インフィニット・ストラトス~前世の記憶を持つ者~(完結) 作:ダーク・シリウス
「まったく、お前は場の空気を読むことができないのか」
「それ以前にあんなことをいうちーねーちゃんが悪い。サプライズって何だよ。襟を掴まれて引きずられて半ば強制的に連れ込まれた俺の意志はないのかよ」
放課後、学校外に出てどこかへ赴く千冬の肩を並んで歩く一誠は少し不満げに言う。
「で、どこに行こうとしているのさ」
「アリーナだ。試したいことがあるからな」
「アリーナ?」
ドーム状の建造物に向かっていることを知り、理由は不明でどうして行くのか頭に疑問符を浮かべつつ、辿り着くや否や、ごごんっ、と鈍い音がして、
「流石は山田先生だ。良いタイミングで用意してくれた」
千冬が意味深な発言をする余所にそこが開く。斜めに噛み合うタイプの防壁扉は、尾も異口同音を響かせながらゆっくりとその向こう側を晒していく。
「ちーねーちゃん、これは・・・・・」
「もう察しただろう」
いちいち口にせず鈍色の塊が千冬と一誠の前に現れる。
「ISだ」
「・・・・・」
待機の状態で鎮座するISを前に緊張と当惑を抱く一誠。千冬が試したいと言う言葉の意図は、二人の兄がISを動かせることができるなら、その弟である一誠もそうであるのか否か試す。そういうことなのだろう。
「どうして俺に?」
「野次馬共がお前にISを動かせるかどうか聞かれているだろうからな。なら、肯定か否定の材料を用意し明らかにするべきだと判断した」
「・・・・・できれば、否定の材料が欲しいかな」
普通ではないISを動かしているが、始めて従来のISの試運転ができるか試し、本心から述べる一誠の腕はISへ伸びる。束の助手としてISに興味はないと言うと嘘になるが、厄介事に巻き込まれること面倒極まりないのでご免被りたい一心の少年の手が、冷たい金属に触れた―――。
「くそぅ・・・・・俺もこんな星の下で生まれたのかぁ」
結果、織斑一誠君は普通のISも動かせる五人目の男となりました!
「馬鹿者が、少しは誇りに思え。非公式であるがお前は五人目の男に成ったのだぞ」
「こんな破壊兵器を手足のように動かせて誇りに思う男は世界に混沌と絶望を望む悪役だけだ!」
呆れる千冬に全力で否定する一誠。
「勘違いするな。ISは破壊兵器ではない」
「破壊兵器じゃなければ何だって言うんだよ。一二二一のミサイルをぶった斬ったISが存在していたんだぞ。それにISの装備一つでも人の命を軽く奪える性能と威力があるんだ」
「・・・・・」
「俺だってISに襲われた。とてもじゃないが、ISを『スポーツ』として受け入れない。これは、人に恐怖と絶望を与える破壊兵器でしかない」
苦い顔でそう言い切る一誠を、第二回モンド・グロッソの当時を思い出す千冬も何とも言えない気持ちとなる。
「なあ、ちーねーちゃんはどうして突然IS乗りになったんだよ」
「・・・・・」
「あの時の頃は今みたいに裕福じゃなかったけど、一緒にそれぞれ働いて金を溜めていたんだ。貧乏じゃなかったはずだ。ちーねーちゃんがISを乗る理由だってなかった筈だよな」
どうして、なんでだよ?一誠の疑問を無言で貫き、黙秘をし続ける千冬。答えてくれる気配を微塵も感じない姉に対して弟の一誠は顔に影を落とす。
「・・・・・何もちーねーちゃんが世界最強のIS乗りじゃなくてもよかったのに。昔の方が楽しくて幸せだったよ。家族四人で暮らしたあの時の方が。今は・・・・・寂しいだけだ」
駆動音を鳴らしながら、ISのスラスターにエネルギーを送って噴出、ビットから外へと飛翔する。
「・・・・・昔の方が幸せだった・・・・・か」
