インフィニット・ストラトス~前世の記憶を持つ者~(完結)   作:ダーク・シリウス

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プロロ~グ

・・・・・ここは。

 

「ほら、今日からあなたはお姉さんよ」

 

「・・・・・」

 

「それも三つ子の男の子の姉だ。面倒を見るのが大変だろうがしっかりお姉ちゃんとして見守るんだぞ」

 

お前らは誰だ・・・・・。

 

「あなた、名前は考えてくれた?」

 

「当然だろう。長男は一夏、次男は秋十、三男は」

 

「私が決めたい。いい?」

 

「あら、三男はきっと百春って感じに決まりそうなのに?」

 

「流石は母さんだ。よく見破ってくれた。でも、いいだろう。名前を付けたいなら好きにしていいぞ」

 

「・・・・・一誠」

 

「一誠?」

 

「・・・・・純真無垢で一途、嘘を吐かない誠の心を持って強い男に育って欲しいと思う。だから、一誠」

 

「「・・・・・とてもまだ幼い年頃の女の子とは思えない名前の由縁を考える娘だことで」」

 

ここは、どこだ・・・・・お前らは・・・・・誰なんだ・・・・・っ

 

困惑する赤子の声は、誰にも届くことはなかった。

 

 

 

―――数ヵ月後。

 

「た、立った・・・・・っ!?」

 

一人の赤子が壁に寄り掛かりながらゆっくりと二本の足で確りと立ち上がる―――かと思いきや姿勢が崩れて床にゴロンと倒れた。

 

「・・・・・そ、そうよね・・・・・まだ生まれて数ヵ月もしないのに立つ訳がないわ」

 

しかしその一時間後、母親の後ろで覚束ない足取りで二足歩行をしてみせたのだった。

 

―――一年後。

 

「・・・・・」

 

「あはは、まだまだお前には早過ぎるぞ」

 

床に広げられている雑誌を興味津々のように食い入る感じで凝視する赤子を見て苦笑いする父親。

 

「・・・・・ろりこん、しすこん、ぶらこん」

 

「ちょっと待てぇいッ!?」

 

生まれて初めての第一声がそれでいいのかっ!?色々な意味で驚愕して雑誌から赤子を遠ざける父親に純粋無垢な瞳と共に言葉が向けられる。因みに赤子が見ていた雑誌は―――エロい聖書だったりする。

 

「おやばか」

 

「・・・・・何だろう。この複雑極まりない気持ちは」

 

―――数年後。

 

三人の兄弟は小学校に進学を果たしていたその最中、両親は突然蒸発する。そして世界を震撼させる大事件が起きて熱がまだ冷めない中で時間が過ぎた頃。

 

「・・・・・嬉しいぞ一誠」

 

「・・・・・?」

 

「お前はその類の天賦の才もあるようだな」

 

一番年上の姉が口元を緩ませ綻ぶ。一誠と呼ばれた子供の前には三人の男女の子供が疲弊しきって全身で息をしていたのに対し、一誠は疲れを微塵も感じさせないまま立っていた。場所はとある道場の稽古場でもある。

 

「お前が大人になる頃、私と勝負できるぐらいにまで成長しているだろう。毎日稽古を欠かさず、真面目にすればいつか必ずな」

 

「そうなんだ。じゃあ、ちーねーちゃんに勝てるぐらい頑張って強くなるよ。だから早速勝負だ」

 

両手で木刀を構え張り切る一誠と対象的に子供の遊びを付き合う感じで、片手で木刀を持つ姉。

 

「いいだろう。相手になってやるぞ一誠。勝ったらご褒美をあげるからな」

 

「ご褒美?じゃあ・・・・・ちーねーちゃんに勝ったら俺と結婚を前提に付き合って下さい」

 

小学生からの告白に姉は満更でもなさそうに小さく笑みを浮かべて言い放つ。

 

「・・・・・ふっ、私に勝てたら考えてもいいぞ」

 

「よーし、約束だぞちーねーちゃんっ!」

 

