インフィニット・ストラトス~前世の記憶を持つ者~(完結)   作:ダーク・シリウス

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決着

「凄いだろう。これが本来あるべきISの在り方なんだ」

 

宇宙空間に躍り出て、一誠達の前まで近づくと開口一番に千冬達へそう言いだした。

 

「兵器じゃなくて宇宙空間での活動を想定したマルチ・フォームこそがISなんだ。束ねーちゃんによって人類は地球から宇宙へと飛び出せる翼を手に入れた筈なんだ。それが破壊兵器だったり布石としてスポーツに定着させた大人達に疑問を抱かずにはいられなかった」

 

指をある場所に差した一誠に釣られて目をそこへ向けると人工衛星があった。

 

「束ねーちゃんが世界中のテレビ局にハッキングして貰って、今この瞬間の映像をお茶の間に流している。―――俺達は今、ISを纏って宇宙空間にいることを知らせてな」

 

それは何の為に―――?と聞くのは愚問だろう。一誠の望みは殆ど叶い達成しているようなものだ。

 

「だけど、これから戦うからISは兵器だという概念は変えられないだろうな。でも、それでもISは地球から飛び出して自由な翼で宇宙へ飛び出せることを知らしめたいんだ」

 

呼び出し(コール)した刀で突き付ける一誠は真剣な眼差しで千冬を見つめる。

 

「勝負だちぃーねぇーちゃん。いや、織斑千冬!」

 

「っ!?」

 

「俺が負ければ何でも従ってやる。だがお前が負けたら―――血の繋がり関係なく俺の妻になってもらう!」

 

「「「「「ええええええええええええええええええええっ!?」」」」」

 

宇宙で、生放送されて世界中の人間達が見ている前で大胆にも織斑千冬に結婚を要求した一誠に絶叫する一夏達。

 

「ちょっ、まっ、一誠!?何を言い出すんだよ!」

 

「家族同士で結婚はできないって!」

 

「それは地球の中でのルールだ。この宇宙でコロニーを作れば法律は思いのまま決められる。それに俺は小さい頃からちぃーねぇーちゃんのことを異性として好きだったし」

 

「「はっ!?」」

 

ぶっちゃけた一誠の爆発宣言で驚愕と唖然の反応を窺わせる一夏と秋十。そんなこと知らなかったどころか気付きもしなかった。一誠が自分の姉を異性として見ていたなんて一瞬たりとも思わなかった。

 

「というかさ。俺が今まで仕事をしてるだけでも少なかったのに、ちぃーねぇーちゃん達がIS学園に通い出してからめっきり一緒にいられる時間が減って物凄く寂しかったんだよなぁ・・・・・。だからいっそのことISとコアを世界から無くせば家族の時間が取り戻せると思って今回こんな行動をしたってのに・・・・・」

 

それからブツブツと独り言を言いだす弟に姉兄は申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

「まあ、俺が勝てば丸く収まるよな。そうなったら皆一緒に暮せれるわけだし」

 

「一誠・・・・・」

 

「さて、始めようか。お互い負けられない戦いをさ!」

 

四対八枚の翼のスラスターにエネルギーを噴出させて千冬に肉薄する。二人がぶつかり合ったことでマドカ達と一夏達もどちらからでもなく交戦を始めた。

 

「おおおおおおおっ!」

 

「ふっ・・・・!」

 

一度敗北した千冬。今度はISを纏って勝負する。一誠自身がISを装着できることは分かっていたが、ISを嫌っていた弟がISを纏った瞬間に矛盾が生じているのだ。それでも譲れないのだろう。人間ではない一誠と人間離れした動きをする千冬の刀を振る速度は常人の人間の反射と反応速度を超えている。だがしかし、

 

千冬のソードが一誠に一撃を与えた。絶対防御を無視した一撃をだ。

 

ISで戦った経験の差が一誠に喰らいついていた。生身での戦闘は一誠に有利であるもののISでの戦いはモンド・グロッソの大会を二勝も制覇した千冬に分があった。本来の軽々とした動きができない一誠にとってISは足枷になっていたのだ。

 

「どうした。私を妻にするといいながら押されているぞ」

 

「っ・・・・・」

 

織斑千冬のIS『暮桜』。刀一本で世界を制覇した最強の称号『ブリュンヒルデ』を手に入れた女性。

そんな人物と戦う一誠はゴッソリとエネルギーを奪われて敗北の色が浮かんでも笑みを浮かべた。

 

「―――倒し甲斐がある」

 

「ふっ、それこそ私の弟だな」

 

不敵に笑む弟と嬉しそうに口の端を吊り上げる姉。二人の戦いはまだ始まったばかりだ。

 

そう―――。

 

「おおおおおおおっ!」

 

「はあああああああああああっ!」

 

終わりの始まりがぶつかり合う二人の決着で戦いの幕が降りるのである。

 

 

二人の姉弟の戦いは誠達も魔方陣で介して見ていた。誠達からすれば遅く見える動きであるが、その壮絶さと真剣はしっかりと肌で感じていた。

 

「機械を纏って戦う―――まさしく男のロマンだなっ!」

 

