エンジュの秋風と中国に潜む黒き風   作:シセン

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当小説の悪役(ムコニャポジ)が登場します!


第3話 ゲットと出会いと再会と

 

中国に来て早々に誘拐事件に巻き込まれた翌日……ソウマはレイウォンに連れられ、

少林寺を見て回っていた所、ひょんな事からポケモンバトルのトーナメントに参加する。

優勝商品が何かを知らずにソウマは優勝を果たし、納得が行かないトレーナーに襲われるも、

レイウォンの後輩のダーシャンとチーユンに助けられ、目標とする人が同じである事から、

何時か手合わせしたいと話して仲良くなる。

すると、少林寺にたまに現れるという色違いのヒトツキがソウマにバトルを挑みたがり、

ゾロアからそれを聞いたソウマは、受けて立つ事にするのであった。

 

 

・・少林寺 バトルフィールド

ソウマのバトルに興味を持ったヒトツキとバトルする事となり、

バトルフィールドでゾロアとヒトツキのバトルが始まろうとしていた。

「(ヒトツキの特性は『ノーガード』……油断はできないな。)行くよ、ゾロア!」

『(オウ!)』

ヒトツキの特性『ノーガード』……自分の攻撃が相手に必ず命中する代償として、

相手の攻撃も自分に確実に命中してしまう諸刃の剣と言える特性……

つまり、防御系の技をほとんど持たないゾロアがいかに攻撃を防ぐかが勝負の鍵となる。

『ツキッ!』

ヒトツキが先制攻撃と言わんばかりに、自身をゾロア目掛けて振り下ろした。

「あなをほる!」

『アンッ!』

攻撃が届く前に【あなをほる】で地面に潜るゾロア。

地面に潜っている間はヒトツキの攻撃は当たらなので、現時点では唯一の防御手段であった。

『ツキッ……ツ~キ~ツ~キ~……』

何やら踊り出すヒトツキ……どうやら、【つるぎのまい】のつもりの様である。

『アァッ!』

『ツキッ!?』

ゾロアが地面から飛び出し、ヒトツキに攻撃が命中するが……

『ツ~キィッ!』

『アンッ!?』

ヒトツキは布で持っていた鞘に自身を差すと、布を振るってゾロアを薙ぎ払った。

「ゾロア!」

『(痛かったけど、まだ平気だぞ!)』

「OK、よく耐えた!(今のは……おそらくかわらわりだな。

つるぎのまいで攻撃力も上がってるし……。)ゾロア、あくのはどう!」

『(オウッ!)ゾォアァァァァッ!』

『ツキィッ!』

ゾロアが【あくのはどう】を放つと、ヒトツキの周囲をバリアの様なものが包み込んだ。

「まもるまで覚えてるの!?……って、『ノーガード』だから、かな。」

いくら『ノーガード』故に仕方ないとはいえ、受けたくない攻撃もあるだろう……

そういった点では、【まもる】を覚えたヒトツキの選択は正しいと言えた。

「けど、まもるは連発すると失敗し易くなる!ゾロア、だましうちだ!」

『(オウ!)アァアウッ!』

『ツキッ!?』

ゾロアはジャンプしてヒトツキの頭上を飛び越え、後ろ足で【だましうち】を放った。

『ツキ……ツゥキ~~……』

だましうちで地面に激突するもすぐに浮かび上がり、鞘から抜けたかと思うと、

何やら自身の刀身にエネルギーを集め、そのまま自身を振り下ろした。

『……ツキッ!?』

ところが途中で刀身の光が消え、ヒトツキも驚きからか動きを止めてしまい……

「(動きが止まった?)ゾロア、あくのはどう!」