「だが、今日は一本勝負。この後お前は仕事があるのだからな。疲れて仕事を疎かにしてはいけない」

 

「うん、分かってるよ。いっぱいお仕事をしてちーねーちゃんの苦労を減らすんだ」

 

「・・・・・ありがとう一誠。(天才子役として働くお前の年収は私より遥かに稼いでいるから物凄く助かる半面、小学生の弟に養われている感じがして複雑極まりないのだがな)」

 

一誠は現在、天才子役としてドラマにデビューしているのだった。その年収額は姉が月給である給料の百倍以上。姉としての威厳がなくなりそうで密かに危機感を覚えていたのは本人の胸の内にしか分からない。

 

「ああ、そうだ一誠」

 

「ん?」

 

「―――知らない綺麗なお姉さんの誘惑に負けては許さんぞ」

 

そして、ブラコンも含めてだ。

 

 

 

「・・・・・お前、どうして強い」

 

とある日、小学生だと言うのに凛とした態度で少女は訊ねた少年の強さを気になった。

同い年で同級生の少年は他にも二人いるが、この少年は明らかに別格だった。剣道を初めて一年が過ぎた。その一年で大人と張り合える実力を身に付け始めている。もはや同年代の子供の自分では歯牙にも掛けられない。

 

「・・・・・わかんない」

 

「わからないだと?」

 

「体が勝手に動くし、相手の動きが遅く見えるんだよ。だから相手の遅い動きを見て先に攻撃したり防いだりしているんだ。だけど、どうしてそんなことができるのか俺も不思議でいるんだよ」

 

「・・・・・」

 

自分でも説明ができない強さの理由。少女は胡散臭そうに怪訝な面持で少年を見つめる。

 

「俺よりも篠ノ之ちゃんだって強い方だと思うけど?」

 

「百戦百敗の私に情けは無用だっ」

 

「あ、気にしてるんだ。・・・・・じゃあ、これで機嫌を直してよ」

 

鞄から紙に包まれた箱を取り出す少年。

 

「まだ誕生日は先だけど。はい、誕生日プレゼント」

 

「・・・・・本当に早過ぎる誕生日プレゼントだな」

 

「篠ノ之ちゃんが女の子らしくないから『男女』って他の男達から馬鹿にされてるんじゃん。そんなの許せないから可愛らしい筱ノ之ちゃんだって分かればもう馬鹿にされずに済むだろうと思って」

 

「私がその程度で気にしていると思っているのか」

 

「思っていなくても女の子なのに男だみたいだって言われるのは嫌でしょ?」

 

半ば強引に押し付けられるプレゼントを受け取る少女は「開けていいよ」と了承を貰ってしまったので仕方なしと思いのまま箱を開けることにした。中身を見ると―――。

 

「・・・・・これは」

 

箱の中身は金色のチェーンに結ばれている楕円形の真紅の宝石、ネックレスが収まっていた。赤い輝きを放つ宝石に魅入られたようで放心気味の少女の手の中の箱からネックレスを取り出す少年。

 

「これ、腕にも巻き付けれるから学校に付けて行っても問題ないよ」

 

ネックレスを少女の首に結び始める少年。

 

「ん、似合っているよ篠ノ之ちゃん。前にしていたリボンもすれば可愛いかもな」

 

結び終え、首飾りを付けたことで満足そうに少女を一瞥して少年は鞄を持ち始める。

 

「それじゃ、帰るよ。またな筱ノ之ちゃん」

 

「―――だ」

 

「うん?」

 

「私の名前は箒だ。いい加減、覚えろ。大体、この道場は父も母も姉も篠ノ之なのだから、紛らわしいだろう。次からは名前で呼べ。いいな」

 

「わかった。じゃあ、俺の事は一誠な」

 

「な、なに?」

 

「俺の名前は一誠だよ。織斑は三人もいるから、紛らわしいだろう。俺のことも一誠って呼べよな」

 

「う・・・・・む」

 