目を純粋な子供のように輝かせる誠を余所に、機械やロボットのどこがいいんだろうと女性陣は無表情になる。

 

「おいおい、どうしたそんな白けた顔をして」

 

「男と女の違いが分からなくなっただけよ誠」

 

「?そんなの始めから違うじゃないのか?」

 

当然のように言うのだが、一香達女性達は男の考えと気持ちが理解できないと心中で漏らした。

 

「それよりどうする?」

 

「分かりあえるのに時間は掛かるのは覚悟の上でもあって承知の上よ。赤の他人であることも実際そうだし・・・・・強引だけれど、私達の世界に連れて行きましょう」

 

非難されようが罵倒されようが、誠と一香達も様々な思いを胸中に抱いて、全て承知と覚悟の上で異世界に来ている。―――二人が決着つけたら異世界に連れて帰るつもりだ。それは二人の傍にいる面々も同じ気持ちだった。

 

「そうだな。やっぱそうするしかないよな。だけど、それより―――」

 

徐に振り返る誠の視線の先には銀色の髪に赤のメッシュがある黒いスーツを着ている女性が入口に立っていた。

 

「一誠がいるところに『彼女』がいるはずだ。どんな姿でいるのか分からないけどな」

 

「・・・・・そう、貴女なのね」

 

懐かしむように女性を見つめる二人。女性は亜空間から一本の槍を取り出して見せた。

 

「あの子を連れて行かせません」

 

「・・・・・一緒に過ごした家族に攻撃するのか?」

 

「『かつての私』はそうでした。ですがこの世界で生まれた私の名前は霧生。一誠君の元マネージャーです。過去のことは過去として私の記憶に残っているだけ。この世界で私と同じ組まれた一誠君と同じように」

 

「・・・・・そうか、生まれ変わると良い意味でも悪い意味でも気持ちと考えがこうも変わるのか」

 

物凄く残念そうな表情を浮かべる誠。しかし、楽しげに笑みを浮かべ出した。

 

「久し振りに手合わせをしようじゃないか。―――リーラ」

 

「何時以来になるかしらね」

 

リーラと呼ばれた霧生の中で『スイッチ』が切り替わった。相手は―――神をも相手にしてきたイレギュラーな存在だ。全力で戦わなければ一瞬で負けてしまうほどの相手に躊躇いの気持ちを捨てた霧生。

 

 

 

一誠と鍔迫り合いをした千冬はもう後が無くなっていた。エネルギーの残量がもう殆ど残っていない。後一撃を食らえば敗北する。だがそれは一誠も似たようなものだ。絶対防御を無視する一撃をもう一度当たればエネルギー残量が0になるほど追いつめられていた。

 

次の一撃で決着がつく。

 

次で全てが終わる。

 

次で運命が変わる瞬間だ。

 

真剣な眼つきで前にブレードを構えた二人の気持ちは重なった。

 

「「―――――」」

 

柄を両手で持ってそれぞれ違う型の構えを取った。言葉は語らない。剣で語るのだと教え、教えられた二人の間は静寂と緊張に包まれている。

 

―――――これで決める。

 

そう決意した一誠と千冬。

 

「「織斑流」」

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)で肉薄する一誠へ同時に千冬も瞬時加速(イグニッション・ブースト)で移動した。

 

―――――一誠っ!

 

―――――ちぃーねぇーちゃんっ!

 

互いに譲れない思いをブレードに籠めて力強く振るった!

 

「神楽!」

 

「神威!」

 

相手の動きに合わせて五芒星のように振るう型と、相手が視認できないほどの速度で舞うように振るう型の技を同時に叩きこむ感じで放った。そして擦れ違って背を向け合うことしばらくして・・・・・。

 

「「・・・・・」」

 

ビシッ―――バキンッ!

 

ブレードに罅が入ってそこから中心に砕け散った。

 

「・・・・・最後、手を抜いたな。何故だ」

 

そう言って振り返った―――千冬が砕けたブレードを持つ一誠に問うた。背を向けたまま欠けたブレードを見つめ返答した。

 

「ちぃーねぇーちゃんの技を食らって武器が堪え切れなかったことを察したんだ」

 

「嘘だな」

 

千冬が持つブレードを見つめると、一拍遅れて生じた罅から真っ二つに折れ出した。

 

「アーリィとの戦いで私の武器の方がダメージが残っていた。お前が手を抜いた理由はそのまんま私に当て嵌まる」

 

指摘されても一誠は首を横に振った。

 

「俺の型とちぃーねぇーちゃんの型の初撃は、ちぃーねぇーちゃんの方が速くて俺が遅い。だから先に俺は攻撃を食らってエネルギーはもうなくなったんだ。だからその意趣返しとして武器に攻撃したんだ」

 

一誠のISが光に包まれ展開が解除された。宇宙空間の活動を想定したISがなければ生きていられない環境の中で、解除する直前に一誠は光の膜を張って身を守った。

 

「納得はできないかもしれないけれど。事実、ちぃーねぇーちゃんの勝ちだよ」

 

