し前まで毎日着ていたが最近はずっと騎士服だったため新鮮な気持ちになった。
カレンも同じ気持ちを抱いたようで制服を懐かしそうに眺めていた。
「カレン…‥早く着てくれないかな。その格好は起きたばかりの健全な男性には少し刺激が…‥」
「え?…‥イヤぁ!?」
カレンはやっと気が付いたようだ…‥まだ生まれたままの姿であることに…‥
制服に着替え、二人で朝食をとり、一緒に学園にむかった。
向かったと言っても学園は研究所のある大学の向かいにあり、そんなに時間は掛からなかった
懐かしい校舎が目に入りふいに目頭が熱くなるものがあった…‥
たった一年間居なかっただけなのに、自分ではそれ以上の時間が過ぎていたような気がしていた。
(またここに帰って来られるなんて……)
「あれってライ様!?」
「ナイトオブラウンズが学園に!?」
「隣の女の子可愛いなぁ…‥一体誰なんだ…‥」
感傷に浸っていると回りが自分達に気が付き、騒がしくなってきたので、カレンとライはすぐに職員室に急いだ。
「貴殿方のクラスはB組になります。あなたたちを知る人物は一人を除きみんなのそのクラスにいます。」
「ありがとうございます。ヴィレッタさん」
機情の任務で、体育教師として学園に潜入しているヴィレッタ・ヌウから学生証を受け取った
「止めろライ。今はお前のほうが上官なんだぞ」
「でもここでは『生徒』と『教師』ですよ」
彼女がブリタニア軍人である事を知っているのは極僅かの人間だけだ。
それだけ機密情報局の情報操作は完璧だった
「枢木卿から話は聞いているが本当に我々に協力してくれるのか?」
「協力と言うよりは黙認かな。僕達にとって大事なのはルルーシュの安全。C.C.には興味がありませんから」
ナナリーにこんな事を報告出来る訳がない…‥
それは先日スザクを問い詰めた時、スザクに約束した事…‥
「ライは何処まで知っているんだ?」
スザクはライに敵対心を剥き出しにして問いかけてきた。
ライは自分が知っている事を全て話した。
神根島でのこと、今の学園のこと、生徒会メンバーとルルーシュのこと、全て有りのままにはなした。
ルルーシュの事は除き…‥話した…‥
「そうか。ライ!単刀直入に聞く!ゼロの正体を知っているか!」
「今のゼロの正体は知らない…‥それはカレンも同じだ……」
ライはポーカーフェイスでスザクの質問に答えた。
ここで嘘が見破られたらライだけではなくルルーシュも、カレンも殺されてしまう。
ライは絶対に見破られ無いようにかつて培った相手を騙す技を用いた。
「……分かった話すよ。僕は今、ルルーシュを使い、ある女を捕まえる任務を皇帝陛下から命じられている」
スザクは全てを話してくれた。
ルルーシュと生徒会メンバーの記憶を改ざんした人物は皇帝陛下その人であること、皇帝陛下の命令でC.C.を捕まえるために動いていること、その任務の餌としてルルーシュを生かして監視していること、全て話してくれた。
全てを聞いたあとライは気になることを聞いた
「ルルーシュの安全は保証してくれるかい?」
それは今のライにとってカレンの身の次に大事な事はだった。
ナナリーの為にもそれは確認をしておかなければならなかった
「ルルーシュがゼロでなければ保証する。だが、ゼロの正体が分かるまではルルーシュの安全は保証出来ない」
それは明確な殺意だった……
スザクは許せる訳がなかった……
愛する者……ユフィを殺したゼロを……
「分かった……僕達も出来る範囲で協力するよ」
ライはとりあえずそう答えた。
スザクの事を完全には信じられないが、今の時点でスザクを裏切っても何の意味もなかった。
(皇帝の目的もわからない以上、今はスザクには逆らわないほうがベストだな……)
だから今は協力することで、スザクの信頼を得ておく事にした。
「ありがとうライ!それで何でカレンは君の副官に?それもシュタットフェルトとになって」
堅苦しい話が終わったとたんにスザクは目の前でおきている信じられない光景について聞いてきた。
悩んでいるライの代わりにもう一人の当事者カレンが答えた。
「私はブリタニアに亡命したのよ。ゼロより……ライを選んだの‥…だからここにいるの」
それを文字通りの意味にとったスザクはライに笑顔で話しかけた。