「じゃあ、また明日な箒。明日も試合して負かしたら101戦101敗だ」

 

「な、舐めるなっ!明日こそは私が勝つ!」

 

「あ、言ったなぁ?じゃあ、明日は101戦目だから、箒が負けたら俺の言うことを何でも従ってもらうぞ」

 

「望むところだ。逆にお前を負かしたら私の言うことを聞いてもらうぞ!」

 

翌日―――。勝敗の結果は少年の勝ちで、少女は少年の言う通りに従う羽目になったのだが・・・・・。

 

「なんだ、これは・・・・・」

 

「パジャマだけど」

 

パジャマなのだが、頭から足まで覆う着ぐるみのようなパジャマだ。猫の顔のフード付きで手足は猫そのもの、尻尾まで付けられていたパジャマを少女は着る羽目になってしまったのである。

 

「箒ちゃんかわいー!いっくん、ナイスッ!」

 

「く、ふふ・・・・・っ。一誠・・・・・お前という奴は・・・・・・くくくっ」

 

二人の姉も少女のパジャマ姿に笑みを浮かべる始末だった。そんな姉達を他所に少年は何でも従わせる本当の意図を口にした。それは少女にとって羞恥でしかない命令だった。

 

「大きくなるまでそれを着て寝ること!」

 

「な、なんだとぉおおおおおおおおおおおおっ!?」

 

少年が生まれ落ちて数年後。少年、織斑一誠の学校生活は静寂という概念すら嫌われているかのように毎日騒がしく、天才子役として何本もドラマに出演するだけじゃなく。

 

「うーん、美味しいねーこのデザート!味の違うクリームが何層もあって食べる人の舌や気持ちを飽きさせない配慮と楽しませる遊び心が詰まってるよ。これ、家族やカップルの人達と一緒に食べたら美味しさと楽しさについほっぺたが落ちちゃうほどのデザートだね!」

 

食のリポーターとしても大人顔負けの活躍をしていた。世間的にも知名度が高い一誠が食べたその店は大繁盛するので別名「歩く座敷童子」と呼ばれることもある。

 

が、逆に授業を受ける際の態度が物凄く悪かった。授業中の居眠りは勿論、出されたテストの問題をそのまま名前だけ書いて教師に返すという体たらくさ。故にこれは教師も姉も頭を抱える思いなのだが・・・・・。

 

「ちーちゃん、いっくんが呼んでいる本って・・・・・」

 

「・・・・・気にするな。気にしたら負けだ」

 

中学校の教科書を開いて小学生が勉強している光景を見れば一誠の担任は卒倒するだろう。一誠はできる子でありながらでき過ぎる子だった。

 

だからこそなのだろう。必然的、当然とも言えるのか一誠は人気と共に人気過ぎる一誠に反感を買う生徒達がいてもおかしくなかった。―――それは直ぐ近くにいる身内もそうだった。

 

「おいテメー織斑。テレビに出ているから女に人気があるからって調子に乗るんじゃねーよ」

 

上履きの紛失、机に悪意のある落書き、カッターやハサミで切り刻まれた教科書、机の中に虫の死骸と等々イジメを受けていた。目に見えるイジメに教師達は顔を青褪める心境で一誠に対して―――イジメをなかったことにしてほしいという大人らしい処置法をして、一誠の一言で世間から叩かれるのを恐れる教師達の計らいで隠蔽工作に精を出す始末だが、子供同士の言い合いは子供の喧嘩として片付ける。例え、その状況の光景を目の当たりにしても見て見ぬ振りをする教師達大人だった。故に姉も一誠の身に起きていることなど露ほども知らない。

 

「別に調子なんて乗ってないし。それに人気になりたいならお前らも人気になれるようなことをすればいいじゃん」

 

「うるせっ!俺達に口答えすんじゃねーよ!」

 

「テメーは黙って俺達の言うことを聞けばいいんだよ!」

 

「まずは金だな。金を持ってこいよ」

 