「ああ・・・・・本当に納得できないな」

 

喜ぶ顔じゃなく、心底不満そうな表情を浮かべている己の姉に弟は苦笑いする。

 

「本当に納得できないって不服そうな顔をするね。というか、最初からフェアじゃなかったんだ。寧ろ俺の方が勝っても勝った気分じゃないんだよ」

 

膜に包まれている一誠に近づく千冬。そっと腕を伸ばして一誠を抱き締めた。

 

「お前がそんなこと気にしてどうする。対等であろうが無かろうが勝負は勝負だ。どんな状況でも勝つのが試合というものだぞ」

 

「尤もらしいことを・・・・・。あーあ、ちぃーねぇーちゃんと結婚したかったなぁ・・・・・」

 

嘆く一誠の額にデコピンする。

 

「馬鹿者。姉弟同士で結婚などできるはずがないだろ」

 

「でも、それ以外ならできるでしょ?」

 

何かを求める眼差しをする一誠を見つめ千冬は無言で肯定する。実際、禁断の領域を超えた二人に否定はできないのだ。

 

「愛しているんだ。心の底から異性として。だから・・・・・」

 

口を動かす一誠の唇を千冬は手で塞いだ。

 

「それ以上言うな」

 

「・・・・・」

 

「お互いそういう関係だと言うのに言葉は不要だ。・・・・・一々面と向かって言われる私の身にもなれ」

 

それって・・・・・と思った一誠の頭に腕を回して胸に押し付けた。

 

「お前に勝てば何でも従わせると言ったな。その権利を使わせてもらうぞ」

 

ギュッと一誠を力強く抱きしめた。

 

「お前のことを一夏達に任せれば大丈夫だと思っていた私が浅はかだった。あの二人までもお前から離れて孤独感を与えてしまった。もっと早く、お前をIS学園に通わせるのではなく、私がお前の傍にいるべきだったんだ。小さい頃から私達の為に頑張って仕事をし続けたお前ともっと過ごすべきだったんだ」

 

故に一誠は世界を敵に回してここまで仕出かしてしまった。ISが一誠から大切な物を奪ってしまって怒りと悲しみに支配されてしまったのだ。

 

「もうお前を寂しい思いはさせない。いや、お前が嫌と言っても放す気はない。私の初めてを色々と奪ったお前には責任を取ってもらわなければならないのだからな」

 

世界最強のブリュンヒルデは独占欲も世界最強だと言うことを一誠は後に知る。

 

「ちぃーねぇーちゃん・・・・・」

 

「・・・・・二人の時だけは名前で呼べ馬鹿者」

 

「・・・・・うん、千冬」

 

はにかむ一誠の笑顔を見たのは実に久し振りだと千冬は思った。やはり、一誠と一緒に暮らすべきだったのだと後悔するがこれから暮らせなかった分の時間を埋め合わせすればいいと考えて行動した。その途中、一誠がマドカ達を呼び寄せて基地に戻ると。

 

「何で・・・・・あの人がいるんだよ」

 

ここにいるはずもない女性が満身創痍で誠達の前に跪いていた。しかも膜は完全に宇宙空間と隔離されているのでISを纏わずとも呼吸ができる状態となっている。

 

「霧生さん!」

 

「お、一誠。決着がついたようだな?だが、お前が霧生と呼ぶその女性はお前と同じ存在なんだ。今まで気づかないでいたのは無理も無かっただろう」

 

誠が説明口調で語った。

 

「一誠?その人の前世の名前はリーラ・シャルンホルストっていう銀髪のメイドさんよ。前世の記憶があるなら分かるわよね?」

 

「―――――っ!?」

 

リーラ・シャルンホルスト・・・・・前世の一誠と深い関わりがある一人。直ぐに脳裏で銀髪で琥珀の双眸のメイドの女性が浮かんだ。

 

「あなたが死ねば彼女も一緒に死を迎え、お前と同時に転生するようになっているんだ。まさか異世界まで転生するなんて驚いた。本当に究極の愛を貫く女性だよ」

 

「でも、これで全員揃ったとも言えるわ。彼女もまたあなたの家族だもの」

 

「霧生さんが・・・・・前世の俺の家族?」

 

信じられないものを見る目で霧生を見つめる。霧生は一誠の疑問に対して・・・・・。

 

「本当なのか?」

 

「・・・・・それは過去のことだよ」

 

肯定したが、過去として否定してムクリと傷だらけの体で起き上がる。

 

「確かに私の前世はリーラ・シャルンホルストというメイドだったわ。今でも前世の記憶と力は受け継がれてる。でも今の私は一誠君の元マネージャー」

 

「・・・・・霧生さん」

 

「だけど、転生した私は私。リーラ・シャルンホルストではなく織斑一誠という異性が心から愛している霧生という女性よ」

 

ニコッと綺麗な笑みを浮かべる霧生は力強く槍を構える。

 

「私は一誠君の為ならどんな相手だって戦うわ!」

 

「―――――」

 

ドクンッ!と一誠の心臓の鼓動が激しく打って頭の中で甦るのはリーラ・シャルンホルストとの思い出。

 

『一誠様の為ならどんな相手でも戦います』

 

懐かしくも―――そして散ってしまった彼女の瞬間を思い出してしまった一誠が、

 

「あ、あああああ・・・・・・っ」

 

そうだ・・・・・俺は・・・・・俺が転生した理由は・・・・・!

