インフィニット・ストラトス~前世の記憶を持つ者~(完結)   作:ダーク・シリウス

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異世界&未来へ

二日後と時を過ごした千冬達は迎えに来た原始龍と件の大陸にいる誠達のところへ赴いた。千冬達を待っていたかのように立っている誠達は開口一番に訪ねた。

 

「それで、決まったかな?」

 

「・・・・・一先ず、お前達の世界とやらを見聞させてもらう」

 

「それから決めるってことか?ま、それも遅くない結果だな。それじゃ、行こうか」

 

原始龍へ首を頷くと翡翠の魔方陣が誠達を囲み、一瞬の閃光と一緒に空へと光が飛んで空間に溶け込んだ。

 

翡翠色の光が空間から飛び出したところは、千冬達が見たことのない町並みの上空だった。

 

「懐かしいですね一誠様」

 

「・・・・・ああ、懐かしい気分を感じる」

 

肌で感じ取っている霧生と一誠は感傷を浸っていると遠くから見える2つの銅像を見つけた。

 

「あれって・・・・・」

 

「トライヘキサとお前だよ一誠」

 

「お、俺・・・・・?」

 

通り過ぎながらでも確認すると、天使の姿に大剣を前に構えている少年の銅像と七つの首の巨獣が対立しているように立っていたのだった。

 

「日本を救った英雄を忘れない為に俺があのクソ親父に頼んで創ってもらったんだ」

 

「一誠が日本を・・・・・?」

 

「ああ、その理由は後で教える。今日はあの日だからな」

 

あの日?千冬達異世界から来た者からすれば何のことだろうかと首を傾げる思いだった。

 

「―――くくくっ。絶対にあいつらは驚くだろうよ」

 

誠のその悪戯を思いついた子供のような笑顔は、何やら不安を覚えずにはいられなかった。

 

 

 

世界最悪の事件から五年経ったこの世界では、世界中の神々や首脳達、王族や貴族達が一つの銅像と石碑の前に集まって黙とうを捧げていた。一誠と交流がある者や縁ある者達もおり、二つの銅像の間にあるそれ等の前でただただ数分間の黙祷を巨大な黄金の鐘の音が鳴り終わるまで続けられた。

 

誰もが忘れてはならない事件を解決した一人の少年をに対する黙祷の鐘の音が終わると一人、また一人と踵返して隣人と雑談も交えながら遠のく―――その最中、翡翠色の光が突如目の前に現れた。

 

「なに・・・・・っ!?」

 

「この魔力と龍の波動は・・・・・・っ」

 

まだ残っていた者達が警戒と愕然しながら臨戦態勢の構えをするが、光の中から誠と一香が現れたことで目を白黒する。

 

「お前ら・・・・・?」

 

「よう、アザゼル達!」

 

「誠殿。これは一体どういうことですか。今回の黙祷を欠席しながら今頃現れるなんて」

 

「ごめんなさいね。ちょっと用事があったのよ」

 

「用事って・・・・・」

 

中年の悪そうなイケメンの男性と金髪で青の双眸の美しい女性と赤い長髪の女性に朗らかに言葉を交わす二人の背後の光の中から見知った女性達が出て来て、最後は千冬達に―――恐る恐ると一誠が出てきた。

 

「「「「「はっ?」」」」」

 

銅像の人物と瓜二つの少年が目の前に現れたことでまだ残っていた一同は絶句する。

 

―――あれは、見間違うはずがない。

 

―――日本を救った英雄の。

 

―――兵藤一誠。

 

アザゼルと呼ばれた中年男性は震える声で一誠に指差す。

 

「お、お前・・・・・一誠・・・・・なのか?」

 

「・・・・・」

 

千冬の言葉を思い出す。お前はお前のままで良い、一人の一誠として接しろ。一誠は姉の言葉通りに接してみようと前世の一誠を知る者達と見て決意する。

 

「久し振り、アザゼルおじさんとヤハウェお姉さんとルシファーお姉ちゃん」

 

前世の記憶で知った目の前の人物達の名前を呼べば・・・・・目尻に涙を浮かべて一誠に駆け寄った。

 

「こ、この野郎ッ!今頃サラッと現れやがってぇええええええええっ!」

 

「一誠君!本当に一誠君なのね!」

 

「今までどこで何をしていたのですっ!?生きていたなら早く私達のところに戻ってきて・・・・・っ!」

 

自分のことを親しげに接して、涙を浮かべながら抱きしめてきたり頭を撫でたりとする三人の大人達の声は水の波紋のように周囲まで広がった。

 

「まー坊・・・・・夢でも見ているのか俺は」

 

「神ちゃん・・・・・私も同じ気持ちだよ」

 

「「一誠君・・・・・?」」

 

「一誠様・・・・・?」

 

「・・・・・バカ息子が。いなくなった理由はそういうことだったのならば・・・・・」

 

「いっくん・・・・・」

 

「一誠様・・・・・」

 

「嘘、本当に・・・・・あの子・・・・・?」

 

「あああ、ああああ・・・・・っ!」

 

「一誠、一誠・・・・・・」

 

老若男女。種別も関係なく、一誠の元へ近づく。信じられないものを見る目で、驚愕、絶句、愕然の他、様々な思いと感情を抱いたり顔に出したりして

 

『一誠!』

 

『イッセー!』

 

ワッ!と我慢ならず駆けた。流石にこれは一誠も焦る。

 

「ちょ、待て!そんな一気に来ると―――!?」

 

 

 

「どうだ?ここが前世の一誠の世界なんだ」

 

「皆、心から一誠を受け入れてあんな風に接するの」

 

