インフィニット・ストラトス~前世の記憶を持つ者~(完結)   作:ダーク・シリウス

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旅行&襲撃

とある日。俺は拉致されていたようだ。

 

「んーふふふっ。いっくんとデート、いっくんとデート♪」

 

寝ている間に世界各国から追われている束ねーちゃんの手によって、休日の日には家に戻って寝ていたはずが気付かない何らかの方法で朝目が覚めると見慣れた天蓋が飛び込んで来た時は目を疑ったよ。そしてファンタジー風な服を着こなして横にはしゃいでいる束ねーちゃんと静かに歩を進めているクロエと一緒にいる俺は某国に一泊二日の旅行を楽しんでいる。

 

「いっくん、くーちゃん。あのお店で食べちゃおう!」

 

「金は?」

 

「ゴミが貯えていた銀行にハッキングをしてぜーんぶ私が有効活用する為に奪ったぜぃ☆」

 

―――狙われた人、申し訳ないのとご愁傷様としか言えない。てか、銀行をハッキングなんて凄すぎだろう。

高級感あふれるレストランへ足を運ぶ束ねーちゃんと付き沿うクロエに続き、何でもありな稀代の天才博士に見初められた俺も続く。

 

 

「おいおい、ナターシャ。ここのレストランで食べるきかよ?絶対に私の肌があわねぇーって」

 

「この間、このお店の料理を食べてみたいってぼやいていたじゃない。ゲームで負けた私の奢りなんだから、食べる場所の選択を決めるぐらい私にあるのだからいいでしょ?」

 

「・・・・・しょうがねぇな、もう」

 

 

「今日は、このお店で食べましょうか」

 

「スコール、私はたまにハンバーガを食べたいぞ」

 

「・・・・・」

 

「高級な肉を食べれるのだから、食べる物は同じでしょう?―――私、あのB級フードは嫌いなのよ。特に食べ方が」

 

 

「おお、ターンテーブル式」

 

「丁度良かったねー。ほとんど満席の中で空席があって。ね、くーちゃん」

 

「はい、束様」

 

セレブや有名人、貴族などがよく通うというレストランに入ることができた俺達は中華式の卓に座る。俺達が座ってもまだ五席も空席がある。一家団欒やパーティの予約を狙ったレストランには他にも数多くの人達がいる。仕切りで遮られているが賑やかな声が聞こえる他、店員に渡されたメニュー表を見るとここは、様々な国の高級料理を取りそろえ、バリエーションを豊富にし、脚の心を掴む魂胆なのだろうと考えている束ねーちゃんとクロエが真ん中の席をあからさまに空けて座りだす。

 

「俺は真ん中なのね」

 

「当然!」

 

「はい」

 

仲は良きかな。座って仲良くどれを食べようかと楽しげに決め合う俺達に再び店員が申し訳なさそうに話し掛けてきた。

 

「申し訳ございません。当店では満席の故、他のお客様とご一緒に相席としてもよろしいでしょうか?」

 

「ああ、大丈夫です」

 

「ありがとうございます。では、お決まりになられたらお呼びください」

 

店員は立ち去り、こっちはこっちの雰囲気を作って楽しもうと通りかかった店員を呼び止め、注文をした時。

さっき話し掛けてきた店員が二人の女性を引き連れて俺達の席に案内をした。

 

「こちらでございます」

 

「ありがとう。―――っ」

 

「あ」

 

鮮やかな金髪、おしゃれなカジュアルスーツ。開いた胸元からは大人の女性特有の整った膨らみが僅かに窺わせてくれる女性は・・・・・知っている人だった。彼の女性は澄んだ碧眼を大きく見張って固まる。

 

「どうした?ナターシャ・・・・・って、おい。どうしてここにいるんだよ」

 

もう一人の女性は俺の顔を見ながら唖然とする。この女性は知らないな。

 

「んー?いっくん、こいつら誰だよ?」

 

「あー、ISを操縦できる唯一の男性だから驚いているんじゃないか?」

 

「・・・・・ふーん。ま、それもそうだね」

 

