エンジュの秋風と中国に潜む黒き風   作:シセン

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プロローグ2

 

エンジュシティ出身の少年トレーナーソウマは、相棒のゲッコウガやゾロア達の活躍で、

ホウエン地方で開催されたホウエンリーグ・サイユウ大会で見事優勝を果たす。

1週間後、以前から面識があった中国のポケモンリーグ『チャイナリーグ』チャンピオン……

レイウォンからチャイナリーグの1つ『カナンリーグ』に挑戦しないかという電話を貰う。

今までとは違うレベルへの不安と未知の冒険への好奇心から、話を受ける事にしたソウマは、

母親のアキホを説得し、中国へ旅立つための準備を始めるのであった。

 

 

 

・・翌日 エンジュシティ

・・ちょっと!変な言いがかりはやめてよ!・・

「ん?」

旅に必要なものの買い出しをしていると、何やら道の真ん中で誰かが口論していた。

「そっちがぶつかって来たんだろ!そっちが謝るのが普通ってもんだろうが!」

「それはこっちの台詞よ!大体、その図体で道の真ん中を歩くのが悪いんでしょ!」

口論していたのは舞妓の女性と筋肉質の男性であった。

「ハルコさん、どうしたのさ?」

舞妓の方は知り合いだったので、ソウマが声を掛けた。

「あぁ、ソウちゃん。この人が踊り場に帰る途中の私にぶつかって来たのよ。」

「だからお前の方だろうが!何度言えば分かるんだ、このアマ!」

「何ですって!」

再び睨み合い始める舞妓のハルコと男性。

「あぁ~、もう。そこまで!」

間に入って2人を止めるソウマ。

「お兄さん、ポケモンは?」

「あ?持ってるが、それがどうしたってんだ?」

「僕等はポケモンを持つ者同士なんだから、ポケモンバトルで決着付けようよ。

話を聞くと、どっちもどっちだと思うけど……バトルして負けた方が謝るって事でどう?」

「……別に構わねぇが。」

「ソウちゃん。私、さっきポケモンをポケモンセンターに預けてきたばっかなのよ。」

「えっ、そうなの?……じゃあ、僕が代理でバトルするよ。構わない?」

「……しょうがねぇな。だが、坊主が負けたら、その舞妓にはちゃんと謝ってもらうからな。」

「ハルコさん、それで良い?」

「……分かったわ。私もエンジュの舞妓のはしくれ、ソウちゃんが負けた時は潔く謝るわ。」

「決まりだね。じゃあ、近くの公園で戦おうよ。ここだと他の人に迷惑だからね。」

ソウマは男性やハルコと共に公園へと向かった。

 

・・公園

向かい合うソウマと男性、周囲にはハルコやたまたま公園にいた人達が観戦していた。

「そういえば、自己紹介してなかったね。僕はこのエンジュシティ出身のソウマ。」

「俺の名はホウゲン。出身はタンバシティだ。で、バトル形式は?」

「2対2のダブルバトルでどう?」

「ダブルバトルか、面白ぇ。俺のポケモンはこいつ等だ!」

『ゴーリィ!』

『ドンファン!』

男性『ホウゲン』が投げた2つのモンスターボールから現れたのは、

かいりきポケモン『ゴーリキー』とよろいポケモン『ドンファン』だった。

「ゴーリキーとドンファンか。……グレイシア、ルカリオ、Let’s Say go!」

続いて、ソウマがモンスターボールを2つ投げ……

『グレイッ!』

『ワウッ!』

しんせつポケモン『グレイシア』とはどうポケモン『ルカリオ』が現れ、

グレイシアは色違いのために普通のグレイシアより薄水色の体をしていた。

『(なんでオイラじゃないんだよ。)』

「まぁ、そう言うなって。」

自分がバトルに出られなくて文句を言うゾロアに苦笑いするソウマ。

「ゴーリキー、からてチョップ!ドンファン、とっしんだ!」

『ゴーリィー!』

『ドォンッ!』

バトルが始まり、ホウゲンの指示でゴーリキーとドンファンがそれぞれ突撃してきた。

「グレイシア、あなをほる!ルカリオはゴーリキーにボーンラッシュ!」

『グレッ!』

『(オウ!)』

グレイシアは【あなをほる】で地面に潜ってドンファンの【とっしん】を回避し、

ルカリオは両手を重ねて離していくと、光の棒の様なものが手と手の間に出現した。

 