『ゾォアァァァァッ!?』

『ツキィィィッ!?』

その隙を逃さず、ソウマはゾロアに【あくのはどう】を指示し、

ゾロアの放った【あくのはどう】は、そのままヒトツキに直撃した。

『ツキィ~~……』

【あくのはどう】による爆煙が晴れると、ヒトツキが目を回して倒れていた。

『(オシッ、勝ったぞ!)』

「うん、良い調子だったね。この調子でカナンリーグも頑張ろう。」

『(ウシシシッ、オウ!)』

ソウマに撫でられ、照れながら言うゾロア。

「それにしても、今の攻撃は一体……。」

「せいなるつるぎを使おうとしたんだ。」

ソウマの疑問に答えたのは、ダーシャンであった。

「あのヒトツキは、他のヒトツキよりも早くせいなるつるぎを覚えた様だが、

どうやらまだ実力が追い付いていない様でな。さっきの様に不発になる事が多いらしい。」

「じゃあ、少林寺に来るのは、せいなるつるぎをマスターするためなのかな?」

「単純に悪戯をしにとも思うが、それもあるかもしれないな。」

『……ツキ』

気絶していたヒトツキが目を覚まし、再び浮かび上がった。

「大丈夫?」

『ツキ……』

負けた上に【せいなるつるぎ】を失敗した事で、ズ~ンと落ち込んでしまうヒトツキ。

「……ねぇ、ヒトツキ。僕、これから中国を旅するんだけど、良かったら一緒に行かない?」

『ツキッ?』

「少林寺は修行の場としてうってつけだと思うけど、世の中はもっと広いよ?

色んな場所に行って色々なものを見て、見聞を広めてみるとも面白いと思うんだ。

もし、旅先で自分が残りたい場所を見つけたら、君を自由にするって約束する。どう?」

『……ツキッ!』

ソウマの提案に乗ると言いたげに頷く様に体を揺らすヒトツキ。

「決まりだね。それじゃ……。」

ソウマはポケットからモンスターボールを取り出した。

「今日から君も僕等の仲間だ。」

『ツキィッ!』

モンスターボールに自分から触ってヒトツキがボールの中に吸い込まれると、

軽く数回揺れた後に点滅が終了し、ゲットできた事を証明した。

「ヒトツキ、頂きましたっと。カナンリーグに挑戦し始めて、早速新しい仲間ができた。」

「中々幸先良いじゃねぇか。」

「はい!」

「ところで、最初のジムはもう決まったのか?」

「まだなんだ。ダーシャン、何処かオススメのジムってある?」

「そうだな……実力を試したいのなら、洛陽市にあるラクヨウジムだな。

そこのジムリーダーは、中国のジムリーダーの中でもかなり上位の実力者だ。

今より強くなる事を望んでるなら、一度挑戦して損は無いはずだ。」

「ラクヨウジムか……。」

「ただ、財閥の総帥でもあって多忙な人だから、ジム戦ができるかは行ってみないとな。」

「駄目だったら、また機会を見て出直すさ。……よし、最初の目的地は洛陽で決まりだ。」

ダーシャンの薦めを聞き、ソウマは最初の目的地を洛陽に決めた。

・・あの、ちょっと良いでしょうか?・・

すると、少林寺のトレーナーらしき少年がやってきた。

「どうかしたか?」

「今、寺の入り口にお客が見えてるんです。……ソウマという少年が来てるはずだと。」

「僕に?ここに来てる事知ってる人、他にいたかなぁ……。」

「とりあえず、行ってみたらどうだ?俺もついてってやるよ。」

心当たりが思い浮かばずに首を傾げるソウマだが、とりあえず入り口に向かう事にした。

 