人気のない学校の裏にまで連れられて十数人の上級生や同級生達に囲まれてもつまらなさそうな態度をする。

 

「何で金なの?家族からお小遣い貰ってないの?」

 

「お前、結構金を稼いでいるだろう。知ってるぜ、最近の子役の仕事は儲かっているって」

 

「・・・・・それは俺自身じゃなくて家族の為に働いて貰っている金だ。それにお金の管理は俺の姉ちゃんがしているから持ってくることは無理だよ」

 

「無理が何だろうが、絶対に持ってこいよ。さもなけりゃ」

 

上級生の一人がポケットから折り畳み式の刃物を取り出して一誠の頬に突き付けた。

 

「お前の顔にコレが突き刺さるぜ?顔に傷が付いたら仕事もできねぇーだろ?なぁおい」

 

「・・・・・」

 

刃物で恐喝。流石にそこまでは、と他の男子生徒達の間から動揺と緊張が走った。鈍い光が発する刃物を見ても一誠はポケットの中から小型の機械を取り出した。

 

「おい、何だよそれ」

 

「防犯ブザー」

 

防犯ブザーと言えば、身の危険性を覚えた際に使うけたたましい音を響かせ、今いる自分の居場所を知らしめる為の携帯用の装置。これを持たされている理由は一誠の身の危険性を減らす為のささやかな処置なのだろう。実際に身の危険を覚える状況下に陥っているので使用する環境は全て整っている。

 

「こ、この野郎っ!?」

 

押した瞬間に五月蠅くなるだろう装置に焦る上級生が恐怖を植え付けんと刃物を振るった。だが、剣道だけでなく、姉から体術を習っている一誠からすれば全てが遅く見える。振るう上級生の姿勢や刃物を振る腕の動きと速度、それ等を冷静に把握して少ない動きだけでかわし続ける。

 

「このっ、ちょこまかとっ・・・・・!お前らも手伝えよ!」

 

数人の男子達が一斉に詰め寄る中、一誠は一人の男子に背を向けたと思ったら・・・・・思いっきり後ろへ跳躍する一誠の鞄が男子の体とぶつかって、仰け反る男子を軸にしてひっくり返り、そのまま囲む男子達の外側へ脱出することを成功した。

 

「帰る」

 

つまらなさそうに一言漏らす一誠の姿に上級生達は過剰な焦燥感を抱く。刃物まで取り出して恐喝したのだ。今日の出来事を誰かに伝えればすぐに学校や親の耳に届いてしまう。その後の自分はどうなる?どうしようもない不安感と焦り、恐れを抱き別の上級生が口を開いた。

 

「あいつを捕まえろっ!親にバレたくなかったらなっ!」

 

一誠の同級生達は我に返って、何かに弾かれたかのように行動を開始した。上級生も交じって走って追いかける。裏から表へ躍り出て直ぐに一誠の姿を捉えた。流石に身長の高さと相まって一回りも二回りも長い足の上級生の全力の走りには敵わず、

 

「おらぁっ!捕まえたぞこの野郎がっ!」

 

鞄や肩など掴まれ、捕まってしまった。

 

「俺達から逃げようなんて良い度胸しているじゃねぇか」

 

「その体に切り刻んで逆らえないようにしてやるっ!」

 

顔はダメだ。目立ってしまう。なら目立たない肩や太股、腹など傷つけてもバレやしない。

頭の中でそう決めこんだ上級生は悪意に満ちた笑みを浮かべて、地面に押さえ付けられている一誠へ刃物を突き付けた。

 

「お前達、私の弟に随分と世話をしてくれたようだな」

 

感情が籠っておらず、凛とした声が聞こえた。上級生達は恐る恐ると声がした方へ振り向けば・・・・・。

 

「ちーちゃーん。適当に連れて来たよー」

 