一方的な会話と抱擁をされれば胴上げをされ、胴上げが終わればまた会話と一方的な抱擁にまた胴上げというループの光景を千冬達の目に誠と一香の話と共に入る。

 

「・・・・・一誠を胴上げしている者達は」

 

「取り敢えず、小さい頃から一誠と付き合いがあるヒト達だと言っておく」

 

「あ、あんな一誠を初めて見る」

 

「俺もだ・・・・・」

 

無抵抗にポンポンと胴上げをされてる弟に兄の一夏と秋十は目を疑う。自分達が知る一誠は特に女性が人気であるものの、好き放題もみくちゃにされる一誠は見たことが無いと吐露する。

 

「まあ、この世界でも一誠は色々と仕出かしちゃったが。君達の世界よりは確実にマシな方だと断言させてもらう」

 

「何を仕出かした?」

 

「そっちとあまり変わってないかな?ある事情でテロリストになったんだ。で、一時期表に出られなかったけどある事件を解決した境に一誠の印象は変わってそれ以上に英雄視されるようになった」

 

遠い目で一誠と巨獣の銅像を見上げる誠。千冬も釣られて銅像を見上げる。

 

「テロリストになっても、一誠と交流したヒト達からは見捨てず自分の家族のように接してくれた」

 

「・・・・・」

 

「一度、世界の敵に回っても。それでも一誠を信じてくれる者達がいる世界なんて―――最高だろう?」

 

そんな人達は・・・・・自分達の世界にどれだけいるだろうか。弟が胴上げされるほど喜んでくれる者達がいるだろうか?ISの力とISによる利益、利潤、国同士の競い合いで夢中な大人達と女尊男卑の世界に生きる老若男女の人間達が、一誠を快く受け入れてくれるのだろうか?

 

苦悩する千冬の視界に厳格そうな中年男性が誠に近づき、

 

ゴチンッ!

 

「馬鹿息子がっ!孫が生きているということを何故我々に教えんのだ!」

 

「痛ぇーなこのクソ親父!?いきなり殴るこたぁねぇだろうがっ!」

 

「黙れ!誰もが孫のことを想っていたのか分からないとは言わせんぞ!」

 

「五月蠅いな!サプライズだよサプライズ!」

 

「サプライズで今年の黙祷式に欠席する当主がどこにいる!」

 

「ここにいるけど?(ドヤ)」

 

「―――貴様にはまた一から兵藤家の家訓と掟を叩きこむ必要があるな」

 

話からすれば親子のようだ。だが、あそこまで本気の殴り合いをするほど仲が悪いのだろうかと思わずにはいられない。

 

「止めなくて良いのか」

 

「いつものことよ。放っておけば傷だらけで帰って来るわ」

 

日課、それとも日常の一つだと言ってはばからない一香に言葉を失う。

それから小一時間も経過した頃もすれば、すっかり体力と精神力が疲弊した一誠がぐったりとした表情でようやく解放された。

 

「い、一誠・・・・・大丈夫か?」

 

「箒・・・・・大丈夫のように見えるならお前の目は節穴だぞ・・・・・」

 

まだ本調子ではないところ、あそこまで胴上げや抱擁などされれば一誠でなくとも疲弊にするに決まっている。

霧生と箒に肩を支えながら立たされている一誠の背中に黒い着物の胸元を置きく肌蹴させている黒髪の女性と白い着物を着ている女性の淡く光る手が添えられていて、

 

「にゃー、久し振りのご主人様がどうしてこんなに疲弊しているのかにゃ?」

 

「お兄さま、どうしたのですか?」

 

「・・・・・ちょっとな」

 

誰だこの者達は、一誠に馴れ馴れしいぞっ!と乙女の焼きもちを内心開いている箒の心情を知らない一誠は名前で呼んだ。

 

「黒歌、白音・・・・・久し振り」

 

「ほんっっっとうに久し振りね。今までどこで何をしていたのか」

 

「きっちりと教えてもらいますので覚悟をしてください」

 

怒りを孕みながらも嬉しそうに笑みも浮かべる二人の女性と対象的に物凄く不満顔の箒が軽蔑の眼差しで一誠に冷たく言い放つ。

 

「一誠・・・・・随分と親しいのだな。ご主人様とかお兄さまと呼ばれるほどに」

 

「箒、だからな・・・・・」

 

「おーい一誠!家にかえんぞー!」

 

誠が大声で一誠の弁解の言葉を遮る。コクリと頷き、支えてもらいながら足を前に運ぶと黒髪の女性二人が近づいてくる。

 

「あの、代わってもらえませんか?」

 

「はい、かしこまりました悠璃さまと楼羅さま」

 

「どこかで会ったっけ?」

 

訝しむ箒と違い、霧生はあっさりと一誠から離れて女性に明け渡したところで微笑みながら頷く。

 

「リーラ・シャルンホルストでございます」

 

「えっ?リーラさん?」

 

「・・・・・一誠様の傍には常にリーラ様がいましたが、彼女は一誠様と一緒に・・・・・」

 

霧生は一撃必殺の言葉を放った。

 

「楼羅さまのポエムを朗読させていただければ」

 

ポエム?と一誠と箒が揃って不思議そうに首を傾げると、楼羅と呼ばれた女性は耳まで顔を火が噴いたように真っ赤にして焦り出した。

 

「ま、待って下さいっ!?あの事については一誠様には秘密であると―――はっ!」

 

「・・・・・この人、本当にリーラさんだ」

 

なんちう会話何だろうと一誠は、霧生がリーラである認識を植え付けられた二人の女性を見つめる。

 

「箒様、一誠様から一時離れてください」

 