『はどうポケモン』ルカリオは、『波導』と呼ばれる全てのものに宿る力を操る事ができ、

周囲から発している波導を察知する事で、夜道や煙幕の中などでも状況を知る事ができるのだ。

そしてゾロアと同じくテレパシーでソウマと会話をする事ができる他、

時には波導を具現化し、【はどうだん】や【ボーンラッシュ】などの攻撃にも使用していた。

 

『ウゥゥゥ……ワウッ!』

ルカリオは光の棒……波導の棍を棒術の様に振り回し、ゴーリキーを攻撃する。

『ゴォリッ!?』

【からてチョップ】を防がれ、両腕で波導の棍を防御するゴーリキー。

「ゴーリキー!ドンファン、ゴーリキーを援護しろ!ころがるだ!」

『ドンファンッ!』

ドンファンは体をボールの様に丸め、ルカリオに向かって突っ込んできた。

「ルカリオ、後ろだ!」

ソウマの指示を受け、ルカリオは攻撃を中断してジャンプして回避する。

「上手く避けやがったな。ドンファン、地中のグレイシアにマグニチュードだ! 」

『ドンッ!』

ドンファンは地響きを起こそうと、両前足を上げ始めた。

「(マズイ!)ルカリオ!」

『(分かってる!)』

【マグニチュード】は、使う時によって威力はランダムに変化する技であるが、

【あなをほる】などで地面に潜っているポケモンには威力が倍増する効果があった。

ソウマが言いたい事が分かったのか、名前を呼んだだけでグレイシアの援護に向かうルカリオ。

「邪魔をさせるな、ゴーリキー!」

『ゴーリッ!』

援護に向かおうとするルカリオの前に立ち塞がるゴーリキー。

「ルカリオ!横に避けてはどうだんだ!」

『ワウッ……ワァウッ!!』

ルカリオはゴーリキーをアメフト選手の様に横に避けながら両手に波導を集め、

サッカーボールの様な形と大きさになった波導の塊を、ドンファンの足元に向けて放った。

『ドンッ!?』

『グレイッ!』

『ドォンッ!?』

【はどうだん】が足元に命中し、体勢を崩したドンファンは【マグニチュード】を出し損ね、

その隙を付いて地中からグレイシアが飛び出し、ドンファンを上空に吹っ飛ばした。

「今だ、グレイシア!こおりのキバでドンファンの鼻に噛み付け!」

『グレイッ!』

着地したグレイシアは口に冷気を集めてドンファンの鼻に噛み付きながらジャンプし……

「そのまま投げ飛ばせ!!」

『グレイ……シャア!!』

『ドォンッ!?』

ジャンプの勢いと遠心力を利用したグレイシアは、そのままドンファンを投げ飛ばした。

「決めるよ、アイアンテール!」

『レェイ、シャアァッ!』

地面に叩き付けられたドンファンはまだ体勢を立て直す事ができておらず、

落下や回転の勢いを加算させての【アイアンテール】が決まり、周囲に砂煙が巻き起こった。

「ドンファン!?」

砂煙が晴れると、ドンファンは地面にめり込んだ状態で気絶していた。

「ドンファン、戦闘不能だね。」

「クッ……戻れ、ドンファン。」

ホウゲンはドンファンをモンスターボールに戻した。

「グレイシア、ご苦労様。下がって。」

『グレイッ』

ソウマがそう指示すると、グレイシアはソウマの隣に来た。

「どういうつもりだ?」

「2対1で戦う気は無い。こうしないと機嫌悪くするから……ねっ、ルカリオ?」

『(……分かってるじゃねぇか、ソウマ。)』

「さっきから気になってたが……そのルカリオ、喋れるのか?」

「ルカリオは『波導』っていう人間やポケモン、全てのものに宿る力を応用して、

今みたいにテレパシーで会話する事ができるんだよ。」

「波導?……お前は知ってるのか、その波導ってやつを?」

「……まぁ、一応ね。色々あってね……さぁ、ケリを付けようか。」

「抜かせ!返り討ちにしてやる!ゴーリキー、クロスチョップ!」

『ゴーリィィィィ!!』

両腕をクロスさせた状態で突っ込むゴーリキー。

「ルカリオ!」

ソウマが指示を出さずに名前だけ呼ぶと、ルカリオは攻撃せずに武術の構えを取り、

ゴーリキーの【クロスチョップ】を最低限の動きで避け、そのまま腕を掴み……

『ウゥゥゥ……ワウッ!』

突っ込んできたゴーリキーの勢いを利用し、そのまま投げ飛ばすルカリオ。

