インフィニット・ストラトス~前世の記憶を持つ者~(完結)   作:ダーク・シリウス

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慟哭&闇

「・・・・・なんだよこれ」

 

野次馬と化している自分の家の前に集まっている近隣の住民達。どうしてこんな状況になっているのか、黒コゲと化して全焼した自分の家がその原因だと悟って目を大きく見開いた。

 

「これが・・・・・君の家?」

 

日本までついてきたり、空港で偶然の再会を果たした一人の女性もまさか、火事で家が無くなっていたとは露にも思っていなかったようで唖然とした表情を浮かべていた。

 

「・・・・・」

 

金の瞳が虚ろとなり、一誠の顔から感情が消え去った。どうして心の拠り所、家族の思い出が詰まった家が焼失しなくちゃならない。

 

何で、なんで、ナンデ・・・・・ッ。

 

「―――誰だ。俺から大切な物を奪った奴は」

 

 

 

「ねぇ、本当にあいつが家に帰っているわけ?」

 

ところ変わって一夏達一行は住宅街の中を歩いていた。向かう先は織斑邸で、一夏と秋十の話では家にいる筈だと言うので家に向かっている最中なのである。

 

「俺達を信用しろよ。今日はお盆だから兄弟で祭りを行く日を忘れてなきゃ家で待っている筈だ」

 

「可能な限り、千冬姉も一緒に祭りへ行った思い出があるしな」

 

「そうそう。金魚掬いをやったら千冬姉、手加減なんて分からないぐらいお椀に金魚を零れるぐらい掬ってみせた時は店の人が変な顔をしてたよなー」

 

「その金魚を調理しようとする一誠の頭もおかしかったよな」

 

「ああ、そういうこともあったあった」

 

「「でも、マジで金魚を食べさせられて美味かったのが物凄く何とも言えなかったな」」

 

あはははー。と懐かしく過去を語り合う兄弟に周りは何とも言えないでいた。

 

「・・・・・あんたら、何て話をしてるのよ」

 

「ふむ、金魚とやらは魚のようだが珍味なのか?」

 

「いや、普通は食べない魚だからね?食用の魚でもないから」

 

「金魚掬いとはなんですの箒さん?」

 

「名前の通り。金魚を薄く張った紙で掬い上げる遊びだ」

 

呆れ、興味津々、苦笑いと反応は様々。一誠の保護をする為に目標が家にいるであろう場所へ赴く一夏達はまるでピクニックに行くかのように雑談を交わし続け、緊張感は感じさせない雰囲気を醸し出す。

 

「今年の一年、今年の専用機持ちの一年共は緊張感ねぇなーおい」

 

「そうっスね」

 

歩く度に胸元が大きく開く服を内側から揺らすFカップを強調するように両手を頭の後ろに組む、ポニーテールならぬ、うなじで束ねた金髪(ホーステール)の長身の少女、三年のダリル・ケイシーに整っているとは言い難い長い髪を、太い三つ編みにして首に巻いているのが特徴の他、体躯は平均よりも小さめでラウラよりもやや小柄かもしれないそれは、どこか子猫を彷彿させるのは二年のフォルテ・サファイア。

 

「今は良いのよ。ピリピリと張り詰めたらいざって時に失敗したら困るわ」

 

黙認する楯無が皆を先導するように先頭に歩いている。今作戦のリーダーとして、失敗は許されない。戦闘を発展せず、狡猾的な方法をしてでも保護をする意欲の楯無は待機状態のISを触れる。

 

―――大丈夫。同じ轍は踏まない。

 

今は仲間がいる。仮に戦うことになっても、今までの一誠の戦闘データーを介して研究をした。ここに来る事前に一夏達も見聞させ、対処方法は無いよりマシな程度になっただろう。

 

「(だけどあの赤い鎧は確か・・・・・)」

 

―――妹が今熱狂的に見ていたヒーロー戦隊の。

 