 

ある魔物によって殺され、相討ちという形である方法で討伐した際に―――死んだ。

 

「リ、ーラ」

 

「っ!?」

 

霧生が振り返り、とめどなく目から流す一誠を見て絶句した。

 

「一誠っ・・・・・?」

 

前世の記憶があっても、全てのピースが嵌まっていなかった。カタカタと震える一誠を千冬は怪訝そうな表情を浮かべた。

 

「リーラ・・・・・ッ、リーラ・・・・・ッ、リーラ・・・・・ッ」

 

「一誠君!?」

 

「あ、あああ、ああああああああああああああああああああああああああっ!?」

 

「「一誠ッッッ!?」」

 

一誠の魔力が一気に膨れ上がりながら迸り凄まじい衝撃と伴う突風で誰も寄せつけさせなかった。

 

―――ズリュリュリュッ!

 

奔流と化している魔力の中で一つ、二つと何かが生え出した。おっかなびっくりと驚く千冬達と絶句する誠達。

 

「ロスヴァイセ!」

 

「は、はいっ!」

 

「―――いや、間に合わないっ!ここにいたら巻き込まれるから離れるぞ!」

 

七つ目の首が生えると同時だった。一誠が急激に膨張した自身の体によって呑みこまれてしまい、部屋と周囲の建物を破壊しつつ七つの口から咆哮が上がる。膨張した肉塊は胴体、四肢と形作って数百メートルの大きさに誠達の前で成ってしまった。今までドラゴン達と相対した千冬達だが、目の前の怪物を目の当たりにして恐怖と戦慄で体を震わす。

 

「化物・・・・・っ!」

 

「ああ、そうさ。この魔物・・・・・666(トライヘキサ)は正真正銘の化物だ」

 

遠くまで離れていた誠さえも緊張の面持ちで薄らと冷や汗を流している。月面に現れた巨大な魔獣はしばらく動かず、首だけはキョロキョロと辺りを見渡す挙動をする。直ぐに襲いかかって来るものだと思っていた千冬は不思議に思い誠へ声を飛ばす。

 

「あれは・・・・・?」

 

「多分、来たことのない宇宙空間だから自分がどこにいることを分からないんだろうな」

 

酸素のない環境の中であれだけ動いているということは宇宙でも活動できる証拠だ。誠達の存在を気にしていないでここはどこだ?―――と風に足を動かしている。

 

「・・・・・・歩き始めたぞ。どうするんだ」

 

「思っていた行動じゃないから当惑している」

 

月の大地を踏みしめ続ける魔物の行動は誠達の予想と想像を裏切った。しかし、青い地球を見つけるや否や動きを止めた。

 

「おいおい・・・・・待て待て、まさか・・・・・」

 

嫌な予感を覚えたところで魔物は―――大規模なクレーターを月面に残して真っ直ぐ地球に向かっていった。

 

「ちょっと待てぇッー!?」

 

誠の焦りが籠った叫びは虚しくも魔物には届かなかったが宇宙空間に広がった。

 

 

一方地球ではロケットを射出する建造物の調査が行われていた。同類か似たような物であればもう一度使用できるという結果が判明して各国の政府はロケットの製造に乗りだした。

 

だが、空から巨大な火の塊・・・・・隕石のような物が降って来た。直径40キロメートルの大陸は建造物を中心にして隕石によって生じる大爆発と衝撃波で大半が砕け、海にもその余波が伝わり激しくうねり軍艦を揺らす。

そして、軍人達は見た。

 

数百メートルの巨大な体を誇る怪物がモクモクと大量に発生している土煙の中から現れた様子を。

直ぐ近くにいた兵士達の心は、ドラゴンより巨大怪物を見てあっさりと戦意喪失するのだった。

 

「―――う、撃てっ!撃ちまくれぇっ!?」

 

「ほ、本部!増援を、直ぐに増援を!」

 

軍艦に乗っていた海軍の兵士達は直ぐさま迎撃態勢で倒そうと砲撃を開始したが、一切の傷がつかず歩く先にいた兵士や有機物などを一踏みで蹂躙した。その数分後―――誠達が月から超長距離転移魔方陣で戻って来た時には、怪物はどこかに目指して歩く姿だった。

 

「原始龍、あの中に一誠がいるとしたら何とかできるか」

 

「・・・・・ここからでは難しいです。反応はありますが、あの伝説の魔物に包まれて私の力が届きません。直でなければ不可能かと」

 

「反応があるんだな。まだ生きているんだな。だったらまだ希望がある!」

 

誠は疾呼した。

 

「ロスヴァイセ!直ぐにあの結界の準備を!非戦闘員以外はあの怪物の足を少しでも止めに行くぞ!」

 

指示された女性は手元に百以上の魔方陣を展開、戦闘ができる誠達は巨大な魔物に向かって飛び掛かった。

 

