インフィニット・ストラトス~前世の記憶を持つ者~(完結)   作:ダーク・シリウス

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完全敗北

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一誠が再び姿を暗ましてから日本政府はIS学園の上層部と度重なる交渉と会談の末、IS学園が一誠に対する基地となり、学園の生徒達は自国に強制送還。戦闘できる教員は戦闘員として、専用機持ち達も一誠に対する制止力として政府に組み込まれる。いわば最後の砦のように二十四時間警戒態勢で襲撃に備えることとなった。学園の敷地の至る所に旧代兵器、戦車や対地/対空迎撃ミサイルと搭載した車などが設置されているが雀の涙以下の結果になることは遠くない未来で分かる。

 

「・・・・・以上が、我々が知る限りの織斑一誠の情報です」

 

そして、世界の敵と接触している千冬達から事情聴取、一誠の情報を開示を求められてそれに応じる一同。

政府と軍は硬い表情と険しい表情を浮かべ、ISと旧代兵器では倒すことは不可能に近いと結果に苦々しい気分となる。

 

「ではなにかね。織斑千冬君。我々はどう足掻こうと、逆立ちしてもあの化け物には敵わないとそういうことかね」

 

「現状、ISを上回る力を有しているドラゴンに対する対抗策と決定打がない以上どうすることもできないかと」

 

「元モンド・グロッソを優勝し、最強の称号をほしいままにした者とは思えない発言だ」

 

「それは人間相手ならの話です。相手は化け物です。未だに情報が少ないどころか、化け物の力は全て把握していない上に未知数。私でも知らないことが多いのです」

 

対象方法は分からない。それもそのはず。人類がドラゴンのような化け物と戦ったことが無いからだ。

ISでも倒せない生物はこの世に存在していない。ただ一人のイレギュラーを除いて―――。

 

 

「くしゅんっ。ん・・・俺のことを誰かに言われたような気がしたな」

 

とある場所―――。黒煙が幾つも空へと昇り、何かの施設があった場所は襲撃で瓦礫の山と化している。その周囲に迎撃していただろう人やISの残骸が・・・・・。

 

「ありえなくないサね。今世界中は君のことで持ち切りなのサ」

 

「そうね。君のこと化け物よばりしているだろうけど」

 

「お前の記憶を見た者として」

 

「いっくんのこと知らない有象無象がなにを言っても無意味で時間の無駄だねー」

 

アリーシャ、ナターシャ、マドカ、そして束までもがいてこの場で何が起きたのか襲撃者として知りつくしている。話しかけ四人が視線を向ける一誠の足元には一誠とマドカが良く見慣れた二人の人物が横たわっていた。息をして生きているが、満身創痍とかなりの重傷を負っている。起き上がる気配がないのは気を失っているからだった。

 

「・・・・・残っているISとコアは日本とIS学園となったが―――やるんだろう?」

 

マドカが愚問な質問だと分かってても一誠に問うた。ナターシャ達の視線を浴びて、受け止める一誠は小さく口の端の口角を上げた。

 

「ああ、当然さ。途中で止めることは絶対にない。やり通すさ」

 

「・・・・・だったら、最後ぐらいは私も参加させてもらう」

 

「夏兄達を殺す為か?」

 

「ふん、姉さんならともかく。あの二人を殺してもつまらない。だから、私はお前のように姉さんと戦う」

 

特異的な能力を使わず、ただ純粋な肉弾戦で千冬を倒した一誠に触発したのかマドカの目は戦意がありありだった。自分の妹の言葉を理解しては察し、悟り。

 

「今のお前じゃあ、一時間も持たず倒される確率が100パーセントだがな」

 

「あはは、いっくん。まどっちはまだまだ成長期だからしょうがないよー。特に成長したらちーちゃんみたいにおっぱいも大きくなるかもっ。束さん、成長するまどっちのおっぱいを見守るよー!うへへ、楽しみだねー」

 