「な、何故だっ」

 

「このお方たちは一誠様の家族だからです」

 

「そうだよ。だからどいてくれない?」

 

なんて物言いなのだろうと怒りを抱く。しかし、

 

「どいて」

 

悠璃から形容し難いプレッシャーを感じてしまい。思わず一誠から離れてしまうとするりと肩を奪われてしまう。

 

「・・・・・いっくんの温もり、久し振り」

 

「はい、もう二度と手放しませんよ一誠様」

 

「~~~~~っ!?」

 

滅茶苦茶、自分の体を一誠に押し付ける二人。完全に身体だけでなく胸まで密着させながら歩くその姿に怒りで理性が吹っ飛びISの部分展開をしてしまった箒。

 

「て、天誅っ!」

 

「ば、待て!?」

 

背後からの奇襲をしかける箒を慌てて制止する一誠だったが、振るわれた刀は止まらず。

 

ガキンッ!

 

―――一誠は箒を制止したのではなかった。箒に敵意を向ける者達に制止の言葉を投げたのだった。黒く禍々しい意大鎌でISの刀を受け止めた悠璃と箒の周囲から刀剣類の武器を突きつける女性達にだ。

 

「いっくん、こいつ本当に誰なの?」

 

「明らかに一誠君を攻撃しようとしてたよね」

 

「んで嫉妬してな」

 

「恋、一誠を守る」

 

「理由によっては許しませんよ」

 

一歩たりとも動けない箒の頬に冷や汗が流れる。明らかな敵意と怒り、殺意を向けられて圧倒的な実力で何時でも殺されてもおかしくない状況を立たされている。何なのだこの者達は・・・・・・!私達の世界に来た者達の中にはいなかった者達にこうもあっさりと・・・・・!

 

「・・・・・頼むから矛を収めてくれ。―――じゃないと嫌いになるぞ」

 

幼馴染をフォローするの言葉。

 

「うっ」

 

「それは・・・・・嫌です」

 

「・・・・・しょうがないな」

 

一誠の鶴の一言で矛を収める女性達だが、箒に対する印象は悪いままだった。

 

「箒、お前のISを持つ理由は嫉妬で俺を傷つける為だったのか」

 

「っ!?ち、違う・・・・・!」

 

「違うなら、二度と同じ過ちをしないでくれ。これはお前の為でもあるんだから」

 

箒の為・・・・・それはいまさっきのように殺されても仕方がない状況。それとも他に何か理由でもあるのかと歩く一誠の背中を見つめる箒はゴンッ!と千冬の拳骨を食らった。

 

前世の一誠の家に大勢が赴いてリビングキッチンにて集い、誠と一香、原始龍から一誠について経緯の説明会が始まった。見た目が兵藤一誠でも異世界から連れて来た前世の兵藤一誠の記憶を持つ織斑一誠であることを主に。

 

「一誠であって、一誠じゃない・・・・・?」

 

「記憶とゾラード達ドラゴン、そんで力を受け継いで転生した織斑一誠という一個人の人間なんだ」

 

「そんな馬鹿な・・・・・あいつは俺達が知っている一誠じゃないって?じゃあ、一誠の姿をした別人ってことかよ」

 

「ですが、別人であってもあの者は彼の者の魂を受け継いでいます。いわば、新しい兵藤一誠として転生した存在でもありますよ」

 

「・・・・・でも、私達とは初対面なのよね」

 

「―――また一から関係を築きあげればいいのです。そうすることで織斑一誠として転生した彼の気持ちと心は以前の兵藤一誠のようになります。よもや、それができないなど兵藤一誠との絆はその程度でしたか?」

 

原始龍からの嘲笑と挑発の言葉は少なからずアザゼル達に刺激を与えた。

 

「さてでは、彼の者の現在の親族から異世界の事を教えていただきましょう。異世界で何が起きているのかも全て」

 

皆の視線はまだ体が思うように動かせない一誠の隣にいる千冬に注がれる。真剣な面持ちで千冬はこの世界を見聞して知り、見極めるつもりでいる。本当にこの世界が一誠にとって過ごしやすく幸せに生きていける世界なのであるかどうかを・・・・・。

 

 

「ここが、前世の兄さんの部屋なのか」

 

「はい、そのまま時が停まっているかのように残っていますね」

 

霧生達は、前世の一誠の部屋に訪れていた。中に入れば、高級ホテルの一室にいるかのような広くて豪華な部屋であった。皆、興味や好奇心で周囲を見渡していると壁に数多く張られている写真を見つけた。どの写真も眼帯をつけている一誠が笑っていたり、誰かと一緒に写っているものが殆どだった。中にはドラゴンだけが映っている写真もあった。

 

「この人達は?」

 

「一誠様の友達や家族、かつて敵だった者達です」

 

「このドラゴンだらけの写真、凄い圧巻ね」

 

「しかし、女と一緒に写っている写真の方が多くないか?」

 

「それは幼少の時の一誠様と交流をしてきたからです」

 

霧生が懐かしげに一枚の写真をどこからともなく手に持っていた。

 

「―――これが、かつての私達です」

 

その写真には誠と一香、前世の霧生(リーラ)と一誠、もう一人幼い子供が写っていた。

 

「これが二人の前世の姿・・・・・」

 

「あの二人が一誠の家族って本当だったのね」

 

「というか、この子供は誰なのサ?」

 

見知らぬ子供について素朴に疑問をぶつけると霧生は淡々と述べた。

 

「一誠様の兄だった者です」

 

「「「「「兄っ!?」」」」」

 

「だった・・・・・とは?」

 