そこまで考えていた楯無に「・・・・・えっ」と一夏が漏らした。目的の場所に辿り着けば―――大勢の人間が路面に平伏していた。それも織斑家があった場所の目の前で。一夏と秋十が家の状態を視認した瞬間に駈け出し、遅れて楯無達も続く。

 

「何で家がっ!?」

 

「こっちが知りてぇよ!」

 

「先輩!」

 

「・・・・・大丈夫、気を失っているだけよ」

 

意識が必然的に二つに分かれる。帰る場所と人間の安全。路面に倒れている人々の確認を取った楯無は一夏と秋十に近づき、燃え尽きた家の残骸を見た矢先。一夏達の他にも三人の少年と女性がいたことに気付いた。

燃え尽きた家の中に座りこんでいる一誠とただ傍にいるだけのナターシャとアリーシャが。

どうして二人がいるのか気になるが、今はこの状況と状態の把握が優先だと楯無は口を開いた。

 

「織斑君。これはどういうことなの?」

 

「・・・・・こっちが知りたい」

 

「わからない?君は家が燃えていた日に今までどこにいたの?」

 

「・・・・・昨日までイタリアにいた」

 

イタリア・・・・・イタリアにいる間に家は燃えていたということは―――誰かの手によって家を燃やした可能性が浮上した。

 

「(このタイミングで・・・・・まさか・・・・・)」

 

同時に今自分達がこの場にいて落ち込んでいる一誠を説得しようとしている事を考えると・・・・・まるで、狙っていたかのような感じがしてしょうがない。火事が起きたニュースは昨日の内に放送などされていなかった。近隣の住民達でも気付いていたというのに、消防隊が駆けつけて消火に尽力を尽くしていたというのに―――お茶の間に流れるはずの火事のニュースがなかった。

 

「「・・・・・」」

 

家が燃え尽きて帰る場所を失った。一誠だけじゃなく、一夏や秋十も少なからずショックを受けている。

三人に何て声を掛けたらいいのか、楯無達は口を閉じるだけだった。

 

「・・・・・」

 

不意に一誠が徐に立ち上がり、燃えた家の残骸を漁りだすように掘り返す。茫然と一誠の行動に見守るだけで声を掛けることを忘れている最中、一誠の動きが一瞬停止したが直ぐにガチャリと何かを開ける音を鳴らしたと思えば、一誠がゆっくりと姿を消していくことで、一夏達は消えた一誠がいた場所に近づくと。

 

「・・・・・隠し階段?」

 

下へ続く階段があった。当然ながら一夏と秋十、千冬はこんな階段があることは知らない。あると思いもしないでいた。互いに顔を見合わせ、先に降りたナターシャに続いて地下へ足を運ぶ。明かりが無い地下階段。皆、暗闇の中で足を動かし暗闇を照らす一筋の光が見える場所まで進むと―――。光の先は機械で覆われた巨大な空間で視界が埋め尽くされる。

 

「な、こんな場所が家にあったなんて・・・・・」

 

「俺も初めて知ったぞ・・・・・」

 

一夏と秋十が愕然とした面持ちで周囲を見渡す時、一点に真紅が映った。ナターシャも真紅の傍にいて二人の眼前に鎮座する深紅を見つめていた。

 

「あれって・・・・・IS?」

 

一誠は空中投影のキーボードを打ち続けることを夢中で深紅のISを見ようとしていない。一夏達は必然的に見たことのない深紅のISへと近寄る。

 

「こ、これって・・・・・」

 

信じられないと呟く声が上がる。深紅のISの傍にあるテーブルを見て驚きを禁じ得なかった面々。無造作にテーブルの上に置かれている五つの球体に。

 

「ISのコアッ・・・・・!?」

 

「しかも五つって・・・・・」

 

同じ場所に五つも無防備なコアを見るのは初めてと言わんばかりに目を大きく見張る。直ぐそこに手を伸ばせば届く貴重なコアが地下室にあったことを一夏と秋十は言葉を失う。

 

「お、おい一誠・・・・・こいつはどういうことだよ」

 

