インフィニット・ストラトス~前世の記憶を持つ者~(完結)   作:ダーク・シリウス

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奮闘と悔し涙

「一誠、そっちはどうだ?」

 

『特には問題ない。何時も通り元気で仕事しているよ。で、そっちはどうなんだ?』

 

一夏は久し振りに一誠と会話を果たしている。とある日の夜に一誠が兄の二人に連絡をして、携帯を買い換えたと報告をしたのである。久し振りに弟の声を聞こえて嬉しそうに一夏は笑む。

 

「こっちも秋十と一緒に元気してるぜ。それと、聞いて驚け。箒と鈴が学園にいるんだ」

 

『・・・・・箒はともかく、鈴も?』

 

「ああ、びっくりしたぜ。中国の代表候補生として転校してきたんだからな」

 

『マジでか』

 

以外そうな声を発する一誠に声を出さず肯定と首を縦に振った。

 

『そうか。久し振りに顔を見たくなってきたな』

 

「だったら学園に来れば?お前もISを動かせる男なんだから」

 

『だが断わる。俺にはやらないといけないことが山積みになるほどあるんだからな』

 

織斑家の為に幼い頃から仕事をしている一誠を見て来ている一夏にとって、頬を掻きながらこう言った。

 

「お前、もう頑張り過ぎなんだよ。お前のおかげでもう貧乏どころか大金持ちになっているんだ。しばらく仕事を休んで何か楽しんだらどうなんだ?」

 

『楽しむ、か・・・・・。まあ、頭の隅でも置いておくよそういうことは』

 

電話の向こうでは苦笑いを浮かべているだろうと思いながらも会話を続ける。最近身近に起きたことや、慣れない授業に苦労していないか、仕事の方で問題ないか等々。二人の会話は―――。

 

「そうだ一誠。お前、学年別個人トーナメントに顔を出してくれないか?」

 

『・・・・・秋兄からも誘われたけど、俺が見に行けれるものなのか?』

 

「さあ、千冬姉に聞いてみないことには分からないな。でも、OKだったら来てほしい方だ。勿論、仕事の都合がよかったらの話だけどよ」

 

『・・・・・』

 

兄からの誘いに逡巡する弟。しばらく悩んだ末に「気が向いたら」と返事した。

 

「よし、決まりだな」

 

『・・・・・気が向いたら行くの前提だ。必ず行くとは限らないからな夏兄』

 

「分かってる。お前だって忙しいもんな。それじゃ、そろそろ切るぞ。就寝時間を超えて話をしていると千冬姉の雷が降ってくる」

 

『ん、そうか。それじゃあな』

 

一誠が通信を着ると一夏も通信を切り、視線をルームメイトへ向けた。ブロンドの髪にアメジストの瞳。貴公子然としたルームメイトに一言詫びの言葉を送る。

 

「悪いなシャルル」

 

「ううん。気にしないで。でも、相手は誰だったの?」

 

「弟だ。織斑一誠」

 

「・・・・・織斑一誠って、五人目の男の操縦者だよね。まだ政府の庇護を受けてないの?」

 

「一誠はとっくの昔に高校を卒業しててな。仕事一筋で生きているんだ。で、IS学園には絶対に行きたくないって断言しているほどに仕事に専念している弟なんだよ」

 

ルームメイトに弟である一誠のことを楽しそうに話をする一夏。一夏の話を聞き興味を持つシャルルは耳を傾け相槌を打つのだった。

 

 

 

「ねぇねぇ、相手は誰なの~?」

 

「ん?ああ、兄貴だ。学年個別トーナメントを見に来てくれないかって誘いだ」

 

IS学園のIS整備室。一夏と携帯で話し合っていた一誠に簪と一緒にISの完成を手伝っている本音から質問を受け、何とでもなさそうに返答した二人の会話をピクリと反応し出す簪。いまだ未完成の簪のISでは学園の行事に参加することは不可能。だが、一誠と本音の協力によって段々と簪が望む未来に近づいている。

 

「ところで本音は誰と組むつもりだ?」

 

「う~んと、かんちゃんのISが完成したらかんちゃんと組むつもりだよ~」

 

「ほほう、だったらトーナメント戦まで完成させなくちゃな」

 

気を許す者同士なら良い戦いを繰り広げられる―――かもしれない。

 

「本音は打鉄とリヴァイブ、どっちの訓練機で参加するんだ?」

 

「打鉄かなぁ~。私ってば、射撃が全然へたっぴなんだよね~」

 

「・・・・・悪い、本音がブレードを振るう姿すらのほほんとして当たらないような気がしてならない」

 

「え~、そんなことないよ~」

 

いや、そうじゃないのか?簪にもどうなんだと視線で訴えると簪は無言で逃げるように一誠の視線から反らした。

―――本音って、もしかして駄目?

 

「(・・・・・贔屓になるけど、簪の為だ)」

 

この瞬間、一誠の中である決意が秘めた。

 

―――♢―――

 

「・・・・・ふう、何とか、間に合ったな」

 

「だねぇ~・・・・・眠・・・・・」

 

第二アリーナの整備室。学年別個人トーナメント前日で最後の詰めの作業は午後九時過ぎでやっと更識簪のISが完成を迎えた。

 

「癖が強かったのは内蔵火器に高性能誘導ミサイルを搭載している六基に備えている八発の高性能小型ミサイルのマルチ・ロックオン・システムだったなぁ」

 

「だねぇ~・・・・・ぐぅ~・・・・・」

 

本音は睡魔に堪え切れずついに床の上で寝てしまった。苦笑いを浮かべる一誠は簪の方へ視線を向けた。自分の機体を神妙な顔で見つめ、一誠の視線を感じて振り変えたら頭を垂らした。

 

「あ、ありがとう・・・・・私の為に手伝ってくれて」

 

「気にすんな。俺がそうしたかったし本音も自分から進んでしたことだ。手伝う理由があっても助けるのに理由は必要無い」

 

当然の事だ、と付け加える一誠は布仏本音を背負った。

 

「片付けも済ませたし、俺達も帰ろうか。明日はトーナメント当日だ」

 

「う、うん・・・・・」

 

ISを待機状態にし、一誠と設備室を後にした。一年生の寮に戻る中、すっかり外は暗闇支配されていて、唯一明かりを灯す街灯しか光が無かった。

 

「一週間、二人が勝ち続ければ決勝戦に兄貴達専用機持ちの誰かと当たる可能性は大きい。でも、決勝戦まで進んだら楯無と話し合ってみたらどうだ?そこまでいけたら自信が付くだろう」

 

「・・・・・」

 

敬遠している姉と対話。それは今の簪にとって難しい話だった。若干、杞憂になっている少女の水色の髪の頭に手を置き始める一誠。

 

「一人じゃ無理なら本音と一緒にいてやるよ」

 

「・・・・・?」

 

「それが友達ってもんだろう?」

 

その励ましは少女の心に温かさを、勇気をくれた。簪は頭から感じる温かさに甘えるように小さく頷いた。

今口には出さない。一週間後、もしも決勝戦まで進めたら言うんだ。

 

「(ありがとう―――)」

 

しかし、更識簪に過酷な運命が待ち構えていたことを本人も一誠も気付かなかった。

 