軽くセクハラ発言をする束を白い目で見るマドカと呆れたり苦笑いを浮かべたりと反応する一誠達。

 

「それでいっくん。IS学園の襲撃は何時にするー?」

 

「―――三日後にしよう」

 

―――♢―――

 

一日目―――。

 

IS学園がある離島から数百メートル離れた海上で報道記者を乗せたヘリが駆動音をけたましく鳴らしながら飛行を続ける。

 

「残るISはここ日本とIS学園だけとなってしまいました。政府はIS学園と結託して織斑一誠との決着を臨むようです。ですが、これまで世界各国の基地と企業会社が保有していたISとコアが全て迎撃も防衛も突破され、破壊と強奪を許し、それを繰り繰り返されてきました。そしていま、偶然かそれとも意図的か、日本が最後となり―――」

 

そんな生中継の報道をお茶の間の人々に伝えている人が乗っているヘリの真下、海面にユラリと黒い影が蠢いた。

海の中に潜む影は海面から消えても尚、IS学園付近に現れた事実は変わりない。その影の進む方向にもIS学園があるからだ。

 

「―――こんな静かな教室は初めてだな」

 

「放課後と変わらないだろう」

 

「いや一夏。この状況下で成り立った静けさの意味が違うって。いつ来るか分からない一誠との戦いを迎えるために俺達専用機持ち以外の生徒と戦闘できる教員以外強制送還されたんだぞ?」

 

教室に待機を命じられている専用機持ち達。緊張感に包まれながらもい作るか分からない相手に若干シビレを切らしたり、退屈そうだったり、こんな状況に遠い目をして空を眺めていたりと・・・・・一夏達は規制された行動の中にいさせられているのだった。

 

「ISが基地になるなんて、しかも他の国から『ドラゴンを倒す為に力を合わせる為に共闘!』とみたいな感じで他の外国の軍人達がつけこんできたっぽいし」

 

「外的介入は許されなかったっけ?」

 

「いまとなっちゃあ、それどころじゃないだろ相手が相手だし」

 

「・・・・・あんたら、緊張感がなさすぎじゃない?」

 

兄弟故か、話しが弾んでしまい二人の間だけ緩い感じがしている。そのことを鈴が指摘した。

 

「ん?そうか?」

 

「まあ、一誠の影響だろうなー」

 

「は?どういうことよ」

 

「「仕事の影響」」

 

実を言うとこの二人、何度か一誠の誘いを受け仕事を共にしたり見学したことがあるのだった。その際、仕事の流れがどういうものなのか肌で感じ取り、ゆとりできる時はとことんのんびりする大切さを学んだのである。それぐらい一誠の仕事はハードであることを知った。

 

「・・・・・そーいうことね」

 

「ま、だらけはしない。ちゃんと気を引き締めているから」

 

「何時までも緊張で顔を張り詰めてもしんどいだけだ。少しぐらい心に余裕と気持ちを緩くしても怒られないだろ?」

 

朗らかに言う二人の兄弟に鈴は内心、「無人島でのサバイバルをさせられても生きていられそうだ」と呆れた。

 

「うーん、確かに一夏君達の言う通りね」

 

楯無が同意と虚に用意してもらった紅茶を優雅に飲む。この中で一番のんびりしているのは生徒会長だと誰もが思ってしまう。

 

「適度に心掛けていれば問題ないでしょう。行動を規制されているけれど何時までも緊張しちゃあ疲れるわ」

 

「はぁ・・・・・」

 

「それに、相手はどんな手段で攻めて何時くるのか分からないし・・・・・ね」

 

どんな手段で攻めてくる?数多の魔獣を駆使して基地とISを破壊し、コアを奪取する。

それが一誠の襲撃パターンだが今回は海に囲まれている離島。大陸が繋がっている国だったから、真正面から攻め込むことができた。だが、今回の襲撃場所は電車に乗って移動しなければならない離島。IS学園への出入りは警察や自衛隊自身が規制、厳重な警戒態勢を敷いている。空でも戦闘機が、海上や海中でも船や潜水艦などで警戒している。どんな手段で近づいて来ようと直ぐに発見されるだろう。