「別に、隠し事の一つや二つあるだろう」

 

「いえ、これはもう隠し事どころじゃないわよ織斑君・・・・・」

 

束の助手という経歴を持つ一誠ならば不可能ではないと思いつつ、先ほどから何をしているのか気になって仕方がないと横から覗き込む。

 

「何をしているの?」

 

「このISは俺達の家を見守っていたんだ。監視カメラのようにな。だから、俺がいない間に何が起きたのかも映しているはず」

 

ピッとEnterキーを押した一誠の目の前に立体的なモニターが映り、火事が起きたその日の夜の映像が再生された。複数の男達が赤いタンクの中にある液体を家中に撒き散らし、火を点けたことで瞬く間に火の海と化した織斑家に火災が発生した原因の映像を。

 

「・・・・・で、こいつらの情報を検索」

 

「そんなこともできるの?」

 

「束ねーちゃんに頼んで日本に住む人間の個人情報を検索できるようにしてもらったんだ」

 

ダウンロード中と画面が表示して約三分。画面に男達の個人情報が表示されると一誠の金目が細まる。親の仇を見るような目つきだとナターシャは思った。

 

「こいつらか」

 

「・・・・・知ってどうするの?」

 

「前々から俺は言っているんだ。俺に突っかかってくるなと。今回、その度合いは限度を超えた。だから報復と粛清をしないと気が済まない」

 

報復と粛清・・・・・嫌な予感しかしない。目も本気な一誠を見て場合によっては止めなくてはいけないと楯無は念の為に質問した。

 

「物理的に?」

 

「精神的にだ」

 

「どうやってするのか、おねーさんに教えてくれない?」

 

「お前には関係のないことだ。首を突っ込んでくるな」

 

明らかな拒絶でキーボードを叩きだし始める一誠は何かに取り憑かれているような、夢中になって次々と空中投影の画面を展開しては放火魔達だけじゃなく―――政府にも報復を目論んでいることが徐々に察していく。

 

「ちょ、まさか・・・・・ハッキングなんてしてないわよねっ?」

 

「軽く、日本中が騒動するような裏情報を手違いでどこかに漏洩しちゃった程度だ」

 

汚職、賄賂、裏事情、隠蔽、非人道的実験と研究、政府の人間にとって公にしたくない情報までハッキングで手に入れ、言葉通りどこかに漏洩するように仕組んでいく一誠に察した者達は顔を青褪める。

悪魔だ、悪魔が目の前にいて躊躇もなく自分の国を転覆させる勢いで報復するつもりだと。

 

「や、やめなさいっ!そんなことしたらあなたは犯罪者になっちゃうわよ!?」

 

「俺は前々から警告していたんだ。それをどこかの誰かさんが無視して俺達の家を奪った」

 

「ま、また家を建て直せばいいだけじゃないか一誠!」

 

「―――同じ家を建て直しても、俺達が過ごした家ではない違和感を覚える家なんて、住んでも意味がない」

 

「だからって、お前・・・・・こんなことしても何もならないだろうっ」

 

「ああ、何もならないさ秋兄。これは、俺の気持ちから動かされる行動だ。許さないと思ったら許さない。ただそれだけだ。―――これぐらいでいいか」

 

軽やかに指をタンッとキーボードを叩き終えたその時、一気に画面がブラックアウトした。

それが一体どういう意味なのか一誠しか知らない。

 

「一誠、お前・・・・・」

 

「まだしてないよ夏兄。まだ、な。ISに全て情報を移したから絶対に消去をされることはない」

 

「で、だ」と改めて楯無達に振り返る。

 

「夏兄と秋兄、箒や鈴はまだわかる。でも、その他のメンバーはどうしてここにいるんだ?弾と数馬、ラウラと簪、本音を除いて。―――まさかだと思うけど、揃いも揃って・・・・・IS学園に来いなんてつまらない説得をしに来たんじゃないだろうな」

 