俺を含め他の三人も世界的に有名だ。顔を覚えられてもおかしくない。束ねーちゃんはそんなところだろうと深く考えず俺に甘えてくる。

 

「・・・・・座りましょう、イーリス」

 

「あ、ああ・・・・・」

 

取り敢えず、向こうも人がいる場所では大事を起こしたくない気持ちなのか。気にせず客として席に座るその直後。

さっきの店員が―――。

 

「あの、誠に申し訳ございません。こちらの三名のお客様も相席をさせてもよろしいでしょうか?」

 

「えっ?あ、はい」

 

「申し訳ございません。では、お客様」

 

「ええ、ありがとう。―――っ」

 

あれ・・・・・デジャブ。じゃないぞこの反応。豊かな金髪と豊満な体に包みこむ赤いドレスを纏う女性が俺と束ねーちゃんを見て目を丸くしたじゃないか。まさか、こんなところで奇跡に等しく出会うとは思いもしなかったのか目を疑うように瞼を何度も閉じた。

 

「このガキ―――!」

 

「ふふ、ごめんなさい。何でもないわ」

 

憤怒の形相の亜麻色の髪の女性を制した女性は微笑みを浮かべる。でも、俺に向ける敵意と殺意だけは収まる気配はない。彼女の他には、黒髪に目を隠すようにサングラスを掛けた小柄の少女・・・・・お前もか。

 

「―――お互い、頼んだ料理が来るまでお話をしませんか?」

 

突然そう切り出すのは以前戦った女性だ。うわ、もう何だか腹の探り合いが始まろうとしているぞ。

 

「そうね・・・・・。同席した者同士。何かの縁だと思って退屈しのぎとかねてお話をしましょう」

 

金髪の女性も便乗したぞ。うわー。うわー。なんだか緊張と興奮の意味でドキドキするぞ。同じ金髪を綺麗に背中まで伸ばしている者同士の視線が俺にロックオンだ。

 

「まさか、こんなところで織斑一誠君と篠ノ之束博士と出会い、食事をともにできる奇跡と偶然に、噛み締めてゆっくりと会話を楽しみたいわ」

 

「そうね。それについては私も同じ気持ちだわ」

 

「えー、嫌だよ。お前達と話をすることなんて束さんは無いよー」

 

この後、絶対に騒動が起きそうだ。さて・・・・・どうしようかなぁ・・・・・。

 

「私はナターシャ・ファイルス。こちらは私の友人のイーリス・コーリング。私達これでも米国の国家代表なのよ?」

 

ナターシャ・ファイルス。あの夏の海での事件以来だ。こうしてまた会えるなんて本当に偶然だろ。

 

「私は・・・・・コール・ミューゼ。この二人は血が繋がって無いけれど家族当然の関係なの」

 

「そうなんだ。因みに二人は恋人同士?」

 

「あら、そう言う関係に見えるかしら?」

 

偽名を使うか。もう知っているけど当然と言うべきかな。悪の組織が堂々と闊歩しているなんてその手の機関や組織じゃないと気付かないだろう。

 

「付き合ったら似合いそうだったからな」

 

取り敢えず話を合わせる。だからさ、俺を睨むのは止めてくれないかオータム?無言を貫いている少女の方に見習ってくれ。

 

「あー・・・・・コールさん?さっきから獰猛犬のように今にでも吠えそうな怖いんだけど」

 

「誰が獰猛犬だクソガキッ!?」

 

「あ、吠えた。というか、誰も誰かとは言っていないのに自覚していたんだ?」

 

「ンだとこのガキがぁっ!」

 

「・・・・・落ち付きなさい。ここは静かに食べる場所よ」

 

チッ!とコール・ミューゼの嗜めで席に座り直す女性は・・・・・やっぱり付き合っていそうだわ。

 

「・・・・・っと、悪い。上からの電話だ」

 

イーリス・コーリングが突如鳴りだした携帯のメロディーに反応して席を外す態度を示す。しかし、このダダッダッダダンッって・・・・・・。

 