・・少林寺 入り口

入り口で待っていたのは、スーツ姿の銀髪の女性であった。

「……君が先日、誘拐犯から女の子を助け出した日本人のトレーナーか?」

「えっ?えぇ、まぁ……あなたは?」

「私はカユウ。君が助けた子供の父親『チュウエイ』様の下で働いている者だ。」

「子供?えぇっと……どっちの?」

ソウマは誘拐事件で助けたユエとエイの事を思い出しつつ、どちらの子の事か質問した。

「ユエ様……銀髪で大人しそうな女の子の方だ。」

「なんだ。昨日お前が助けた子供って、チュウエイのおっさんとこの娘だったのか?」

「あれ?レイウォンさん、知ってるんですか?」

「知ってるも何も、そのチュウエイっておっさんが、ラクヨウジムのジムリーダーだ。」

「へぇ~……そうだったんだ。」

思いも寄らない繋がりに驚くソウマであった。

「それで、僕に何か御用ですか?」

「あぁ。チュウエイ様が娘を助けてくれた礼を直接言いたいと仰ってな。

そちらの都合が良ければ、私と一緒に洛陽に来て欲しい。」

「はぁ、構いませんけど……少し待ってもらっても良いですか?」

「構わない。では、麓で待っている。」

そう言って、カユウは少林寺を後にした。

「思ったより早くできそうだね、チュウエイさんって人とのジム戦。」

「不思議な縁もあったものだな。」

「本当に……っと、そうと決まったら荷物持ってこないと。」

ソウマは少林寺の中へ入り、先程の部屋に置いてきた荷物を持って戻ってきた。

「じゃあレイウォンさん、ダーシャン、チーユン、僕はこれで。」

「オウ、頑張ってきなよ。」

「次は何処かの大会で会いたいものだな。」

「その時は、全力で戦おう。」

「うん、勿論!」

こうしてソウマはレイウォン達に別れを告げ、カユウの車で洛陽に向かうのであった。

 

・・数分後

「……そういえば、レイウォンさん。」

「ん?」

「ソウマの奴、トーナメントの賞品のキーストーンを持って行きませんでしたけど……。」

「あ゛……忘れてた。ってかアイツ、賞品がキーストーンって事すら知らねぇんじゃねぇか?」

トーナメントでソウマと戦った面々も、ソウマをただの数合わせとしか思ってなかったため、

賞品について話していなかっただろうから、キーストーンの事など知る由も無かった。

「どうしますか?」

「う~ん……なら、後で俺がソウマに電話しとくわ。」

「お願いします。」

とりあえず、その件はレイウォンが預かる事となったのであった。

 

・・洛陽 董家の屋敷

上記でも述べたが、チュウエイは中国有数の財閥『董グループ』の総帥である。

若い頃はポケモトレーナーとして、中国全土やアジア各地を旅して名を轟かせていたのだが、

家業を継がなくてはいけなかったためにトレーナー業を引退しなくてはならなくなった。

総帥の座についてしばらく経って余裕ができた頃、ポケモンバトルの熱さを捨てられず、

ちょうど自分が最も得意とするあくタイプのジムリーダーが空席となっていたので、

財閥の総帥とジムリーダーの二足の草鞋を履く事にしたのであった。

そんな人物の屋敷なものだから、一般人からすれば尋常とは思えない規模となっていた。

「うわぁ~~……。」

その一般人の1人であるソウマも、屋敷の大きさと庭の広さにポカンとなるのであった。

「……ここまでの広さって、必要なんですか?」

「まぁ、驚くのも無理はないが、チュウエイ様達のポケモンを放してあるし、

君の様に客人を呼ぶ事もあるからな。これくらいは必要なのだ。」

屋敷の門から屋敷に続く道を歩きながら、カユウがソウマにそう説明した。

・・おっ、戻ったか、カユウ。・・

すると、屋敷の入り口からスーツ姿の銀髪の男性と緑色の髪の男性が出てきた。

「ただいま戻りました、チュウエイ様。」

「悪かったな。わざわざ少林寺の方まで足を運ばせちまって。」

「いえ、問題ありません。」

「そっか……お前が家の子達を助けてくれたトレーナーか?」

「あっ、はい、そうです。」

「わざわざ来てもらってすまなかったな。俺がここの家主のチュウエイだ。

んで、こっちが俺の秘書で、お前が助けてくれたもう1人の子の父親の『ブンワ』だ。」

「ユエ様と娘を救ってくれた事と部下達に救急車の手配を頼んでくれた事、深く感謝する。」

総帥という割には砕けた口調で話すチュウエイに対し、ブンワは真面目な口調であった。

「そんな、救急車の手配はジュンサーさんが……。」

「君が話してくれたから、早急に手当てが施されたんだ。礼は言わせてくれ。」

「おい、ブン。そんな堅苦しい口調で言わなくても良いだろ?」

「……貴様が総帥のくせにそんな調子だからだ。」

「ったく、堅物だなぁ……まぁ、良いや。とりあえず、中に入ってくれ。

カユウ、お前はユエ達を呼んできてくれるか?庭の東屋の方にいるはずだからよ。」

「分かりました。」

と、チュウエイに連れられてソウマは屋敷へと入っていった。

 