前世の一誠に兄弟がいたことにビックリした一夏達を他所にラウラは過去形で述べた一誠に訪ねた。

 

「兄弟の縁を切っておられました。一誠様とその者は・・・・・いや、一方的に一誠様を弟と受け入れず、存在すら否定した上に包丁を刺してきて仮死状態になったほど重傷を負わせたのです」

 

無表情で前世の一誠のことを語る霧生に一夏達は口を固く閉ざす。

 

一誠が家族を執着する根本的な理由が、いまようやく分かった気がした。

 

前世の記憶が甦る以前はきっと、本能的に仲の良い兄弟でいたいという気持ちを強く抱いていたのかもしれない。それは憧憬・・・・・と呼んでも過言ではない。

 

「・・・・・兄貴はいまどうしているんだ?分かるか?」

 

その質問は、薄らと霧生に笑みを浮かべさせた。

 

「もうこの世にはおりません。事情があって・・・・・前世の一誠様が殺しましたので」

 

『―――――っ!?』

 

 

異世界のことを全て打ち明けて誠達に女性しか使役できないISという現代最強のパワード・スーツ、女尊男卑の世界、自分が認知している情報を告げ終える。

 

「じゃあ、一誠はどうして月で君達と対峙してたんだ?そもそもそれ以前に姉弟が戦っていた理由も知りたい」

 

異世界に来て、ずっと疑問を抱いていたことを二人にぶつけた。横目で一誠を一瞥してこう千冬は答えた。

 

「世界各地にあるISを破壊し、そのコアを全て奪う一誠を止める為だ」

 

「え?」と誰かが漏らしても千冬の口は止まらない。

 

「先ほど言った通り。ISのコアの製造ができるのは篠ノ之束ただ一人。現行兵器を凌駕するISは操縦者より重要で数が多ければ国の軍事力として他の国の抑制、もしくは防衛と抑圧にもなる。だからそのISの核を、しかも堂々と真正面から一誠は500に近いコアを強奪の形で奪う行動を始め世界の敵になってしまったのだ」

 

「・・・・・どうしてそんなことを?」

 

問われるのを覚悟していた千冬はハッキリと告げた。

 

「ISは女性しか反応せず、また自分の手足のように動かせない。それなのに一誠を含め、私の三人の弟達と二人の友人が世界で初めて男がISを動かせるという特異的な事が発覚した。故に日本政府は弟達をIS学園―――ISの操縦者育成を目的とした教育機関に男が操縦できる秘密を研究、検査目的で編入させた。ただ一人、一誠を除いて」

 

「一誠だけ?」

 

「幼少の頃から一誠は芸能界に入り私達の為に仕事をしていた。数年後、親が突然の蒸発して以来ますます人一倍、それも大人顔負けするほど仕事をこなした。しかもまだ中学生だった一誠は高校を飛び級してまで仕事に精を出したほどに」

 

ここまで聞けば誠達は一誠はどういう人物であるか察することができた。全部家族の為に頑張っていたんだと。

 

「飛び級して高校を卒業を果たして晴れて仕事に専念できた一誠にとって、何故また学校に通わなければならないのだと政府に対して反抗的に反発するほどIS学園の編入を拒否をし続けた。だが、政府は何が何でも学園に一誠を入れさせたがっていた」

 

「なんでそこまで?」

 

「今まで女しか動かせない兵器を、男が動かせる異例中の異例だ。一誠達五人の身に何か男でも動かせる秘密があるのではないのかと、他の各国の政府が隙あらば狙いに来ることを日本政府は危険視しないはずがない。だからこそ一誠だけじゃなく他の四人をIS学園に編入させようとする政府の思惑を知ってて尚、一誠は拒み続けた」

 

その結果・・・・・と声音のトーンを落として。

 

「政府は一誠から大切な物を奪った」

 

『・・・・・』

 

「私達兄弟が産まれてから過ごしてきた思い出の家を、私達家族の為に幼い頃からしていた仕事を圧力で芸能界から追放―――全て政府が逆らい続けた一誠に対する強引な手段を取ったのだ。・・・・・だが、一誠が世界の敵になった原因は私にもある」

 

申し訳なさそうな表情を浮かべ、一誠の手を握り締めた。

 

「弟が、家族が私達の為に仕事をしているのに、当の私はIS学園で教鞭を振っていた。家に帰るのは一ヶ月に一、二回しか帰ってやれなかった。いや、一誠も仕事をしていたから一年間殆ど顔を合わすことはなかったか。弟達が学園に通ってから仕事の為、家に帰っても一誠はたった一人・・・・・。だからこそ、一誠はいえと仕事を奪った政府と家族の時間を奪ったISのせいだと、世界からISが無くなれば以前のように家族揃って過ごせる時間がまたできると考えて・・・・・全てのISを破壊してコアを奪った」

 

そこで口を閉ざし、まだ聞きたいことがあるかと誠達に視線で問うた直後。バッと誠達が総立ちする。

 

「あー、原始龍。また異世界に行くことは可能か?」

 

「行けます」

 

「うし、全員で日本の政府を潰しに掛かるぞー。そんで侵略して日本を乗っ取ってやろう」

 

『はーい』

 

―――――まるでピクニックに行く気分で言う誠達に唖然とする千冬の耳に一誠は焦りの声音で催促した。

 

「ちぃーねぇーちゃん。全力で止めて、俺よりももっと最悪なことを仕出かせないからっ」

 

身体が動かせない歯痒い思いをしている一誠がそこまで焦って言うのだ。

今まで襲った企業や基地の人間の命を奪わなかった一誠の行動を無化にしかねない誠達を、戻って来た一夏達と何とかギリギリ止めることができた。精神と肉体の疲労を代償にして。