明らかに自分達より年が上な女性が一人、そしてもう一人の女性が脇で教師を一人抱えて現れた。その教師は押さえ付けられている一誠と、押さえ付けている男子達を見て真っ青を通り越して白くなった。明らかにこれはイジメの度合いが超えている。その上、刃物を握っている生徒がいるではないか。しかも、連れて来られた教師は―――校長先生だった。

 

「さて・・・・・先生。これはどういうことですか?明らかに私の弟は刃物を持った小学生に殺され掛けられているように見えます」

 

「そ、それは・・・・・っ!?」

 

「いえ、最近私の弟の私物に気になってはいたんですよ。使っていた教科書やノートが新品に変わっていて、筆箱も鉛筆も消しゴムと言った小さな道具も不自然に真新しく別の物に替わっていました。特に私が前にあげた筆箱が別の筆箱を使うようになった一誠に疑問を抱いたほどです」

 

その理由は学校で起きているイジメの隠蔽工作をしていた証でもあった。大人の対応力に一誠は黙っていた様子だが、家族が薄らと異様な変化に気付いてしまったようで、姉は視線を校長から男子生徒達に変えだす。

 

「ですが確信しました。私の弟はどうやら集団による暴行、イジメを受けていたようだ。何より刃物を持っている時点で疑う余地もありませんね」

 

「ちーちゃん、警察を呼ぶー?」

 

携帯を片手に持つ女子中学生。警察沙汰になれば当然PTAも黙ってはいない。校長は一誠の姉の前で誠心誠意の土下座をした。

 

「こ、この度は誠に申し訳ございません!今後織斑君にイジメがないよう我々教師が―――」

 

「いえ、大丈夫です」

 

その一言で校長は心から安堵で胸を撫で下ろす気持ちでいたが・・・・・。

 

「これからPTAに報告をして、それからあなたには記者会見をしてもらい、あなたや他の教師の教諭の資格を警察や弁護士にはく奪してもらいますので謝らなくても大丈夫です」

 

直ぐに地獄へ叩きつけられる気分に陥った。

 

「さて、私の弟からどいてもらおうかガキども」

 

「ひっ!?」

 

「ああ、どいたからって家に帰ることは許さないからな。今からお前達の親に今回の事を伝えて、親から厳しく目の前で説教をして貰う。お前達の顔はしっかり覚えているから逃げようなんて考えは捨てるのだな」

 

蛇に睨まれた蛙のごとく、上級生達は泣きそうな顔をして近づく姉に道を開けて押さえている一誠を解放する。

 

「一誠、後でお前も説教だ。姉に心配をかけたんだからな」

 

「・・・・・イジメを受けていると言った時点で心配をさせちゃうんじゃ同じだよ」

 

「違う。お前は一人で抱え込んだことが許さないんだ。お前はもっと他の者に頼ることを覚えろ」

 

そう言う姉だが、子供が学校で頼る相手と言えば・・・・・。

 

「イジメはなかったことにしてくれって新しい物を交換してくれる先生達に頼っても・・・・・」

 

「・・・・・後で詳しく聞かせてもらうからな」

 

一誠を抱き締める姉は痛いほど腕に力を込めて胸に抱き寄せる。

 

「今まで気づかなくてごめんな一誠・・・・・」

 

「ちーねーちゃん・・・・・痛い」

 

「お前は私より大変な思いをしている。だから・・・・・しばらくは私に甘えて欲しい」

 

姉より働き、姉に心配をかけまいとイジメを隠し続けていた一誠の忍耐は凄まじかった。

そんな弟を姉は驚嘆と感嘆、申し訳ないと思いを抱く。

 

 

そして後日―――。人気の天才子役にイジメが発覚。教師や校長達がイジメの隠蔽!とテレビや新聞、雑誌にまでお茶の間に知れ渡り、学校は糾弾され、隠蔽をし続けた校長や教師達は教師としての資格をはく奪。一誠をイジメていた小学生達は後に学校からいなくなり、親諸共住民からの糾弾を逃れるように別の県へ引越しをした。

その上学校側や家族から慰謝料も払われ織斑家の財政は豊かになった。

 

―――♢―――

 