 

学年別個人トーナメント戦当日。

 

 

Aブロック一回戦 織斑一夏&シャルル・デュノア対更識簪&布仏本音

 

 

「・・・・・っ」

 

この対戦結果に更識簪は手を固く握りしめ、唇を噛み締め、目の前の現実を受け入れる。誰であろうと勝たなくてはいけない。そう、誰であろうとも・・・・・。

 

「本音・・・・・力を貸して」

 

「もちろんだよー。私はいつでもどこでもかんちゃんの味方だからー」

 

布仏本音の髪にもう一本の狐の飾りがあることをは彼女の戦う意志でもあった。

 

 

学年別個人トーナメント。学年別のIS対決トーナメント戦で一週間に渡って行われる学園のイベントの一つ。一年は浅い訓練段階での先天的才能評価、二年はそこから訓練した状態での成長能力評価、そして三年はより具体的な実戦能力評価となっている。特に三年生の試合は大掛かりで、IS関連の企業のスカウトマンは勿論のこと、各国の上役が見に来ることもあって学園側も多忙な対応を追われている。

 

「まさか・・・・・目的以外に来ることになろうとはな」

 

IS学園のアーチを見上げポツリと呟く。都合よく休日の日と重なって千冬の許可が下りたことで半ば渋々と二人の兄の応援をしに来たのだ。

 

「さて、ちぃーねーちゃんや兄貴達の顔を見に行きたいところだが・・・・・」

 

周りは人、人、人ばかりでとても混雑している。来賓を誘導している生徒を窺えている。勝手な行動をすれば即警告されて補導をされ兼ねない。その他にも色々とあるがそれ等を考慮して、動くことにした。

 

「すいません。一年生が行われるトーナメント戦の会場はどこですか?」

 

「ええ、こちら・・・・・」

 

一誠が訊ねた女子生徒は声に反応して振り返った瞬間。一瞬怪訝そうな面持ちを浮かべた。眼鏡を掛け、額を窺わせるようにヘアバンドで髪を掻き上げて長い髪を三つ編みに結んでいるクールビューティーと呼ばれてもおかしくないほど、知的な印象を覚えるそんな女子生徒は目の前にいる深く帽子を被ってサングラスを掛け、顔以外肌の露出を見せない黒い服装の上にフードを帽子ごと被っているいかにも不良っぽい姿の一誠に。

 

「あの、失礼ですがどなたでしょうか。身分を証明できるものをお見せにできなければ不審者扱いになります」

 

「え、そうなの?」

 

「はい」

 

いかにも警戒していますと女子生徒に「・・・・・う~」と苦難の色を顔に浮かべる一誠は逡巡した後に。

 

「・・・・・分かった」

 

フードを外し、帽子とサングラスを同時に外すことで素顔が露わになる。赤より鮮やかな真紅の長髪が窮屈な帽子の中から解放され、踊るように背中へ零れる。サングラスを外すことで隠された金色の垂直のスリット状の双眸が女子生徒の知的な印象を与える眼鏡の向こうの目に窺わせる。正体を現したことで、女子生徒は相手が誰なのかその真紅の髪と金色の瞳を見て一発で把握した。

 

そして―――。

 

真紅の髪がこの場では目立ち、時が停止したように音が止み、息を呑んだ女子生徒達や来賓達もその目を食い入るように、釘付けになってしまったように一誠へ視線を向ける。

 

「顔パスで通るか・・・・・?」

 

「・・・・・」

 

「お-い?」

 

芸能界では有名な一人であり、ISを動かせる五人目の男がこの場に現れた。対応していた女子生徒の思考が頭の中が真っ白になったように停止して、再起動する時間は・・・・・。

 

「お、おおおお織斑、一誠君っ!?」

 

「「「えええええええええええええええええええええっ!?」」」

 

周囲が騒ぎ始めてからだった。女子生徒達は色めき立ち、企業の者として関係者としてやってきた来賓達が最初は驚いたものの、ISを動かせるフリーの男が目の前に現れたことで千載一隅とばかり接触を試みようとしたがそれは失敗に終えた。

 

「っ!ちょ、ちょっとこっちにっ!」

 

手を掴んだ女子生徒が騒ぎの中心から一誠を遠ざけようと引っ張って駆けだす。一誠も連れられた先まで従い―――。

 

「お、織斑先生っ!」

 

姉の千冬の前に立たされたのだった。職員室も慌ただしい雰囲気を醸し出しているが一人の生徒の叫び声に反応し、一誠を見れば騒々しさが少なくなった。女子生徒が呼ぶ千冬は真っ直ぐ二人に近づく。

 

「来たな」

 

「二人の戦う姿をこの目で見たくなったもんでね」

 

「・・・・・だったら学園に通え」

 

「断固拒否する」

 

想像していた言葉を発する一誠の首へ徐に何かを掛けた。確認すると顔の写真と身分を証明するような文字が記されている名札付きだった。

 

「それを掛けていれば学園内を歩けれる。ただし、女子の部屋に入るなよ」

 

「じゃあ、ちぃーねーちゃんの部屋に行ってもいいか?俺の想像だと多分―――」

 

ガッ!

 

「それ以上言うなよ?私の部屋にも行くことも禁ずる。いいな」

 

「・・・・・それを言った時点で俺の中じゃ肯定ものだぞちぃーねーちゃん」

 

アイアンクローをする千冬の手を手で制する一誠。姉弟の会話には暴力の会話も交ざっていることに女子生徒は冷や汗を流す。

 

「で、二人はどこにいるの?挨拶をしに行きたいんだけど」

 

「今は更衣室にいるはずだ」

 

「ん、了解。案内はこの人に聞くから」

 

「えっ?」

 

「頼んだぞ布仏」

 

何故か案内役をさせられる羽目になった布仏は弁明もされない内に一誠の手で引っ張られ職員室から退出。

 

「布仏って・・・・・もしや」

 

「ええ、本音の姉です。あの時は妹がどうもお世話に・・・・・」

 

「いやいや、彼女のおかげで知れたことがあったから。それにしても彼女の姉とは驚いた。よろしく、布仏さん」

 

「はい・・・・・あと、更衣室に案内したら戻ってもいいのね?」

 

「ああ、それでいいよ。悪いな、忙しい時に」

 

「いえ、大丈夫です。お気にせずに」

 

親切に案内をする虚。彼女の隣に歩く一誠は廊下ですれ違う女子生徒達に発見されて騒がれつつも目的の場所まで辿り着くことができた。その間―――。

 

「(ど、どうしよう・・・・・あの一誠君と一緒に歩いちゃっているわっ・・・・・!?)」

 

虚の心の中は年頃の恋する乙女のような気持ちで落ち付いていなかった。一誠のファンであり、密かに実らない恋を抱いて肩想い中なのである。更衣室へ入る一誠と別れ、本来の仕事を戻る虚を他所にして。

 

「―――お、いたいた」

 

更衣室に入ると真っ直ぐ一夏と秋十、見知らぬブロンドの男子生徒や見知った二人の男子が待機していたところへ足を運んだ。一誠の存在に一夏達は気付き、笑みを浮かべた。

 

「おー!一誠、来てくれたんだな?」

 

