隠れた天才~陽の当たる場所に向かって~   作:みさごん

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【挿絵表示】

主人公のイメージを描いてみました。ルーズリーフに描いたので見づらいかもしれませんがよければ是非見てください。


5.親善試合②

 宇渡君が打席に入った。見た感じだと小技には期待できそうもない。犠牲フライを打ってくれればそれでいいんだが…もし三振してもワンアウト三塁になるだけでスクイズを仕掛けるチャンスも残る。とりあえず様子をみようかな。

 

 

~~~

 

 

 あいつ…早川が四番にしたからどんな奴だか気になってはいたんだが…いきなり三塁打かよ。しかも速い変化球にうまく合わせていやがった。俺にはあれを打てる自信はねえ。ストレートに狙いを絞らなきゃいけねえ。だがあんなに速い球は打ったことがねえ…それに俺に小技はできねえ。どうすればいいんだ…

 

「思い切りいけー!!」

 

 三塁にいる狼本から声が掛かった。思い切りか…そうだな。これは親善試合だ。勝とうが負けようがあんまり関係ない。ならば思い切ったプレーをするだけだな。俺はそう思い立ち投手の方を向いた。

 

 

~~~

 

 

 宇渡君…声かけたら大丈夫そうになったけど。俺のバッティング見て変に意識してたのか? まあそうか。知らない奴が自分を差し置いていきなり四番に入ってるわけだしな。そんな奴がこのチームのエースからいきなり三塁打。意識するなっていう方が無理か。今はなんだか開き直ってるっぽいからいいけど。とりあえず転がったら突っ込むつもりでいよう。

 

 宇渡君に対して一球目。内角高めにストレート。それを宇渡君は空ぶった。ストライク。いきなり大振りか…思い切って打ちにいったのか。悪くないな。

 

 二球目、同じようなところにストレートが投げられた。宇渡君はまた打ちに行くがバットを止めた。判定はボール。よく見たな、また空ぶるかと思ったよ。流石に似たコースにくれば見極めやすいか。

 

 三球目、今度は外角の低めに向かってボールが向かっていく。宇渡君は動く気配はない。ボールが捕手のミットに収まる。判定はボール。やはり山道先輩は制球が苦手のようだな。カウントは2-1バッティングカウントだな。宇渡君はどうするかな?

 

 四球目、またも山道先輩はストレートを投げた。しかし甘いコースに入ってきてる。打ちごろのコースだ。宇渡君がスイングに入ったので走る準備をした。

 

“カーン”

 

 少し鈍い音が響いた。少しボールの下を打ったみたいだ。ボールは高く上がりライト方向に飛んでいく。少し浅いが…俺なら行ける。俺はライトがボールを捕球したのを確認すると一気にスタートをきった。

 

「速いぞ!!中継急げ!!」

 

 そんな声が聞こえるが俺は気にもせずに突っ込む。もうすぐホームというところでキャッチャーが構えたのが見えた。俺は頭から突っ込んだ。俺が突っ込んだことにより土煙が上がる。判定は…

 

「セーフ、セーフ!!」

 

「やりぃ!!」

 

 俺はその場でガッツポーズをとった。なんとか間に合ってよかった。いい感じで先制点が取れたな。

 

「あの浅いフライで突っ込んでくるとはな…恐れ入ったぜ」

 

「勝つつもりですから。負けませんよ、山道先輩」

 

 そう会話を交わし俺はベンチに戻っていった。

 

「ナイスラン、狼本君!!」

 

「ありがとう、早川さん。宇渡君もナイス犠牲フライ」

 

「別に俺のはたまたま当たっただけだ。お前が走ってくれたから点が入ったんだ。ナイスラン。あと君付けで呼ぶな狼本。よそよそしい、チームメートだろ」

 

「わかったよ、宇渡」

 

「みんな、狼本君に続くでやんすよー!!」

 

「「「「「おー!!」」」」」

 

 みんなに気合も入ったみたいだし面白くなりそうだ。そうして試合が進んでいった。

 

 その後の打者は三人とも三振に抑えられてしまった。二回は両チーム共に三者凡退。三回表は早川さんの良いピッチングによりまたもや三者凡退に抑えた。三回裏、先頭打者の阿部はサードゴロに打ち取られてしまった。そして俺の二打席目。俺は左打席に入った。

 

「さっきは打たれたが今度はそうはさせない!!」

 

「今度も打たせてもらいますよ。山道先輩」

 

 短いやり取りをすると審判からプレイの声が掛かった。俺の第一打席で投げていないボールは高速シュートだ。どこかで使ってきそうだが大丈夫だろう。というかこの打席で投げてきそうな気もするな。高速シュート狙おうかな…そんなことを考えていると山道先輩は投球動作に入っていた。ワインドアップから放たれたボールはストライクゾーンを大きく外れたがこの試合の中で一番早かった。判定は聞くまでもなくボールだ。肩に力が入ったのかな? 力が入ったのは間違いなさそうだが捕手がそこまで注意してないな。小細工なしで力で抑えに来たのか…それともそれに見せかけて変化球でカウントを取りに来るか…どっちにしても甘く来たら思い切って打つだけだな。山道先輩はコントロールが良くないから絶対に甘い球が来るはずだし、球種は絞らないでいこう。

 

 二球目、外角低めいっぱいにストレートがきた。これもさっきと同じような速い球だ。俺は手を出さずに見送った。判定はストライク。今のはいい球だった。手を出してたら凡打になってただろう。けどカウントにまだ余裕がある。じっくりいこう。

 