そしてそれから二年が過ぎた時だった。一誠の頭脳はもう高校生レベルを超えて大学生がするような勉強、特に―――。

 

「ロボット作ってみたい」

 

とロボット工学に夢中になっていた。今まで貯めていた貯金を降ろしてでもテレビアニメで見たロボットを自分の手で完成したいという思いから一誠を突き動かす。それから時が過ぎたとある日、

 

「やっほー。いっくん、何をしているのかなー?」

 

家に遊びに来た姉の友人―――箒の姉の筱ノ之束が一誠の部屋に上がり込んできては一心不乱に手を動かしている一誠を興味津々に覗き込みながら訊ねた。

 

「ロボットを作ってるんだー」

 

「ロボット?」

 

一誠の机の周りには工学に関する書物や工具、部品などが散乱して本格的ではないが、それでも小学生が作るロボットにしては出来栄えが良いほど形になっている。そんな一誠の傍には黒くてゴツイ少し大きめなコントローラらしき物もあった。

 

「それ、動くのかな?」

 

「ラジコンからモーターを取ったから動くよ。他にも色んな機械から部品を取っているんだぁ」

 

その残骸らしきものが袋の中にあることを気付く。ガチャガチャと子供の手の中で出来上がっていくロボットは四つのプロペラが組み込まれられていて、どうやら浮遊するロボットらしい。しばらく様子を見ると手を止めた一誠が嬉しそうにロボットを手にして―――外へ出た。

 

「さて、動かすぞー」

 

コントローラに電源を入れ、いざ発進とばかり操作を始めたその直後。ブィイイイインッと五月蠅く鳴り、電気がロボットのプロペラへ電動し物凄い勢いで回転を始め宙に浮きだす。

 

「ふははははっ!できたぁー!」

 

操作する一誠に呼応してロボットも命令通りに動きだす。コントローラに目を向ける束の視界は、画面があってロボットに備え付けられているのか二人を映しているカメラの映像。

 

―――異常な頭脳と技術力を持つ一誠は天才かもしれない。束は新しい玩具を与えられた純粋な子供のように目を輝かせた。

 

「ねね、いっくん。ISに興味ないー?」

 

「―――っ!」

 

『IS』という単語に一誠は顔を輝かせた。そんな表情を見れば誰だって分かってしまう。

 

そんな様子をつまらなさそうに一人の兄が扉の外から見ていたことも気付かず。

 

―――♢―――

 

連れて来られた施設は束の研究所だった。様々な機械に覆われ、その中央には巨大な鉄の塊が鎮座している。

 

「束おーねーちゃん。これがIS?」

 

「そうだよー。これは量産型の方だけどね。私のお仕事はこのISのコアを作ることなんだよ」

 

IS―――。今から数年前に束が研究者や科学者に発表したことがある。それは『現行兵器全てを凌駕する』宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツ。世界中でISの核となるコアを作れるのは筱ノ之束一人だけだ。

 

「いっくんも私みたいに天才のようだから、いっくんがよければ色々とISのこと教えてあげるけどどうかなー?」

 

束の好意を無化にできないが剣道や仕事のこともある。それ等を考慮した上で束に提案を告げて、了承を得た。

 

「いいよいいよ。いっくんの時間まで減らすつもりはないから。ちーちゃん達の為にお仕事を頑張っているいっくんは偉い偉いからねー」

 

慈愛に満ちた目で一誠の頭を撫でる束。天才子役として活躍している他、様々な番組に出演して家族と過ごす時間は多くない。友人がアルバイトをせず、家にいるようになったのも一誠のおかげでもある。

 

「それじゃ、今日からいっくんは束さんの臨時助手として色々と手伝ってもらうからよろしくね」

 

「よろしくお願いします」

 

こうして束は幼い助手を手に入れた。時間が許される限り、コアを製作しつつ零から百まで己の知識を助手の一誠に教えていくのである。

 

 

しかし、突然の別れがやってきた。箒がどこかへ引っ越してしまう辛い別れが迎える前日。

 

