インフィニット・ストラトス~前世の記憶を持つ者~(完結)   作:ダーク・シリウス

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京都&ドラゴン

一誠、ナターシャがスコール達三人の潜伏している部屋に居候して早数日が過ぎ、今日も今日とてのんびりと過ごしていた。そんな二人は今―――政府から姿を暗ましている筈なのに、芸能界にいて人気を誇っていた一誠が白昼堂々と街中を歩いて進む少年は肝が据わり、度胸があるとナターシャは思いながら―――スタッフに通され、友人のアイドル達と和気藹々と会話を弾ませている様子を見ていた。

 

「おい一誠。あの美人な外国人とはどういう関係だよ」

 

「俺の彼女(ドヤ顔)」

 

「くそぅ、この勝ち組みめ!」

 

「しかしお前大変そうじゃないか。今どうしているんだよ?あの学園に行っている様子じゃないしよ」

 

「知り合いの家に居候中だ。それよりも今日は頑張れよー。俺も客として観に来たんだからさ」

 

そして時間が過ぎて今現在、アイドル達の歌うコンサート会場に佇んで周囲が激しく盛り上がっている他所に一誠は静かに歌が終わるまで見守る感じで見つめている。しかし、どこか懐かしそうに羨ましそうに眩しそうだった。

 

「・・・・・一誠君、もしかして君は・・・・・」

 

「・・・・・ISがなかったら、世界はどうなっていたんだろうなぁ。そんなことをたまに思うことがあるんだ」

 

束を恨んでも憎んでもいない。ただ、ISの在り方に疑問を抱いている。どうして兵器として成り下がってしまったのか。どうして兵器でなければいけないのか―――と。

 

「ナターシャさん、ISを手に入れて幸せ?」

 

その問いにナターシャは答えられなかった。自分の返答で一誠がどう思うのか・・・・・。

 

「どうしてISは兵器でなければならないんだよ。せっかく翼を手に入れたのにさ・・・・・」

 

残念そうに漏らし、踵返して会場を後にしようとする一誠に無言で後を追うナターシャ。

 

 

 

 

同時刻―――千冬はたった一人で京都に足を踏み込んだ。平穏な日常の中にいる人々は自分の身に危険が起きうるとは思っていないほど、顔に笑顔を絶やさず悠々と歩いている姿が多々見受けられる中。

 

『家族として迎いに行ってあげなよ』

 

家族。千冬は束にそう言われて何かに気付かされたような感覚を覚えた。今まで一誠と接してきた時はIS学園で保護をする為だった。そこに一人の家族としていなかった。責任感、指令、使命―――。軍人のようにIS学園で教師の職に就いて教鞭を振るい続けていたからか、立場上昔のように姉として一夏達三人の弟と過ごす時間が自分から減らしている。

 

「・・・・・家族」

 

自らISに関わる千冬や保護目的でISを動かせる原因の究明と研究、実験の為に学園に入学された一夏と秋十(その他二人)。ISと関わってから家族の絆に罅が入り掛けている。主に一誠にとってISは好ましくない。家族を奪ったと過言ではないからだ。家族の為に幼い頃から働いて、家に帰れば家族が出迎えてくれる。それを喜びと感じていた一誠から―――ISが奪った。家族を、家を、仕事さえも。その時、自分は何をしていた、どうしていた?―――何もせず、それどころか説得して学園に来てもらおうと考えていた。そこに一誠の身の安全も含んでいたが拒まれた。

 

「私は・・・・・姉として失格か・・・・・?」

 

何度も拒絶され、拒まれ、否定され続け自嘲的な笑みを浮かべた千冬の真上、上空にバラバラと騒音を轟かせる軍用のヘリが複数京都の空を飛んでいた。

 

「政府・・・・・」

 

ヘリの中にISが搭載しているだろう。しかし、無駄だ。一誠はISを上回る戦闘力がある。

 

「迎えに行くぞ一誠。今度は家族として、お前の唯一無二の姉として」

 