・・屋敷 広間

広間に案内され、それぞれソファーに座って話し始めるソウマ。

チュウエイとブンワは幼馴染みらしく、ブンワの家族もこの家に住んでいる様であり、

ある程度話が進んだ所で、ソウマはチュウエイにジム戦をお願いしたのだが……

「悪いな。今ちょうど忙しい時期に入ってて、ジム戦の方に手が回らなくてな。

ブン、どれくらいで予定がしばらく空くか分かるか?」

タブレット端末でチュウエイのスケジュールを確認するブンワ。

「そうだな……ポケモン達の調整も含むとなると……早くても3、4ヵ月後といった所か。」

「3、4ヶ月……分かりました。じゃあ、その間に他のジムも色々回ってみます。」

「すまない。ジムを再開してお前さんが来たら、最優先でジム戦できる様にしておく。」

「お願いします。う~ん……となると、近くのジムからグルッと1周するルートか、

一度離れた場所のジムに行って、そこから洛陽まで戻るルートか、どっちが良いかな?」

「なら、一度河北省まで行くのはどうだ?ポケモンロードを使えばそんなに掛からないぜ?」

「ポケモンロード?」

チュウエイの提案に首を傾げるソウマ。

「ポケモン専用の高速道路の事だ。高度経済成長の反動による環境問題対策の一環として、

高速道路の一部がポケモン専用に開放されてるんだよ。到着する時間はポケモン次第だが、

サービスエリアにもポケモンセンターがあるから、寝泊りしつつショートカットできるわけだ。

しかも主に使うのが未成年のポケモントレーナーだから、通行料もタダになってるしな。」

 

中国は現在、急激な高度経済成長の反動で深刻な環境問題を抱えていた。

その一環として一部の高速道路をポケモン専用にして大気汚染を減らす計画が立てられ、

その結果として生まれたのが『ポケモンロード』であった。

 

「コイツがカナンリーグの範囲内の地図だ。洛陽がここ。で、ポケモンロードがここから……

河北省の刑台市まで続いてる。それに河北省以外に向かう分岐ルートもあるから、

何かの理由で行き先を変更したり途中で下りる事もできる。」

「へぇ~……だったら、ポケモンロードにも興味あるし、一度河北省まで行ってみます。」

こうして、ソウマは一度河南省を離れて河北省へ向かうルートを進む事に決めた。

「チュウエイ様。ユエ様達をお連れしました。」

カユウが広間に入ってくると、続いてユエとエイも入ってきた。

「やっ、昨日ぶり♪」

「こ、こんにちは。」

「フンッ……。」

挨拶するソウマに返すユエとそっぽを向くエイ。

「エイ。助けてもらったんだから、ちゃんと挨拶しないか。」

「……どうも。」

父親のブンワに言われ、渋々ソウマに挨拶するエイ。

「すまないね、ソウマ君。うちの娘は少し気難しくてね。」

「いえ、大丈夫です。」

そう話していると、近くにあった時計が6時を告げる鐘を鳴らした。

「ん?もうこんな時間か……話の続きは後にしよう。今日は家に泊まっていけ。」

「えっ?けど、良いんですか?」

「構わねぇさ。それに、今の若い奴の旅の話とかも聞いてみたいからな。」

「じゃあ……お言葉に甘えさせてもらいます。」

「決まりだな……っと、そうだ。折角だから、家のポケモンを見てくか?