 

「ちーちゃんどーするー?」

 

「愚問なことを聞くな束。私達も残りのエネルギーが尽きるまであいつを止めに行く」

 

「で、でも俺達が勝てる訳が・・・・・!」

 

「五弾田。私は倒せと勝つとは言っていない。できる限り足止めするだけで良いと言ったんだ」

 

「千冬姉・・・・・」

 

「この世界は私達の世界だぞ。別の世界から来た者達に守ってもらうどころか、任せっぱなしでいいはずがない」

 

スラスターにエネルギーを噴出させて先に追いかけていった千冬の姿を見つめた後、一夏達も瞳に決意の光を宿して行動を開始した。

 

 

「仕方がありませんね。今回だけ特別に力を貸しましょう」

 

巨大な翡翠の幾何学的な円陣に星型の魔方陣を陸海空に幾つも展開した原始龍は言った。

 

「あの魔物の足止めをするだけでいいです。出て来なさい、我が子らよ」

 

原始龍の発令から一拍遅れ、魔方陣から様々な形と大きさのドラゴン達が出て来て魔物の方へと押し寄せた。

 

 

―――トライヘキサの全身が盛り上がり、次々と個の生物として十数から百メートル級の獣が生まれ落ちた。

 

「んだそりゃっ!?」

 

驚く誠達に十、百、千―――姿形、大きさが異なる獣達が誠達とドラゴン達に襲いかかる!

 

「こんな能力があるなんてっ!」

 

「はああああっ!」

 

一匹の獣が両断された。しかし、肉の断面と断面から生えた触手がくっついて完全な再生を果たして牙を剥く。

 

「再生能力!」

 

「再生が追いつかないほどの攻撃をしなくては駄目だとは!」

 

「厄介ですね・・・・・!」

 

打撃、斬撃、そして銃撃は効果ないと悟るや否や。誠は全員を後退させて声を張り叫んだ。

 

「頼むダブルオーフィス!」

 

「「分かった」」

 

互いの手を取り合って駒のように回り始める少女と幼女が掌から放たれる魔力は、再生能力を有している獣達が消滅していく。

 

「す、すっげぇ・・・・・」

 

「今ので殆ど消滅したぞ」

 

驚嘆する一夏と秋十だが、魔物の身体から生まれ落ちる獣達。無尽蔵に増殖する量産型の獣型の生物。

 

「半分、いい?」

 

「ん、半分。足も奪う」

 

二人のオーフィスが意味深な発言をした後、魔物へ手を突き出して―――さっきよりも桁違いな魔力による砲撃を放って量産型の獣達諸共魔物が直撃する。

 

「んな・・・・・!ちょっと待て。まさか本気じゃなかったって・・・・・?」

 

「―――無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス」

 

あんぐりと開く口の一夏に、一夏達に声を掛けたのは誠。

 

「無限の力を有する無限の体現者でもあるドラゴン。少女の名前はセカンド・オーフィス。とある理由で一誠の力から生まれたオーフィスの妹分。だからどっちも無限の力とそれに近い力を持っている二人だからこそできる芸当。この中で一番強いのはあの二人で間違いない」

 

「無限の力・・・・・」

 

「そうだ。でも、信じられないだろう?自分の判断で認識して構わないさ」

 

その無限の力を食らった魔物は・・・・・たちこもる煙が晴れた頃には身体の四割かそれ以上の傷を負って、抉れていたり何本の首が吹っ飛んでいたり足が消失と―――地面に横たわる瞬間を目の当たりにした。

 

「二人の半分と半分が組み合わさると本気の何割になっちゃうってのを、後で教えないとな」

 

魔物を地に平伏した威力は、大陸の向こうまで深く抉ったような痕を残すほど凄まじさを物語らせた。

無限の力=魔力―――あの数百メートルの巨躯と再生能力を有している魔物を倒し、

 

「準備整いました!止めます!」

 

銀髪の女性が、魔方陣に手を触れて、発動を促した。次の瞬間、この領域全体を未知のエネルギーフィールドが覆いだしていく。さらに魔物の巨体の周囲にも結界のように魔方陣が多数展開していき、完全に魔物を包みこんだ。魔物の顔に苦悶に満ちた表情となるが、魔方陣は次から次へと張られていき、魔物を幾層にも囲んでいった。そして―――。皆が、魔物の動きを確認する。・・・・・。・・・・・魔物は、地に平伏してからぴくりとも動かなくなった。

 

「・・・・・どうなった?」

 

「捕縛しているんだ。取り敢えずしばらくは動くことはできない。効果が切れる前にどうにかしなくちゃいけないんだ」

 

問題は解決していない。誠の難しい表情を見て千冬は察した。原始龍は一香に話しかけられた。

 

「これならなんとかならないのかしら?」

 

「やってみましょう」

 

魔物に向かって手をかざす原始龍。数秒後、眉根を寄せた。

 

「・・・・・駄目です。私の予想を遥かにこの魔物の力は私の力より上回っています。直接、彼の者と零距離で触れないと効果が無いかと」

 