―――そのヘリに、千冬が思いもしなかったメンバーが搭乗していた。

 

「・・・・・げっ。あのヘリ、軍系のだろ。・・・・・はぁ、やっぱり変装でもしないと見つかるかぁ。目立つから当然っちゃあ当然だけど」

 

「どうする?」

 

「京都から離れるしかないな。居場所を突き止められたと思った方が良いし。逃げる準備をしなくちゃな」

 

全財産はあの部屋にあるし、と一誠は自分の上を通り過ぎたヘリに嘆息してナターシャを引っ張る形で人気のない路地裏に入り込むと幾何学的な円陣を足元に展開してマドカがいる高層高級ホテルへと一瞬で移動した。丁度そこにマドカが自室から出てきた。

 

「早いな。お前のことだから夜まで外にいるのかと思ったが」

 

「そうしたかったんだが、政府の連中に居場所をバレたっぽいから俺達は別の場所に逃げることにした」

 

「・・・・・変装の一つもしないからだろう」

 

「反省はするが後悔はしないな。というか、まだスコール達は帰ってきてないのか?」

 

小さく頷き、未だにこのホテルには戻っていないと示すマドカ。荷物を取りに部屋へ向かっていたナターシャが二つのキャリーケースを持って部屋から出てきた。

 

「何時でも逃げれる準備をして正解だったわね一誠君」

 

「そういう映画を何度も見てきたからな。まさかこんな形で役立つなんて自分でも苦笑いする思いだよ」

 

そのキャリーケースを歪めて作った空間の穴の中に入れる形で放り込んだ一誠の様子にマドカは疑問をぶつけた。

 

「お前の前世を知っているから納得できる・・・・・だが、どうやってやっている」

 

「魔法的な感じで」

 

あっさりと大雑把的に答えた矢先―――一面ガラス張りの壁が外から勢いよく破り入ってフロアに侵入した軍のISがマシンガンを構えた。

 

「動くな!」

 

「情報通り目標補足をした。作戦を続行する」

 

撃てば人の体など蜂の巣どころか無数の穴を作って人体をバラバラにすることができるISの武器に突き付けられ、マドカとナターシャは応戦の意志を示したところで一誠が動く。

 

「一人でやる。向かってくる敵だけを相手にしてくれないか?―――仏の顔は三度まで以上耐えた俺だけど、もう我慢する気は失せたわ」

 

通常の天使化ではなく、バチバチと青白く放電する青白い天使と化した。

 

「なんだ、その姿は・・・・・貴様、人間なのか・・・・・!」

 

「ISを上回っているのは確かだぞ?信じられないならその身をもって味わえ」

 

そう言うなり、青白い翼から青白い雷が迸り二人のIS操縦者の全身に直撃する。

 

―――♢―――

 

警察官が総出で京都の町に住む住民の避難誘導をしている地上の上、上空では軍のISと―――IS学園にいるはずの専用機持ち全員が待機していた。高級ホテルの最上階から青白い雷が迸る光景を目の当たりにし、緊張が更に増した。

 

「今の・・・・・」

 

「きっとアイツの仕業ね」

 

戦ったことは一度もないが、恐らくタダでは済まないだろうと警戒心を高めた一夏達は千冬の指示で動いているわけではない。無論千冬は認知している。しかし、相手が相手なので作戦を反故することはできない。一人で一誠と接触する千冬の独断行動は一夏達は知らない。

 

「出てきたっ」

 

ホテルの最上階から一筋の青白い光が飛び出した。その光はホテルの屋上に舞い降りると姿が窺えるようになる。青白い輪っかに同じ色の長髪と十二枚の翼、青白い瞳の若い少年の姿を。

 

「・・・・・一誠、なのかっ?」

 

しかし、よく見れば両手に二人の女性の頭を掴んでいる。気を失っているのか身動ぎもしないそんな二人の頭を手放した瞬間、天使が掻き消えた。一夏達も軍のISを纏う兵士達も目を見開いてISの機能と肉眼で周囲を忙しなく探す。