『ゴーリィ!?』

投げ飛ばされたゴーリキーは背中から落下したが、痛がりながらも起き上がった。

「何だ、今の動き!?」

「ルカリオは僕と一緒に合気道を学んでるんだ。他にも自分で見た格闘術を基に特訓して、

技とは別に体術も会得してる……そこ等のルカリオとはわけが違うよ。」

ちなみにソウマも、大人が相手でも十分倒せるくらいの合気道の使い手だったりする。

『(勢い任せな戦法は、俺には通じないぜ。)』

「クッ、拳が駄目なら投げるまでだ。ゴーリキー、奴を捕まえてじごくぐるまで決めるぞ!」

『ゴォリィ!!』

「しんそくからシャドークローだ!」

『(よし!)』

ルカリオを捕まえるために突っ込むゴーリキーだが、ルカリオはゴーリキーの動きを見切り、

回避してゴーリキーから少し距離を置いたかと思うと、ルカリオの姿が一瞬で消えた。

『ゴリッ!』

気付いたゴーリキーが足を止めると同時に、ルカリオはゴーリキーの懐に飛び込み、

黒いオーラの様なものを右腕に集めると、まるで爪の様な形を象ったオーラを腕に纏い……

『ワァウッ!!』

黒いオーラの爪を纏った右腕でアッパーを放ち、ゴーリキーを空高くまで吹き飛ばした。

『ゴォォォ!?』

そのままホウゲンの前まで吹き飛ばされ、そのまま落下するゴーリキー。

「ゴーリキー!?」

『ゴ、ゴリ……キィ~……。』

起き上がろうとしたゴーリキーだったが、その前に力尽きて気を失った。

・・そこまでね。・・

ホウゲンのゴーリキーも戦闘不能になったのを見計らい、1人の女性が前に出てきた。

「母さん、何時来たの?」

出てきたのはソウマの母親のアキホであった。

アキホは昔、シンオウ地方でポケモンコーディネイターとして活動していた事があり、

グランドフェスティバルでの優勝経験を持つ元トップコーディネイターでもあった。

今はエンジュシティで舞妓の先生をしている他、衣装のコーディネイトなどもやっており、

二足歩行が可能ならポケモンも舞妓風にコーディネイトする事もできる。

余談だが、既に30代に達したのに20代前半と誤解するほどにアキホは若く見え、

事実ソウマと一緒に歩いている時に姉弟と勘違いされた事もあった。

「ついさっき。」

「そっか……ご苦労様、グレイシア、ルカリオ。」

『グレイッ』

『(まぁ、良いバトルだったな。)』

ソウマがグレイシア達を労っている間に、ホウゲンはゴーリキーをモンスターボールに戻した。

「流石、ソウちゃんね。」

「凄かったわよ!」

アキホと一緒に来ていた舞妓達もソウマに駆け寄り、観戦していた他の人達も2人に拍手した。

「ご苦労だったな、ゴーリキー……。」

ボールに戻ったゴーリキーに労いの言葉を言ったホウゲンは、ソウマ達の前に歩いた。

「俺の負けだ。……すまなかった。」

ソウマに負けを認めたホウゲンは、近くにいたハルコに向かって頭を下げた。

「……私の方も悪かったわ。さっきバトルで負けちゃって、悔しくてイライラしてて……。」

「だから、ポケモンを預けに行ってたんだ。」

「そうなの。」

「俺もこの間まで働いてた所をクビにされて、ヤケになってたみたいだ……。」

「ホウゲンさん、何の仕事してたの?」

「大工だ。本当は演劇とかの大道具なんかを作る方が好きなんだが、そっちの仕事がなくてな。」

「あら、だったらちょうど良いわ。」

ホウゲンの話を聞いていたアキホが、何かを思い付いた様に声を上げた。

「ちょうど踊り場の大道具作りやってる人から、人手が欲しいって相談されてたのよ。

どう?踊り場の宿舎を借りる許可は貰うから、うちで働かない?」

「ほ、本当か!?」

アキホの提案にホウゲンが食い付いた。

「クスッ……その反応は承諾って取って良いのかしら?」

「あ……あぁ~、その……お願いします。」

ハッとなったホウゲンは、顔を赤くしながら頭を下げた。

「決まりね……それじゃあ、ソウマとホウゲンさんのポケモンをポケモンセンターに預けて、

ソウマの出発とホウゲンさんの歓迎兼ねて、皆でご飯食べに行きましょうか。」

「「は~い!!」」

 