「良かったねライ!カレンに愛されているんだね!」
「……まあな」
カレンは顔を赤してうつむき、ライは恥ずかしがりなから返事をした。
「やっぱり懐かしいわね」
教室まで続く廊下を二人は並びながら一緒にあるいていた
「病弱設定はどうしたの?」
かつてカレンはこの学園に通っているときに髪の毛を綺麗におろし、儚そうな目をして病弱な女の子を演じていた。
だが今は髪の毛ははね上がり、力強く瞳を輝かしていた。
どう見ても病弱には見えない
「もう!それは無し!前はそれで痛い目を見たんだから!」
カレンは後悔していた。
レジスタンスとして活動するために病弱なふりをしていたせいでライとあまり学園で会えないこと、
設定のせいで何時も親衛隊がいたせいでライと一緒にいることが限られていた。
カレンは今回の学園生活は後悔したくなかったのだ。
そんな話に花を咲かしているとすぐに教室についた。
すると教室から担任の教師が出てきて挨拶をするようにと教室に招いた。
その時カレンは左手に手をかけた。
かつてライから贈られた指輪を薬指から外そうとした。
「それは外さないで欲しいな……」
ライは咄嗟にカレンに自分の思いを告げた
カレンは自分の大切な者だと主張したかった
「え……いいの?」
そう言うカレンは嬉しそうに指輪を見つめた……
カレンはライの気持ちを察した……
(ライも以外と子供っぽい所があるのね)
カレンは手を指輪からはずした。
どうやら外すのを止めてくれたようだ。
ライの心の中は歓喜に湧いていた。
教室に入った途端。教室には黄色い声援が上がった。無理もない自分達の教室にナイトオブラウンズと名家のお嬢様が入ってきたのだから
「あれが銀麗の聖騎士様……」
「『ナイトオブエイト』ライ・アッシュフォード様……」
「シュタットフェルトのお嬢様だってよ……美人だな…‥」
「バカ!よく見ろ。もう婚約者が居るみたいだぞ」
それを聞いたライは自分の思惑通りになったと確信した
(よし!これでカレンに近づく男は居なくなったな……)
担任に促され2人は自分達の席にむかった。
カレンはシャーリーの、ライはリヴァルの隣にきた。
「久しぶりだね。元気にしていたかい。リヴァル」
ライは友人のリヴァル・カルデモンドに話しかけた
「本当にライ達なのか!?」
目を大きくさせ驚くリヴァル
「夢とかじゃなくて!?」
自分の顔を引っ張るシャーリー
「本物よ。シャーリー」
カレンがシャーリーに話しかけた時、教室の後のドアが勢いよく開き、金髪の女性が入ってきた。
「ライが帰って来たって本当!?」
生徒会会長で、ライの義理の姉、ミレイ・アッシュフォードだ。
生徒会メンバーがライのクラスに集合した。
授業が終わり昼休みになるとカレンとライは懐かしの場所アッシュフォード学園のクラブハウスでカレン特製のお弁当を生徒会メンバーと食べていた。
「じゃあ、カレンの婚約者はやっぱりライなんだ!」
シャーリーはやっぱりそこが気になるらしくカレンにしつこく聞いていた。
どうやらカレンが折れたようだ……
「もういいでしょ!大きな声で言わないでよ……」
そう言うカレンはまんざらでもないようだ
「ライもやるね~普通は諦めないか?」
「リヴァル。ライはお前と違って一途なんだよ」
「なんだとルルーシュ!俺だって一途だ!ロロも笑うなよ!」
友との他愛の無い会話……
懐かしいこの雰囲気にライは感傷に浸っていた。
ふと、ライの目がルルーシュの隣にすわる栗毛の男の子に行った
(あいつがロロ。バベルタワーでヴィンセントに乗っていたギアス使い……)
スザクから教えられた事を思いだした。
名前はロロ
ある組織から派遣されてきたルルーシュの監視者……
ナナリーの場所を奪った人間……
(ルルーシュ……辛いだろうな……)
そんな事を考えていると、昼食を食べ終わり暇になったリヴァルが尋ねてきた
「とこでライ。なんで『アッシュフォード』に?」
「あっ!それは私の独断で養子にしました♪」
間髪入れずにミレイは答えた。
「「「「え~~~!!」」」」
カレン、リヴァル、シャーリー、そしてライ自身も驚いた。
実はライも自分が『アッシュフォード』になった経緯をしらないでいた。
まさかこんな形でこんな事が分かるなんて……
というか独断で養子に出来るの?