 

「よ、誰を探しているんだ?」

 

「っ―――!?」

 

一人の女性の背後から抱きしめながら天使が、一誠が話しかけた。

 

「こんな大挙にこの京都まで来て何が目的なんだ?―――いや、言わなくて良いや」

 

天使を囲むようにして軍のISがマシンガンやアサルトライフルやらで突き付ける様子を認識して、不敵の笑みを浮かべ出す。

 

「政府にはがっかりさせられた。だが、相手は何かを失う覚悟でお前らを寄越したんだろう?なら、その覚悟を尊重して俺も覚悟をしなくちゃな」

 

あっさりと離れ、対峙する形で宙に佇む天使―――天使化を解いて展開した幾何学的な円陣の上に乗る一誠は大声で張り叫んだ。

 

「十分以内にここから離れないならば、俺はお前達を敵と認識し、全力でISを破壊するつもりで京都から離れなかった奴だけ攻撃をする!」

 

最終警告とばかり発した一誠。しかし、返って来た返答は一誠の予想通りだった。対象の言葉に耳を傾ける必要はないと軍のISを纏う兵士達が経ったの十秒で、行動で答えたのだった。

 

「・・・・・それがお前らの覚悟なら―――ISが無力だと等しいほどの絶望的な力を見せ付けてやる。そうすれば、少しは平穏になれるかな・・・・・」

 

―――一誠の体が真紅のオーラに包まれる。オーラは鎧へと具現化し一誠の体を包みこむように装着し、ヒーロー番組で活躍していたドラゴンを模した全身鎧を纏った化と思えば、

 

「龍化」

 

全身が膨張を始めた。その際、鎧が内側から盛り上がる肉体に堪え切れず鈍い音を立たせて剥がれ落ちていく。

膨張は留まることを知らず、人型だった一誠の体はもう異形の体付きへと変貌を成し遂げた。

もはや、一誠を知る者達からすれば・・・・・目の前の存在は一誠ではないほど成り変わっていた。

 

 

「一誠・・・・・お前・・・・・!」

 

警察官に高級ホテルへの道を規制されて足止めを食らっていた千冬がいる場所でも見えていた。

ホテルの付近に真紅の巨大な生物に真紅のオーラを纏いながら姿を変えた一誠を。

人の姿から異形へと変えた一誠は―――世界の敵と認識される覚悟をして本性を現したのかもしれない。

 

「―――今まで何をしていたんだ。もっと、もっと早く私は・・・・・っ」

 

後悔の念を抱くも戦いを止めんが為に規制のテープを乗り越えて高級ホテルへと警察官の制止を振り切って向かう。

 

 

突如京都の上空に巨大な生物が出現。全長は百メートルを超え、背中に二対の翼と鼻先に生えている鋭利な一本の角、壮大で雄大なその姿は西洋の生物最強で空想上の存在として謳われ続けていた―――ドラゴン。

 

「一誠君・・・・・!」

 

「これが・・・・・織斑一誠・・・・・っ」

 

フロアからナターシャとマドカも人からドラゴンになり変わった一誠の背中を見つめ、驚嘆と愕然の心情で一杯だった。赤いゴツゴツとしたまるで岩のような鱗が視界いっぱいに入るほどその巨体さはかなり誇っていることが火を見るより明らか。人間としての一誠だったらまだ勝機はあった方だ。だが、ドラゴンと化した一誠に勝機は皆無に等しい。

 

『―――グオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』

 

翼を大きく広げ周囲の建造物の窓ガラスを全て割らすほどの声量、咆哮を放った。ISを纏う者達にも影響が及ぶ。咆哮は衝撃波へと生じ全身に伝わる衝撃のダメージがISのエネルギーを減らす。

 

「ば、化け物・・・・・!」

 