「ター○・ネ○ターの曲か。好きなんだ?」

 

「ああ、こう、ズシンと来る感じが良いんだよなー」

 

「なるほど、何か分かる。威風堂々とした雰囲気を作る感じだし、この音を聞くと何だか無性にやる気が出るんだよなー」

 

「お、嬉しいな!そうなんだよ。アタシこの映画が好きでさー・・・・・って、話してる場合じゃなかった」

 

早歩きで店からいなくなってしまった彼女に少々残念さを感じている俺に注文した料理が運び込まれた。

 

「おお、美味そうだ」

 

「待ってましたー!いっくん、食べさせっこしよー?」

 

「待て、人前は物凄く恥ずかしい」

 

「あの、私も食べさせたいです」

 

「え、俺が雛鳥になっちゃうほうなの?って、準備が早いな・・・・・」

 

俺に食べさせる、レンゲに麻婆豆腐や蟹餡かけ炒飯を掬って口元に突き出してくる二人に思わず動揺する。

 

「うふふ・・・・・可愛いわね。記念に一枚を取ろうっと」

 

「私も」

 

「ちょい待てお二人さん!写真を撮るならまだいいけどこの状況を残す写真は止めてくれ!」

 

「「あーん」」

 

カシャッ、と撮られた音がした時はもう遅かった。ええい、こうなったら・・・・・。仕返しだい!

携帯を取り出してカメラモード。ナターシャ・ファイルスを撮り、コール・ミューゼ三人組を纏めて撮り返してやったぜい。・・・・・雛鳥のように横から伸びるレンゲにある料理を食べながら不格好な撮影をしつつ。

 

「あら、無断で写真を撮るのはマナー違反よ?」

 

「こっちの了承も無しに撮ったじゃないか。しかも、恥ずかしいところを」

 

「可愛いからいいのよ。それで兵藤君?せっかく国家代表のIS操縦者と仲良くなれたのだから交換する気ないかしら?」

 

携帯を見せ付け、メルアドと電話番号の交換を望むナターシャ・ファイルスに・・・・・「うん」と首肯した。

 

「よしよし。また増えたぞ。圧倒的に女性の番号が多いけど」

 

「じゃあ、その中に本命の女の子はいるのかな?」

 

「いやー。相手を認めようとしない女なんてこっちから願い下げだ。ISを使えるだけでISを乗ったことも無い、代表候補生でもISを政府から持つことを許されないのに女が偉い、女の方が男より強いなんて傲慢で驕っているんだきっと俺の兄貴達のクラスメイトの女子は。破壊兵器のどこが憧れるのか理解し難い」

 

ピクリ、と黒髪の小柄な少女が反応して俺に視線を向けてきた。怒ったか?でも、これが俺の本心だ。

 

「・・・・・あなた、ISは嫌い?」

 

「ん?嫌いじゃないぞ。ただ、女尊男卑のこの世界が気に食わないだけだ。見下され、蔑まれ、罵倒される相手の気持ちは俺が良く分かる。優秀な者と比較され、強者は優遇、弱者は情が無い言葉を、仕打ちをされる。そんな奴の気持ちがな」

 

前世に体験した、過去に経験した幼い頃の俺の話だけどさ。

 

「だから―――認めようとしてくれないなら、何が何でも認めさせる。力を求め、圧倒的な力で全てを認めさせる」

 

「・・・・・」

 

「独りよがりだろうが、認めてくれないなんて結構辛く寂しいからな。怒りだって抱く。俺は俺だ、弱くて何が悪い。強いのはそんなに偉いのか。―――否、そうじゃないはずだとな」

 

ああ、口が止まらないな。

 

「天才に打ち勝てるなら血反吐を吐くぐらいの努力をする。越えることができるなら惨めでも何でもやってやる。俺は、そう言う人間が一番好きなんだよ」

 

そう言った直後・・・・・俺の携帯に誰かのメルアドの送信の受信をした。確認をすると―――黒髪の少女のものであるとわかった。今まで無言を保っていた彼女がしてくれるとは思いもしなかったほうだ。お返しとばかり送信をすれば受信をしてくれた。