 

「うん、君達が一誠と対峙していた理由は分かった。―――異世界の日本の政府、潰しても問題ないな」

 

「・・・・・やめてくれ。これ以上の問題を増やさないで欲しい」

 

「あっはっは!大丈夫、どこの誰がやったのか分からないように闇打ちするから安心しろ!」

 

「「安心できない・・・・・」」

 

げんなりと姉弟揃って答える。

 

「だけど、それじゃますます一誠はあの世界の中で生きるのは難しいってことだろう?じゃあ、この世界に住めば問題ないよな?」

 

期待に満ちた目で一誠に問うが、無表情となる一誠は肯定も首肯もしなかった。

 

「日本がどうなろうと関係ないけど。俺の目的は本来のISの在り方を正すのと、家族との時間を取り戻すだけだ。だからまだあの世界でやることがあるからこの世界で暮らすのは考えてない」

 

「・・・・・全部終わったらお前はどうする気だ?」

 

「想像に任せるよ。その後どうするかだなんて、全部終えてから考え―――」

 

ふと、あることを思い出した。それは前世の一誠の親の行動力の凄さをだ。誠の顔に意味深な笑みが浮かび上がり、その表情を見た途端・・・・・一誠は嫌な予感を覚えた。

 

「アザゼル、ルシファー、ヤハウェ。ちょっと話をしたいんだが?」

 

「ああ、多分同じこと考えていただろうよ」

 

「そうね。せっかく異世界へ行き来できる切っ掛けが手に入ったのだもの」

 

「私達神にとっても悪くない話でしょう」

 

二人だけでなく、三人までもが何か企んでいる様子で意図を読めない千冬は一誠に問うた。

 

「何を考えている?」

 

「・・・・・多分、これからの歴史を変えかねない事を考えてるかも」

 

―――一誠の予想は当たっていたが更に超えた事件が起きるのは時間の問題だった。

 

 

 

女尊男卑の異世界の太平洋にある大陸に天から降って来た巨大な光の柱。監視体勢の態勢の海軍達の肉眼でもその光景は捉え、光が全長百メートルの門へと具現化していく様を見届ける。扉の無い門の中央は虹色の光を放つ。摩訶不思議な門の顕現からしばらくして―――虹色の光から拘束された一誠と捕縛したと思しき千冬達の出現により、事態は一変したのだった。

 

 

世界各国の世間の間では世界に混乱と騒動、恐怖を陥れた『罪人』織斑一誠のことで話題と注目する。

コアは未だに取り戻せてないが、ISを上回る一誠の処遇は死刑として法廷で定められた。

だが、死刑執行まで脱走や脱獄される恐れがある。そこで、政府は思い付いた。

 

「抵抗されないように盾を使おう」

 

その盾というのは―――一誠と千冬の体に爆弾を仕掛けることだった。監視体勢の上に妙な動きをすれば、姉の死と自身の死を第三者の手によって行われる。それをどうやって知ったのか楯無がもう抗議したが突っぱねられて政府に相手もされなかった。一方、束達は姿を暗まして各国の政府は相も変わらず草の根を分けて血眼になって捜す状況とは他所に一夏達生徒達は一誠を捕まえた英雄として祀り上げられたが日本は世界から重い責任を負わされる。

 

主にアメリカと中国が苛烈で過激な批判を浴びせ、経済や流通、外交等その他諸々と奈落の底に落ちた感じでほぼ日本は国としての威厳と力は失った。

 

大統領は辞任、アラスカ条約のIS委員会に所属していた日本人も強制的に解雇。さらに一誠に執拗に迫った政府の役員とそれに関わった者達も責任を負いながら辞任を強いられた形で解雇される。そこで新たな大統領が決めなければならないが今の日本と嵐、台風のような当たりの強い風や信頼が失った状態で責任重大な職をしたくないと政府の役員達はお互い擦り付け合うことで住民達は強い不信と不安を抱かざるを得ない。

 

「・・・・・一誠、本当にこのままでいいのか」

 

両手足を縛る拘束具によって身動きができない状態の一誠に話しかける千冬。

起爆装置の首輪を付けられている他、牢屋の壁や天井の至る所に遠隔で操作できる銃火器の銃口が毎日二人を突きつけている。監視カメラも配備されていれば二十四時間監視体勢されているのだった。

 

「・・・・・例え、俺が死んでも結果は見えてる」

 

「・・・・・そうか」

 

弟を抱き絞め続けている姉。あれからどれだけ牢屋に閉じ込められているのか、二人にとっては些細なこと。重要なのは死刑執行まで二人が待つ騒動が起きることだ。

 

「愛している一誠・・・・・」

 

「俺もだよ千冬・・・・・」

 

 

―――死刑決行日。

 

 

ついにこの日がやってきたことで世界は再び放送されないが注目を向けている。場所はあの太平洋にロケットがあった大陸で織斑一誠の死刑が始まる。だが、直接他者の手で行われる訳ではなかった。世界各地からミサイルを放ってこの世から抹消する世界各国の首脳達が考案した方法だ。大陸を囲む軍艦と空を駆る戦闘機。それらの中心に立つ一誠はただただ案山子のように佇んでいるだけだ。

 

「・・・・・この日までずっと大人しくいましたね。どう思いますか艦長」

 

「盾の効果が効いているのか、それとも何か企んでいるのか・・・・・」

 

首の起爆装置が外された千冬は船の船首に立ち、晴天の蒼穹の空を見上げている。

静寂と緊張に包まれている海域に何十隻の軍艦が死刑執行されるまで待機し続け、時がしばらく過ぎた頃だった。

 