「こんなの、情報になかったぞっ!?」

 

畏怖、戦慄、動揺等々・・・・・一誠がドラゴンになったことで軍のISの操縦者達は余裕などあっさりなくなった。巨大過ぎるドラゴンにISでどう立ち向かえばいいのか心がへし折れそうになる。

 

「お、恐れるな!化け物と言えども生物だ!弱点はあるはず!ISは世界最強の兵器だということを忘れるな!?」

 

隊長らしき女性が勇ましく構えているマシンガンの引き金を引いて一誠に攻撃を仕掛ける。他の女性隊員達も見習うように引き金を引いて真紅の体に銃弾を浴びせ始める。

 

「死ね、死ねぇー!」

 

「はぁあああああああああああああっ!」

 

軍の懸命な攻撃を一夏達はただただ見ているだけだった。手を拱いているわけではない。いま、ドラゴンと化した一誠に対して受け入れ難い現実に心底から拒み、体がいうことを利いてくれない。

 

「・・・・・一誠、そんな」

 

「お前・・・・・」

 

生まれた時から共に過ごしていた兄弟が何時の間にか化け物になっていた。計り知れない衝撃と形容し難い気持ちで食い入るように真紅のドラゴン、一誠を見続ける。

 

「くそ、たった一匹なのだぞっ!?どうしてISの攻撃が通じないんだ!」

 

「刃が通りません!」

 

「隊長!弾があと僅かです!?」

 

軍もいよいよ後が無くなり、後退せざるを得ない状況下になる最中―――一誠がいよいよ動いた。

金色の眼が煌めきだし、それに呼応して軍隊を囲むよう複数の様々な色の幾何学的な円陣が展開し始め、発光を始める。

 

その光が発する強さが最高潮に達したその瞬間―――光は弾け、眩い閃光が周囲に広がるように散った途端。

幾何学的な円陣からまた新たな巨大生物が姿を現した!

 

―――♢―――

 

ここは―――知らない者にとっては未知の場所。円状な空間で壁一面にはキラキラと星屑が下に落ち続ける神秘的な現象が絶え間なく起きている。

床は四匹の龍が太陽を囲むような姿勢が描かれているのに対して、

天井は満月を囲む四匹の龍の彫刻が施されている。

そして、この空間の奥に天井にまで伸びた背もたれの椅子に座る女性がいた。

緑色の髪から突き出る翡翠の二つの角。身に包んでいる衣服は、緑と青を基調とした着物。

 

「―――っ!?」

 

何かに弾かれたように椅子から立ち上がり、信じられないと目を大きく見張った。彼女しか感じ取れない何かがそこまで驚かせる原因は―――。

 

「まさか・・・・・こんなことが有り得るのですか・・・・・?」

 

心底から驚愕、愕然とした女性は腕を横薙ぎに振るって立体的な映像を映し出した。その映像に今まさに一誠が複数の巨大生物を召喚した瞬間だった。

 

「信じられません・・・・・ですが・・・・・っ!」

 

居ても立ってもいられないと女性は動きだす。その行動は吉と出るか凶と出るかは女性にとってはどうでもいいこと。全ては己の目で確かめたいが故に。

 

―――♢―――

 

新たに現れた巨大な生物達の姿に伝わる威圧と見据える眼光が軍のISを装着する女性達の心を完全に恐怖へと陥らせた。全ての攻撃を出し尽くして通じなかった一誠の他にもまた別の巨大な生物達が登場すればいくらISでも敵いはしないと本能が激しく頭の中で警告の鐘を鳴らす。

 

「あ・・・・・・あああ・・・・・・」

 

恐怖で歯が噛み合わない。恐怖で目尻に涙を溜める。恐怖で体の震えが止まらない。恐怖で―――圧倒的で絶大的な生物達によってリアルに自分の死を直面する。

 

『―――どうした、ISは世界最強の兵器何だろう?だったら俺達を殺すことだって容易い筈だが?』

 