冷めた視線を一夏達に送ることで「実はその通りなんだ」と朗らかに笑って言えなくなってしまった面々だった。

 

「今の俺は、家族で過ごす家を失って大変ショックな上に、このタイミングで説得されたら・・・・・流石の俺も怒るぞ。堪忍の緒が切れてもいいぐらいにな」

 

タイミングが悪い、出直した方が良いかもしれない。一誠がブチ切れたら何仕出かすか分からない上に攻撃の矛先が自分達に向けられたらタダでは済まさないかもしれないからだ。

 

「えっと・・・・・今日はお盆だろ?篠ノ之神社で祭りを行く日だからさ」

 

「・・・・・悪いけど、今回は行く気になれないよ。家を失って呑気に祭りを楽しむ気分じゃない」

 

その時、顔に影が差す一誠の携帯が鳴りだした。

 

「・・・・・もしもし?ああ、霧生さん。ん、今その家にいるんだけど・・・・・ん、分かった。それじゃ」

 

通信相手は霧生マネージャであることを察し「どうした?」と通話を切ったタイミングを計って声を掛ける。

 

「直ぐ事務所に来て欲しいって」

 

「そ、そっか・・・・・仕事、って感じじゃないよな?」

 

「どうだろうな。学生と違って芸能界に働く人は忙しいから仕事をするかもしれない」

 

深紅のISに触れた瞬間。光に包まれ一誠の手中に龍を象った仮面が落ちる。それがISの待機状態だと面々は直ぐに理解した。

 

「祭りは来年だな兄貴達。ナターシャさん、一緒についてきてくれ」

 

「私も?いいの?」

 

「行く宛ても留まる場所もなくなったからな。それにナターシャさんが傍にいてくれると心強い」

 

一夏達を残し、一誠はナターシャを引き連れて先に地上へ戻る。結局、説得できる状況下ではない為に作戦は先送りすることとなった。今回のことを当然千冬の耳にも入れられた。

 

「・・・・・一誠」

 

弟を想い焦がれる姉はISや日本に対して恨みや憎しみを抱かないでほしいと心から願うことしかできない。

 

―――♢―――

 

「・・・・・いま、なんて?」

 

「君はIS学園に通いなさい」

 

事務所に訪れ、しかもそこには社長までもがいてテーブルの上に一枚の紙が置かれてた。それは一誠にとって忌まわしい物でしかない。そんな物がどうして事務所に滅多に来ることはない社長と共にあるのか一誠は理解するのに時間は掛からなかった。

 

「・・・・・社長、政府の連中が圧力を掛けたんですか」

 

「・・・・・」

 

「俺の家は火事で無くなったと思えばIS学園の入学書がここにある。政府と無関係な立場だったはずの社長がそれを持参して来たとなれば色々と絞られる」

 

冷静に、しかし激しい激昂という炎が一誠の中で燃え盛っている。テーブルへ手を伸ばし入学書を手にした一誠はビリビリと千切り捨てた。

 

「社長からのお願いでも、俺はあの学園に通う気はないですよ」

 

「・・・・・どうしてもかい」

 

「はい」

 

真摯に社長と話し合う一誠。ナターシャはどうして頑なに拒むのか分からないでいるが、本心からそう言っている一誠を見れば―――。

 

「織斑君、残念だけど・・・・・君はもう芸能界から追放される」

 

「・・・・・」

 

「確かに政府から圧力を掛けられた。でも、政府だけじゃなくIS委員会からも後押しするように遠回しで言われた。君を学園に入れる協力をしろと」

 

一誠が芸能界から追放。一誠にとって十数年間もいた場所から遠ざけられる意味でもあり、今まで築き上げたものが一瞬で崩された。全てISというパワードスーツとISを動かせる自身のせいで。

 

「私個人は君を追放などしたくない。だが、相手が悪すぎる・・・・・すまない」

 

社長の謝罪の念は一誠に伝わっている。社長も人の子。己の中で天秤を計り決したのだろう。頭を下げる男性を見つめている最中、事務所に現れるのは黒服でガタイがいい男達。

 