「ミサイルが―――日本に向けられて発射されましたっ!」

 

「な―――!?」

 

この海域にいる全ての軍艦にいる艦長に告げられる緊急な事態。執行の時間の十一分も早いミサイルの射出が、日本を攻撃可能な各国のミサイル二三四一発。それらが一斉にハッキングされ、制御不可能に陥り―――発射されたと報告を受けたのだ。

 

「馬鹿なッ!!!それではまるで―――!」

 

十年前に起きたあの事件と酷似しているではないか―――!と艦長の叫ぶ声は千冬の耳に届かない。

艦長の焦燥の気持ちは日本にいる人々にも抱く。誰もが混乱と絶望の真っ只中に陥り、蜘蛛の子が散るように我先へとどこか安全と思しき場所まで迷走を始めるのだが、逃げ場などありはしない。

 

 

だが―――突如空の色が神秘的な神々しい光に照らされ他と思えば、純白の天使のような翼を羽ばたかせ一つのミサイルが何者かによって撃墜された。

 

「おうミカエル!ちゃっちゃと全部壊して迎えに行くぜっ!」

 

複数のミサイルを同時に破壊した男性も微笑みながら肯定する。

 

「そうですねユーストマ殿。他の者達も一つ残らず破壊してください」

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

空から続々と白い翼を生やす者達が舞い降りて、日本に向かうミサイルを迎撃し撃墜していく一方。

 

「まったく、人間の行動力は驚かされるな。あらよっと!」

 

常闇のような黒い十二枚の翼を生やす中年男性が光る巨大な槍を放ってミサイルを一掃する。

 

「―――おうお前ら!撃ち漏らすんじゃねーぞ!」

 

「「「「「御意に!」」」」」

 

黒光りする暗雲から黒い翼を生やす者達もまた日本を守る姿勢で現れる。更には―――。

 

「ここが異世界。変わらない空と風景に光景だね」

 

「感心に浸っている場合じゃないですよ?」

 

「―――この作戦を完遂しなければならない」

 

「そうね。全てはあの子の為に・・・・・」

 

「皆ー!いっぱい壊して日本を守ろう!」

 

「「「「了解です!」」」」」

 

蝙蝠のような翼を生やす者達も暗雲から現れ、ミサイルの迎撃を行う。

 

「さーて、俺達も負けずに壊すぜ!」

 

「ふふっ、ミサイルを壊す経験は初めてだから楽しみだわ!」

 

どこからともなく―――誠達も参戦して笑いながら破壊し回る。

 

誰もが空を飛翔し、全てのミサイルを摩訶不思議な力で撃破した者達にその光景を見ていた者達は唖然とした。

この緊急事態を昔起きた事件よりも凌駕する驚きの事件なのは明らかである。

 

 

それから人間とは異なる存在達は日没前にミサイルから日本を守り切ってみせた。英雄として受け入れる以前に畏怖の念を抱き一般市民達は成り行きを見守るしかなかった。

 

「おうおう、なーに緊張してんだ。トップの男ならドンと胸張ってろってんだ」

 

「まあまあ神ちゃん。初めての会談だから仕方がないよ」

 

日本政府、辞任したばかりの大統領が呼び出され意匠や装飾が凝った鎧や衣服を身に包む異なる存在達と相対する羽目になっていた。背中に翼を生やしていたり頭上に輪っかを浮かせている者達とだ。

 

「日本を守ってくれたことに全ての日本市民の代表として深く感謝の念を抱きます」

 

「あー、堅苦しい礼儀はしなくていいって。俺達はある目的で異世界から来たんだからよ」

 

「い、異世界・・・・・?」

 

「はい、その通りです」

 

柔和に笑むミカエルが虚空から弾ける光から一枚の紙を手にし、それを大統領に差し出す。それには和平や協和、様々な事項が記された契約書みたいなものであった。

 

「我々全員は、この世界とは違う異世界―――パラレルワールドともう一つの別世界から来ました。そして、この世界に来た理由は私達異世界の者同士の友好を結びに来たのです」

 

突拍子も無く異世界から来た者が友好を結びに来たと言われ困惑する元大統領。

 

「先に申し上げさせてもらいますが、我々は侵略はする気などございません。人類史上・・・いえ、地球が誕生して以来初めて異世界に行き来できる術を得たのでこれを気にこの世界と和平と友好を求めたくなったのです」

 

「そういうこった。今すぐ俺達と友好を結べとは言わない。俺達のような存在が、異世界の存在がいるという認識をしてもらいたいだけよ。それからだ。今後、この世界の人類とこっちの世界の人類と交流して深い繋がりを結ぶ。これが我らが神、ヤハウェ様の御考えだ」

 

日本が初めて異世界の存在との交流を果たす―――。その未来を見据える元大統領は頭をフルに使って今後のことを考えてみた。そして、あることを問うた。

 

「あの織斑一誠は・・・・・化物はあなた方の世界に存在するのですか」

 

そんな問いをした次の瞬間。空気が凄く重苦しく感じ取った元大統領。ミカエルは道化を演じた。

 

「化物、とは?」

 

「・・・・・いま、日本は織斑一誠という人の皮を被った怪物によって立場が失われようとしている」

 

大統領がこれまで起きた経緯を吐露し始める。ISという兵器について問えば簡略的に説明してそれも含めて現在の状況も話したのだった。

 

「なるほど・・・・・ですが、異世界から来た私達からすれば。少々強引過ぎたのでは?」

 

「今ならそうだと思いますが、数少ない男性操縦者をみすみす放っておくことはできないのです。上に立つ者として、あなた方もそれを理解できるはずだ」

 