「久し振りだな。元気そうで何よりだ」

 

「よっ、一誠。俺達の事忘れちゃあいないだろうな?」

 

「よくとまあ、ここへ来られたもんだな人気芸能人」

 

女三人寄れば姦しいという言葉があるが、男五人寄れば姦しいと今の一誠達に当て嵌まるだろう。久しく会っていない兄弟と友人達と仲良く楽しげに会話の花を咲かせる。

 

「なあ一誠。お前、色んな芸能人やアイドルとか話しているか?」

 

「そりゃあ弾。同じ場所で働いているから当然だろう」

 

「じゃ、じゃあよ。―――さんのサインを何とか書いて貰えないか?」

 

「あ、ずりぃ弾!俺は―――ちゃんのサインだ!」

 

「「お前らな・・・・・」」

 

人の弟に何を頼むんだ・・・・・と呆れ果てる一夏と秋十だが、

 

「ああ、その人達なら友達だからお願いすれば書いてくれるかも」

 

「「あざーすっ!」」

 

交友関係はしっかりと築いていた一誠に深く腰を折ってお辞儀をする二人の男子生徒に微笑ましいと見ていた一誠はブロンドの髪の男子生徒に視線を向ける。

 

「ところで、誰だ?」

 

「そうだ。一誠は知らなかったよな。こいつはシャルル・デュノアつって六人目のISを動かせる男なんだぜ」

 

赤い髪にバンダナを巻いている男子生徒、五反田弾の話に耳を傾けながらジィーと疑いの目を向ける。

 

「男・・・・・?女じゃないのか?」

 

「は?いや、一誠。男だろどう見ても」

 

「そ、そうだぞ一誠。おかしなことを言う弟だなぁー」

 

弾の言う通りだと、何故か動揺する一夏。しかし、ますます一誠の中で疑惑が増すばかりだ。

 

「デュノアってフランスにある企業会社の社長と同じ名前だけど。俺なりに調べたんだが、社長に息子なんて存在してないぞ」

 

えっ、と誰かが呟いた。それはどういうことなのかとそこまで知らない者達からすれば不思議と疑問を抱くことだろう。

 

「その上、六人目の男の操縦者?俺みたいに後から発見されているなら世界中に知れ渡っているはずだぞ。それが今でも世界に知れ渡っていない。どういうことだよ?」

 

「い、いや一誠。シャルは世間に公されていなかったんだ」

 

一夏がフォローするも「その理由は?」と逆に答え辛い質問を問われてしまった。

 

「隠す理由は無い筈だ夏兄。寧ろ企業会社の社長の息子がISを動かせると発覚したら、直ぐに政府と国に知らせていると思うぞ。会社の社長とならば、何らかの思惑を抱いてな」

 

「おいおい・・・・・考え過ぎじゃねーの?」

 

「ん・・・・・考え過ぎならいいが。―――当の本人が俺の推測を直ぐに反論や異論を言わない限り、全部肯定と受け取るんだけどなぁ」

 

シャルルは先ほどから黙っていることに一夏以外そう言えば、と話しの中心の人物へ視線を向ける。

 

「ま、確たる証拠はと言えば。私物を見れば一目瞭然だ。それで全てが分かると思うぞ。さて、夏兄」

 

「な、なんだ?」

 

急に話しを振られてどぎまぎする一夏。

 

「寮生活らしいけど、今誰と住んでいるんだ?」

 

「え、シャルルだけど・・・・・」

 

「じゃあ、シャルルが仮に女だとして―――どうだった?彼女の裸は」

 

「んなっ!?」

 

「―――っ!?」

 

その問いで一夏の頭の中である記憶が鮮明に甦り、シャルルが何故か反応する。そんな二人を見て、深く溜息を零す。

 

「夏兄は嘘を吐くのが下手過ぎるっしょ。黙っているならともかく、顔に出やすいぞ」

 

シャルル・デュノアは女であると一誠の中で確信した。

 

「えっと・・・・・マジかよ一夏?」

 

「シャルルが、女って・・・・・」

 

「まあ、それはこの際どうでもいい」

 

どうでもいいのかよっ!と突っ込みを入れられるが吹く風のように受け流し、シャルルへ鋭い睨みで視線を向ける。

 

「夏兄や秋兄を誘惑して、会社の為に利用するために近づいているなら、俺はお前を許さないからな」

 

「・・・・・」

 

ただ、黙るだけのシャルルを睨む一誠に一夏が話し掛けた。

 

「シャルルはそんな奴じゃないぞ一誠。俺達のことを思って言っているだろうけど、シャルルのことを何も知らないお前がそんなことを言うな!」

 

「・・・・・唐変木の夏兄が異性に対して免疫が無いから心配なんだよ。誘惑に負けてコロッと流れに流れてどこまでも堕ちそうなんだから」

 

「「「・・・・・」」」

 

あー、言えてる・・・・・。と、秋十達三人から意味深な視線を送られ、一夏は目をパチクリする。

 

「え、何だよお前ら・・・・・」

 

「「「いや、鈍感って弱点があるんだなぁーって」」」

 

「弱点って、何だよ」

 

肩を落とし、頭を垂らす一夏。

 

「後、料理ができない女は女じゃないからな!」

 

「え、へっ・・・・・?」

 

「あー・・・・・シャルル。そこは気にしなくて良いからな」

 

「気にする!料理に変な物を入れて体調を崩させるほどの不味い料理を食べさせる女なんていてたまるかっ!そんな女と夏兄と秋兄の嫁にさせる気はない!」

 

そんな一誠の発言にシャルルを除いた、男四人は思い当たることがあるのか。急に静かになった。

 

「・・・・・なにその反応?」

 

「いや、まあ、な?」

 

「お、おう。確かにそんな女は女じゃないな?」

 

「見た目が良くても、やはり中身が大事だってことは重要だよな」

 

「その通りだ。ああ、その通りだ」

 

同時刻。とある欧州の少女が突然クシャミをして、中国の女子生徒に不思議そうに見られていたのを一誠達は知らない。

 

「そう言えば、秋兄は誰と組むんだ?」

 

「ラウラって女子とだ。ドイツ人の専用機持ち」

 

「ドイツのラウラ?・・・・・あいつかっ!」

 

 

 

「クシュンッ」

 

「どうしましたのラウラさん?」

 

「いや、懐かしい者が私の噂をしているような気がしてな」

 

「・・・・・誰のことだ?」

 

「嫁だ」

 

 

 

 

「・・・・・俺、こんなところにいてもいいのか?明らかに生徒でも立ち入り禁止っぽい場所なんだけど」

 

「お前が表で観戦すれば、否が応でも騒がれるのは目に見えているからな」

 

トーナメント戦が始まる時間になる前、一誠はアリーナの観察室で千冬の隣に立っていた。

大きくモニターに映る二組のペアがいて、今まさに試合を臨もうとしている。

 

「ラウラがいるなんてな。知らなかった。元気そうで何よりだ」

 

「お前が学園にいないことを大いに不満を抱いていたぞ」

 

「相手の都合に合わすつもりはない。だけど、夏兄達・・・・・厳しい戦いになるだろうなぁ」

 

「その理由は何だ?」

 

試しに言ってみろと言外する千冬に応じる一誠は銀髪眼帯の少女のISを注目する。

 