 

「世界からISを無くする彼の根本的な理由は家族の為・・・・・真っ直ぐ過ぎて道を誤ってしまったのね」

 

「楯無さん・・・・・」

 

「良い弟をもって幸せね一夏君と秋十君。世界を敵に回してでも成し遂げたいなんて誰でも出来ることじゃないもの」

 

故に道を誤った。正義でも悪でもない。純粋な願いからの―――行動理由。一誠は家族の為だと公言しており、家族を引き離し、一誠からも奪ったISに憎しみに似た感情を抱き今に至る。全てのISを破壊しコアを奪った後、一誠はどうするのかこの場にいる全員や千冬ですら知り得ない。

 

「ISが無い世界・・・・・女尊男卑から男尊女卑に戻って十年前のようになるのでしょうね」

 

「でも・・・・・ISが無かったら僕達は皆と出会わなかったよ。それだけは確かだね」

 

「ISが無かった世界・・・・・私達は違う生活と環境を過ごしていたか、いるか・・・・・か」

 

「・・・・・考えられないわね。ISのない世界で生きている自分って」

 

「うん・・・・・」

 

皆、ISがない世界の十年前が十年後まで続いていたら自分達はどんな暮らしと環境の中を生きていたのか胸中で思う。変わらない学校生活で堪えない笑顔をしていたかもしれないし。軍人として生まれ、力が全てだと考えながら国の為に生き続ける少女もいれば、国境を超えた恋愛もできなかっただろう。そして、引き離されることなく過ごしていたかもしれない家族―――。

 

「全て・・・・・ISが始まった」

 

「その原因は束さん・・・・・」

 

束の思惑はどうであれ、ISをパワード・スーツにし、利益や国力の為に兵器として扱った世界各国。

 

「世界が平和になるってわけじゃないけど。どうなるんだろうなぁ数馬?」

 

「さぁーな。ISが世界からなくなるってだけで大して変わらないじゃね?」

 

「そしたらIS学園も封鎖されるか。そんで俺達は普通の高校に通い直すことになるか」

 

「はは、俺達四人でまたバンドでもするか。ヘタクソだけどさ」

 

後々のことを考え、男同士の会話が弾んだ。

 

「・・・・・お姉ちゃん、また来るのかな」

 

「多分、ね」

 

不安の色を顔に浮かべている簪という妹を姉の楯無は予想した。人の命を奪わずISとコアだけを奪う一誠が諦めるはずはない。

 

「そうよね。一夏君、秋十君」

 

「「変なところで頑固になるもんで、ホントすいません」」

 

「揃って言うほどなのね・・・・・」

 

清々しいというか、ここまで身内のことに関して分かっているのに止められない二人が一番悔しがっているに違いない。

 

「・・・・・千冬姉、一誠とまた戦うのかな」

 

何とも言えない気持ちで吐露する一夏の言葉はこの場にいる全員が気にしているもの。己の気持ちを代弁されたが状況を知る術がない今、どうすることもできないそんな時だった。教室の扉が開いて中年の男性達が入って来た。

 

「・・・・・っ」

 

シャルの体が強張った。シャルだけじゃなかった。セシリアや鈴、ラウラ、ダリルも教室に入ってくる人物達に「どうしてここにっ」といった表情を、驚愕を浮かべていた。

 

「誰だ?」

 

「さあな」

 

「なーんか、穏やかじゃないって感じはするのは俺だけか?」

 

名も顔も知らない者達からすれば首を捻る。入って来た人物は五人。服装もバラバラで軍服を着た男性もいればビジネススーツを身に包む男性もいる。五人はそれぞれ、過敏に反応したシャル達四人に近づき。

 

「ISを渡してもらう」

 

開口一番、淡々とISの引き渡し要求を述べた。それには当事者以外の一夏達は目を丸くした。

 