 

―――M。

 

続いて

 

―――スコール・ミューゼル。

 

何故か彼女のも送ってくれたぞ。

 

「中々、心に響く話を聞かせてくれてありがとう」

 

「どういたしまして・・・・・さてと」

 

俺からナターシャ・ファイルスにメルアドを送信しておいて立ち上がる。

 

「ん?いっくん、どうしたの?」

 

「何だか外が騒がしくなってきたようだからな。もしかしたら『誰か』が束がここにいるって連絡したかもしれない」

 

数えるのが億劫しいほどの一般人より強い気の気配がレストランを囲むようにしている。

 

「束ねーちゃん、クロエ。もうここは長居は無用だ。―――やっこさんが来るからな」

 

二人にそう言った矢先、無数の黒い影が窓硝子を蹴り破って侵入してきた。案の定、中はパニックに陥る。

あーあー・・・・・せっかくのデートが台無しじゃないか。残念そうに黒い影等を見ていれば射撃準備を整えたアサルトライフルやマシンガンを突き付けてくる―――特殊部隊?で、いいのかな。

 

「我々の指示に従ってもらう篠ノ之束、織斑一誠」

 

「大人しく我々とついてきてもらう」

 

銃を突き付けながら脅迫する特殊部隊達はジリジリと近づいてくる。ほうほう、俺達を拘束するのか。

俺、こう言う体験をしたことがあるからちょっと楽しいぞ。でもな・・・・・。

 

「人に銃を突き付けてくるってことは・・・・・死ぬ覚悟があるんだな?」

 

『―――――っ!?』

 

特殊部隊の面々の身体が不自然に震えだしたと思えば、床に平伏したまま身動きをしないのを一瞥して、出入り口に歩み寄る俺は束ねーちゃんとクロエも遅れずついてきてくれる。ちゃんと代金を支払って店から出れば案の定・・・・・。

 

「おおう・・・・・絶景だ」

 

警察、黒尽くめの集団、ISまでもが店の周りの一帯を占拠し、俺達を出迎えてくれた。空を見上げればヘリや苦宙に漂うISもいる状態だ。

 

ガチャ。

 

「悪いな」

 

イーリス・コーリングの手にある銃に突き付けられてしまった。

 

「このまま大人しくしてくれ。そうれすれば手荒い歓迎はしなくなるからよ」

 

「俺を日本に戻さないと国際問題になりかねないぞ?」

 

「さあな。それは上がどうにかするさ。取り敢えず、今はお前らの身の安全を心配するのが優先だとは思わないか?」

 

片手に黒光りする鉄の拘束具を見せびらかす。ん・・・・・クロエは確かに戦えないから戦闘は避けたい方だ。だけど、守るべき者が傍にいるから・・・・・。

 

「これって本物か?」

 

銃を人差し指で撫でる。

 

「本物である証拠を知りたいのか?」

 

「んー、いんや。もういい」

 

「は?」

 

ピン、とデコピンで弾いた。

 

「だってそれ、もう壊れたし」

 

次の瞬間。イーリス・コーリングの銃が砕け散って使い物にならなくなった。当然、信じられないものを見る目で一瞬だけ体を硬直、意識が停止した瞬間は見逃さない。彼女の首を掴んで空へ思いっきり放り投げた。

 

「さて、帰るか」

 

一人、二人、三人と俺達を囲むIS乗り以外の人間全てが勝手に倒れ始める。

 

「すごーい。勝手に一人で倒れちゃってるよー。いっくん、何をしたの?」

 

「特に凄いことはしてないさ。緊張のあまり意識を失って倒れたんじゃないのか?」

 

「なるほど!」

 

「あっさり納得してくれたのはどうかと思うけど・・・・・残りはIS操縦者のみだな」

 

ここで展開すれば国際問題になる。まあ、問題ないけどな。

 

「動くな!貴様、何をした!?」

 

「別に?俺は何もしてないぞ」

 