嘲笑うかのように目を細め、初めて言葉を発した一誠。

 

『と、俺は思ったんだがな。実際に無抵抗で攻撃を受け続けていたんだが・・・・・所詮は兵器だったな』

 

鋭い眼光で敵を見据えだす。金色の瞳から敵意の意志が窺える。

 

『今度は―――俺達が、俺達の力を見せ付ける番だよな?』

 

口の端を吊り上げる。まるで笑みを浮かべているかのようだった。

 

『今まで俺はお前ら政府やIS学園の連中にしつこくされた上に俺の居場所を奪った。そして今、俺を狙う為に大挙として襲いかかって来たんだ。もう、お前らに対して情けも同情も一切無しで潰す。―――IS諸共な』

 

宣戦布告。巨大生物に囲まれている軍隊の命は風前の灯。一誠の一言であっという間に命を蹂躙することができる。

 

『―――主』

 

一誠に話し掛ける頭上に金色の輪っか、体は金色で背中に天使の翼を生やす美しい巨大生物、ドラゴンが問うた。

 

『主のご家族はどうなされますか?あれ等も主に対して迷惑を掛けていましたが』

 

『・・・・・』

 

金目を一夏達に向ける。敵意もなければ戦う意思が見受けれない兄や友人達を一瞥し金色のドラゴンの質問に答えた。

 

『手を出すな。一応、俺の家族だからな』

 

『・・・・・お優しいですね。やはりあなたは変わりません』

 

『・・・・・一緒にするな』

 

照れているのか、金色のドラゴンから顔を反らす一誠の視界の端にふと入った。ホテルの屋上で黒いスーツを身に包む黒の長髪に鋭い目つきの女性を。

 

「―――いっせえええええええええええええええええええええええっ!」

 

千冬が一誠の名を叫んだ。意識をこっちに向けろと高層のホテルを階段で屋上まで登って来たのか、額に浮かぶ汗と全身で息をする姉の姿に興味を惹かれたかのように一誠は体を千冬へと向いた。

 

「止めろ!お前がそんなことしても、何にもならないぞ!世界の敵になるだけだ!」

 

『・・・・・』

 

「私が悪かった。お前の言葉を、お前の気持ちをもっと考えていればこんなことにはならなかったかもしれない。姉として失格だ。家族の為に幼い頃から懸命に頑張っていたお前に姉として何もしてやれなかった。いや、やらなかった。お前なら心配しないでも大丈夫だと信じて半ば放っておいた私がいけなかった」

 

慟哭に似た千冬から悲痛を感じる。今にでも泣きそうだった。あの気が強く誰よりも尊敬と敬愛、畏怖の念を抱かれる世界最強のIS操縦者が弟の為に必死で制止の声を掛けている。

 

「ISがお前の人生を奪うなら、私が守ってやる!いや、お前が望むなら私はずっとお前の傍にいる!ずっと一緒だ、お前と私、一夏と秋十の四人で―――」

 

『・・・・・いや、ちぃーねぇーちゃん。四人じゃなくて五人だ』

 

静かに千冬の声を遮って巨大な手を伸ばす。その手は千冬へじゃなく窓ガラスが破れたフロアに伸びた。

一拍して巨大な手は千冬の前に突き出される。

 

『俺達が知らないところで、五人目の家族がいたんだよ』

 

一誠の手の上に乗っているのは―――千冬を幼くしたような少女。織斑マドカだった。

 

「な・・・・・に・・・・・?」

 

「・・・・・」

 

『驚いただろう?俺も驚いた。蒸発した両親が後に産んだのか、それともクローンなのかわからないけど、間違いなく俺達の家族なんだ。故に俺達織斑兄弟の五人目の家族だ』

 

自分がいると錯覚する千冬。織斑マドカと言う五人目の家族の存在を信じられない形で明かされ、思考が停止し掛ける。しかし、不思議と受け入れてしまう自分がいる。ここまで顔と纏う雰囲気がそっくりなほど妹と呼べる存在は世界中を探してもマドカ一人だけかもしれない。