「コアを奪われる前に本国で厳重な場所と警戒の下で管理する。政府からの命令だ」

 

「・・・・・僕はどうなるのですか」

 

「お前のことについては何も聞いていない。私はISを破壊される前に回収の命を受けただけだ」

 

男性の目はシャルの首に下げられている首飾りを捉えた瞬間、無造作に腕を上げて待機状態のISを掴もうとしたがシャルに手を弾かれる。

 

「僕にはそんな命令は聞いてもいなければ受けてもいません。―――ですので、元一企業の社長だったあなたには渡しません」

 

「・・・・・なんだとっ」

 

そんな二人の会話のやり取りは遠からず他の四人も似ていた。まだ無事なIS=コアの回収と強い視線と睨みでセシリア達に要求している。流石に困惑する一夏達でも察した。それぞれの国の企業と政府、軍人のお偉いさんなのだと。

 

「いいから渡せ。それさえあれば会社は建て直すどころか政府からの援助が約束されるのだ!」

 

「国の為じゃなく自分の会社の為に僕からISを取り上げる気ですかっ」

 

「それが国の為にも繋がるのだ!そのコアさえあれば後に私が国を支えていると過言ではない状況になるだろう!あの計画も今ならばISがないイタリアを差し置いて我が社が後釜となって参加できる!」

 

男性から決定的な言葉が呼び寄せてしまった。

 

「私と政府に逆らったお前はもやは反乱分子。私の会社の為に働ければいい逆らった付属品が学園を卒業した後に、お前を捕まえる予定だったが今の状況ではお前などどうでもいい。ISのコアさえあればお前など不要なのだからな」

 

「―――――っ!」

 

「さあ、ISを返してもらうぞ。コアがあればパーツなどいくらでも湧いて出てくるように用意できる。お前が死んでもコアが無事ならば問題ない。政府もその認識でいるだろう」

 

非情で冷たい男性の発言はシャルの心を傷つけ、一夏の怒りを買わせた。

 

「おい、あんた―――!」

 

次の瞬間。不意に身体の機能が一瞬停止する感覚を覚えた一夏達。

 

「?」

 

一瞬の違和感を覚えたのは一夏だけでなかった。秋十や箒、その他の者達もそうだったようで、眉根を寄せて怪訝な表情や首を傾げる仕草をする。

 

「今、変な感じしなかったか?」

 

「そうね。なんか、仮死状態に遭ったような・・・・・?」

 

「仮死状態ってシャレになれないっス」

 

そこでシャルがセシリアの顔を視界に入れた途端、ギョッと目を丸くした。

 

「セ、セシリア。ブルー・ティアーズは?」

 

「え?ここに待機状態を・・・・・・」

 

イヤリング型の待機状態にしてある愛機を触れようとしたが、馴染みのある感触が指に伝わらなかった。後にセシリアは信じられない気持で自分の体を弄るようにして忙しなく手を動かし・・・・・青褪めて絶望した表情を浮かべた。

 

「「「――――――」」」

 

嫌な予感を覚えた一同もバッと待機状態にしてあるISを確認したところで発覚した。一人も一つも残らず、ISが消失していることに。

 

「・・・・・まさか」

 

「―――そのまさかだ。確かに奪わせてもらったぞお前らのIS」

 

全員が声のした方へ振り向くと開けた窓に腰を降ろしている一誠が一夏達のISを全部体に身に付けていた。

 

「一誠っ!?」

 

「何時の間に俺達のISをっ!」

 

「か、返して!」

 

一誠の登場に驚愕と条件反射で飛び掛かる二つの反応を示す。取り返そうとする者に対しては部分展開したISの腕部にあるガドリングガンで威した。

 

「これで全部揃う。これでこの世からISというパワード・スーツがなくなり、宇宙活動を想定したマルチ・フォームに戻って開発されるかもしれないな」

 

「無理よ。例え、貴方の目論見通りになったとしても各国は裏でまたISを兵器に・・・・・」

 