ライがブリタニア本土に渡ってから約2ヶ月たった時…‥
「え!?ライをアッシュフォードの養子に!?」
「あぁ。悪い話ではないと思うがな」
突如、目の前にいるグラマーな女性の口から以外な人物の名前が出てきた。
そこにいる人物は、ライをブリタニア本土に保護していた女性、ノネット・エニアグラムだ。
「なんでそんな事に」
ミレイは理解できなかった。
目の前にいるのは帝国最強の騎士、ナイトオブラウンズの一人が仁王立ちしており、自分の友人を自分の弟にしないかと言ってきたのだから理解不能だ。
「実はあいつをラウンズに入れたいのだが、ライには後ろ楯がいない事を申請した時に気が付いてな!今からでは頼める人物がいないのだ!」
ミレイは呆然とした…‥
ライがラウンズ?…‥
ライってロイドさんの手伝いをしてるんじゃなかったの?
全く状況が呑み込めないミレイを他所にノネットは引き続き喋り続けた。
「勿論、無理にとは言わん!無理ならわたしの家、エニアグラム家が養子にもらうだけだ!」
「そっ!?それは駄目です!!ライは家で引き取ります!!」
咄嗟にミレイは叫んだ!
何故そんな事をしたのか分からなかった。
「そうか!!それは助かる!じゃあライはアッシュフォードの養子として申請しておこう!」
そう言ってノネットは去っていった。
数日後、
ミレイの所に正式な養子手続き確定の申告書類が届いた…‥
そして今に至るようだ…‥
「僕の人生って…‥」
それを聞いてライは空を見上げて現実逃避しだした……
「ノネットさん……なんていい加減な……」
ノネットの無鉄砲さに頭がいたい……
まさか自分の家名がこんな事で決まったなんて……
「そんな訳で!!ライは私の義弟になりました♪これからは『ミレイお姉さん』か『お姉さん』と呼ぶように!!分かった?」
そう言ってミレイはライに命令した
ライの経験上こうなったらどうにもならない事を理解していた。
素直に要求を飲むことにした。
「……分かりました『ミレイ姉さん』」
ライが恥ずかしがりながら呼ぶとミレイは目を輝かせた。
「可愛いぃ~♪私、ライみたいな弟が欲しかったのよね~♪」
そう言ってミレイはライを抱き締めた。
いい臭いがする……
そう思った瞬間。隣から物凄い殺気が飛んできた。
殺気を放つのは勿論カレンだった……あっリヴァルもか……
「ところでスザクはどうしてるんだ?今日は学園にきていないから不思議で」
不意にルルーシュはライにスザクの事を聞いてきた
恐らく先日の事でスザクの同行を探るためだろう
「あぁ。スザクは最近あった仕事の後処理をしてるみたいだよ」
先日、太平洋上空で黒の騎士団とブリタニア軍で繰り広げられた攻防戦……
カレンとライはまだKMFが本国から届いていなかったため、戦闘には参加出来なかった。
黒の騎士団がKMFを航空戦艦の甲板に取りつかせ、シールド内部で戦艦を攻撃し制圧する作戦を展開したが、後方で控えていたギルフォード卿とグラストンナイツ、更にはナイトオブラウンズの介入により作戦は失敗……本当の目的のナナリーを連れていく事も出来ず黒の騎士団は撤退を余儀なくされたらしい……
スザクはその件の報告書の作成と黒の騎士団の所在を探していた
(ルルーシュごめん。監視の目がある以上明確な情報を与えられないんだ……)
ライは心の中でルルーシュに詫びた……
「……そうか」
ルルーシュもその空気を察してかこれ以上の事は聞いては来なかった……
ちょうど昼休みが終わった……
放課後、
クラブハウスの一室でライは騎士服、カレンは軍服に着替え、政庁に向うことにした。
昼休みの時、ミレイ達に今やっているガーデン計画の手伝いを頼まれたが、ライ達は職業軍人だ。
当然仕事がある。
ミレイ達には悪いが仕事を優先させてもらった。