 

『感動の再会とは程遠い現状の上に・・・・・ちぃーねぇーちゃんだけじゃこの世界を変えることはできないよ。女尊男卑と変わった世界を変えるなんて無理だ。それに、俺はもう守られるほど弱くないよ。―――いま、それを証明してあげる。マドカ、ちぃーねぇーちゃんには手を出すなよ』

 

体の向きを変え、軍のISを纏う女性兵達に死の宣告を告げた。

 

『―――殺れ。ISの残骸が残らないほどに。世界に思い知らせ、俺達の力を強さを、ドラゴンの恐ろしさの素晴らしさを!』

 

待ってました!と言わんばかりに一部を除いた巨大生物達が嬉々として咆哮を上げ、我先と襲いかかった。

もはや抗う力はない。ただ尻尾を巻いて逃げるか喰い殺される運命を受け入れるだけしかない。

千冬はこれを許してしまえば何かが失い、砕けてしまう感じがして、考えるよりも先に声が出た。

 

「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

魂からの叫び、姉の言葉に耳を傾けない一誠へ悲痛が込められた制止の叫びが飛ぶ。それでも一誠は一度振り上げた拳を振りおろそうとはせず、死ぬ軍のIS操縦者達の瞬間まで見守る姿勢だった。誰も一誠やドラゴン達を止める術はない。ISを倒せるのはISだけであるように絶大的な力を持つ強者を倒せるのは同じ力を持つ強者だけであろう。しかし、ISを超える兵器は―――この世界には存在しない。

 

『『『『『―――っ!?』』』』』

 

地獄絵図、阿鼻叫喚が生じるだろう時が何時まで経っても起きないどころか来ない。それが疑問を抱き、内心小首を傾げる一誠は、不自然に硬直するドラゴン達に『どうした?』と話しかけたところ返って来たのは―――。

 

『か・・・・・体が・・・・・っ!』

 

『ンだこりゃ・・・・・っ!』

 

『これ、は・・・・・っ!?』

 

己の意志に反して体が見えない何かに縛られている感じで動けないでいる様子だった。一誠はそれが信じられないと驚きの色を顔に浮かべる。この場にいる人間がどんな技術でも科学でも最強生物をどうこうすることは不可能の筈。だが、現実的に動きを完全に封じてられている。一体誰が、こんなことしてみせているのか・・・・・。

一誠の中で焦燥に駆られているところで綺麗で物静かな声が聞こえてきた。

 

「お止めなさい。本当の自分の気持ちに偽って事をしても後悔するだけですよ」

 

『っ!?』

 

バッと顔を声がした方へ振り返ると、一誠も金縛りに遭ったかのように動きが封じられた。

それでも一誠の視界には緑色の髪から突き出る翡翠の二つの角に緑と青を基調とした着物を身に包む女性が移り込んでいた。彼女の目を見た途端に体が動かなくなったことから、初めて見る女性の仕業だと確信した。

 

「よもや・・・・・こんな形で、こんな場所であなたとまた再会するとは私も思いませんでしたが・・・・・記憶がないようですね。ですが、魂はあの者と同じ・・・・・」

 

意味深な発言をする女性を見つめる一誠は、意味深な言葉で言い返した。

 

『・・・・・魂は知らないが、記憶ならある・・・・・。俺は、前世の記憶を持っているからな』

 

「では・・・・・私がどういう存在か、分かっているのですね?」

 

『・・・・・納得したよ。俺達をこんなことできるのは同じ存在だけだからな。ましてや貴女は―――』

 

―――ドラゴンの生みの親でありドラゴンの祖だからな。

 

と、一誠は確信した声音と言葉を言い放った。

 

『だが、今更どうして現れた。ドラゴンを見守るだけの者がどうして俺達の邪魔をする!』

 