「へぇ?お前が認めるんだ?楯無、ISは兵器だって。それは俺の気持ちに同意しているようなもんだな」

 

「っ・・・・・」

 

皮肉を言う一誠は口の端を吊り上げた。

 

「一誠、いったい何時の間にこの学園に?」

 

「うん?もう十分ぐらい前からいるぞ。色々と束ねーちゃんに機械のハッキングをして貰ったり、空にいる時代遅れの兵器は全部マドカ達が無効化してもらったし、後数十秒でこの学園もハッキングされて予備も含めて電力が失う」

 

一誠の眼は男性に視線を向けた。

 

「人間を付属品呼ばわりする人間はろくでもないなぁ」

 

軍服の男性が銃を構えて引き金を引いた。そして放たれる弾丸は一誠の身体をすり抜けて一発も弾丸が当たることも無く、お返しとばかり―――ISのガドリングガンで軍服の男性の体を蜂の巣にした(全てゴム弾)。

 

「良かったな。これが本物の弾丸じゃなくて。まあ、これはこれでかなり苦痛を味わうがな。そんで元デュノア社の社長さん。話しは聞かせてもらったよ。だが、そうはさせない。ISは破壊する。ひとつ残らずな」

 

「貴様、兵藤一誠・・・・・ISコアを返せっ!」

 

「コアを返せ?」

 

―――パンッ!

 

一誠がマグナムでデュノア社の社長の太股を撃った。穴が開いた太股を押さえながら苦痛で叫びつつ床に倒れ込んだ。躊躇いも無く撃ったことに昔から一誠を知る者は目を見開く驚きを顔に浮かべた。

 

「何か勘違いしてないか?装甲はともかく元々コアは作った束ねーちゃんの物だ。お前ら大人はただのコアという甘い蜜を吸うだけの卑しい虫けらなんだよ」

 

兵站一誠を他所に楯無は悟られないように動く。が、一誠の眼が怪しく煌めくその光を浴びた途端。彼女は銅像のように姿勢がそのまま停止した。

 

「暗部の楯無にはしばらく動かないで貰おうか」

 

「身体が・・・・・っ!?」

 

「俺の眼は相手の動きを停止させる。ISを奪ったのもその能力を使ったからだ。だから首から下は完全に銅像のような感じで動かすこともできない」

 

離れた距離でデコピンする。それは楯無に向けられていて額に鈍痛が生じて「いだっ!?」と感じる彼女の体が真後ろに倒れてまた「あだっ!」と痛みを覚えた。

 

「な?人形のように面白くそのままの姿勢で倒れただろ。夏兄、秋兄。今ならそいつの体を触り放題だぞ。弾と数馬も触ったら?」

 

「「「「なっ、何を言ってるんだお前はっ!?」」」」

 

「因みに下着の色は―――」

 

「言うんじゃなぁああああああああああああい!?」

 

「ストッキングで分かるわけ無いじゃん馬鹿だな」

 

ケラケラと笑う一誠と羞恥で真っ赤に染まる楯無。完全に遊ばれている生徒会長と遊んでいる一誠。

 

「さて、俺の用件は終わったし帰るわ」

 

「お待ちなさいっ!?私達のISを返してください!」

 

「これがなくちゃ生活ができないなんて陥らないだろ。いっそのこと兄貴達と国際結婚して幸せに暮らしたら?」

 

「―――っ!?」

 

「まあ、日本料理ができない女は女とは言えないがな。それ以前に俺が許さん」

 

「「お、お前なぁ・・・・・」」

 

最後の最後までブラコンな一誠に呆れる。取り返そうとする者達から逃れる一誠は窓から落ちて、窓から覗く箒達の目は一誠の姿の影も形も映らなかった。

 

「や、やられたっ・・・・・!」

 

「あんな不思議な力まであるなんて・・・・・」

 

「何と言うことだ、我々ではどうすることもできないではないか」

 