「ふざけたことを、これ以上何かすれば足の一本を使えなくしてやるぞ!」

 

量産型のリヴァイブだったな。マシンガンを俺の顔面に突き付けてくる失礼極まりないこの女性はどうしてくれようか。

 

「戦う意志があるようでなによりだ。じゃなきゃ―――こっちが気が引くからな。一方的な蹂躙さ」

 

俺は動く。敵対する者全てを破壊する為に。

 

 

 

私は、夢を見ているのだろうか。ISが生身の人間によって殴り飛ばされ、蹴り飛ばされ、手足を折られ、装甲を打ち砕かれ、ISのハイパーセンサーが探知できない速度で街中を駆け回り、戦闘不能に陥らしていく。

 

「やっぱりただの人間じゃないわね。あの子・・・・・」

 

「どこかの秘密企業の実験体にされたってやつじゃねーのか」

 

「・・・・・」

 

残り一機となった量産型ISを操縦する者は、悠然と真正面から近づく織斑一誠に恐れ戦き、銃弾の雨を放つがそれを手刀で弾きながら足の歩みを止めない。銃弾を弾く腕は消えているように見えて決して見えない。

奴に銃撃は効かないと悟るや空へ逃げた。が、追撃する織斑一誠がさらに上へ移動して―――サマーソルトで得た遠心力による踵落として操縦者の頭から蹴り地面へ叩きつけただけでは飽き足らず、拳で装甲を何度も殴り破壊した。

 

「よし、おーわりっと」

 

「―――終わりじゃねぇー!」

 

空から出現した虎模様(タイガー・ストライプ)のIS。コール・ミューゼことスコール・ミューゼルは小さく笑みを零す。

 

「アメリカの第三世代型『ファング・クエイク』ね。流石のあの子も成す術もないでしょう」

 

「―――ところがどっこい。そうでもないんだよねー」

 

彼女の呟きを何と、束がにんまりとした笑みを浮かべて拾った。

 

「それは、どういうことですか?」

 

「んーふふふ。そのままの意味だよー?いっくんはとっても強いのだ!」

 

「それはISを装着すればの話ですね?ですけれど、ここでISを展開すれば、日本と米国は争いの種を育てることになると思いますが?」

 

両腕でスコール・ミューゼルに対してクロス、バツの構えをして馬鹿にした表情と言葉を一緒に表した。

 

「ぶっぶー。はい、いっくんのこと全然知らないお馬鹿さんには、見せるのが勿体ない、いいものを見せてあげるよ。―――人知を超えた、ISを超えた力を!」

 

いっくーん!あの姿になってー!と篠ノ之束が弾んだ声で織斑一誠にそう言う。

 

「・・・・・しょうがない。言われたからには、応えないとな」

 

苦笑いを浮かべる奴にイーリス・コーリングは首を傾げた。

 

「おいおい、ISを展開するってのか?ここは日本じゃねーぞ?」

 

戦意を窺わせる、不敵の笑みを浮かべるイーリス・コーリング。国家代表として簡単に負ける要素は無く、言い勝負ができるぐらいの予想をしているのだろう。だが、待ったが掛かった。

 

「イーリ!その子に手を出しちゃ駄目!あなたでも勝てないわ!」

 

もう一人の代表国家、ナターシャ・ファイルスに制止される。

 

「ナタル、何を言っているんだ。こいつはISを展開できないんだぜ?そんな相手に私が負ける筈がないって」

 

「いいから、この子に刺激をしないで!」

 

何を言っている・・・・・といいたげな間抜け面をするイーリス・コーリングを他所に、口の端を吊り上げる織斑一誠の全身が光に包まれた。ISの展開時に似た光・・・・・しかし、その姿は機体の装甲を纏う姿ではなく。

 

背中に十二枚の翼、頭上に金色の輪っか、真紅の長髪は金髪に染まり、両目は蒼と翠のオッドアイと変わり果てた姿の織斑一誠・・・・・。

 

「キター!いっくんの熾天使化(セラフ・プロモーション)!」

 

あれは・・・・・っ!しかし、セラフ・プロモーション・・・・・?ISではないのか?

