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それでは最新話をどうぞ
四人で野球部の活動してるグラウンドの方に行くと既に練習が始まっていた。今は実戦的な練習が行われているみたいだ。俺の見た限りだと特に目立った選手はいないかな。チーム全体的には守備は軽快にこなしている感じだ。特に内野の動きはいい感じなんだ。堅守型のチームに見える。打撃はあまりよくないみたいだな…特に下位打線は酷そうだな。でも…投手が速球派か…速球派はいいんだけどなんかチームの特色に合った配球で投げてない気がするな。
「狼本君、難しい顔をしてどうしたッスか?」
「いや、なんとなく今投げてる投手が気になってね」
「狼本君はさすがッスね。今投げてる人は三年生でエースの山道先輩ッス。最高球速は146km/h、変化球は高速シュートと高速スライダーッス。パワフル高校には数少ない県でも上位の選手ッス。スタミナも結構あって完投出来る投手ッス。弱点といえば少しコントロールが悪いところッスね」
そういうことか。俺の感じた違和感は緩急のついた配球ができないからなのか。となると後半に相手が速度に慣れて打たれ始めそうなタイプだな。それにコントロールも悪いとなると…捕手としてはリードしにくいかもしれないな。
「それにしても川星さんはいろいろ知ってるね。県外の俺の事も知ってたし…どこで情報を手に入れてきてるの?」
「ほむら独自の情報網ッス。企業秘密なので情報源は教えられないッス」
「そ、そうなんだ。じゃあ他に目立った選手とかいるの?」
「いるッス。二年生の生木先輩。今ショートを守ってる人ッス。走攻守のバランスが取れてる選手ッス。盗塁や走塁が上手いッス。次は二年生の松田先輩。投手ッス。山道先輩と同じような速球派投手ッス。最高球速は143km/h、変化球はスライダーとフォークッス。スタミナが山道先輩より少ないけどコントロールはいいみたいッス。次のエース候補ッス。最後に二年生の望月先輩。外野手ッス。守備はまあまあ上手いッス。打撃でのパワーは圧倒的なものを持ってて打撃センスもいいッス。だけどホームランが打てないッス。パワー的には打ててもおかしくないけどどういうわけか打球は低い弾道でしか飛んで行かないみたいッス。今はレフトの守備についてる人ッス。ほむらが注目してる人はこんなところッス」
山道先輩以外の注目選手が二年生のみっていうところは突っ込まないでおこう…でもいい選手が結構いるな。投手的には個人的に山道先輩より松田先輩の方がいいと思うんだけど…チームの方針もあるから仕方ないのかな。なんだかんだ言って面白そうなチームだな。
「なんとなくだけど…このチームなら本気で甲子園目指せる気がしたよ」
「まだ入部もしてないのに大きくでたでやんすね!!」
「でも目標は大きい方がいいもんね!!」
「そうッスね!!」
「少し騒がしいがグラウンドの方を見てるというと野球部の入部希望者か?」
四人で話しているとグラウンドの方から声が掛かった。そっちを見るとさっきまでマウンドで投げていた山道先輩の姿があった。
「そうですよ。まだ仮入部とかは来週からなんで見学だけでもしておきたくて。あなたは山道先輩ですよね?」
「そうだ。俺を知ってるとはな。お前達、名前は?」
「矢部 明雄でやんす。よろしくお願いするでやんす」
「早川 あおいです。選手希望なのでよろしくお願いします」
「川星 ほむらッス。同じく選手希望ッス。よろしくお願いするッス」
「狼本 朔陽といいます。よろしくお願いします」
「三年の山道 翔だ、よろしく。今年は女子も選手希望がいるのか。まあいい。そこの狼本とかいったか。まだ入部できないと分かっていて何故ジャージ姿なんだ?」
女性で選手希望がいるのにあんまり反応はなしか…興味ないだけかもしれないけどまあいい人なのかもな。
「帰りにバッティングセンターにでも行こうかと思いまして。バットも持ってきましたし…練習してる姿見たらやりたくてうずうずするのは自分でもわかってたので」
「そうか。どうせなら生きた球打ちたくないか?」
「そりゃあ打ちたいですよ。そっちの方が練習になりますし」
「じゃあ打っていけ。相手は俺じゃないが練習にはなるだろう。打てるかどうかはお前次第だが」
え…打っていっていいの?
「じゃあお願いします…でもいいんですか? 入部もしてない俺がグラウンドに入っちゃって?」
「構わないさ。今日はどうせ自主練だったからな。新人の実力も見てみたいというのもある。そういえばスパイクはあるか?」
「あります」
「他の三人も近くで見たほうが勉強になるだろう。俺について来い」
そうして俺達はグラウンドの中に入っていった。
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グラウンドに入っていくと周りから視線を感じた。まあ知らない奴が入ってきたらそうなるか。まあ俺より女性二人に視線が集まってる気もするが。
「山道先輩、そいつら誰ですか?」
「入部希望者の一年だ。仮入部期間はまだだが見学していたんでな。どうせなら近くで見せたほうがいいだろ?」
「そういうことっすか」
山道先輩とマウンドにいる先輩が話している。あの人が松田先輩かな?