日本製の量産型IS『打鉄』を纏い、飛行テストとばかり飛翔した少年に一拍遅れて別のビットから新たなISが現れた。水色のカラーが主体で、水のドレスを着ていると思わせるISを動かす少女が朗らかに声を掛けてきた。
「こんにちは織斑一誠君。どう?初めてISを乗って動かせた気分は?」
「・・・・・ISに拒絶されたかったと言っておくよ」
「あら、意外な事を言うのね。どうして?」
「愚問なことを聞くな。人を殺せる兵器を動かせて楽しいと思うか?」
水色の髪に赤い瞳の少女の問いに飛び続けながら答える。
「ISは人殺しの兵器じゃないわよ?」
「数年前のとある紛争地域でISが投入され鎮圧されたけど、それはどういう意味なのか分からないわけじゃないだろう?」
「・・・・・」
「抵抗した者は射殺されたともニュースで知った。ISは人を殺せる威力がある兵器だ。俺も過去にISに乗った女に襲われて死に掛けた」
少女に対面したまま一誠がISに対して抱いている思いをぶつける。
「だから、ISに良い感情は無い。整備するだけならまだましも、人を殺す為にISを触れていると思うと嫌気は吐き気がする」
「・・・・・君はISに対して好きじゃないことをよくわかったわ。でもね、ISの存在で救われた―――」
「今の世界は女尊男卑に変わり、男が女に疎まれて幸せだと、世界中の男がそう思っているなら、女は何様何だって思うがな」
肩を竦め、少女に向かって言い続ける。
「俺はISの存在で大好きな姉や兄と離れ離れになる時間が多くなって、ISに奪われたと思うと酷く残念に思うね」
「なら、ISを動かせた五人目の男の子として君も学園にくれば問題は解決―――」
「馬鹿か?」
「ばっ―――!?」
アサルトライフル『焔備』を召喚して、戦闘態勢の構えをし出す一誠に少女が条件反射で距離を置き始める。
「俺は家族の為に芸能界に入ったんだ。学校だって飛び級して高校も卒業を果たした。全部、家族の幸せの為に仕事をして金を稼いで、楽しい生活を暮らす為に―――俺は、一生懸命頑張って仕事をしてきたんだ。それを・・・・・」
一瞬で超高速移動状態へと移った一誠が少女の懐へ飛び込んだ。
「な、『瞬時加速イグニッション・ブースト』!?」
素人、それも初めてISに乗った男の初心者ができるはずのない技術を使ったことで少女は驚く。
「ISが奪ったんだよ」
アサルトライフルで攻撃するのではなく、相手の腕を掴み、逃げれなくする一誠がそのまま押し出しアリーナの壁へとぶつける。零距離からの射撃か、と少女が警戒して反撃を試みようとした矢先、鉄の拳が思いっきり少女の腹部へと打撃の威力を与えた。
「がっ・・・・・!?」
「因みに」
もう一発、
「俺は小学校の頃から筱ノ之束の助手をしていた。ISの知識や戦闘技術のことならもう熟知している、今日初めてISで戦闘するけどな」
「―――っ!?」
「だからこの距離なら、お前を逃がすことは絶対にない。逃げられたら俺の負けは決定だから」
召喚したアサルトライフルは一誠の背後に捨てられていて、一誠の武器は金属音を鳴らす拳。
「―――ふっ!」
ドガガガガガガガガガガガッ!
マシンガンのごとく二つの拳が絶え間なく少女の腹部、胸部、顔へと炸裂する最中、少女を守るように水が覆い始める。それから水によって拳が阻まれ攻撃が通らないことを悟りやむを得なく後退する。
「やって、くれたわね・・・・・乙女の顔に殴るだなんて、とても有名なアイドルがするような行いじゃないわ」
「ISに乗った時点で戦いに男も女も関係あるのか?」
「・・・・・ふふっ、言うじゃないあなた。その躊躇いの無さと実力行使は感嘆の一言だわ」
「あっそう。そんじゃ、俺はもう帰るわ」
―――――はっ?