「ドイツ第三世代型のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』のAIC、アクティブ・イナーシャル・キャンセラーの特殊兵器が厄介でしょ。特に近接型のISとは相性が悪い。でも、それを突破できる穴があるから絶対に勝てないわけじゃないけど」

 

「・・・・・方法は?」

 

「ん、対象の動きを止める慣性停止能力は意識を集中させないといけないから、一対一ならともかく、複数対一だと不利なんだよなー。AICを発動中は動けないし隙を自分から作る。だから停止能力をわざと発動させて、味方に援護をさせる。そうやって戦えば勝てなくはないんだよな」

 

芸能界で働いているのに、見たことのないISの性能と特殊兵器、弱点を述べる一誠を麻耶は感嘆の息を洩らす。

どうしてそこまで知っているのか不思議なくらいだ。

 

「一誠、その情報はどこから得た。ISは一般の人間にはあまり知らされていない筈だぞ」

 

「束ねーちゃん」

 

全てが納得した。

 

「・・・・・お前、IS学園に編入しろ」

 

「絶対に嫌だ。何が悲しくて、望んでもないのに大人の都合で押し付けられなきゃならない」

 

「望む望まざるに拘らず、人は集団の中で生きなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな」

 

「・・・・・俺、仕事の都合上。集団の中で生きているんですけど?」

 

辛辣な言葉は一誠には効果がなかった。実際に一誠は色々な仕事で殆ど一人でいることの方が少ない。故に集団の中で生きているのだ一誠は。

 

「というか、俺が人を辞めたらちぃーねーちゃんの弟じゃなくなるんだけどそれでいいの?」

 

「・・・・・」

 

「まあ・・・・・俺はある意味、人を超えている要素があるから、人じゃないんだろうけどな」

 

意味深なことを言いだす弟へ横目で視線を向ける千冬。その視線に籠められた想いを知らない一誠は

 

「お、始まった」

 

と四人の戦いの始まりを告げた。最初の第一回戦第一試合は、一夏とシャル、簪と本音の戦いだ。

 

―――♢―――

 

「のほほんさん・・・・・その機体は」

 

「えへへ~、いっせーがこの時の為に用意してくれたんだよ~」

 

「・・・・・専用機」

 

本音は代表候補生ではない。故に専用機持ちでもなければただの一般生徒、それが周囲の認識と認知。しかし、裏を返せば対暗部用暗部の家柄である更識家という名家をサポートやフォローを務める布仏家もまた対暗部用暗部。本音が楯無の妹の簪の味方になるのは必然的。そう考えた一誠は―――一人で専用機を開発・設計を束の指導のもと作り上げたのだ。

 

簪のIS打鉄弐式は訓練機『打鉄』の後継機であれば、本音のISは『リヴァイブ』の後継機。

 

名は九重・リヴァイヴ。

 

機体のカラーは黄色と黒。狐の尻尾を彷彿させる巨大なシールドはウイング状、スカートアーマーとして九つ位置づけられていた。それ以上特徴的な武装や装甲は見当たらず、一夏とシャルルは専用機持ちとなった本音に目を丸くした。

 

「・・・・・私、知らなかった」

 

「いっせ~が約束通りに今日くれたんだよねー。だからぶっつけ本番なのだー」

 

「お、俺みたいだな・・・・・」

 

クラス代表決定戦の時と同じだと一夏と境遇をしている本音。

 

「この機体の特性は守ることが特化した機体だって言ってたから、かんちゃんのお手伝いさんとしてぴったりの機体で~す」

 

試合開始まであと五秒。四、三、二、一―――――開始。

 

「それじゃ、勝負だよ~。おりむ~、でゅっち~」

 

「でゅ、でゅっち~?」

 

「・・・・・負けないっ。貴方には絶対にっ」

 

「俺もだ」

 

一夏と簪が試合開始と同時に前へ飛び出す。近接武装である対複合装甲用超振動薙刀《夢現》を呼び出し、両手で前に構えて一夏が呼び出し上段から振るう近接ブレード『雪片弐型』とぶつかり合い、鍔迫り合いの際に火花が散った。

 

「私は・・・・・貴方を、許さないっ」

 

「え?」

 

同じ開発元故に世界で唯一ISを操縦できる男のISへ人員を全員回されたこと見放された己と打鉄弐式という機体。

 

「やああああっ!」

 

「うおっ!?」

 

少女の心の中の静かな激情が燃え盛る炎として表れた。背中に搭載された連射荷電粒子砲《春雷》二門を脇の下からくぐらせて超至近距離からの荷電粒子砲の連射を浴びせる。無防備となっている腹部に簪の攻撃が直撃して織斑一夏のシールドエネルギーを確実に減らした。

 

「くっ!」

 

至近距離で戦うのは危険を判断、戦意を炎として燃やす少女から素早く後退した一夏に追撃する。

 

「逃がさ、ないっ!」

 

全力で叩き潰す。心と頭が一致した思いを抱く簪は薙刀の柄を握る手の力を強くして追いかけた。

 

「かんちゃんの邪魔はさせないよ~」

 

伸び伸びとした言葉とは裏腹に、シャルル・デュノアは本音に対して攻めあぐねていた。

 

「装甲が硬いね・・・・・」

 

四枚のシールドが全ての銃弾を防ぎ、本音自身やシールドエネルギーにダメージを通じさせずにいるのだった。本人が言っていた通り、守りが特化した機体であった。ここまで攻撃を捨て防御に徹するISは初めて目の当たりにしたシャルル・デュノアはどう攻めようか考えたところで本音がショットガンを呼び出した。

 

「ん~と、え~と」

 

「・・・・・?」

 

物理攻撃のショットガンだというのに、本音は初めて触れたような仕草と行動をする。

相手を前にして武器を調べ始め出したのだ。思わず動きを止めて様子を見てしまった。

 

「ふ~ん。そっかそっか~。いっせ~は優しいね~。そして凄いや~」

 

武器の特性を理解したのか、ガチャッとショットガンの照準をシャルルに合わせた。しかし、

 

「あれじゃ、届く前に外れるよ」

 

中距離型の銃を持つ彼女から油断せず地面を滑るように高速で動く。

 

「どっかーん」

 

引き金を引いた本音のショットガンの銃口から鉛玉ではなくエネルギーの弾が数多に、そして追いかけるように誘導性があるエネルギー弾がどこまでもシャルルを追いかけ始めた。

 

「偏光制御射撃フレキシブルッ!?」

 

目を大きく見開く金髪の貴公子と同様。観客席から観戦していたイギリス代表候補生も思わず席から立ち上がって愕然としていた。しかも―――真後ろに移動した瞬間のシャルルに対して振り向かずショットガンの引き金を引くと、数多の黄色いエネルギー弾が意志を持っているかのようにシャルルへ向かった。

その上、速度が速く・・・・・。

 

「威力は散弾銃並み~速度はガドリング並み~に撃てれるこの武器は『女王蜂』~」

 

三発、四発目も放たれ、四方からの銃弾の雨がシャルルに襲いかかった。

 

「シャルル!」

 

ドゴンッ!ドゴンッ!ドゴンッ!