皆で夕飯を食べる事に決まり、ソウマ達は公園を後にしてレストランへ向かい、

観戦していた人々もそれぞれ帰っていった。

 

・・レストラン

ポケモン達をポケモンセンターに預けた後、ソウマ達は近くのレストランへとやって来た。

「なるほど、地方リーグ優勝経験者じゃ敵わねぇわけだ。」

先程までの険悪態度は何処へやら……ホウゲンはすっかり馴染んでいた。

「僕なんてまだまだですよ。だからもっと強くなるために、今度中国を旅するんですしね。」

「そこからソウちゃんの新しい冒険が始まるのね。」

「うん。ジム戦だけじゃなくて、ポケモンコンテストも見たり参加したいって思ってる。」

「そういえばソウマは、何度かポケモンコンテストにも参加した事があったわよね?」

「うん。まぁ、どっちか片方に的を絞って真剣にやってる人には怒られそうだけど、

バトルとコンテスト……形は違うけど、やるからにはやっぱポケモンで一番にやりたいしね。」

そう言いながら、ソウマは首から下げている青いモンスターボールを手で弄った。

「ん?……そのモンスターボールにも、ポケモン入ってるのか?」

「えっ?あぁ、まぁね……僕の『とっておき』ってやつだよ。滅多に出さないんだけどね。」

「何でだ?」

「色々あるんだ、コイツは……ゲットしたけど、まだ100%認めてくれたわけじゃないし……

コイツが僕を認めてくれた時、僕はコイツのトレーナーって胸張って言える様になるんだ。」

ソウマがそう言いながら真剣な顔で説明した。

「はぁ~~……そんなもんなのかねぇ。」

「そういうもんさ。さてと……。」

ソウマは残った料理を食べて、席を立った。

「母さん。僕、いつもの所に寄ってから帰るから……。」

「えぇ。私もホウゲンさんを宿舎に案内したら家に戻るわ。」

「分かった。ゾロア、行くよ。」

料理を食べ終えたソウマは立ち上がり、ゾロアを連れてレストランを後にした。

「……いつもの所って?」

ソウマの行き先が気になったホウゲンは、隣の席にいるハルコに聞いてみた。

「あぁ、『焼けた塔』よ。」

「焼けた塔って……あのホウオウ伝説のか?」

「何を隠そう、アキホさんやソウちゃんの家は、この街の『スズの塔』と『焼けた塔』を

先祖代々守っている一族の末裔なんだから!」

「そうなんですか!?」

「正確には死んだ旦那の家だから、私にはあまり関係が無いんだけどね……

今はエンジュジムのジムリーダーのマツバ君を中心に塔の管理をしてるんだけど、

いずれはソウマも塔の管理をする事になるかもしれないわ。」

「ホウオウ……か。昔話で聞いた事があったが、本当にホウオウは戻って来るのかねぇ……。」

もう帰って来なんじゃないかと言って、水を飲むホウゲン。

「でも、ホウオウを見たって言う子が、前にエンジュジムに来たってマツバ君が言ってたわよ。」

『ブッ!?』

『ホウオウを見た』というキーワードで、ホウゲンが水を吹き出した。

「ちょっと、大丈夫?」

「ゲホッ!ゲホッ!ホ、ホウオウを見たって……本当なんですか!?」

ジョウト地方のポケモンを扱う人間にとって、ホウオウを見る事は正に夢の中の夢であった。

「そういう話よ。マツバ君もその子の事を認めてたみたいだし……。」

「その話を聞いたソウちゃんも、いずれは会ってみたいって言ってたわ。」

「……さてと、そろそろお開きにしましょう。ホウゲンさん、宿舎の方に案内するわ。」

「ウッス!よろしくお願いします。」

アキホ達もそれぞれ席を立ち、会計を済ませるとレストランを後にしていくのだった。

 