「それと、これからこの中の一人とお前に三打席勝負してもらう。実力も見てみたいんでな」
「そのジャージ着てる銀髪の奴ですか?」
「そうだ。よく分かったな」
「いや、どう見てもそいつしかいないでしょう…バットも持ってるし…」
俺もそう思う。客観的に見ても俺だけ運動着でバット持ってたら分かるよ普通…
「狼本といいます。よろしくお願いします」
「松田だ。準備出来たら打席に立ってくれ」
「はい!!」
そうして俺は靴をスパイクに履き替え始めた。
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ボク達はベンチで見ることになったのでベンチに座っている。
「ねえ、この勝負どっちが勝つと思う?」
ボクは二人に聞いてみた。
「ほむらの情報が正しければ狼本君ッスね」
「オイラも狼本君が勝つと思うでやんす」
「そうなんだ」
ボクは松田先輩が勝つような気がするな…いくら凄いと言っても140km/hを超えるストレートなんてシニアでもあんまり見なかったし。打つのだって大変な気がする。
「ハハハ…お前達松田を舐めすぎじゃないか? 狼本がどれだけ凄いかは知らんが名前も知られないような奴だろ? そんな奴に松田の球は打てないと思うぞ」
「や、山道先輩!?いつの間にこっちに…」
気づいたらボクの横に座ってて吃驚したよ!!さっきまでは狼本君の隣にいたのに…
「理由を言っても先輩が納得してくれるとは思わないでやんす。見てればわかるでやんす」
「ほう…それは楽しみだな。じゃあ見させてもらおう」
ボクも矢部君がそこまで言う実力を見てみたい。そうしてボクは狼本君の方を見た。狼本君が打席に入るところだった。
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俺は準備が出来たので屈伸しながら左打席に入った。部活を引退した後もバッティングセンターは定期的に行っていたが人の投げる生きた球を打つのは久しぶりだ。やっぱり打席はワクワクする。
「よろしくお願いします」
俺は松田先輩に向かって一礼し、構えた。
「おう、本気で行くから打てなくても落ち込むなよ」
松田先輩はそう言ったが俺は三打席とも打つつもりなんだけど…まあいいとりあえず集中しよう。審判を務める先輩からプレイの声が掛かった。俺は集中して松田先輩の方を見る。ワインドアップからオーソドックスなオーバスローでボールが放たれた。外角に向かっていくストレート。ストライクゾーンからボール二個分ほどずれている。俺は悠々見送った。判定はボール。球速はおそらく140km/h程だろう。さっきのはおそらく俺にどんなボールが来るかどうかを見せたのだろう。
「わざと外して見せてもらわなくても良かったんですが…」
「流石に気づくか。まあいいじゃねえか。次行くぜ」
そう言うと投球動作に入った。おそらく本気を出すと言いながらどうせ打てないと思っているのだろう。ならこの打席は直球しか投げてこないな。ならこれ以上待っていてもしょうがない次のストライクゾーンに入ってくる球を打ち返そう。松田先輩からボールが放たれた。内角低めのストレート。俺は迷わずバットを振り抜いた。俺の打ったボールは綺麗に左中間に抜けた。文句なしのヒットである。
「ナイバッチでやんすー!!」
「凄い…あの内角低めの球を流すなんて…」
「ほむらの情報に間違いはなかったッス」
「…意外とやるな」
ベンチの方で見ている人達からはそれぞれの反応を示している。松田先輩の方を見てみると驚いたような顔をしている。こうも早く打たれるとは思ってなかったんだろう。速球派投手ということもありストレートには自身あったんだろうけど…ストレート一本で押すんならもうちょっと球速と制球力がないときつい気がする。
「つ、次だ次!!」
少し声を大きくして言っている。あの様子だとムキになってストレートにこだわってきそうだな…俺からしたら打ちやすくなるから別にいいんだけど。松田先輩が投球動作に入った。肩に力が入っていたのか真ん中よりの高めにストレートが入ってきた。絶好球だったので右中間を狙いながらバットを振った。打ったボールは狙い通りに右中間にライナーで飛んでいき地面に落ちた。この打席もヒットだ。
「くっそ…」
松田先輩が悔しそうな表情を浮かべている。いやいや…あの絶好球はみんな打てると思うよ。力んでて一打席目よりストレートにノビを感じなかったし。
「松田!!少しは落ち着いて投げろ!!ムキになってもいいことはねえ!!」
「は、はい!!」
ベンチにいる山道先輩から声が掛かる。それを聞いて松田先輩は少し落ち着いた感じになった。もしかしたらこの精神力の弱さが今松田先輩がエースじゃない理由なのかもな。ムキになって制球を乱したり球種をこだわったりしてしまえば打者からしたらありがたいことこの上ないしな。そう思いながら俺は一旦打席をでて右打席に構え直した。
「スイッチヒッター!?」
ベンチにいる早川さんの声が聞こえる。別に珍しいことでもないと思うんだけど。ベンチの方を見てみると山道先輩も少し驚いたような表情になっていた。そんなもんなのかな? とりあえずその思考を放棄し、俺は松田先輩の方に向き直した。
「…一打席ぐらいは抑えさせてもらう」
松田先輩はそう言った。そうこなくっちゃね。それくらいできてくれないと張り合いがないしね。俺は思わず顔がニヤつくのを感じながらも構えた。松田先輩がボールを投げた。外角低めに向かう直球を見送った。判定はボール。きわどいところだった。冷静になればやっぱりいいところに決まるな。さて次の球は何かな?