唐突に帰ると言いだす一誠はこう言った。
「大体ISのことは理解している。それにやっぱり動きにくい。生身の方が速く動きやすいな」
宙に浮きだし少女に感謝の念を伝えるお辞儀をした。
「練習相手になってくれてどうもありがとう。もう会うことはないと思うけど、変わりに俺の二人の兄が世話になるよ。名も知らぬ女子学生さん。じゃ、さようなら」
言うだけ言ってビットに戻る一誠を唖然と見送ること数秒。驚かされて少しだけ良いように攻撃をされて、少女に何にも反撃すらさせず、自分勝手で終わらせて帰った相手に―――。
「ふ、ふざけないでよぉおおおおおおおおおおおおおっ!?」
完全に怒った。
「へぇ~いっくんも普通のISをも動かせちゃうのかー」
モニターに映る戦っている姿の一誠を見つめ、女性は満面の笑みを浮かべる。
「えへへ、嬉しいなぁー。流石は私の助手だよね」
一誠を助手と呼ぶのはこの世でただ一人。
「よーし!いっくんのことを世界中に教えちゃおうかな!そしたらもっと注目されていっくんは世界の大スターになるんだ!」
迷惑以外何ものでもない行動が一誠に頭を抱えさせる原因になることをこの時の女性はまだ知らない。
―――♢―――
『ISを動かせる五人目の男が発見!その名も超有名芸能人の織斑一誠!』
「・・・・・」
バサリ、と乾いた音が零れ、頭が真っ白になっている少年を周囲の大人の人達が興味有り有りな視線を向け続ける。メイクアップアーティスト専属にヘアメイクされているところで新聞の記事を読んだ瞬間、デカデカと記事に載っている部分を読んで愕然とした。
「あ、あの一誠君・・・・・君、本当にISを動かしちゃったの?」
「・・・・・ノーコメント」
髪や顔にヘアメイクしてくれる専属の女性から聞かれ、黙秘権を行使する。ぶっちゃけ、一夏と秋十がISを動かしちゃった件でも、「君なら~?」「君も~」といった具合に聞かれることが多かった。それが自分までもISに関して注目されては信憑性は高まり、決定的になってしまったのだ。
「霧生マネージャーさん」
「はいはーい」
白銀のロングヘアーに赤いメッシュを入れた透き通った水色の瞳の女性が近づく。
「表に出る仕事と、ゲストとして出る筈だったニュースの仕事、キャンセルで」
「え、それはちょっと・・・・・お姉さん困るかなー」
それが今日、朝から晩まであるんだけどー、とスケジュール表のメモを見ながら困惑するマネージャー。
「こっちも同じ質問を受けて同じ答えで返すのが火を見るより明らかで面倒極まりなく嫌なんだよ。今でも二人の兄のことで質問攻めを受けているし」
ジト目でマネージャやスタッフの人達に視線を向ければ一誠から目や顔を背ける始末。
「全部じゃなくて良いから、いくつかキャンセルしてくれない?心労と精神的に身体が保たないんだ」
「うー・・・・・じゃあ、番組の人達と掛けあってみるよ。それでも駄目だったら、ゴメンね?」
「ん、それだったらしょうがないかなぁ。はぁ・・・・・絶対面倒事が起きる。帰って寝たい」
「(一誠君の寝顔GETのチャンス!)じゃ、じゃあキャンセルした分、一誠君はゆっくり休みなよ。後は大人の私達が頑張るからさ」
肯定と首を縦に振る少年に笑みを浮かべ、マネージャーは早速奔走する。
「・・・・・はぁ」
悩みの種ができてしまった、千冬は職員室の中で新聞の記事の内容に溜息を零した。どうして世間に知られたのか思い当たることはなくはない。余計なことをしてくれたとここにはいない頭がファンタジーな兎に恨めしい思いを禁じ得ないでいる。
「織斑先生・・・・・弟さんはどうなるのでしょうか?」
「・・・・・本人がその気でなくても、政府があいつの意志を無視してでもこの学園に来させるだろうな」
「ですよね・・・・・仕事と両立の生活を送ることになると大変ですよ」
「そうだな・・・・・私以上に苦労をしているあいつにとっては、嫌がらせどころか親の仇のように思っているだろう」
麻耶と会話を交わしつつ、政府の対応次第で一誠が何を仕出かすのか薄らを分かってしまう。本当に実行してしまった時のことを考えると、また誘拐された際の一誠の周囲に起きたあの惨劇が起きかねない。そうなれば今度こそ一誠は・・・・・。