・・焼けた塔

今から300年前の『スズの塔』であり、ホウオウと交流できる神聖な場とされていたが、

ホウオウの力を我がものにしようという人間達の争いの結果、スズの塔は焼け落ちてしまい、

その争いが原因でホウオウもまた人間の前から姿を消してしまった。

ソウマの亡くなった父親は、エンジュジムのジムリーダーであるマツバと同じく、

代々スズの塔を守ってきた一族の1つであり、ソウマ達の先祖は争いが納まった後、

何時かホウオウが戻って来る事を願い、新たな塔(現在のスズの塔)を建設し、

そして過去の戒めとして、かつてのスズの塔……『焼けた塔』を残していたのだった。

「お邪魔するよ~~。」

昼でも暗い焼けた塔の内部は、更に闇が深くなっているが、ソウマは平然と焼けた塔へと入る。

・・ゴ~ス・・

すると、塔に棲み付いているゴースやゴースト達が姿を現した。

「ヤッホ~♪皆、元気にしてた?」

『(オッスッ!)』

普通の人間なら驚くか怖がるかする所なのだが、ソウマ達は思いっきりフレンドリーであった。

『ゴ~ス♪』

『ゴ~ス、ゴス♪』

ゴース達もソウマに擦り寄ったり、ソウマやゾロアの頭を撫でたりしてきた。

 

ソウマにとって、焼けた塔は戒めの塔であると同時に小さい頃からの遊び場であり、

生息しているゴース達には顔パス状態なので、幻覚で襲われる事も全く無かったのである。

この塔のポケモン達はゲットしていないが、小さい頃からここのポケモン達と遊んでいたため、

ゴーストポケモンに対する知識も自然と身に付いたのであった。

 

「さてと……皆、出てきて。」

来る前にポケモンセンターに立ち寄り、モンスターボールを受け取っていたソウマは、

腰にセットしていたモンスターボールを全て(ゾロアのボールは除く)上に放り投げると、

モンスターボールからゲッコウガ、グレイシア、フライゴン、ルカリオが出てきた。

「皆、明日はいよいよ出発だ。色々大変な事もあるかもしれないけど、一緒に頑張ろうね。」

『コウッ!』

『(分かってるぞ!)』

『グレイッ!』

『フライッ!』

『(まぁ、仕方無いな。)』

ソウマの言葉にグレイシア達は承諾する様に鳴き、ゾロアやルカリオもテレパシーで話した。

「よしと……。」

ソウマが取り出したのは横笛……フルートではなく、舞踊などで使われる木製の横笛であった。

「皆、少し自由にしてて良いよ。」

階段に座ったソウマはポケモン達にそう言うと、横笛に口を付けた。

「~~♪~~♪~~♪~~♪」

ソウマが横笛を吹き始めると、やけたとうに澄んだ音色が響き始めた。

ゲッコウガ達はゴース達とソウマの笛を聞いていたり、近くで座禅を組んで瞑想したり、

ゾロアの様にソウマの近くで丸くなったりしていた。

風に乗り、やけたとうを覆うかの様に響き渡る横笛の音色……その音色に反応しているのか、

ソウマが首から下げているモンスターボールもカタカタと動いている様であった。

「~~♪~~♪……ん?」

横笛を吹いていたソウマは、モンスターボールが揺れている事に気が付いた。

「……誰もいないな。よし、出ておいで。」

モンスターボールを外したソウマは、中に入るポケモンを呼び出した。

そしてその中身は……

『クーーーン!』

ジョウト地方の伝説のポケモンである『スイクン』……しかも色違いであった。

 

スイクンとソウマが出会ったのは、今から7年前まで遡る……

踊りを教えにある街へ出向いたアキホについて行ったソウマは近くの山で遊んでいたのだが……

迷子になって山の中を彷徨う事となり、焼けた塔で遊んでいて暗闇に慣れているとはいえ、

孤独感と山の暗さから次第にぐずり始めるのだった。

しかも、山の暗さが災いして足を踏み外し、崖(あまり深くは無かった)から転落してしまい、

鼻の上に傷を負い、骨折こそしなかったものの打撲や捻挫で身動きが取れなくなってしまった。

動く事もできず、恐怖心と痛みで頭の中がゴチャゴチャになりながら泣くソウマの前に、

白い霧と共に現れたのがこのスイクンなのである。

普通のスイクンが『北風』の化身なら、色違いのスイクンは『氷霧』の化身と思わせる様な

薄水色の体(たてがみは青)をしており、泣きじゃくるソウマを慰める様に体を擦り寄せ始め、

スイクンのおかげで安心したのか、ソウマも痛みこそ残っていたが次第に落ち着き始める。

ソウマはスイクンの背に乗って山の麓まで降り、探していたアキホ達に保護されたが、

お礼を言おうとした時には、スイクンはその場から姿を消していたのだった。

 