最後の要とも過言ではないISを奪われ、虚無感を覚える。IS無しでどう生きればいいのか・・・・・・この時まで分からない一夏達。

 

「お前らには関係のないことだろ?これから他人のことなんて考える暇がない騒動が起きるんだからな」

 

その証明とばかりに外から激しい轟音と爆発音が聞こえた。一夏達の意識が一瞬だけそっちに向いた時、一誠の姿は消えていた。

 

「さあ、これで最後だ。故に逃げられると思うな。例外なくISを破壊してコアを奪ってやる」

 

再び現れた一誠は・・・・・全長六百メートルの巨大怪物の頭部に乗ってそう宣言した後に攻撃を開始した。

 

―――♢―――

 

巨大怪獣がIS学園を襲う光景は圧巻だった。学園側からISが飛び出して迎撃、撃滅を臨んで攻撃を開始。旧代の軍事兵器も応戦するが・・・・・ダメージは皆無。それどころか、巨大怪獣から小型の空飛ぶ怪物や地を這う怪獣らが生み出されて戦況は一方的に悪化へと辿る最中、巨大怪獣が顎を大きく開けたその瞬間。青白い光が収束する際に背中の突起物が青白く輝きだす。その輝きが最高潮に達した瞬間、口から極太の光るエネルギー砲を放った。

 

チュッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

それは、IS学園に着弾した高密度のエネルギーが大爆発を起こし、学園が完全に崩壊、消滅したことで一夏達は言葉を失った。怪獣の放つ破壊力・・・・・完全にISを上回っている・・・・・!

 

「姉さん・・・・・」

 

「・・・・・」

 

学園が崩壊する他所にマドカは怪物を引き連れて、自分達の邪魔をさせない為に軍人達を蹴散らす指示を与えている他、一誠の意志で障害物や遮蔽物などの破壊をしていく。今まで通り、やることは変わりないと世界各国の基地と同じ破壊活動をする怪物達の中で千冬と出会っている。

 

「勝負だ・・・・・姉さん」

 

「・・・・・お前を構っている暇などない」

 

「私を倒したら―――兄さんのところに連れてもいいと言ってもか?」

 

マドカの提案に柳眉がピクリと動いた。千冬は意識をマドカに向け、真意を問うた。

 

「兄さん・・・・・一誠のことか」

 

「それ以外誰がいる。ああ、織斑一夏と織斑秋十は兄さんと呼ぶにはまだまだ駄目だがな」

 

「認めているということか。一誠を・・・・・」

 

「誰よりも先に私を見つけ、私の理解者となり、私が兄と呼ぶに相応しいから呼んでいる」

 

持っていた武器を千冬へ投げ渡し、受け取った千冬は手元の武器を見つめた。

 

「刀か・・・・・」

 

「そこらへんの芸術館や美術館、はたまた有名な場所から選りすぐりで選抜した一本の刀だ。この日の為に用意した一本の刀だ」

 

そして私も、とマドカももう一本の鞘から刀を抜き放った。

 

「私とも兄さんと同じやり方で姉さんに勝負を申し込む」

 

「勝てるのか?見ていただろう、私と一誠の試合を」

 

「その兄さんにさんざん鍛えられてきた。少なくとも足元にまでは及んでいるだろう」

 

「・・・・・様になっているのはそういうことか。そして、まるで私を見ている感覚をされる」

 

甲高く鞘から抜かれる刀の刀身は太陽光で鈍色に煌めく。見ただけでも名刀であることを察し、奪われた人には同情する。対峙するマドカは千冬を幼くした感じで自分自身と戦う気分になるのは必然的なのかもしれない。

 

「いいのか?ISを装着しなくても」

 

「・・・・・姉さんがISを持っているならそうしたいが、生身の相手にISを纏って勝っても私の心は満たされない。異能の力を持っている兄さんが異能を使わず純粋な身体能力で姉さんを負かしたように私も自分の体の身で姉さんを超える。あの時、そう思ったんだ」

 