政庁に着いて自分達に与えられた執務室に入った。
入るとそこには書類の山とその中に埋もれるマリーカの姿があった。
「ライ様~!やっと来た~!」
書類の山との戦いで憔悴しきったマリーカはライ達を見つけ起き上がった。
「マリーカお疲れ様。それにしても凄い量だね」
一人でやるには到底無理な量がそこにはあった。
これを一人でやっていたと思うと流石に申し訳なく思った
マリーカは学園に入学させていなかった。
理由はライ達への連絡係として軍に置いて置くためだ。
だが、どうやら失敗だったようだ…‥
「マリーカお疲れ様。はいお土産♪」
カレンは来る途中に買ってきた物をマリーカに渡した。
マリーカはその箱を受け取り、箱の中身を見たとたんに笑顔になった。
「ケーキですか!?休憩にしましょう!お茶にしましょう!」
そう言うとマリーカは中央のテーブル片付け馴れた手付きでティーカップを出し、お茶を温め、ケーキをお皿に盛った。
書類の山は中央のテーブルからライのデスクの上に移動させられていた。
ケーキを食べてるマリーカは至福の時を味わっていた。
その様子にカレンは笑顔がこぼれた。
ケーキ一つでここまで喜んでもらえるとは思っていなかった。
その間にライは自分のデスクに移動させられた書類に目を通す事にした。
大半が金銭面に関する書類のようだ。
クラブの改修費、新型KMFの製造費、プリン代金?etc…‥
朝から今までマリーカはこの処理におわれていたと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになる…‥
やはり学園につれていけばよかったと考えるほどだ…‥
「すまない。僕らが学園に行っている間、仕事を全部押し付けちゃって」
「いいですよ。ナナリー殿下の為なんですよね!なら協力しますよ」
マリーカは笑顔で応えてくれた。
やはり彼女は自分には勿体無い副官だと思った…‥
こんな素直で優しい子はそういない。
おもわずマリーカの頭を撫でてしまった…‥
マリーカは嫌な顔をせず、むしろ恍惚の表情をしていた。
すると、あることが頭を過った…‥
ここエリア11でやらなければならないことだ…‥
「今度、キューエル卿に報告しに行こう…‥」
彼女の兄であるキューエルはここエリア11で戦死したのだった…‥
キューエルは純血派の中心人物の一人だった…‥
純血派の戦死者達の墓碑は、他の隊員達とは別に創られるほど、本国に与える影響が強い存在だった…‥
マリーカはそんな兄を誇りに思っていた…‥
「お兄さん……戦死されたねよね……」
カレンはライからマリーカの事情を一通りきいていた。
カレンの兄も戦死していた…‥
恐らくカレンには今のマリーカの気持ちがわかるのだろう。
その証拠にカレンは涙をおさえているようだ…‥
その気持ちに気が付いたマリーカが口を開いた…‥
「はい……だから必ず仇をとって見せます!……私の手で紅蓮を倒して見せます!」
「え……」
カレンは思わず手に持っていたフォークを床に落としてしまった…‥
「カレンさん?どうかしましたか?」
カレンはマリーカの顔が見れなくなった…‥
カレンにはブリタニアにつく上で覚悟していた事があった…‥
それは自分が命を奪った者の家族、恋人が自分の前に現れる事だ…‥
だが、その覚悟はあっさり打ち砕かれてしまった…‥
まさかブリタニアに来て最初に出会った人物、マリーカの大切な兄を殺したのが自分だったなんて…‥
心が押し潰されそうになった…‥
なんて彼女に言えばいいか分からなかった…‥
こんな可愛らしい子に、なんて残酷な事を伝えなければならないのだろう…‥
カレンは…‥ただ…‥
固まる事しか出来なくなってしまった…‥
ライは…‥ただ…‥
見守ることしか出来なくなってしまった…‥