「・・・・・伝説の魔物の力はそれほどまでなのね」

 

「一部、結界を解いて侵入できればよいのですが」

 

ドラゴンの一誠をどうにかするにはそうするしか方法が無いと言う原始龍に、彼女に賭ける一香は小型の魔方陣を展開してロスヴァイセに問いかけた返答がこうだった。

 

「可能ですがあまり時間を掛けれません」

 

「わかったわ。それじゃ結界を解いてくれる?」

 

そう言ってから一拍遅れた後。目の前の結界が消失し、原始龍は威風堂々と魔物に近づき―――あろうことか口から体内に侵入をしたのだ。闇の中を彷徨う感じで歩き続ける原始龍は一誠の気配を頼りに探し回り歩き続ける。その様子を誠達、千冬達二つの世界の者達が静かに見守り続ける。―――数分、数十分、一時間かそれ以上経過したのか分からないぐらいしばらくして、巨獣の身体が光に包まれたことで見る見るうちに小さくなり、何時しか獣の姿は失せて代わりに真紅の髪の少年が気絶した状態で姿を原始龍の腕の中で晒した。

 

「「「一誠っ!」」」

 

元両親と姉が結界が解かれると同時に駆け寄る。こうして事件の幕は閉じたかと思えたがまだ根本的に解決などしていなかった。

 

―――エピローグ―――

 

シュバッ!と目にも止まらぬ速さで千冬は一誠を原始龍から奪還を果たした。だがそれと同時に千冬を取り囲む誠達。

 

「お互い一誠を想う者同士だ。話し合いをしたい」

 

「異世界に一誠を連れて帰る意志があるかぎりその話合いとやらは不成立だ」

 

「今のあなたにこれから、今後どうやってその子をこの世界で過ごさせるつもりなの?」

 

「そこは私とちーちゃんでなんとでもなるよー」

 

千冬の隣に舞い降りながら立つ束が断言した。

 

「今この世界で私とちーちゃんに敵う人間と国なんていないもんね。ISコアもこっちにあるし、いっくんの住みやすい環境なんて鉄砲の引き金を引くより簡単に作れるよ!」

 

「それは力で威してだろう?それじゃ本当に一誠が生きていく住みやすい環境とは言えない。今までのことは世界中にも知れ渡っているはずだ。向こう百年以上も時間が経たねば一誠は世界の敵と認識されたままだ。だけど、俺達の世界は一誠を受け入れてくれる」

 

「へー?異世界ってところに?束さん的には興味あるけどいっくんはそんな世界に行きたくないと思うよ?」

 

「ああ、少しばかりだが話をして分かった。この世界で生まれて家族と離れたくないって言われたところだ。―――だから交渉の余地がある」

 

怪訝な眼つきとなる千冬の耳に、朗らかに笑う一香から発する提案の言葉が届く。

 

「私達の世界に来てくれれば衣食住を提供。望みは何でも叶えてあげれるわ。今の私達の立場はね?大統領よりももっと偉い立場に立っているのよ。だから、百人だろうと千人だろうと異世界に移住しててくれれば今よりももっと住みやすい環境を与え、得られるわ」

 

「・・・・・」

 

大統領よりも立場が上?国をどうにかできる権力を有している元一誠の家族であることを最初は半信半疑だった。いや、疑うのは当然だ。

 

「・・・・・なあ・・・・・」

 

離れたところから、一夏が話の輪に入って来た。

 

「あんたらの世界って実際どんな世界何だよ?」

 

その問いは、待っていましたに口元を揃って緩ました誠と一香。

 

「口で言うより実際自分の目で確かめるべきだと思うぜ少年」

 

「一誠のことを想うなら、一誠の幸せを叶えてやりたいと、想っているなら。約束するわ。期待に反していたら必ずまたこの世界に送ってあげる」

 

徐に二本の指を立てた。

 

「ただし二日の猶予の間、決めて頂戴。その間、私達と異世界に来るものを集めるか。この世界と別れの準備を済ますか限られた時間の中で後悔のないように過ごして」

 

「取り敢えず。俺達はここで待っているからそれまで決めてくれ」

 

 

それからその後、原始龍によって人知れず千冬達は一誠も連れて更識家に戻ることができた。誠達の提案を待っていた楯無達にも伝えた千冬。

 

「異世界、ですか・・・・・」

 

「嘘を言っているとは思えない。事実、この目で一誠と同じ強さを持った人間達を見て来た」

 

「ちょっと待って下さい。まさか、本当に異世界があると信じるつもりですか?」

 

「全てを鵜呑みにするつもりはない。だが、可能性があると思っている。―――だから、この目で確認をする為に私は異世界に行くつもりだ」

 

「因みに私もだよーん!」

 

ちゃっかりとついてきた束も千冬の後ろから抱きつきながら主張する。一夏達は未だに答えを言い辛そうに、思い詰めた表情で口を閉じたままだった。

 

「・・・・・篠ノ之束博士。あなたがコアを世界に返せば一先ず世界の混乱は落ち着くのでは?」

 