 

「ぐうっ!?」

 

近接格闘、超至近距離での荷電粒子砲の砲撃と何度も繰り返され何度も食らう一夏。畳み掛けようと引き金を引いたがカチン、カチンと無機質な音が聞こえ《春雷》のエネルギーが底をついたことに悔しそうな簪。

 

「(まだ、負けたわけじゃ、ないっ)」

 

とっておきの武器は残してある。マルチ・ロックオン・システムによる高性能誘導八連装ミサイル『山嵐』の四十八弾が―――。

 

ドガガガガガガッ!

 

「―――っ!?」

 

自分の身に衝撃が襲われたことに動揺する。目の前の一夏と集中して攻撃できるのは布仏本音のサポートのおかげ。つまり、それが無いと言うことは・・・・・。確認すると、本音は健在。ただし、相手は片手を本音、もう片方の手は空中にいる更識簪に向けて銃を放っていた。

 

「守りが堅いからね。攻めきれないなら一人で攻めず、パートナと一緒にこうさせてもらうよ!」

 

事実上、一人で二人同時に攻撃をしているシャルルに驚愕する更識簪の隙を逃さない織斑一夏。

 

「これで決着を付ける!」

 

「かんちゃんをいじめるなー!」

 

四つのシールドが布仏本音から分離、シャルルを四方から盾の内側から照射されるエネルギーが結び合い、エネルギーによる防壁結界を作り上げたことで銃弾を遮断。

 

「これって・・・・・っ!」

 

「この機体のとっておきの一つだよー」

 

一人封じ込めたことで一夏は一人で二人を相手にしなくてはならなくなった。しかし、当の一夏が既に動いていた。

 

「うおおおおおおおおおおおっ!」

 

簪に攻撃せず、味方の救助と近接ブレードに青白い刀身を伸ばした状態で本音の結界へ叩きつけるように斬った。これには本音と更識簪は目を丸くした。

 

「シャルル!」

 

「うん!」

 

籠から解き放たれた鳥が羽ばたき、本音へ強襲。残りの五つのシールドで身を守る少女だったが、

 

「その盾を破壊すれば、さっきの結界は張れないよね」

 

シャルルの盾の装甲が弾け飛び、中からリボルバーと杭が融合した装備が噴出する。六九口径パイルバンカー《灰色の鱗殻グレー・スケール》。通称―――

 

「守るばかりじゃ、勝てないよ!」

 

本音の盾とは相性が悪い盾殺しシールド・ピアース。左手拳をきつく握りしめ、叩きこむように突き出す。

 

ズガンッ!!!

 

盾の表面にたったの一発で蜘蛛の巣のように罅が生じた。しかし、これで終わりではない。《灰色の鱗殻グレー・スケール》はリボルバー機構により高速で次弾炸薬を装填する。―――つまり、連射が可能なのだ。

 

ズガンッ!ズガンッ!ズガンッ!

 

続けざまに三発を撃ち込まれ、少女を守る盾はあっという間に砕け散ってしまった。

 

「本音ぇー!」

 

「一夏!」

 

「ああ、わかってる!」

 

シャルル・デュノアから手渡された五五口径アサルトライフル《ヴェント》を受け取った一夏は、照準を簪に合わせ―――弾丸を放った。

 

ガンッ!

 

「―――――は?」

 

アサルトライフルの弾丸は少女に当たらず眼前に現れた盾に阻まれた。

 

「かんちゃんを守るのが私の役目だからねー」

 

盾の隙間から聞こえる少女の声。その言葉通り九枚のシールドが一夏とシャルルを取り囲み、動きを封じた。盾を破壊し始めるパイルバンカーの無慈悲な攻撃は確実に布仏本音に近づいていた。

 

「かんちゃーん。山嵐を撃っちゃっていいよー」

 

「・・・・・っ!?」

 

味方ごと撃つ。その行為は心優しい少女にとってとても辛い事であった。

 

「だ、だめ・・・・・っ。本音まで、当たる・・・・・っ」

 

「だいじょうぶ、だいじょうーぶ。私は盾があるから平気だよー」

 

「で、でも・・・・・」

 

「かんちゃんの為に頑張ったいっせーが報われないよー?」

 

いっせー・・・・・一誠・・・・・。簪の中で少年の顔が浮かび上がった。決勝戦まで進んで言いたいことを、自分の強さを姉に見せつけたい思いを・・・・・思い出した。

 

「だ、けど・・・・・・」

 

「私は、かんちゃんと一緒に決勝戦まで進みたいよー」

 

少女を守るシールドが砕け散った。エネルギーのシールドで守られている本音の顔はどこまでも晴れやかで、その手の中にある物を見たシャルル・デュノアは目を大きく見開いた。

 

「手榴弾っ!?」

 

「えへへ~。この距離と一緒に囲まれているシールドの中ならダメージは大きいよねー?もしもの為にと自分で用意したんだよー。しかも爆発の威力を改造~」

 

自己犠牲。その言葉に似合う行動を少女は躊躇なく起こした。

 

「本音・・・・・」

 

「かんちゃん。お願い」

 

主を想う従者の願い。従者の想いは泣く泣く主の心にまで届き―――。

 

「ごめん、ね・・・・・」

 

数秒後・・・・・四十八発のミサイルが一斉に水色の髪の少女から発射され、ドドドドドドドドドドッ!と凄まじい音を立ててと地面にいる三人の少年少女達に襲いかかった。

 

「うん、これで私達の勝ちだね」

 

「・・・・・凄いね。君って」

 

「私はできる子なのだー」

 

ミサイルの流星群が直撃する瞬間。二人の少女の間から眩い光が迸り・・・・・大爆発が起きた。

 

「・・・・・っ」

 

黒煙に包まれるグラウンドを眼下に、静かに目から雫を流し、頬を濡らす少女は悲しみと申し訳なさに顔を覆う。味方の犠牲によって得た勝利は―――。

 

―――警告。敵ISが接近。

 

「・・・・・えっ」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

まだシールドエネルギーが残っていた、簪同様、味方を守って勝利へ導いた貴公子の体を張った行動により、

 

一夏が簪へ瞬時加速イグニッション・ブーストで接近。

 

「これが最後の一撃だっ!」

 

「っ!?」

 

まだ、戦いは終わっていない。本音の犠牲を無駄にできない、簪は薙刀を構えて気を引き締めた表情で挑みかかった。

 

「負けれない、本音の為にも・・・・・兵藤君の為にも・・・・・・負けれないっ」

 

どちらからでもなく接近―――得物を同時に振り、擦れ違ったまま両者真剣な面持ちで結果を臨んだ。

 

一拍して―――決着を告げるブザーが鳴り響いた。

 

『試合終了。勝者―――織斑一夏&シャルル・デュノアペア』

 

「負けちゃった・・・・・」

 

シールドエネルギーが0の表示を、簪の敗北の現実を突き付けた。自分が勝たねば全てが報われない。一誠の真摯的な協力、本音の身を呈した勝利への道標・・・・・それを少女が水の泡にした。そう思うと堰を切ったように涙が零れ出した。

 

「うっ、うえっ・・・・・。うええ・・・・・」

 

嗚咽に、涙に、心が震える。

 

「うわああああ・・・・・。うわああああん・・・・・」

 

ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・ごめ、んな、さい・・・・・。

 

 

 

 

 

 

昼食時、保健室に顔を出せば痛々しく頭や腕、肌が見えている部分に包帯が巻かれている本音を見つけた。皮を剥いたバナナを食べている本音を見守る女子生徒、本音の姉の虚がいた。

 

「あー、いっせー」

 

「・・・・・普通に元気そうだな。というか無茶をする。手榴弾でも使っただろう。山嵐だけじゃあんな爆発は起きないぞ」

 

「あはは、バレちった。おねーちゃんもそう言って怒られたんだよねー」

 

「ええ、本当です。この子ったら見掛けに寄らず・・・・・」

 

当の姉も困ったように溜息を洩らした。妹を見守り続けていた姉として驚いただろう。こんなに怪我をしてまで勝ちたかった妹に。一誠は虚の隣に腰を降ろして、本音に頭を垂らした。

 

「ごめん。俺が作ったISはお前の力になれなかった。そのおかげでお前に傷を負わせてしまった」

 

「ううん。寧ろ作ってくれてありがとうって、こっちが感謝したいよー?訓練機だったらかんちゃんだけ苦労を掛けちゃうから、力にもなれなかったよ」

 

「・・・・・それでも、勝たせてやれなかった。あいつを姉にいいところを見せたかった」

 

心の底から申し訳ないと謝罪の念を込めて頭を下げ続ける俺の肩に布仏虚が手を乗せてきた。

 

「本音から聞きました。あの専用機は貴方が作ったのですね。会長と会長の妹の為に」

 

「優秀すぎる身内を持つと、自信がなくなるからな。その気持ちは俺もわかる。だから決勝戦まで勝ち残れるようにと思っていたんだが・・・・・まさか、エネルギーを斬る近接型ブレードとは思いもしなかった。しかもシャルルのパイルバンカーの存在も誤算だった。完全に俺の落ち度だ」

 

知っていればもっと『九重・リヴァイブ』に対処ができる特殊武装を備えさせていた。全くもって変なところで見落としてしまう。

 

「だからごめん。妹にこんな大怪我をさせてしまって。訓練機だったら怪我なんてしなかっただろうに」

 

怒られても罵声をされても当然の事をした。守りを特化したISでも、守り切れないんじゃ名が泣いてしまう。

 

「・・・・・織斑君」

 

「・・・・・はい」

 

不意に・・・・・仄かな甘い香りと温もりが顔中に感じる。・・・・・抱き絞められてる?

 

「妹があそこまでやる気になったのは貴方のおかげだと思います。怪我も負うことを承知の上で簪様を勝たせたかった。本音の覚悟は確かだったのです。ですから、貴方が落ち込むことはないわ」

 

「・・・・・布仏さん?」

 

「名前、それに呼び捨てでいいわよ。同じ苗字が二人もいるから分かりにくいでしょう」

 

じゃあ・・・・・次はそう呼ぼう。だけど、胸に顔を押し付けられているから分かる・・・・・一誠の顔にまで伝わる心臓の鼓動。

 

「もしかして、緊張してる?心臓の鼓動が凄く―――」

 

「き、緊張なんてないわっ」

 

「―――おねーちゃん。顔が真っ赤だよー?」

 

どくんっ、と虚の胸の高鳴りが確かに感じ取れた。無言でいるのはきっと本音を睨んでいるからじゃないよなきっと。いざ顔を上げようとすると―――。がっちり頭がロックされた。さらにますます虚の胸に押し付けられる一誠。

 

「い、今顔を上げてはダメっ」

 

「・・・・・」

 

い、息が・・・・・。

 

「本音ちゃーん。御見舞いに来たわよ・・・・・って、虚?何で兵藤君抱き絞め―――体を痙攣してるわよッ!?今すぐ放しなさい!」

 

「え?あっ・・・・・」

 

きゅう・・・・・。ばたん・・・・・。

 

しばらくして―――。

 

「死ぬかと思った・・・・・っ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「で、どうして虚ちゃんが兵藤君を抱き絞めることになったのかしら?」

 

説明しないと疑う目で一誠と虚を見つめる楯無に事の一部始終を教えようと口を開きだす本音。

 

「えーと、おねーちゃんが―――」

 

「本音。怪我が治ったら美味しいデザートを食べさせるわ」

 

「ごめんなさい、わすれちった」

 

「俺もだ。もう、苦しい思いはしたくない・・・・・」

 

片やデザートで釣られ、一誠は言えば口を塞がれてしまう恐れから言いたくないと言外する。

当然、納得できない生徒会長様は「むー」と訝しい目付きで一誠達を見据えるのだった。

 

―――その日の夜。

 

簪は布団を頭まで被って小さいながらもまだ申し訳なさと罪悪感に嗚咽を漏らしていた。完成の目途が立たない専用機を協力してくれて完成させた二人に、今日専用機持ちとして初デビューでもあり、決勝戦まで勝ち残る約束をした一人に、自己犠牲と体を張った気を許せる一人に、そして無様に初戦で敗北した己に、悔しくて、悲しくて、惨めで・・・・・。

 

「ひっく・・・・うくっ・・・・・本音ぇ、一誠ぇ・・・・・ごめん、なさい」

 

基本的、IS学園の寮は一室二人として定められているが、彼女のルームメイトは食事をしに食堂へ向かっている。簪は食べる気力もない為、一人布団の中で籠って朝からずっと泣きじゃくって少しも頭すら出そうとしない姿勢でいた。

 

脳裏に浮かぶ打鉄弐式を完成させるまでの日々。真剣な表情、三人揃って悩む仕草、眠たげながらも整備に手を抜かなかった本音、人一倍、人二倍動いてくれた一誠・・・・・二人の協力のもと懸命に作業を取り組む自分、そして―――完成の際、言いたかった感謝の言葉を決勝戦でと、心に決めていた決意を。

 

負けた自分が全て水の泡に、台無しにしてしまった。

 

その現実が簪を酷く突き付け、追い詰め、恐れさせた。何をしても自分は失敗すると負の思いが。

 

容姿端麗、文武両道、更識家次期当主、性格は明るく、天才で何事でも前向きに威風堂々と自信を持って冷静でいるそんな姉の影に怯える自分とは、違う―――。

 

何一つ、姉に勝てる要素は無い。自慢ができることなど一つもない自分は、この先何をしてどうしていいか分からなくなった。

 

「・・・・・」

 

こんな時、こんな自分をヒーローはどう励まして慰めてくれるのだろうか・・・・・。

 

―――怯えるな。

 

不意に、そんな言葉が頭に過ぎりアリーナの設備室で一誠に言われた言葉を思い出した。

だが、悲しみに暮れる少女に思い出した言葉ではあまり効果がなかった。

こんなことになるなら・・・・・ISなんて完成させなければ良かった、と心を閉ざし掛けた簪は暗い考えをした。

 

・・・・・ふわっ。

 

「・・・・・?」

 

頭まで被っている布団が何かによって触れられている感触を察知した。ルームメイト?と思いもしたが誰にも顔を会わせたくない思いと落ち込んでいる今の心情の自分はただただ殻の中に閉じ籠った。

 

「そのままでいい」

 