ソウマがスイクンと再会したのはそれから数年後……ジョウトリーグの旅の途中の事である。

ファントムバッジを手に入れるため、エンジュシティに戻ろうとしたソウマの前に、

初めて出会った時と同じく白い霧と共に姿を現したスイクン。

この時の前にも、何度か白い霧と共にスイクンのシルエットを見かけた事はあったが、

実際に姿を現したのは初めて会った時以来であった。

バトルを挑んでくる姿勢を取るスイクンに、パートナーであるゲッコウガで受けて立つが、

相手は同じタイプにして伝説のポケモン……次第に押され始めるソウマとゲッコウガ。

それでも諦めずに戦いを挑むソウマとゲッコウガを見て、スイクンは突然攻撃を止めた。

【ソーラービーム】や【ゴッドバード】の様に溜めて放つ技を準備しているのかとも思ったが、

攻撃を仕掛けてくる様子も無く、まさかと思ってモンスターボールを取り出すと、

スイクンが無防備の状態でソウマに近付いてきた。

理由はよく分からないが、どうやらソウマの事を認めたのかゲットされる事を許した様であり、

それならと考えたソウマは、とっておきであった青いモンスターボールでゲットする事にした。

実はこれはハイパーボールなのだが、カラーリングの際に染色を間違えたものらしく、

本来は不良品として処分される所だったのだが、折角だからとソウマが引き取ったのである。

別に性能が変わるわけではないのだが、ここぞという時まで残しておこうと思っていたソウマは、

このボールでスイクンをゲットしようと決め、青いハイパーボールをスイクンに軽く当てた。

ハイパーボールが開いてスイクンはボールへ入り、もがく様子も無くボールの点滅が終了した。

伝説のポケモンであるスイクンをゲットして大喜びのソウマだったが……

ソウマがポケモンリーグの公式戦でスイクンを使ったのは、この後のマツバとの戦いだけである。

というのも……ゲットさせてくれたものの、認めたのは『ゲットする所まで』の様であり、

バトルにはほとんど参加しようとはしなかったのだ(ボールを投げても出て来ない)。

マツバ戦では、ソウマのどうしても勝ちたいという想いが通じたのか姿を現し、

おかげでマツバのゲンガーを倒す事ができ、ファントムバッジを手に入れる事ができた。

だから、いつかスイクンに認められ、一緒に戦えるトレーナーになりたい……

というのもソウマの目標の1つでもあった。

 

「明日はいよいよ中国に旅立つんだ。まだ見てないポケモンに会えるの、楽しみだよね。」

『……』

「まだまだ頼りないだろうけどさ……いつかお前も認めるトレーナーになってみせるから……

これからもよろしくね、スイクン。」

『……クゥゥンッ!』

ソウマの言葉に答える様に、スイクンは高らかに吼え、再びハイパーボールの中へと戻った。

それを見届けたソウマは、また横笛を吹き始め、しばらくしてから家へと戻ったのだった。

 

・・数日後 ジョウト地方 国際空港

バッグを背負ってゾロアを肩に乗せ、アキホと共に空港にやってきたソウマ。

今のソウマの面子はゾロアの他に、ゲッコウガ、グレイシア、ルカリオ、フライゴンで、

スイクンの入っている青いハイパーボールは、何時も通りソウマの首に下がっていた。

「海外だからって、浮かれちゃ駄目よ?」

「分かってるよ。」

アキホと話していると、飛行機の時間が近付いてきたというアナウンスが聞こえてきた。

「それじゃあ、行ってくるね。」

『(行ってくるぞ!)』

「えぇ、気を付けて行ってらっしゃい。ゾロアも悪戯は程々にね。」

『(うぅ……分かってるぞ。)』

むくれるゾロアに苦笑いするソウマはアキホに見送られ、搭乗ゲートへと向かっていった。

 

 

こうしてソウマにとって初となる、旅行とは違う本格的な海外での旅が始まった……

しかしこの時、中国の裏に潜む闇と対峙する事になる事を……

ソウマは知る由も無かったのであった。

 

 

……To be Continued!

 

 

 




プロローグ終了、次回より本編開始です!

次回は少し更新が遅れますが……頑張って執筆していきますので、
これからもよろしくお願いします!

誤字修正しました。(16・07・01)
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