「確かに。我々も放っておけない状況になれば全力で行動します。しかし、今回の一件は身から出た錆。あなた方政府の対応があまりにも不適切であり、自業自得のようなものです。大人の事情で無理強いしてまだ子供の人生を変えようとしたのですから」

 

超越者―――天使に言われる大統領の口は重く閉じた。

 

「この世界にとっては確かに希少な存在かもしれません。我々が口出すことも野暮でしょうが、それでも世界が違えど同じ人類がいる世界にいてトップに立つ者として、あまり横暴だと考えます」

 

「・・・・・」

 

「それと、先ほどお話しいただいた中で怪物の処刑について―――人間の兵器では殺すことはできませんよ」

 

元大統領は目を丸くしながらも怪訝な気持ちを目に籠めてミカエルに注ぐ。

 

「我々の世界にも怪物、ドラゴンは存在しますが。人間が作った兵器、それも核弾頭で倒そうとしても傷つけることも難しいです」

 

「首に・・・・・直接爆弾を付けてもですか」

 

「ドラゴンの鱗は軽く鋼のように硬いです。爆破しても鱗が焦げるかほぼ無傷で生き続けますよ」

 

「・・・・・では、天使である貴方にあの怪物を処刑してもらえませんか」

 

天使、神は人間の味方であると世界共通の認識でミカエルに求めた元大統領の気持ちと考えとは真逆に。

 

「いえ、こちらで引き取らせてもらいます」

 

「―――はっ?」

 

引き取るだと?あのとてつもない怪物を?ミカエルの発言で思考が半ば停止し掛けた元大統領。

 

「滅ぼすことは確かにできますが、お話を聞かせてもらったところ。どうやらその怪物は死後、何時しか復活を果たすほどの強いドラゴンのようですね」

 

「ふ、復活・・・・・?」

 

「はい。ドラゴンは復活することがあります。ですので、ドラゴンを倒す時は魂も刻みつけるほどのダメージを与える他、封印をしなければいけないのです。それ等を、あなた方はできますか?」

 

試す言い方で質問するミカエルの隣に座っていた鎧を身に纏っている筋骨隆々の中年男性のユーストマも口を開く。

 

「ドラゴン退治なら、俺達の方が慣れてるぜ。俺達の力だったらそのドラゴンもなんとでもなる。力を極限的に封じることもだってな」

 

それを聞き元大統領は思案顎でしばらく黙りこくった。

 

「ですが、我々としては容易に殺生などしたくない。怪物とはいえ個の生物。無力化して監視の下に置けるのであれば、責任をもってそうさせてもらいます」

 

「もしも許してくれるなら異世界のありとあらゆるの情報と技術をこの世界に、この日本に提供してもいいぜ。ただし、軍事や破壊兵器等の技術を除いてな」

 

日本に異世界の技術が手に入る。これから異世界の存在達と交流をかわせば、日本は他の国よりも一歩も二歩も先に進展や発展が望めるかもしれない。一誠もどうにかしてくれるという。

 

「それにサインするかどうかは後にして、俺達にそのドラゴンを引き取らせて欲しい。その了承を今欲しいんだがどうだ?」

 

「・・・・・」

 

元大統領は・・・・・悩みに悩んで、数日後―――。決定を下した。

 

日本は他国を差し置いて世界で最初に異世界の技術を手に入れ、異世界と行き来できる術も手に入れた。

それは日本が異世界から来たトップ達の要望に応じ、協和を結んだ意味をするのであった。しかし、異世界の技術を独占などできるはずもない。だが、先に協和と和平を結んだ日本である為、今回の事件の一件を全て水に流すのであれば提供してもいいと言う条件を突き出したことで、世界各国は日本に対して苦虫を噛み潰した他、様々な負の感情や気持ちを抱きつつも受け入れたのであった。

―――さらに、一誠の身柄は完全に異世界の者達へ引き受けさせたことで二つの世界の友好の懸け橋となる。

 

 

 

「上手くいったな坊主!これでおめーは晴れて自由の身だぜ!」

 

「色々と規制や制限が課せられるけれどね。あ、この世界だけだからね?私達の世界だったらうんと羽を伸ばしてもいいから!」

 

「「これで娘達と晴れて!ようやく!結婚だー!」」

 

孫の顔が見れるー!ワーイ!と二人の中年男性がその場で小躍りするほど喜びを全身で表す。

そんな二人の―――魔王と神王を見て一誠は複雑極まりない心境を胸中に抱き顔にも浮かべた。

 

「・・・・・何でそこまで俺の為にするんだか」

 

「「「「「お前(キミ)(一誠)(イッセー君)だから!」」」」」

 

一同一斉に声を揃え、異口同音で真っ直ぐ一誠に向かって言い切った元家族達。その中で誠は心底嬉しそうに浮かべた笑みで固めた顔のまま近寄りこう言う。

 

「さて、一誠よ。お前の為に動いてくれたみんなに何らかの形でも感謝をしなきゃな?」

 

「・・・・・どうせ、家族に戻れって言いたいんだろう」

 

「ああ、そうだ。―――と、言いたいところだが今のお前は織斑一誠だ」

 

頭上に疑問符を浮かべ怪訝な目付きで誠を見る。

 

「お前は織斑一誠として兵藤一誠の生まれ変わった存在だ。だから、他の四人も含めて俺達の養子となってほしい」

 

「養子になれば、私達と交流の懸け橋として更に貴重となってこの世界の国の人間にも手出しはできなくなるわ。そして織斑から兵藤に変わって、あなたは仮初でも私達の子供に戻れるの。私と誠はそれを今望んでいるわ。駄目かしら?」