「っ!?」

 

「そのまま、俺の話を聞いてくれていい。寝てるならそれでもいい。これは単なる独り言だから」

 

―――今、もっとも会いたくない人物がすぐ傍にいた。驚きで心が震えるが直ぐ縛られる。

何を言いに来たのかすらも考えたくない、聞きたくないと目を固く閉じ、耳を塞いで体を丸め震える。

 

「残念だったな簪。本音の頑張りに最後まで応えようとして負けちゃってよ」

 

耳を両手で押さえても聞こえてくる少年の声。心にまで浸透している感覚も覚える。

 

「せっかく初めて本当の意味で専用機を手にしたのに、今回は運が悪かったとしか言えない。だけど、まだ終わったわけじゃない。ここからさ、簪とIS『打鉄弐式』は敗北からスタートし始めたばかりなんだ」

 

「・・・・・」

 

「次もある。次も負ければそれを糧にして成長し強くなればいい。次で勝てば心から素直に喜べばいい」

 

励ましでも叱咤でもない少年の言葉の意図は・・・・・前へ進む勇気を少女に籠めている。それを薄らと気付いた時は布団から重みが消えた。

 

「・・・・・それじゃ、俺は帰るよ。まだ食べてないだろうから飯はここに置いていく」

 

離れる気配。このままジッとして待ち少年が部屋からいなくなれば、気が安らかになる。けれど、簪は同時に不安感を覚えた。これで自分の事を愛想が尽くのではないかと感謝する相手に二度と接してくれない不安に駆られて反射的に・・・・・バッと布団から手だけ出して少年の裾を掴んだ。

 

「・・・・・い、行かな・・・・・い、で」

 

「・・・・・」

 

「ご・・・・・ごめ・・・・・・んなさ・・・・・い」

 

震える謝罪の声。裾を掴む手も微弱に震えていて、簪の心情を表してもいた。

その震えは止まらずにいること数秒。

 

「言っただろう、簪」

 

震える手はしっかりと大きくて温かい手に包まれた。

 

「お前の背中を押させてくれ。姉の隣に歩くことができるまでってさ」

 

そして、布団の中に手を差し込められ少女の頬を汚している涙ごと、安心させる温もりが感じる手が添えられた。

 

「頑張れ。お前の味方は何時も傍にいるぞ。遠くにいようとお前の心にいる」

 

「―――――っ」

 

励まされたその瞬間。布団が弾け飛び、簪はベッドの直ぐ横にいた少年、一誠の胸の中に飛び込んだ。

その衝撃を受け止め切れず、床に押し倒された形で―――。

 

「ごめんなさいっ。ごめんなさいっ。私、私・・・・・っ」

 

「・・・・・ああ」

 

「私、頑張る、だから、だから・・・・・っ」

 

「・・・・・待ってるよ。お前が自信持って言ってくれるその時まで」

 

胸に顔を押し付け、雫を流す少女の頭髪を優しく梳かすように撫でる。それは泣き疲れ、心が落ち着いて簪が眠るまで続いた。

 

 

 

「ごめんねー?」

 

「ううん、大丈夫。・・・・・だけど、更識さん。羨ましいなぁ」

 

「いっせーは恰好いいでしょー?」

 

「う、うん・・・・・そうだね」

 

部屋の外では簪のルームメイトと一緒に本音が中を覗いていたことを簪は知る由もなかった。

 

 

 

その日の夜。電車の高架下のラーメン屋台で食事をしていた。夢精ひげが似合う中年男性の作るラーメンの情報は一誠のおかげで知れ渡り、夜になればそれなりに人が足を運び食べにくる。だが、今日に限って客は一誠一人。

 

「どうした一坊。辛気臭ぇ面してよぉ」

 

「・・・・・まあ、最近色々と面倒事が起きてな」

 

「ははは、人気者は辛いってかぁ?そりゃあ贅沢な悩みだわ。一坊のおかげでこちとらゆっくりできる暇が少なくなったんだぜぇ?」

 

言葉とは裏腹に嬉しそうな顔でチャーシューメーンを一誠の前に置きだす。中年男性のラーメンは肉厚でジューシーなチャーシューは口の中に入れた途端に舌全体に溶けて無くなりそうなほど味も染み込み煮込まれている他、様々なトッピングやスープと麺が深くからまって食べ応えがあると評判。

 

「いや、仕事の事より家族のことでなぁ」

 

「おいおい、一の字と十兵衛と喧嘩でもしたか?珍しい」

 

「それも違う。何というか、今まで一緒だったのに急に離れてしまって、家に帰っても誰も出迎えてくれない状況になると、面白くないというか寂しいというか」

 

「ほほう。なんなら(ちぃ)の姐御と結婚した暁と仮定して俺のことお父さん―――」

 

ヒュッ!

 

「ごめん、手が滑って箸が飛んでった」

 

男性の頬を掠るギリギリ箸が飛んで行った。

 

「お、おおう。気にするな・・・・・」

 

目も笑っていなかったので男性は戦慄する。

 

「まあ、寂しいんだろうな。こうして仕事が休日だってのに、家には誰もいない訳でつまらないんだ。まったく、兄弟揃ってISを動かすことができるなんて」

 

「そういう星の下に生まれたんじゃねぇーのかねー?」

 

椅子に座って肘をテーブルに突き手の平で顎を乗せて神妙な面持ちで言う男性はズルズルと音を立てて食べる一誠の様子を見守りる。

 

「でもま、人はいつか独り立ちして、一人暮らしをするんだ。一坊はその予行練習だと思って家族の帰りを待ったらどうだ」

 

「おやっさんはそうしてもう数十年も経つんだな」

 

「うっせっ」

 

暗に独身生活=年齢を指摘された。それからも一誠と男性は雑談を交わし合い、三杯目のラーメンを食べ終えた頃。二人しかいない空間に第三者が現れる黒いスーツを着込む男。自然と席に座って豆電球の光を浴びるその風体は帰宅途中のサラリーマンのようにも見える。

 

「いらっしゃい。何にします」

 

「そうだね・・・・・では、隣の少年からお勧めを選んでもらおうかな」

 

その男は一誠に託した。託された当の本人は内心怪訝ながら―――答えた。

 

「このおやっさんの鍛えられた腕に抱き絞められながらの熱いキスがお勧めですよ」

 

「はっはっはっ。一坊・・・・・面白いこと言うじゃねぇか」

 

「それほど美味しいってことさ。おやっさんの作るラーメンは」

 

全然笑っていない目の中年男性と朗らかに笑う一誠は「一番高いラーメン」と改めて教えたので、男性はその高いラーメンを注文することに。

 

「君、今芸能界で人気の織斑一誠君だね。よくここに食べにくるのかな?」

 

「週に二、三日は通ってる」

 

「仕事帰りにか。家族の作る料理は食べないのかい?」

 

「愚問なことを聞くなよおじさん。俺達がどんな立場でいるのか分かっている筈だろうに」

 

一切、隣に座る男性へ視界すら入れない一誠と同じくラーメンを作る中年男性を見つめる男性。

 

「はは、そうだったね。でも、君もIS学園に行っているんだろう?こんなところにいて大丈夫なのかい」

 

「生憎だけど通ってないんだ。行く理由もないから」

 