 

「・・・・・おい、そりゃあなんだよ」

 

アメリカの国家代表が敵を前にして意識を味方に向けている最中に奴は動いていた。

イーリス・コーリングの真正面に立った直後にファング・クエイクの機体が吹っ飛び鎮座しているトラックと衝突した。

 

「軽いな」

 

「な、に・・・・・?」

 

「今のはただ添えただけだぞ」

 

手の平を突き出した姿勢で言う奴には目を疑う。ISの重量はそんな軽い物ではない。添えただけで吹っ飛ぶなど物量を覆すことだと奴は知らないのか。

 

「お前、何のトリックをしやがった!」

 

「イーリ!やめなさい!」

 

スラスターに溜めたエネルギーを一気に噴出して一誠に突っ込む。ナターシャ・ファイルスの制止を振り切ってISの手で捕まえようと突き出す。

 

「取っ組み合いか。不格好になるけどISに負けられないんだよっ」

 

ガシッ!とイーリス・コーリングの右手と織斑一誠の左手、左手と右手が組み合う。ただし、織斑一誠の両腕が人の手とは違う光っている巨大な手でファング・クエイクの手を掴んでいる。

 

「「な―――っ!?」」

 

「・・・・・っ」

 

スコール達が驚くように私も驚かずにはいられなかった。あの光る手は何なのか、私達が分かる筈がない。掴めていることから物理的な干渉ができているようだが、どういう原理で成り立っているのか。

 

「お、お前は―――!」

 

「ふんっ!」

 

ずんっ!と路面に足を凹むほど踏みながら一歩、一歩と前進をする。ISの力を確実に凌駕している。イーリス・コーリング自身もISではない相手に押されている事実に驚愕と焦燥の色を隠せないでいるほど、さらに脚部スラスターも総動員させて出力を上げるが。

 

「ほい」

 

受け流す様にイーリス・コーリングを横へずらす織斑一誠によって建物中へそのまま勢い良く突っ込んだ。

 

「・・・・・スコール、どうする。私達もやるか?」

 

「待ちなさい・・・・・ここは観察するべきだわ。あの時とは違う状況の中で―――彼の実力を知るまたとない機会なのだから」

 

「・・・・・」

 

現状待機、そして空から地上から敵の増援がやってくる。

 

「あー、面倒だな。これ以上目立つのは良くないか」

 

現れる増援に対して億劫そうに息を零す奴の翼が伸び、篠ノ之束と女の体に巻き付け引き寄せながら宙に浮いた。・・・・・逃げる気か、と観察をしていると建物からイーリス・コーリングが飛び出して織斑一誠に迫る。

 

「待ちやがれっ!逃げる気か織斑一誠!」

 

「―――無駄だ」

 

突如、奴を包む猛威を振るう風が全てのISを遮ったその時、嵐と化している風の中から稲妻が走り、イーリス・コーリング達に直撃したのだった。

 

「第二世代だろうが第三世代だろうが、金属や装甲、機械の塊に勝利は無いさ」

 

声だけが聞こえる。風の強さも弱まってやがて治まった頃には三人の姿は無かった。

色々と驚く連続で理解に苦しみ、奴について定かではないがこれだけはわかる。

 

 

織斑一誠という人間の皮を被った化け物はISを凌駕する。

 

 

いや、これはもう私達の間で認知されている事実だったか。・・・・・不意にスコールから感じ取った気配が変わり、気になり見上げてみれば。

 

「・・・・・欲しい。あの力、あの子の全てを・・・・・」

 

爛々と欲の色を輝かせる。あの織斑一誠という者は人間ではない事を知り、圧倒的な力を見せ付けられては我が物にしたいと考えるのは無理も無いようだ。

 

「・・・・・織斑一誠」

 

ああ・・・・・やっぱりこんなこと初めてだ。目的の人物意外誰かに興味を持つなど。ましてや・・・・・。

 

―――殺したいほど復讐したい相手などにこの感情を抱くなんて。

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