「―――やってくれるな、束め」
―――♢―――
晴れてIS学園に入学をした一夏と秋十が二十数人女子という中で、狼の群れに放り込まれたような似た気分を味わっている他所に一誠は不機嫌な顔を浮かべていた。世間が落ち着きを取り戻し始め、何時も通りの注目の度合いに戻ったことを幸いに外でドラマの撮影を共演者達としていたところに政府の役人達が撮影中に現れた。
「織斑一誠君。撮影中で悪いが我々と一緒に来てほしい」
「帰ってください」
躊躇いもないと思わせる拒絶をする一誠だが、役人達は聞く耳は持たないと近づく。
「今は仕事中だ。あんたらも仕事で俺のところに来ているだろうが、俺は政府の言いなりに何かなる気もない。仕事の邪魔をしてくれないかな?」
「君は今自分の立場と状況を理解していない。ISを動かせる男を野放しにするほど政府は甘くないのだよ。それに護衛も無しにこんなところで撮影をして、各国の政府の手の者に狙われたらどうする?無関係な者達にまで被害が出たら君の責任として負われるのだぞ。それでもいいのかね」
「・・・・・」
「そうならない為に、そうなることを事前に防ぐ為に我々は最大の君を迎えに来たのだ。撮影は中止だ。直ぐにでもIS学園に通ってもらわなければ困る」
この光景に共演者やスタッフ、監督達はただただ当惑気味に佇むことしかできず、一誠と役人達の会話を介入せず見守ることしかできないでいた。このままではドラマは中断せざるを得なくなる―――。
「俺は芸能界を引退しなくちゃいけないのかよ?」
「その方が政府も好都合だろう。自ら狙って下さいと言っているような仕事をせずとも日本と政府に力を惜しまず貢献すれば不自由なく生きていける」
「俺の場合、自由を拘束されていると感じて不自由さを覚えるんだが?」
「時には不自由さも感じるものだ。さあ、我々と―――」
伸ばしてくる手は一誠の肩を触れる前に、一誠の手で弾かれた。
「断る。IS学園という保護施設もとい隔離施設に入れられるのはゴメンだ。それに今の俺は高校を飛び級で卒業している。何でまた高校に入学して無駄な三年間を過ごさないといけない?」
ドンと自分の胸を叩き、胸張って断言する。
「俺は今の立場と仕事に誇りを持っている。途中で仕事を放り出すわけにはいかないんだよ。ISの操縦者になることよりも、楽しみに待っている人達の期待と信頼を応えることに優先する」
威風堂々と述べた少年を仕事仲間達が「おおっ・・・・・」感嘆を漏らす。政府相手に啖呵を切る人は初めて見たと反応をする面々は一誠の心構えに感動をする。
「・・・・・これは決定事項だ。政府の決定に従わなければ、お前は不安要素の反乱分子として認識され兼ねないのだぞ。―――それでもいいのかっ!?」
「俺の説得をする者として不足なんだよ。強行手段も取るなら、姉であるブリュンヒルデも連れて来なければ俺は絶対に動きもしないぞ」
ポケットから防衛の為と持っていたスタンガンを取り出して電源を入れる。
「来るなら来いよ政府の下っ端さん。俺はブリュンヒルデに鍛えられたこともあるからお前ら程度じゃ負ける気はしないぜ」
「・・・・・っ」
目が本気な一誠を見て、苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべる役人達。話し合いの余地もなく、実力行使をしても役人側の敗北の色が濃い。
「・・・・・お前の事務所に圧力を掛けて、仕事を辞めさせることもできるのだぞ」
「そうしたら、政府が圧力を掛けて俺を芸能界から追放したと報道陣に言ってやるよ。実際?そうなんだしさ」
「・・・・・ガキがッ」
怒りに満ちた顔で睨むもどこ吹く風で一誠は軽くその睨みを受け流す―――。
「い、一誠君・・・・・政府に反抗的で大丈夫なのかい」
「監督、俺が今大事な時期に抜け出されちゃ困るでしょう」
役人達が引き下がってからドラマの監督が恐る恐る声を掛け、苦笑いを浮かべる一誠はハッキリと告げた。