「先ほど申し上げましたよ。本当の気持ちと偽っているあなたは後悔すると」

 

『気持ちを偽っているだと・・・・・』

 

「私の目は誤魔化せませんよ。あなたは家族思いの優しい子なのですからね」

 

『っ・・・・・』

 

一誠は反論できなかった。心まで見透かされているような気分に陥り、何時までも動きを封じられては何をされるか分からないと、プルプルと震える体を更に力を込めて見えない拘束から解き放たれようと身動ぎ出す。

 

「無駄ですよ。あなたがドラゴンである限り、私の意のまま。このまま私の世界に来てもらいます。この世界ではあなたと適応はしませんから」

 

静かに腕を上げた女性に呼応して上空の空間が大きく歪みつつ渦巻、ポッカリと暗い穴が開いた途端、ヌゥと遥かに一誠達を超える巨大な手が出て来た。

 

『今度は、俺から家族から離す気か・・・・・っ!』

 

「―――現世の記憶の中にいるあなたの家族はまだ現存しています」

 

『―――っ!?』

 

「皆、あなたを忘れておりません。あなたをあなたとして受け入れてくれますよ。そこで―――」

 

女性はそこで口を閉ざした。不意に視線を上空に見上げたかと思うと、何かが飛来してきて一誠の頭部に着弾。

着弾した飛来物が黒い煙幕のような煙を吹きだし、瞬く間に京都を覆い尽くした。女性の視界にも一誠達ドラゴンの姿が煙で隠れ・・・・・。

 

「誰の仕業でしょうか・・・・・逃げられました」

 

とても残念そうに瞑目して、女性は穴から伸びる巨大な手の上に乗り、そのまま穴の中へと巨大な手と共にいなくなった。そして、残された一夏達は・・・・・。黒い煙が晴れた京都の上空に佇み、姿を暗ましたドラゴン達と一誠、その他ナターシャとマドカがいなくなったことを確認した後にIS学園へと帰還した。

 

「一誠・・・・・・っ」

 

悲しげに漏らす千冬は小さく、触れれば脆く崩れそうなほどに落ち込んだ様子を一夏達は声を掛けることはできなかった。自分達は、一誠の逆鱗に触れたのだと後で後悔に似た気分になる。

 

そして一誠達は・・・・・。

 

「・・・・・ありがとう、助かったよ」

 

「ううん、気にしないでいいよー。寧ろ、いっくんの為なら私は全力で応援するからね!」

 

「・・・・・せっかく作ったISを破壊しようと考えている俺に?」

 

「この私が作ったのはISのコアであって、ISの機体じゃないんだよねー。だから、コアだけ破壊しないで持ってきてくれるなら束さんは嬉しいなぁ」

 

「・・・・・了解。元々、束ねーちゃんのところで身を隠そうとしていたから束ねーちゃんの気持ちを出来るだけ答えるよ」

 

「うふふ、やっぱりいっくんは大好きだなぁー。愛しているよ私だけのいっくん!くーちゃんのことも愛してあげてね?さてさてまどっち!せっかくだから君の専用機を改造してあげるよん!ついでに体に仕込まれているナノマシンを消しちゃってあげるねー」

 

世界各国から追われている身の束のところにナターシャとマドカと共に転がるように逃げ切った。あの煙の正体は束の仕業で、一誠の逃走の手助けをしたのだった。

 

「一誠君・・・・・一応大丈夫?」

 

「度が越えようとしているなら何とか止めるよ」

 

何を考えているのか分からない束に少なからず警戒するナターシャ。そう言う一誠の言葉に信じ、そっと手を握った。

 

「私は、君の傍から離れないからね」

 

「・・・・・ありがとう」

 

―――一誠は決心した。ISの在り方を正す方法は、全ての破壊を司る物を破壊し尽くすべきなのだと。そして破壊し尽した後に零から始め今度こそ宇宙進出、本当の意味で地球と言う籠から飛び出す為の自由の翼を得るべきなのだと。

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