 三球目、内角に少し遅めのたまが来た。やや真ん中よりだ。軽く外側に逃げるような変化していく。これが山道先輩の高速シュートか。あんまり大きな変化はしないみたいだな。これは打ちごろの球だ。やっぱりコントロールに難ありか。こういうタイプは調子に載せたら良くなってくる感じのタイプが多い。とっとと打っちまおう。ボールの変化に逆らわず三塁線を狙う。俺はボールの軌道に合わせて思い切りバットを振り抜いた。

 

“カキーン”

 

 快音が響いた。俺の打ったボールはサードの横を抜けライン際でバウンドし、レフト側のファールゾーンに向かっている。

 

「フェア!!」

 

「今度は逆か!?」

 

 俺は一塁を蹴り、二塁に向かっている。その時にはレフトがボールに追いついていた。やはり三塁側に打ったら三塁打はきついか。俺は二塁に余裕を持ってたどり着いて止まった。うーん…うまく隙をついて三盗できねえかな。今のところ俺以外にまともにバットに当ててんのは宇渡だけだし…ヒットといえば俺だけだ。勝つためにはもう一点は欲しい。もう一点あれば絶対に勝てると思うんだ、早川さんのピッチングならね。

 

 

~~~

 

 

 また狼本君が打った。凄いなー…あんな速い球をああも簡単に打っちゃうんだもんな。でもなんだか納得はしてないみたい。また三塁打でも打つ気だったのかな。本当に凄い選手だね。こんな選手がほとんど注目されてなかったなんて不思議でしょうがないよ。味方だから物凄く頼もしいけどね。次はどんなプレーをするのかな? 楽しみだな。

 

 

~~~

 

 

 宇渡が打席に入った。一打席目見たく声かけなくても大丈夫そうだな。さて、俺は三盗を狙うか。とりあえず少しリードを大きくとろう。牽制の癖を見られればもっとやりすいんだけど…二回ぐらい牽制してくれないかな。その間に見極めたいな。

 

 一球目、セットアップから投げられた球はストレート。宇渡はバットを振るがしっかり捉えられずファールとなった。ここから見た感じだとセットアップだとストレートの球威は落ちるみたいだな。でも球速はあんまり変わらないみたいだな。皆はあの球速に手こずってるみたいだからな。まあ中学であんな速い球投げてる奴なんて俺は猪狩ぐらいしか見たことないし。そういう事なんだろうけど。

 

 山道先輩がセットアップポジションに入った。こちらをチラチラ見ている。俺は牽制を警戒しながら大きくリードをとる。そうすると山道先輩が牽制してきた。俺はヘットスライディングで戻りセーフ。思わずヘッスラで戻ったけど足からでも大丈夫そうだったな。それと少し気づいたが山道先輩は普通の投手よりセットアップで投げる時に時間がかかるみたいだ。これなら走れそうだ。

 

 二球目、山道先輩がセットアップから投げようとした時俺はスタートを切った。俺は全力で走っていく。主審のボールという声が一瞬聞こえたがそこで俺はヘッドスライディングをした。

 

「セーフ!!」

 

「ふう…なんとか成功した」

 

 俺がそう言いながらユニフォームについた土を落としながら立ち上がると、一年チームのベンチから歓声が上がったので俺は手を突き上げてそれに応えた。

 

 

~~~

 

 

 ボクはベンチから見ていてとても驚いた。なんとなく狼本君の足が速いのはわかってたけどまさか三盗するなんて。しかも相手は球速140km/hを超える速さで投げてるっていうのに…走・攻・守の三拍子が揃った選手って聞くけどまさに狼本君がそんな感じかな? まだ守備はそこまで見られてないから言い切れないんだけど…本当に同じ一年生なのかわからなくなってくるよ。シニアでもここまでレベルの高い選手なんてあまり見たことないし…どんな練習をしてきたんだろう? この試合終わったら聞いてみようかな。

 

 

~~~

 

 

 狼本の奴なにか企んでるだろうとは思ったがまさか三盗するなんてな。考えなしになにかする奴じゃないのは守備の間であいつのリードを見ていてわかってる。リスクを犯してでももう一点欲しいってことか。今はワンアウト。ならスクイズができないこともないな。俺は小技が苦手だがあいつがどうしてもあと一点欲しいというならやってやろうじゃねえか。セットアップで球威の落ちてる山道先輩のボールをなんとか転がすくらいは俺にだってできるはずだ。あとはあいつが突っ込んでくれる。俺はそう考え、三塁にいる狼本にサインを出した。

 

 

~~~

 

 

 もう一点欲しいと考えてはいたがそれが宇渡に伝わるとはな。じゃなきゃこんなサイン出してこないだろう。見た感じ小技は苦手そうだしな。でもちゃんと転がしてくれれば俺は全力で突っ込む。それがこのサインに対する最高の答えなはずだ。

 

 宇渡に対して三球目、外角低めの方にストレートが投げられた俺はそれと同時にスタートを切った。宇渡はバットを寝かせなんとかバットに当てたのが見えた。やや投手よりの方だがしっかり三塁線の方に転がせている。

 

「ここでスクイズかよ!?」

 

 山道先輩の驚きの声が聞こえたが俺は構わず突っ込む。

 

「ホームは間に合わねえ。一塁に投げろ」

 

 捕手の澤村先輩がそう叫んだ。俺はスライディングせずにホームを踏んだ。これで二点目だ。

 

「アウト!!」

 

 宇渡はそのままアウトとなり見事スクイズを成功させた。本当に上手くやってくれたよ。俺は宇渡の方に近づき声を掛けた。

 

「ナイススクイズ」

 

「これはお前が三盗したからできたんだ。そっちこそナイスラン」

 

 俺達はそう言葉を交わしハイタッチをした。そしてベンチへと向かっていった…




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