「・・・・・いえ、謝らないでください。俺のせいで社長達にも迷惑を掛けていたようですし。それよりも今までこの事務所に居させてくれたことに深く感謝しています」

 

朗らかに微笑む一誠を取り囲む男の一人が腕を伸ばしたが、逆手に取られてその腕を掴まれた。

 

「最後に一回だけ、迷惑を掛けちゃいます。伏せてください」

 

「・・・・・えっ?」

 

男の腕を掴む一誠が横薙ぎに振るい、壁に向かって放り投げては叩きつけた。そして周りの男達に敵意と殺意を向けながら指の関節を威嚇する感じで鳴らす。

 

「俺を連れていきたけりゃ、俺を倒してからにしな雑魚供」

 

―――♢―――

 

家が火災で無くし、一誠も仕事の為か戻って早二日。今日の新聞に大きく載っている記事があった。

 

 

―――人気芸能人織斑一夏 芸能界から引退!?―――

 

―――全ての仕事を辞めてIS学園に編入か!―――

 

 

日本だけじゃなく、世界にも一誠の情報が伝わり、今後の一誠の活動に注目する姿勢でいる各国の首脳達。

それから三日目、記者会見を開くこととなった。当然ながら取材者や新聞記者、多くのカメラマンが挙って記者会見をする場所に我先と集まる。

 

「・・・・・本当にいいの?」

 

「もう決めたことだ。それに、俺をずっと見守って応援をしてくれたファンの皆にも説明しなくちゃ」

 

「・・・・・頑張ってね」

 

午前九時。記者会見が始まる時刻を迎えた瞬間、一誠が現れ眩くフラッシュが発する中で動揺もせずに設けられた椅子に座る。

 

「皆さん。お忙しい中、お越しいただいて誠に恐縮です。皆さんに来てもらったのは他でもないです。芸能界から引退する形で、まだ十五歳という若さで辞める理由を知ってもらいたいからです」

 

間を置いて、一誠は語るように述べる。

 

「数ヵ月前、俺は五人目のISを動かすことができる希少な存在として世間に知られてから世界は湧くように騒ぎになった筈。ですが、騒ぐだけなら個人的に問題はなかった。俺の人生を決めつけないのならばいくら騒々しくても笑って受け入れるつもりだったからだ。でも、当然ながら政府やIS委員会は俺を放っておいてはくれなかった。貴重な存在として直ぐにでもIS学園に編入させたかった。だけど、俺は既に飛び級で高校を卒業し、仕事一筋で家庭を支える事を喜びと幸せでいたから学園への編入を今日まで拒み続けました」

 

誰でも一度は聞いたことのある一誠が学園に入らない理由。学園に入らなかったから今の今まで一誠はテレビに映ることができて、お茶の間にも放送され続けていた。

 

「故に拒み続けたからか。俺の家が何者かの手によって放火、火災、火事に遭い家は全焼。住む場所と戻る場所、帰る場所、心の拠り所を失いました。―――しかし、家の中に設置していた監視カメラの映像に犯人を映すことができました。既にネットにアップしているので後ほど見てください。犯人の個人情報付きなので」

 

ざわっ・・・・・。

 

「芸能界から引退。と、記事にそう書かれてありますが当人である俺からすれば引退ではないです。家も奪われたのなら仕事も奪われたようなものです。そう、ISと深い関わりのある大人達の手によって」

 

―――一誠の頬に透明な雫が流れ落ちる。

 

「IS学園に入ることを拒み続けたから大切なものを奪われた。両親が蒸発して生きる為に働く姉の苦労を和らげようと幼い頃から仕事をし続けた努力を大人達が奪ったんです。ただ、学園に入らなかっただけで!」

 

テーブルを叩き悔しさを体全体で表す。

 