ジム戦を先延ばしにしちまった詫びだ。対策の参考にでもしてくれや。」

「は、はぁ……。」

チュウエイに言われるまま、ソウマは広間を後にして庭に出た。

 

董家の屋敷 庭

チュウエイの屋敷の庭園の一角……そこには人工の岩山や川、森が作られており、

そこに様々なポケモン達が伸び伸びとすごしていた。

「わぁ~~……庭なのに、こんな山があるなんて……。」

「俺が専門にしてるあくタイプのポケモンは、荒野とか山とかに住んでた奴が多いからな。

流石に完璧にとはいかないが、元いた環境に近い場所で生活できる様にして、

そういう場所で育ったからこそ身に付いた様々な術に磨きを掛けて欲しいんだよ。」

『ギラァッ!』

すると、従来よりかなり巨漢であるバンギラスがやってきた。

「よぉ、バンギラス。ポケモン達に問題は無いか?」

『ギラ、ギラッ』

チュウエイの質問に答える様にバンギラスが頷く。

「大きいバンギラスですねぇ。」

「だろ?コイツが俺の相棒でな。ここのポケモン達を纏めてくれてる頼りになる奴さ。」

チュウエイの向く先を見ると、確かにバンギラスに色々なポケモン達が近寄っており、

その様子から見ても、頼りになるリーダーである事が理解できた。

「けど、あくタイプじゃないポケモンも結構いますね。」

よく見るとエーフィや色違いのイーブイ、パチリスやフォッコにコイナリなど、

チュウエイが専門としているあくタイプ以外のポケモンも何体が一緒にいた。

「私達のポケモンなんです。」

「ユエ達の?ユエ達もトレーナーなの?」

「いえ。私達は旅をした事が無くて、お父さん達と旅行に行った時にゲットしたんです。」

「へぇ~……。」

「さてと、そろそろ屋敷の方に戻ろうか。」

チュウエイに言われ、ソウマは屋敷へと引き返した。

その後、屋敷なだけあって立派な夕食が出されてお腹も一杯になった後、

再び広間に集まり、ソウマの旅の話をする事となったのであった。

 

・・広間

「……それで、ホウエンリーグに優勝した後、次はどうしようかって考えてた所に、

レイウォンさんの誘いを受けて、カナンリーグに挑戦するためにこの中国に来たんです。」

これまでの旅の話をするソウマ。(ゾロアは既にソウマの膝の上で熟睡している。)

「俺も若い時は色々旅して回ったが、お前くらいの時はまだ中国からは出てなかったな。」

「そうなんですか?……まぁ、確かにちょっと不安があるといえばその通りですけど、

見た事の無い場所やポケモンを見たいって思ったら、やっぱりドキドキしません?」

「ハハハハッ!そうかそうか!ユエ達の恩人ってだけでも好印象持ってはいたが、

夢やそういう未知との出会いってやつを求める元気の良い奴は好きだぜ?」

「ありがとうございます、チュウエイさん。」

「けど、羨ましいです。色々な場所を旅できて……。」

ソウマとチュウエイが話していると、ユエがふとそんな言葉を零した。

「ん?ユエも旅に興味がある?」

「お父さんの昔の旅の話を聞かせてくれたので……旅に出たいとは思ったんですが……。」

「ユエが旅に出るなんて、危ないに決まってるじゃない!」

「へぅ……。」

ユエの旅に反対しているのは、どうやらエイの様である。

「俺は旅に出ても構わないと思ってるんだが、エイが言う事にも一理あってな。

かといってエイが加わっても、女の子だけの旅になるだけで……。」

「OKと踏み出す事ができない……ってわけですね。」

「まぁなぁ……っと、もうこんな時間か。今日はやけに時間が早く感じるな。」

チュウエイが時計を見ると、既に11時を回っていた。

「じゃ、そろそろお開きとするか。」

「そうですね。」

チュウエイの言葉で旅の話を終える事にし、ソウマは客室に案内された。

 