「さ、監督。撮影の続きをしよう。邪魔者のせいで終わる筈だったシーンはまだ終わらないままだ」
「あ、ああ・・・・・君がそう言うならいいけど、政府は君を黙って見過ごすとは思えないよ?どうするんだい」
「まあ、そんな時はそんな時になってから考えるよ」
「・・・・・そうか。彼は拒絶したか。さて、困ったものだねぇ」
政府の上役が顎髭を擦りながら苦笑いを浮かべる中年の男性。二人の兄のように受け入れてくれると思っていたが、予想を反して断固拒否。報道で訴えると言う始末だ。これでは迂闊に説得も連行も出来やしない。織斑一誠という人間は芸能界の人気者。ルックスも演技力もモラルも、影響力がある存在でもある。
「如何しますか? 飛び級で高校を卒業、その後は就職に就いたとはいえ、ISを動かせる男の存在は世界に知れ渡っております。各国の者が接触してくる可能性は大いにあります。このまま放置しておくのは得策ではございませんよ」
秘書が男性に心配そうな面持ちで問うが、即断に答えれず一誠の扱いが困難なことに男性は「うーん」と悩んでいるのだと風に漏らす。
「圧力を掛けて芸能界から追放などすれば、こっちが叩かれるのは目に見えているからなぁ。だからと言って、君の言う通り、彼をこのまま宙吊りにさせたまま遊ばせるわけにはいかない」
「では?」
「・・・・・うむ、やはりここは彼女等に任せるかな。家族同士ならば話は穏便になるが、それでも駄目なら裏で動いて彼を保護をする」
「・・・・・分かりました。直ぐに手配をします」
意図を察する秘書は直ぐに行動を移す様子を見守りできれば解決してほしいものだと願うばかりでいたが、一誠の頑固さは千冬がよく知っている。
政府の依頼によって一誠がいる某テレビ局へ足を運ぶことになった女性は来賓専用の部屋に招かれ待つこと十数分、扉が開くと同時に中に入ってくる者に笑みも浮かべつ無言と無表情で見ることもなく、対面するように目の前で座る―――一誠の姿を視界に入れる。
「初めてじゃないか?ちぃーねちゃんが俺の職場に足を運んでくるなんてさ」
「・・・・・そうだな」
「で、話って何?と言いたいところだけど大方見当はついている方だが。―――IS学園に来いって説得?」
単刀直入で訊ねて、遠回しな発言はする必要ない以前に一誠は予想をしていた。一人の家族として来たわけではない。政府の命で一誠を説得する学園の教師として来たのだと察した。
「・・・・・ああ、その通りだ。お前が政府に反抗的で拒んだからお前の説得役は私に任された羽目になった」
「迷惑を掛けていることは悪いと思っているけど。俺はIS学園に行く気はないぞ。あそこに通って何になる?卒業すれば軍事に関する仕事をさせられるのが目に見えているんだけど」
「そうでもない。一般の事業や家業に働く生徒もいる」
「へぇ、そうだったんだ。でも、俺達三兄弟はISを動かす男として、普通の人生を送れることができるのか?」
先の事は誰も分からない。未来など枝分かれする数ほどの分かれ道がある。千冬自身も、自分の未来や一夏達の未来の事は分からない。
「ちぃーねーちゃん。俺は家族の為に働きたいんだ。国の為じゃない。だから、今更学園に行きたいなんて考えはない」
「・・・・・お前がその姿勢でも政府は黙ってないぞ」
「俺も黙ってない。最悪―――あの時のようにしてしまうかもしれないけどな」
遠い目で自分の手を見下ろす一誠と意味深く一誠の手を見つめる千冬。あの時のようにとは、千冬と一誠の間でしか知られていないあの出来事の事を差している。赤い血で濡れた手がまた、染めてしまうかもしれない恐れが出る。だからか、千冬は手を伸ばして一誠の手を包み込むように掴んだ。
「お前に、もうそうはさせない」
「・・・・・どうやってさ。お互い、離れて仕事をしているんだぞ」
「だからこそ、お前は学園に―――」
「自分の身は自分で守れる」
千冬の手から離して立ち上がり出す。実の姉を見下ろすその瞳は力強い光が籠っていた。
「相手がIS乗りじゃなきゃ対処はいくらでもできる。ちぃーねーちゃんの力を借りるときは、相手が組織だった時だけだ」