「大人が子供の人生を左右することはあると思う。それは子供が将来大人になった時の為に必要な指導と未来に続く道を誤り、間違わない為に必要なことだ。だが、俺の道はISによって、大人の都合によって邪魔をされた!IS―――否、人を殺すことが容易い破壊兵器と利益に群がる汚らわしい大人達のせいで俺の居場所は失ってしまったんだ!」

 

叫んだ。

 

「返してくれ、返してくれよ。家族の思い出が詰まったあの家を!俺がお前たち大人に何をした!?人殺しの破壊兵器を操縦することがそんなに偉いのか!現行兵器を上回る最強の兵器を動かすことがそんなに大事か!女しか動かせないISを男が動かしても大して女と変わらないだろう!動かすの人間、性能や機能を発揮するのはISってだけで、それはまだ小さな子供が銃や核弾頭ミサイルのスイッチを押すのと同じだろう!―――篠ノ之束、あの人が本当にISでしたかったことを知ろうともしないで、ISを兵器扱いするな!」

 

魂から叫んだ。目の前の大人達やテレビを見ているかもしれない子供達の心に届き、響いたのかは一誠は知る由もない。

 

「・・・・・俺は篠ノ之束を嫌ったり憎むことはないが、ISや大人達は好きじゃない嫌いだ。今になってISに対する感情がそんな風になった。大人達―――政府やIS委員会もそうだ」

 

ゆっくりと立ち上がり、カメラに向かって睨みつけた。

 

「お前達大人を許さない。俺の居場所を奪ったお前達に対して憎しみと恨みしか抱けない。―――だから、断言してやる」

 

中指を立てた。相手に対する挑発的な仕草であった。

 

「もしもまた、俺に学園への入学を勧める為に接触してくるようなことがあれば、俺は接触して来た輩を一人残らず物理的に潰す。これはIS学園に所属している生徒及び教師も例外じゃない。いいか、一人残らずだ。忘れるなよ。覚悟の上で接触して来い。これからの俺は・・・・・恐いぞ」

 

 

それから一週間経ち。あの記者会見から一誠は姿をまるで神隠しに遭ったかのように人知れず姿を暗ました。政府とIS委員会は全力で日本中を探し回る姿勢に入るが、篠ノ之束を探すほど捜索は困難に極まった。

 

 

「・・・・・束、一誠は・・・・・」

 

『ごめんねーちーちゃん。私も探している方なんだよー。ISを持っているなら絶対に見つかってもいいと思っていたんだけどねー』

 

「・・・・・そう、か」

 

『だけど、私が本当にしたかったことかぁー。いっくん、可愛いことを言ってくれたよー。ねえ、ちーちゃんどう思う?』

 

「・・・・・すまなかった」

 

 

 

「「・・・・・」」

 

携帯を揃って見下ろす一夏と秋十。三男の一誠から、一誠に連絡をしても携帯は繋がらなくなった。音信不通、行方不明の弟のことを思う度に溜息が零れる。

 

「一夏さん、秋十さん・・・・・」

 

「あの二人が落ち込むなんて初めて見たよ」

 

「当然だ。私の嫁が行方を暗ましたのだからな」

 

「・・・・・誰がお前の嫁だと?」

 

「それよりもどーすんのよ。まだ作戦は失敗もしてなけりゃ成功もしてない。作戦を続行するわけ?」

 

二人を遠くから見つめる五人の少女達も二人の気持ちを表すかのように(一人除き)心配そうな表情を浮かべている。最後に疑問を発した鈴に対して「織斑先生と楯無先輩に任せるしかない」と答えが出た。

 

「今度、彼と出会ったら敵として戦わなくちゃいけないのかな」

 

「何故だシャル?」

 

「え、だって・・・・・」

 

「戦う理由がないのに戦う必要はあるのか?」

 

「ラウラさん。あなたは戦わないのですか?」

 

「作戦であれば戦うが、プライベートで出会ったら戦うつもりはないぞ」

 

公私を分けてラウラは言っている。改めてそう言うことかとシャルとセシリアは心中で納得した。しかし、作戦を続行するにも対象がいなければ意味がないのが現状。

 