「・・・・・今夜だけ、一緒に寝ないか。お前が嫌なら、別にいい」

 

パジャマ姿で一誠がいる部屋にやってきた箒と一緒に夜を過ごすことになった。一誠の提案で向かい合いながら布団の中で寝転がる箒は気恥ずかしそうに俯いたまま会話をする。

 

「寂しいなー。箒がいなくなるなんて」

 

「・・・・・私のことなど、いなくても寂しくはないだろう。お前は他の女子に人気だからな」

 

「それとこれは別だと思うよ?俺は箒だから、箒がいなくなるから寂しいと思うんだ」

 

そう言って箒を抱き締める一誠。対して抱き絞められ、恥ずかしいと身じろぐものの確りと抱き絞められ身動きが―――。

 

「離れていても箒の事は忘れないからな」

 

「い、一誠・・・・・」

 

「だから箒も、できれば俺の事忘れないでほしいな」

 

本当に寂しいのだと伝わり、途端に大人しくなる箒はそのまま一誠の腕の中に収まる。

 

「・・・・・誰が忘れるものか馬鹿者」

 

「ん、ならいいや」

 

それからしばらくお互い無言となるが、起きている気配はする。箒はおずおずと質問をした。

 

「・・・・・お前、好きな者はいるのか?」

 

「好き?ちーねーちゃんとか束おねーちゃんとか箒ちゃんとか好きだけど」

 

「ち、違う・・・・・その、好きだと思う女の子はいないのかと聞いている。と、友達ではなくてだぞ」

 

意味が違うものの、自分の事を好きだと言ってくれて嬉しかったのは内緒である。

 

「うーん・・・・・まだ誰かを好きになることはないかなー。仕事で忙しいし」

 

「そ、そうなのか・・・・・」

 

複雑だが、好きな女子はいないことを喜び、付き合うなんてまだないと言われ残念に思う箒。しかし、一誠の働きで織斑家が安定しているのは箒も何となく理解している。姉の千冬も助かっているだろう。

 

「箒ちゃんはいるの?好きな男が」

 

「―――っ」

 

当然のように聞かれ、耳まで顔が真っ赤に染まる箒は羞恥のあまり思いっきり一誠の腹部に拳を叩きこんだ。

 

「こ、この馬鹿者がっ。い、いるわけがなかろうっ!」

 

「ぐふっ・・・・・だ、だからって・・・・・酷いよ、殴ることないじゃないか」

 

「あっ」

 

背を向け出す一誠に申し訳なさそうに見つめる箒。理由もなく暴力を振るい、理不尽な目に遭うことが一誠が最も嫌うことだとも思い出して。

 

「す、すまない・・・・・つい・・・・・」

 

「・・・・・」

 

返ってくるのは拒絶の意志を伝わらせる背中と雰囲気だった。こうなると一誠はしばらく口を利かなくなるのだ。明日は別の場所へ引っ越す日。悪意がなかったにしろ、一方的な暴力を振るったまま別れるなどしたくもない。箒は一生懸命一誠の機嫌を治す方法を考え、良好な関係を取り戻す一心で行動に出た。

 

「い、一誠・・・・・一生のお願いだからこっちを向いてくれ」

 

「・・・・・?」

 

一生のお願いだと言うからには切羽詰まっている箒に渋々と振り返った直後。目を固く瞑って顔を近づけてくる箒を目の当たりにし、

 

「んっ、んんん・・・・・っ」

 

二人の子供の唇が重なった。重なってしまった―――。この瞬間、二人にとって成長した頃には忘れ難い過去の思い出となるに違いない。

 

翌日、車に乗ってどこかへ引っ越す筱ノ之家を送り向かいする際、一誠と箒の目が合うと、お互い気恥ずかしそうに真っ赤な顔を反らし合い、一言も別れを告げず見送り見送られた。

 

そしてまた数年の年月が過ぎると世界的な大イベント、催しが開催される。

 

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