「ISを動かせるのに行く理由がないとは不思議なことを言うね」

 

「おじさんには関係のないことだろ」

 

淡々と述べる隣人に男性は話掛け続ける。

 

「私もISを動かせたら空を飛んでみたいものだ」

 

「空を飛んで、どうしたい?」

 

「無論、男のロマンを叶えるのさ。―――空から無防備に裸体を晒す女性の体を見る為に」

 

「おやっさん。警察に連絡。覗き魔がここに居るって」

 

「あいよ」

 

待て待て。冗談だから連絡しないでくれたまえ、と必死な表情を浮かべる男性につまらなさげな反応、溜息を零す一誠。

 

「でも、どうして行きたがらないんだ?君はまだ高校一年生ぐらいの歳だろう?」

 

「飛び級して高校を卒業した時は中学二年生の頃だったんだなぁ」

 

「・・・・・頭がイイんだね」

 

「俺、天才だから」

 

ははは、と笑いだす一誠は常連客として足を運んだ数によって次はどんな物を食べたいのか、中年男性は聞かずとも分かっている風に炒飯を一誠と、ラーメンを男性の前に同時で置きだす。出された料理を口や舌で味わい堪能し、

 

「前より腕が上がったなおやっさん」

 

「一坊のお墨付きとありゃ嬉しいねぇ」

 

食べ終えたところで感想を述べる一誠と嬉しそうに笑みを浮かべる中年男性。

 

「ごちそうさま。また来るよ」

 

「あいよ。また来いよ一坊」

 

代金を払って軽く別れの挨拶を告げてラーメン屋を後にする。電車の高架下から離れても夜の明るさは待ちの建物が照らす電気で保っていて耳を澄ませば遠くから聞こえる人々の声。夜は長いとばかり夜遊びをする若者や会社帰りの人達や外食を楽しむ家族もいるだろう。一誠もまた真っ直ぐ帰らず食後の運動とばかり寄り道をしていた。

 

「あの店の付近に誰もいないと思えば・・・・・こーいうことね」

 

既に展開した数人のIS操縦者が取り囲んで武器を突き付ける状況下に陥る。より捕縛しやすいようにか、一般人に変装しているタダものではない十数人の者達も操縦者と間隔を開けて待機している。ここに通ずる道は大方、強面の人達によって出入りを規制されているのかもしれない。そこまでしてする必要と理由は―――一誠であろう。

 

「政府の人達も大変だなぁ。こんな芸能人一人の為にISまで出動させるなんて」

 

独り言、苦笑いを浮かべて。だが、一誠の顔は真剣となって金目にも揺るぎない決意を孕んだ。

 

「単刀直入で言うけど、道を開けてくれないか?じゃないと実力行使で通るぞ」

 

一歩足を動かすだけでISを纏う操縦者達から警戒心が増したのを察する。一人一人の姿を確認し、一誠の話に耳を傾ける者はいないと自己判断した結果・・・・・。

 

「実力行使で帰らせてもらう」

 

 

 

一誠の後を追うようにして電車の高架下のラーメン屋を後にする男性はどこかへ連絡する為に片手で携帯を操作する。通信相手は直ぐにワンコールで男性と通信状態にした。

 

「私だ。首尾はどうだ」

 

男性の質問に通信相手は答えた。―――無言という返事で。返事を言わない相手に眉根が寄り怪訝な心情を抱きつつも何度か呼び掛け、一誠が向かったであろう道を進むことを止めない男性は、

 

「おい、何が遭った。応答し・・・・・」

 

その途中で惨劇と遭遇してしまった。目の前の光景を直ぐには受け入れなかった。数機のISが・・・・・世界最強の兵器が・・・・・。

 

バターのように斬られたISの装甲らしき物が山積みに片付けられているだけでなく、女性の操縦者や強面の男性達もそれぞれ建物の壁に磔されていた。我が目を疑い、こんなことを成し遂げた元凶は誰なのか見当もつかない。女性達の体には傷一つ見当たらないものの、ISを斬って壁に磔た者の芸道は人間を超えている。ブリュンヒルデの千冬ですらISの装甲を斬ることできるのか怪しいものだ。しかし、目の前の現実を男性に認識させる証拠がある。

 

「誰だ・・・・・こんなことした奴はっ!?」

 

「―――俺だが何か?」

 

忽然と肯定の声が静かに発した。その声は男の背後から聞こえ反射的に振り返った矢先に闇夜から現れる声の主。

 

「実力行使でそうさせてもらったよ。俺の道を阻むんだからな」

 

「君は、一体・・・・・っ」

 

「無用な殺生は好まないからこの程度で済ましたけれど。また、同じことをしたら・・・・・どうなるかわかってるな?」

 

背筋がゾッと凍りそうな低い声音。相手が誰なのか男は察しているが頭の中では否定している。こんなことただの人間ができる筈がないと。

 

「お前は・・・・・誰なんだ、何者なんだ・・・・・」

 

「答える必要があるのか?もう目の前に実在している者の名を知っているのに」

 

どこから取り出したのか刀身が黄金の剣を男性に突き付けた。闇を照らす黄金の剣は神々しい輝きを放っている。思わず見惚れてしまう美しい剣を持つ者は淡々と声を発する。

 

「警告だ。これ以上俺に突っかかるな。人もISも俺に差し向けるな。あの鉄屑の塊と磔にされている奴等を増やすだけだ」

 

「・・・・・だが、君は希少なISを動かせる男なのだぞ。私が手を引いたところで、国が、政府が、世界が見過ごすことも黙ってもいないぞ」

 

「あんたから俺の言葉をそのまま世界中の政府や企業の関係者に言えばいい。真摯に受け入れた者以外、俺の言葉に耳を貸さなかった奴だけ、アレ等と同じ目に遭わすだけだ」

 

ただ迎撃、正当防衛をするのみと言外する相手に男は顔を固くする。

 

「意味はないかもしれない。それでもいいのか」

 

「俺から何一つ事を起こす気はない。俺から行動をすればテロリスト扱いにされ兼ねないからなぁ?」

 

「・・・・・」

 

「今回はこの程度で済ました、と言ったが今まで迷惑を被ったんだ。これは俺が預からせてもらうぞ」

 

剣を持つもう片方の手に何かが入れられた袋を持っていた。ふと、ある考えが過ぎった。あのISの残骸の中にコアは含まれているのか―――?

 

「返して欲しければ、迷惑料込みで五億を用意して来いと大統領に言っておけ。用意できなかったらコレ、アメリカやら中国やらに売っちゃうからそのつもりで」

 

外国の大統領が聞けば今すぐにでも喜んで用意しそうな脅しをする。やはり、ISのコアは抜き取られていたようで男の顔に焦りが浮かび上がる。そんな男を他所に相手は悪い笑みを浮かべた。

 

「ああ、忘れてたが期限は五日までだ。それまで用意してもらえないとこれは闇の中に消えてしまうぞ?」

 

そして後日。千冬、一夏、秋十とは秘密裏に政府と交渉の末、ISコアと膨大な額の金との交換で手に入れる。生身でISを倒しうる実力を持つ相手だと一部の政府の人間は認識しつつも説得を試みる姿勢を崩さない。

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