「えー?何言っちゃってんのこの水髪ー?私が奪ったんじゃなくていっくんが奪ったんだよー。協力したけどねー」

 

それにー、と言い続ける。

 

「他の国はともかくいっくんの幸せを奪った日本に返すコアなんてないない。勿論、君のISも返す気はないからそこんとこよろしく。それと他の連中もだから」

 

なっ・・・!と一部の少女達は絶句するのを他所にこっそりとラウラや簪が奪取してきた待機状態のISをその一部の少女達に返した。当然、不満な束の目が見逃さなかった。

 

「あー、なに返してるんだよーそこの二人はー」

 

「文句を言うな束。今は一誠の今後のことだ」

 

「うーん、それもそうだねっ☆」

 

では、今後のことを考えようという雰囲気が醸し出す。

 

「お前達はどうする。この世界に戻ってこれるという前提で共に異世界に来るか。それとも異世界を見聞した後、異世界に移り住む覚悟を持ってついていくか。残り二日間の間決めなくてはならない」

 

千冬の真剣な言葉が一夏達に向けられた。一部のISは取り返したが残りの殆どは月の基地に保管されたままだ。今の世界各国の開発・技術力ならば遠くない内に月へ行くことはできるだろう。それまで千冬達はどんな運命の下で生きて暮らしていくのか・・・・・明日のことは分からない。

 

「教官は・・・・・どちらなのですか?」

 

恐る恐ると質問するラウラに「まだ決めていない」と言うだけの千冬。

 

「行ってみるだけ行ってみる。異世界が一誠の幸せと住みやすい環境ならば、考えねばなるまい」

 

「・・・・・そうですか」

 

仮に一誠と千冬が異世界に移り住むと決めたら自分はどうしようかと悩み、葛藤するラウラの耳に飛び込む―――。

 

「私は兄さんと共に在るだけだ」

 

確固たる意志で壁に背を預けて立っているマドカがそう口にした。千冬達の視線は必然的にマドカへ集中する。

 

「なんだ、何かおかしいことを言ったか」

 

「いやそれって・・・・・もしも一誠が異世界に住むって言ったらお前もついていくのかよ」

 

「・・・・織斑一夏。お前の耳はどうやら飾りのようだな。私の言葉を理解できないとはな」

 

(仮)妹からのキツイ言葉に何とも言えない一夏の代わりにシャルがムッと顰めた。

 

「姉さんがどう判断しようとも兄さんの味方で傍に居続ける。私の目標は姉さんを超えるのと同じぐらい兄さんを超えたい目標があるからな―――」

 

その一誠は敷かれた布団の中で静かに箒や簪、本音、霧生に囲まれながらゆっくりと目を開けた。

 

「今の世界は混乱で騒がしい。混乱を収めるには元凶たる兄さんを捕まえようと世界各国は篠ノ之束の捜索と同じかそれ以上に精を出して探し続けるはずだ。そして何時までもこの家に居続けることも不可能だろう」

 

「だから、世界に敵を回しておいて逃げるように異世界へ行くってのか」

 

「逃げる?織斑秋十。先に兄さんの敵になったのは日本という国だ。他の世界はただ巻き込まれたに過ぎない。世界は日本を敵視するだろうしこれから同盟国から外され孤立―――。日本は自業自得の意味で遠くない未来」

 

「―――他国から侵入を受けて領土を奪われ日本という国はなくなるだろうな」

 

マドカの声を遮る一誠の声。

 

「一誠・・・・・!」

 

直ぐに千冬が駆け寄り、一誠の顔を覗き込んだ。自分に向ける変わらない金目と弟の顔を見て安堵する。

 

「一誠、大丈夫か?」

 

「首の下から・・・・・指先が少しも動く気配がない。なんでこうなっているのかも記憶にない」

 

覚えて、ない?とあの巨大な獣になってから一誠は記憶を失っていることに疑問が浮かぶ。

だがしかし、一誠はそれでも健在で千冬達は安心した。

 

「今の俺なら警察か政府に突き出せれるぞ更識楯無?」

 

突然、挑発的な発言を楯無に振るう一誠。力なく笑う一誠を楯無はただ見下ろし続ける。

 

「どうした?多分数日間はこのままの状態だと思うからさっさと任務を果たした方が自分の為と家の為だと思うが?」

 

「・・・・・潔いわね。体が動けるようになってから脱獄できると思ってるの?即座死刑執行されてもおかしくないことをあなたはしたわよ」

 

「前にも言っただろ。死刑される覚悟の上でしているって。俺の中にいるドラゴン達は全部原始龍に捕まってるし頼れるのは束ねーちゃんたちぐらいだ」

 

原始龍という単語に楯無はその人物のことを尋ねた。

 

「あなた・・・原始龍って人のことを?」

 

「あの人は俺と同じドラゴンだ」

 

「いえ、そういうんじゃなくて。知っているの?」

 

「・・・・・知ってるも何も、前世の記憶を持っているんだから知っているだろ普通」

 

「じゃあ、異世界のことも?」

 

異世界のことになると一誠は口を閉ざした。沈黙は肯定と受け取り、異世界について教えてと問うたが。

 