 

誠と一香からの提案もとい要求に一誠は口を閉ざしては沈黙する。スッと視線を千冬にマドカ、一夏と秋十に変えて向けた。どうしよう、どうすればいい?と訴えた。

 

「・・・・・私は、兄さんの傍に居続けるだけだ」

 

マドカが一誠にそう言い返した。

 

「まあ、苗字が違うだけで弟の前世の両親が義理の両親となるのは緊張するが・・・・・」

 

「これからの事を考えれば、新しい道に進んで生きるのも悪くないか」

 

秋十と一夏は朗らかに答えた。最後に千冬は・・・・・。

 

「私が言いたいことは弟達が代わりに言ってくれた。だが、敢えて言わせてもらう。一誠、お前はもう一人にしない。これからはずっと一緒だ」

 

「おっとぉー!私とクーちゃんもこれからもずっと傍にいるからね!忘れちゃ駄目だよーちぃーちゃん!」

 

「ふふ、私も一誠君から離れるなんて気はないわ」

 

「弟君の傍にいれば楽しいことが起きそうなのサ」

 

そう言う千冬に言いながら一誠に抱きつく束、一誠に触れながらナターシャとアリーシャもついていくと言うと。

誠が笑った。

 

「おう!何人でも構わないぜ!一誠は大勢の女を魅了して虜にしたから心も寛大だからな!」

 

「な、なんだとっ!?一誠貴様、そこまで最低な男に成り下がったのか!」

 

鬼気迫る勢いで食って掛かる箒に対し、心外だと言わんばかりに呆れた風に言う一誠。

 

「・・・・・それは前世の俺だから関係ないよ。それにこの世界じゃあ今の俺に公で好きなんて言える女性はいないだろ」

 

「いるよー!私やちぃーちゃん、まどっちやクーちゃん等々、箒ちゃんもその他もいっくんのことが大好きだからねー!」

 

束の発言で一気に火が燃え盛るように「な、なぁっ・・・・・!?」と羞恥心と照れで顔が朱色に染まった箒を見て周囲は笑う。

 

「ねっ、ねっ、いっくん。箒ちゃんのこと女の子として好き?嫌い?」

 

「・・・・・嫌いになる理由がないよ束ねーちゃん。むしろ逆だ」

 

「―――――っ!?」

 

「うふふ!良かったねー箒ちゃん!これで姉妹ど―――!」

 

「一誠ちゃん!早速娘達との結婚式を挙げようじゃないか!」

 

「善は急げってな!」

 

「―――ちょっと待て!?いきなり結婚だなんて気が速過ぎる!お前らだって生まれ変わりとはいえ、俺と結婚は躊躇するだろう!?」

 

束の声を遮って神王と魔王の発言によって場が急に盛り上がった。

 

「ちょい待て二人とも。まず一誠はリーラと結婚しなきゃならないんだ」

 

「こればかりは先約がいるものよ」

 

異議ありと霧生と一誠の結婚式が先だと断言した二人に、

 

「け、結婚・・・・・い、一誠君、一誠様と・・・・・はぅ」

 

「霧生さん!?」

 

霧生は幸せ絶頂で気絶したので慌てて介護する一誠を・・・・・。

 

「一誠、死ぬまでずっと一緒なのだから・・・・・私の初めてを奪った責任を取れよ」

 

「ち、ちぃーねぇーちゃん!?」

 

「「「「「は、初め・・・・・・ええええええええええええええええええええええええっ!?」」」」」

 

千冬が最後に爆弾発言を落としたので一気に混沌と化したのであった。

 

―――2年後

 

開けっぱなしで吹く風で揺れる薄い生地のカーテンが掛けられている窓から部屋に差して照らす太陽の光。

部屋の中には健やかに眠る赤子が敷かれた布団の中にいた。その赤子を見守る男女の二人。

 

「よく寝るな」

 

「寝顔がよく―――に似てるよ」

 

「寝顔だけか?」

 

「今のところは、な」

 

微笑ましく赤子の寝顔を見ながら語り合う男女。すると女は何かを思い出したように言う。

 

「しかし、本当に私達が結婚するとはな」

 

「嫌だった?」

 

「ふん、嫌だったらお前と結婚など・・・・・愚問なことを聞くな馬鹿者」

 

不機嫌そうに顔を男から逸らす女の背後から優しく包むように抱きしめた。

 

「世界最高の女性とずっと一緒だと思うと幸せを感じるよ」

 

「『私』だけじゃないがな」

 

と、皮肉めいたことを言う女に「野暮なことを言わないでくれよ」今度は男の方が拗ねた風に言い、それから沈黙が保った。

 

「・・・・・」

 

しょうがない奴だと呆れつつ、女は身動ぎ男の腕の中で体の向きを反転。互いの鼻先が擦れる程の距離となった二人は、女の方から顔を寄せて男の唇に唇を重ねた。                                                                               「わかってる。お前の本質はそうであることをな。だから皆、幸せでいられる」                                                                  男の方から唇を女の唇へ落とした。女は抵抗も無くキスを受け入れ、熱と想いを感じる。                                                              「これからも全力で幸せにしてみせるよ」                                                                                   「ふっ・・・・・この私を手放すなよ?」                                                                                   挑発的な笑みを浮かべるも、どこか嬉しそうで楽しそうな感じの女に釣られて不敵の笑みを浮かべる男。                                                                                                                                                                                                

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてどちからでもなく二人は口を開けて真っ直ぐ相手に告白した。愛と絆の告白を。

 

「―――――愛してる、千冬」

 

「―――――愛してる、一誠」

 

 

~~~fin~~~

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