・・客室

案内された客室は、屋敷だけあって掃除や整頓が整えられたホテルの様な一室だった。

『(ベッドもフカフカだぞ。)』

「コラコラ……。」

フカフカのベッドにはしゃぐゾロアを注意するソウマ。

「……ん、あれ?ポケギアに着信?……レイウォンさんからだ。」

着替える途中、ソウマはポケギアにレイウォンからの着信が入っていた事に気付き、

ベッドに座ってレイウォンに連絡を入れた。

「ごめんなさい、レイウォンさん。連絡くれてたのに気付かなくって……。」

『大丈夫だ。お前が少林寺出る時に言い忘れちまった事があっただけだからな。』

「言い忘れてた事?」

『お前、今日家の連中とトーナメントやったろ?あの時の景品を渡し忘れてな。』

「景品?あのトーナメント、優勝賞品か何かでもあったんですか?」

『やっぱ聞いてなかったか。あのトーナメントな、優勝賞品がキーストーンだったんだよ。』

「へぇ~、キーストー……って、はいぃっ!?」

レイウォンの言葉を聞いて返そうとした途端、優勝賞品の内容を聞いて驚くソウマ。

「キーストーンって、メガシンカに使うあのキーストーンですか!?」

『あぁ。前に俺が参加した大会の景品だったんだが、俺はもう持ってるからな。

ダーシャン達も持ってるし、お前が今日戦った連中が譲り受けたいと志願したわけだが、

キーストーンは1つだけ……んで、トーナメントで優勝した奴がって流れになったんだ。』

「そういう事だったんですか……けど、部外者の僕が貰っても良いんですか?」

『その辺は問題無い。少林寺ではまだ半人前の連中だが、お前は真正面から戦って勝った。

自分達の力を過信し、お前をただの数合わせとしか見ていなかったのは奴等の落ち度だ。

んで本題だが、キーストーンは腕輪とか指輪とかアクセサリーに埋めて持ち歩くんだが、

なんかリクエストがあれば聞こうと思ってな。』

「アクセサリーか……だったら、グローブが良いです。指無しのやつ。」

『指無しのグローブだな。右と左、どっちに付ける?』

「なら、左の方で。」

『分かった。良いやつ選んで、キーストーンを付けれる様に手配してやる。

出来上がりそうになったら連絡すっから、そん時にどこに送るか教えてくれな。』

「分かりました。ちなみに、チュウエイさんが仕事で忙しいって事なんで、

明日か明後日には、ポケモンロードで河北省の方に向かいますから。」

『あぁ~、そいつはタイミング悪かったな。まぁ、予想外のアクシデントも旅の醍醐味だ。

そういうのも含めて、旅を楽しみな。んじゃ、また連絡する。』

「えぇ、お休みなさい。」

そう言ってポケギアを切り、ソウマはそのままベッドに入って眠るのであった。

 

・・翌日

一夜明け、ようやく太陽が昇り始めた頃……

「「「「……。」」」」

董家の屋敷の塀をよじ登って屋敷に忍び込む複数の影……

庭に侵入した影は、忍び足で庭を進んでいき、ポケモン達のねぐらへと迫っていく。

『(スピ~~……)』

そして、眠っているフォッコやイーブイ達に影が手を伸ばした……と、その時だった。

『『グルルル……』』

「!?」

既に起きていたバンギラスやグラエナ、マニューラなどが囲んでおり……

『ギャアァァァッッ!!』

「キィヤァァァァ~~ッ!!?」

『ジリリリリリリッ!!』

バンギラスの咆哮と影が悲鳴を上げたのと同時に、屋敷内に警報ベルが鳴り響いた。

 

・・董家の屋敷

『ジリリリリリリッ!!』

「ウワッ!?」

『アァッ!?(な、何だぞ!?)』

少し早めに目が覚め、ちょうど着替え終えていたソウマが警報ベルの音に驚き、

まだベッドで寝ていたゾロアも警報ベルに驚いて飛び起きた。

部屋の外に出ると、屋敷の使用人達が慌てて走っており……

「あの、この警報なんですか?」

「侵入者です!誰かが屋敷内に無断で入り込んですよ!」

「オイ!どうやら侵入者は庭のポケモン達を狙ったみたいだぞ!」

「何だって!?クソッ、ポケモン泥棒か!」

ソウマの質問に答えた使用人とは別の使用人が侵入者の居場所を知らせに来て、

それを聞いた使用人は慌てて玄関に向かって走り出した。

「なんか凄い大事そう……ゾロア、僕達も行こう!」

『(分かったぞ!)』

ゾロアを自分の肩に乗せると、ソウマも使用人達の後を追い掛けた。

 