千冬に刀を構えるマドカから強い憧憬の眼差しが向けられていることに気づく。勝って―――勝ちたい―――と。

 

「・・・・・私が勝てば、一誠のところに連れて行け」

 

「そう簡単には負けるつもりはない」

 

姉弟の次は姉妹―――千冬とマドカの戦いが火ぶたを切って落とされた一方、離島を瞬く間に火の海と化する怪獣の進撃は止まらない。

 

 

 

こうも早くISを奪われる事態になろうとは想定していなかった楯無は一夏達を引き連れて避難をする。

 

「こっちよ皆!」

 

外から騒音が聞こえるのは直ぐ近くで戦闘が起きているのだろう。ISがないいま、戦う術は極端に限られた。武器など常に装備している生徒など殆どいない。一誠だけでなくマドカ達や無限に創造される魔獣達。―――勝ち目が薄いこの状況、楯無は自分達はどうするべきが瞬時で判断して廊下を駆けた。

 

パリンッ!ドガッ!

 

だがしかし。窓や壁を突き破って退路を断つ魔獣達が楯無達の前に現れた。

 

「学校の中まで・・・・・!」

 

『グオオオオオオッ!』

 

全身から触手を生やしだす魔獣達が決壊したダムのように触手を伸ばして楯無達を襲いかかった。

 

「はぁああああああっ!」

 

軍人用のナイフを制服の中に隠し持っていたラウラが触手を切り掛かるも数の暴力には敵わずあっさりと全身を縛られて捕えられた。

 

「ラウラっ!?」

 

「きゃあああああっ!」

 

「は、放しなさいよッ!」

 

「み、皆ああああああああっ!」

 

 

離島は黒く蠢く魔獣達で埋め尽くされ、IS学園の施設は姿も形も残さず破壊尽くされた様子は巨大魔獣の上から見受けれていた。あの離島に残っているのはもはや・・・・・マドカと千冬だけとなった。一誠は小型の魔方陣を展開してマドカに通達。

 

「マドカ、帰るぞ」

 

すると、帰ってきた言葉は・・・・・。

 

『兄さん。悪い、捕まった』

 

 

 

 

刀の切っ先を首に突き付けられているマドカとそうしている千冬の決着が着いていた。

マドカの耳元に展開された魔方陣は通信機のようなものだと察した千冬は聞こえるかどうか分からないがそれでも声を発した。

 

「一誠、こっちに来い」

 

返答はない。だが、マドカは急に顔を青褪めたことに千冬は怪訝な気持ちを抱いた。一誠に何を言われたのか聞こえず分からない千冬の目の前でマドカの足元にポッカリと開く穴。そこへ落ちるもう一人の家族に目を張ったが代わりにその穴から一誠が出てきた。

 

「久し振り」

 

「一誠・・・・・もう止めろ。こんなことしても何の意味も無い」

 

「意味はあるさ。女尊男卑が男尊女卑に戻って世界から世界最強の武力を無くした。まぁ、前半はどうでもいいことだ。俺がどうしてもしたかったのは、ISのない世界でまた家族と暮らすことだ。それがようやく今さっき終わったところだ」

 

学園から全てのISを破壊しコアを奪った―――嬉しそうに微笑む一誠が言う言葉は嘘偽りないのだと悟る。

 

「・・・・・一夏達は」

 

「安全な場所に今魔獣達によって移動させられているよ。今この島にいるのは俺とちぃーねぇーちゃんだけど、ここにいちゃ困る。なんせ、この島も破壊するつもりなんだから」

 

「っ!?」

 

衝撃的な発言と同時に千冬の足元に発生する霧。それが何の意味を成すのか千冬はまだ自分に向かって手を振る一誠を見ても気付かない。

 

「それじゃ、また近い内に会おうね」

 

「待て、一誠っ―――――!」

 