「「一誠・・・・・どこにいるのだ」」

 

―――♢―――

 

「ISコアを一つ上げるからここに居候させて欲しいんだけど」

 

「ええ、歓迎するわ」

 

「ちょっと待て!そんなあっさりこいつらを受け入れたら駄目だろ!?」

 

「カモがネギを背負ってきたチャンスを逃すのか獰猛犬?」

 

「誰が獰猛犬だ!」

 

バンッ!とテーブルを叩いて苛立つ女性は当たり前のように座っている少年と女性を睨み、受け入れる姿勢の女性を抗議する。

 

「こいつらは私達の敵だろう!どうやってここを突き止めたのか分からないのに、突然現れて居候させて欲しいだと!?」

 

「衛星で介してIS探知機って道具を使えば一発で居場所を知ったんだけど。それに知らない仲じゃないんだから居候ぐらいさせてよ。家賃代わりとしてコアを上げるんだから安いどころかお釣りが返ってくるほどだぞ?」

 

「ふざけるな!てめぇを殺してコアを奪えばいいだけの―――」

 

「俺を殺せるのか?今この瞬間、お前を攻撃できるのに?ISを展開させる時間も与えない攻撃をどうやってかわす?」

 

不敵に笑む少年の言葉にあの時の記憶が走馬灯のように過ぎり、奥歯を噛み締めるほど苛立ちと警戒してしまう女性に、もう一人の女性は柔和に笑むだけだった。

 

「コアを貰えるなら歓迎するわ。空いている部屋もある。だけど、いいのかしら?私達といることをバレたら・・・・・」

 

「お前達がどこの誰だろうと俺は何も知らないし、気付かないで共に過ごしていた。ただそれだけだ」

 

「ふふ、そう。肝が据わった子ね。―――織斑一誠君」

 

「話が通じて助かったよ。働くことができないから金の消費をどうしても避けたかった。ありがとうオータムさん」

 

世間から行方を暗ました一誠と、裏の組織の一員のオータム。二人が再会を果たし、住む家を確保した一誠とナターシャ。

 

「でも、裏組織に加担する気はないからそこんとこよろしく」

 

「私達の邪魔をしなければいいわ」

 

「邪魔するも何も。俺は元芸能人だった今じゃあ一般人だぞ?力のない奴がどうやって邪魔するんだよ」

 

「私達からすれば、あなたはとても驚異的な存在よ。でも、味方になってくれたら嬉しいのだけれど?」

 

「お断りします」

 

即答で拒絶されても豊かな金髪に豊満なスタイルな体付きのスコールは、獲物を狙っている猛禽類のような眼差しを絶やさず、一誠をどう陥落させようか楽しく考えていた。そしてもう一人この場にいた。

一誠が来てからずっと、興味深く一誠を見続けているM=マドカだ。

 

「これでようやく揃ったわ」

 

「ん?」

 

「何とでもないことよ。私達に協力してくれている凄腕の商人の適正がAでね。複数もある派閥や部隊に引き込まれる前に勧誘をしたのはいいのだけれど肝心のISコアが足りないからちょっと困っていたところなのよ」

 

そういうことか、と関係のないだろう話にそれ以上深くは聞かなかった。

 

「それじゃ早速、オータムと組織の本部に向かわなくちゃいけないから分からないことはMに聞いてちょうだい」

 

「わかった」

 

と、コアを持っていなくなる二人を見送ったら今まで沈黙していたナターシャがマドカを見て口を開いた。

 

「目を疑うわね・・・・・そこに織斑千冬がいると錯覚しちゃうわ」

 

「蒸発した両親が後に産んだのか、織斑千冬のクローンなのか、どっちかかもしれないけど個人的にはそんなのはどうでもいい。マドカはマドカだ。それ以上でも以下でもない一人の人間だ」

 

「・・・・・」

 

しばらく世話になる、とマドカに話し掛けた一誠は早速ナターシャと居候をする場所の把握を始めた。

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