「実際に行けば分かる」

 

と、それだけしか言わない一誠は千冬に目を向けた。

 

「異世界に住むかどうかはまだ決めれないけど、前世の俺が生まれた世界・・・・・行ってみたい」

 

「そのまま異世界に閉じ込める腹かもしれないぞ」

 

「可能性は否定できないけど、嘘吐く人じゃないよ。それだけは断言できる」

 

根拠はどこから・・・・・と一瞬だけ思ったが、前世の一誠の両親であることを思えば、そうなのかもしれないと息を零した千冬は質問する。

 

「一誠、異世界から来た前世のお前の家族達のことをどう思っている」

 

「過去は過去、現在は現在だちぃーねぇーちゃん」

 

指先すら動かせない身体を酷使してまで動かそうとする一誠に千冬と霧生が制するも、

 

「俺は、織斑千冬と織斑一夏、織斑秋十の弟の織斑一誠。そして前世の俺が愛していたリーラ・シャルンホルストは今では俺の大切な女性の一人の霧生さんとなっている。だから、前世の俺は俺であっても・・・・・そうだったりそうじゃなかったりする。織斑一誠は兵藤一誠から誕生したから・・・・・それしか言えない」

 

一誠自身にとっても、複雑な心境で自分自身と向かい合っている。兵藤一誠として接せられても織斑一誠として生を受けた人間である故に困惑するだろう。

 

「頭では割切っているけれど、精神的・・・・・心がまだ整理できない。元家族達に対して態度をこのままでいいのかなって」

 

「・・・・・」

 

徐に一誠の上半身を起こして、背中から千冬は抱きしめた。

 

「お前はお前のままでいい」

 

「ちぃーねぇーちゃん・・・・・?」

 

「あいつらは兵藤一誠じゃなくてもお前を求めていた。お前が兵藤一誠として、織斑一誠として接するべきか考えず、『ただ一人の一誠』として接すればいいだけの話だ」

 

そこまで考えに至らなかった一誠は千冬の指摘に驚いた。そんな事を言う自分の姉にやっぱりと・・・・・。

 

「どうしてそこまで教師に向いているのかなぁ俺達の姉は・・・・・。だから家にいることが少ないんだよ」

 

「褒めているのか。それとも寂しいのかどっちかにしろ」

 

どこからともなく苦笑いと笑う声が生じる。

 

「まったく。一誠は姉離れのできない情けない男だなっ」

 

「おんやぁ~?箒ちゃんだっておねーちゃん離れできてないよねー?」

 

「だ、誰ができてないというのですかっ!?私はできている!」

 

「えー!そんなぁ~。ほら、いっくんとちーちゃんのように抱き合おうよー」

 

「ちょっ、は、離れてくださいっ!」

 

「うし、フォルテ。オレ達も抱きしめ合うか」

 

「せ、先輩っ!?」

 

「か、簪ちゃん・・・・・?」

 

「・・・・・恥ずかしいから嫌」

 

「――――っ!?(ガーンッ!)」

 

「おねーちゃん。ハグハグー」

 

「あなたも乗らなくて良いです本音」

 

何故か抱擁、ハグ、抱きしめ合い大会が勃発してしまった。残された面々は、どうしてこうなったと蚊帳の外にいる気分で立たされた。

 

「何か、盛り上がっているな」

 

「そうだね一誠君」

 

「霧生さん・・・・・?」

 

「ありがとう、私のことリーラって呼んでくれて。物凄く嬉しかった」

 

笑みを浮かべる霧生は四つ這いでにじり寄った。

 

「だから、前世の私と同じように貴方の傍で生き続けることに決めたわ。―――だから」

 

ちゅっ・・・・・。

 

『―――っ!?』

 

「・・・・・っ」

 

霧生は唇を軽くそれでいて深く一誠の唇に重ねた。その結果、一誠を慕う少女や女性達を中心に悲鳴と絶叫が上がり、

 

「貴様・・・・・表に出ろ」

 

「構わないのだけれど、一誠君を守る人がいないと―――躊躇わず襲われちゃうわよ?」

 

「・・・・・っ」

 

主に束辺りがしかねないと悟る千冬は初めて不敵の笑みを浮かべる霧生警戒心を抱いた。

 

「因みに、前世の一誠様を知り尽くしている私はある意味、千冬さんよりも一誠君のことを知っているわ。勿論・・・・・夜の営みもね?」

 

「・・・・・なんだと」

 

千冬の中でさらに束と同じぐらい霧生を警戒レベルを上げた。だが、彼女だけではない。一誠を慕う少女達や女性達も霧生という女性に凄まじい衝撃を受けた。

 

「ふふ・・・一誠君、いえ一誠様・・・・・よろしくお願い致します」

 

「き、きリ、リーラ・・・・・?」

 

「はい、一誠様」

 

ここに来て何故か本能的に霧生をリーラと呼んでしまう一誠。呼ぶ側と呼ばれる側は懐かしさを覚えて・・・・・。

 

「リーラ」

 

「一誠様」

 

噛み締めるようにまた互いの名前を呼びあった。

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