手を伸ばす千冬は霧に包まれて一誠の前から姿を消した。しばらくその場に佇む一誠の全身から真紅のオーラが迸り、姿を変えて巨大なドラゴンと化した。まだ魔獣達がいるがお構いなしに一誠は地上から五百メートルの高さまで飛び、口から魔力を放って―――離島を一瞬で消滅させた。

 

 

 

この日、全てのISコア四六九が全世界からたった一人相手に奪われIS学園の消滅してから一時間後。全世界のテレビ局が篠ノ之束にハッキングされある報告を告げられた。

 

『やっほー!おひさーな人もいればおはつーな人もいるよねー。自己紹介なんて面倒くさいから用件だけ言うよー』

 

じゃじゃん!と自分でテンションを上げて、棚に収められているISコアの映像を誰かが映し出した。

 

『なんと、私の助手こといっくんが全てのISのコアを奪ったという偉業を成し遂げましたーパフパフ!そんでー、私が作ったコアはみーんな、私の元に戻ってきて超ハッピー!なんたってこの天才束さんが作ったんだから子供当然だよねー?』

 

満面の笑みを浮かべる束の映像は全世界のテレビで記録されようがお構いなしに束の口は止まることは無い。

 

『さてさて、全部のISを返してもらったけれど私は別に兵器として開発した訳じゃないのにどっかの馬鹿な国達が兵器として当たり前のように認識しちゃって束さんはとても悲しいよ。あ、別に本気で悲しい訳じゃないけどね。ただ単純に女の子に翼を与えたかっただけなんだよねーこれが。私がISを開発する理由を助手に教えたからか、今のISの在り方に納得できない上にいっくんから大切な物を奪った馬鹿な日本の政府のせいでISを嫌いになっちゃって「つい」世界も巻き込んでコアを奪っちゃったのさ』

 

世界各国が怒りの矛先を日本に向けられるのは時間の問題だった。

 

『そんないっくんに私は全力で応援しちゃいましたブイブイ!勿論愛してねぇー?いっくんは可愛いくて仕方ないからもうしょうがなかった!あ、別に日本とか世界がどうなっても束さんには関係ないし第三次世界大戦なんて馬鹿な理由で戦争しても勝手にすれば?って感じで興味ありませーん。ま、私がなんて言いたいのかって言うと』

 

顔から笑みが消えて真剣な表情が浮かび上がった。のほほんとした隈がある目も顔の表情と一緒に真剣な眼つきとなった。

 

『私とちーちゃんの大好きないっくんにちょっかいだしていっくんから大切な物を奪った日本政府には、仮にコアを世界に返しても日本だけは返す気はないし許す気もないからね。他の国も連帯責任として我が物顔で使った私のコアは私の手元に置かせてもらうから。当然だよね、私が作ったコアなんだから管理責任は私にあるから』

 

顔の表情はニパッと代わり、束の傍でどこかの海図が表示された。

 

『因みに私達は現在宇宙の月にいまーす!月まで無事に辿り着くにはこの海の位置にある巨大な宇宙船でないと駄目だから私に会いたい人はきてねー。まあ、無理ゲーだろけどね』

 

しかし、唯一コアを作れる束と奪われた全てのコアがセットであることに各国の政府はこの千載一隅の機会を逃す筈も無く―――IS学園に派遣していた、使用していた軍を宇宙船がある海域に向けて動かした。ただし、

 

 

「・・・・・待っていろ一誠」

 

 

「これより、私達も月に向かいます」

 

「うぇえええっ!?」

 

「マジっすか!?絶対に戦闘の真っ只中に飛び込むようなもんですよ!」

 

「お、織斑先生が許可する筈が・・・・・」

 

「これはIS学園の生徒、生徒会長としてではなく。更識家次期当主としての仕事なのよ。でも、私はともかく皆はほぼ独断の行動だから後で退学とか国際問題とかの云々の責任を負うことになるかもね。これは強制じゃないわ。取り返したいと思う者は私と一緒に来なさい」

 

 

「一誠君・・・・・いえ、一誠様」

 

狙っているのは他にもいることを世界は知らない。

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