二球目が来た。今までより少し遅いボールが真ん中に入ってくる。これは直球ではないと感じ見ることに決めた。ボールはストンと落ちるように変化した。判定はストライク。フォークが低めに決まっていた。意外に変化量が大きかったな…全然打てない程じゃないけど。
「へっ!!」
松田先輩がドヤ顔をしている。調子が出てきたのかな?
三球目、内角低めのボールゾーンに向かう球が投げられた。しかしストレート程の速度はなく、おそらくはスライダーだろう。スイングをし、バットにボールは当たったが少しタイミングが早く、レフト方向に飛んでいったがファールとなった。
四球目、外角の高めにストレートが投げられたが俺は手を出さなかった。判定はボール。釣り球で空振りを狙ったんだろうがそれに引っかかりはしない。カウントは2-2。おそらく次で決めに来るだろう。
松田先輩が五球目を投げた。再び同じようなコースにボールが向かっていく。ボールがあまり回転していないのが見えた。これはフォークだ。俺はスイングを開始し迷いなくバットを振り抜いた。快音を響かせ俺の打ったボールはレフト方向に飛んでいきフェンスに直撃した。三打席目も俺の勝利となった。
「ありがとうございました」
俺はそう言って打席を出た。
「完敗だよ…まさかあんなに完璧に打たれるなんてな。お前が入ってくるのが楽しみだよ」
松田先輩がそう言ってくれたので俺はもう一度先輩の方を向き一礼してベンチの方に向かっていった。
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ボクは目の前で凄いものを見たのかもしれない。狼本君がスイッチヒッターだった事にも凄い驚いたけど、左右で打球の飛ぶ感じが変わらなかった。それに内角の球を流したり外角の球を引っ張ったり、140km/h以上の速球にも平然と合わせられていたり本当に凄かった。ほむらちゃんが言っていた事は本当なんだと思った。ボクはこっちに戻ってくる狼本君に声を掛けた。
「狼本君、お疲れ様!!凄かったね!!ボク驚いたよ!!」
「ほむらは生で狼本君のバッティング見られて感動したッス!!」
「受験のブランクが感じられなかったでやんすね!!」
「お前たちの予想が的中するなんてな…まいったよ。入部したら今度は俺と勝負してくれよな」
ボクを含めベンチで見ていた全員が狼本君に賞賛の言葉を送った。すると…
「いやー…まだちょっとブランクを感じたよ。三打席目の二球目は中三の夏だったら打ててたと思うし…やっぱり生きた球打たないと駄目なんだな」
え…あれで本調子じゃないってどれだけの実力を隠しているんだろう…それに守備はどうなんだろう? ほむらちゃんに聞いてみてもいいんだろうけどやっぱりこの目で直接見てみたいな。もしかして狼本君なら…ボクのあのボールを取ってくれるかもしれない…
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なんだかんだみんなに言われたけど早く打撃の調子を戻さないとな…守備や捕球の方に時間を割き過ぎたかもしれないな。まあ部活に入れば直ぐ戻るかな。
「狼本ってポジションはどこなんだ?」
突然山道先輩に聞かれた。そういえば先輩達には言ってなかったんだっけ。
「俺は捕手ですよ。サードと外野も出来ますけどね」
「ほう…色々出来るんだな。分かった。ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ今日はありがとうございました」
入部する前からこんな機会が得られたのは先輩のおかげだ。お礼は言っておかないとね。
「いやいや、礼には及ばないよ。実力が見たかっただけだしな」
「そうですか。それじゃあ俺達はそろそろ帰ろうと思います」
「そうだね。先輩ありがとうございました」
「間近で見られて良かったッス。ありがとうございましたッス」
「ありがとうございましたでやんす。先輩達は練習頑張ってくださいでやんす」
そこまで時間は掛からなかったけどこれ以上先輩の練習時間削るのもあれだしね。
「おう。来週になるのを楽しみにしているぞ」
そういって俺達はグラウンドを後にした…
いかがだったでしょうか?
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