・・董家の屋敷 玄関前

「おっ、ソウマも来たか。」

ソウマが玄関まで来ると、丁度チュウエイやブンワ、更にユエやエイもやって来た。

チュウエイ達は既に服を着替えていたが、ユエ達はパジャマに上着を羽織った形であった。

「チュウエイさん!ポケモン泥棒って……。」

「あぁ~……ほら、俺って一応財閥の頭だろ?んで、ジムリーダーもやってるもんだから、

珍しいもんとかポケモン持ってるかもとか思われて、たまに泥棒が入るんだよ。」

「それじゃあ、のんびり話してる場合じゃ……。」

「大丈夫だって。多分問題無いだろうさ。」

「えっ?」

そう言いながら、チュウエイが入り口を開けると……

そこにはグラエナやマニューラ、ヘルガーと言ったポケモンが誰かを追い掛ける光景が……

「大抵、警察が来る前に俺のポケモン達が大体しばいちまってるからさ。」

「……納得です。」

流石あくタイプのポケモンなだけあり、敵には容赦が無い様である。

「……あっ……ぶへぇっ!?」

すると、先頭を走っていた侵入者が躓いて、そのままヘッドスライディングでずっこけ……

「ちょっ!?何急に止まってんねぇぇんっ!?」

「ぶっ!?」

その後ろから来た他の侵入者と先頭の侵入者に乗っかる様に転倒し……

「「ぎゃあぁぁぁぁっ!?」」

その上をグラエナ達が踏み潰しながら通過したのであった。

「……あらまぁ~……お2人とも、大丈夫ですかぁ?」

何故かグラエナ達に追い越されていたもう1人の侵入者が、潰された2人に呼び掛けた。

「大丈夫やないわぁ!!」

「もぉ~!何なの~もう!!」

日の光が董家の屋敷の庭を照らし、侵入者達の姿がようやくハッキリ見える様になった。

侵入者は黒っぽい服を着た3人組で、男性が1人と女性が2人……

グラエナ達に潰されたのは男性と女性の内の1人であった。

男性は短い茶髪でベレー帽を被り、更にマントを羽織っており、

男性と共に潰された女性は赤い髪を左右で三つ編みにしてゴーグルを額に付けており、

グラエナ達に潰されなかった女性は薄紫色のロングヘアーで眼鏡を掛けていた。

「ほぉ……グラエナ達に潰されても起き上がれるとは、随分頑丈な連中だな。」

「ちょっと!人の事を追い掛け回すなんて、一体どういう育て方してんのよ!!」

悪いのは自分達のくせに、逆ギレしてチュウエイに文句を言う男性。

顔は割とイケメンなのだが……口調からしてオカマの様であった。

「こいつ等は家に害なす連中しか襲わねぇ、お前等が不法侵入したのが悪いんだろうが。

しょっ引かれるのとこいつ等にしばき倒されるのと、どっちが良い?選ばせてやるぜ?」

「キィ~~~!そう言われてどっちか選ぶわけないじゃない!

ロケット団中国支部長、ルードヴィヒ=ブレスト=フォン=マインシュタイン=

コレクション伯爵様を舐めんじゃないわよ!」

「まぁ、中国支部ゆうたかて、特に拠点があるわけやないし、支部長も自称やけどな。」

「私達ついこの間中国に着いたばかりですものね。」

「バッチ!グーコ!余計な事言うんじゃないわよ!!」

「(……ロケット団って、旅の途中で噂に聞いた犯罪グループだけど……

こんなコント集団みたいな連中まで雇うほど人手不足なのかな?)」

コレクション達のやり取りを見て、ロケット団について間違った疑問を抱くソウマであった。

 

形はどうあれ、ロケット団と遭遇したソウマ。

果たして、彼等の登場がこの物語にどう影響を与えていくのか……

それはまた、次以降のお話である。

 

 

……To be Continued!

 

 




ポケモンロードについては、後日用語集を個別に作りますので、
今回のお話で説明してはいますが、詳細はそちらで……
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