魔法の使い魔   作:R.O.M

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ところどころガバガバで見切り発車です。
出所不明のアリと戦いながら書きました。


一話

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。

 ピンク色のブロンドに澄んだ鳶色の瞳を持つ彼女は、此処、《トリステイン魔法学院》に通うごく一般的な……とは様々な事情があって言えないが、貴族の学生だ。と言っても、魔法を使う事の出来る者は貴族だけなのだから、この学院に貴族以外が生徒として通っている事は先ずないだろう。

 一般的な、と言えない理由であるが――。

一つ目に、彼女はトリステイン王国の名門であるヴァリエール家の出であること。

二つ目に、彼女は貴族として、メイジとしてあるまじき事に、魔法が使えない。厳密に言えば、おそらく失敗によるものと思われる爆発が起きるだけで、どの呪文を唱えても思った通りの結果が出ないのだ。これでは魔法を操る者とは呼べない。

生徒達の間で、彼女が《ゼロのルイズ》と呼ばれるようになった理由でもある。

 

「はぁ……やっと、初めて呪文が成功したのに、どうしてこんな事になっちゃったのかしら」

 

 今日と言う日は、ルイズにとっても他の二年生にとっても人生で特別な一日であることに間違いは無かった。貴族の一生の相棒になる、使い魔召喚の儀が執り行われる。そんな大切な日。二年生にとって今日は、間違いなく忘れられない日となった事だろう。

ただ、ルイズ一人を除いて、であるが。いや、別の意味では忘れられない日となった。

 勿論、使い魔召喚の為に魔法を使う。一度たりとも魔法を成功させた事の無いルイズは、誰よりも強く、使い魔を求めた。散々バカにしてきたクラスメイトを見返してやる為に。そして、自分の事を心配してくれる家族の為に。

 眠れない夜を過ごして、何度もベッドから起き上がっては教科書を見直した。何度も何度も。

 

――結果として、だが。使い魔召喚の魔法は成功した。しかし。

 

「よりにもよって平民だなんて……母様になんて言ったら」

 

 通常、使い魔と言うのは人間以外の魔法生物がなるものだ。主人とその人物に最も相性の良い者が召喚に応じる。その多くは、ネコやカエル、フクロウやヒッポグリフなど。果てはドラゴンなどが応じるものだ。(ルイズの友人(彼女は認めない)はサマランダーと呼ばれる火山に住む、火トカゲを使い魔にしていた)

だからこそ、いや、尚のこと彼女の召喚した者は異例だった。

 

「……、……」

 

目線の先、ベッドに横たわる男。見たことのない不思議な服装をしているが、マントや杖を携帯していない所を見ると、貴族でもなければメイジでも無いようだ。だから――、ルイズは彼の事を平民と呼ぶ事にした。

静かに胸を上下させて眠っている。時折うなされたような声を上げる彼をルイズは不安気に見守る。幾ら相手が平民だとはいえ、召喚してしまった相手だ。心配せずにはいられなかった。

 

 ふと視線を窓の外に向ければ、使い魔と戯れる他の生徒達の姿が見えた。今日一日は、使い魔との交流を深めるために残りの授業はすべて休みになっている。ルイズは一層憂鬱そうに溜息をつくほか無かった。そして、平民を睨む。

 

「どうして応じちゃったのよ……、バカ」

 

選び抜かれた使い魔は、主人と一番相性が良いと言う事もあって、召喚を拒否したという前例は未だない。一体どういう理由から彼は召喚に応じたのか。

子供のように眠る男は答えない。ルイズは再び溜息をついた。

力なく男の眠るベッドの隅に寄り掛かると、つられるように瞳を閉じ、寝息を立て始めた。夜更かしをした上に、色々積み重なって疲れていたのだ。

 

「……」

 

ルイズが眠りに落ちた数分後。ベッドの上に横たわっていた男が入れ替わりの形で目を覚ました。もぞもぞと動いてゆっくりと目を開ける。……男はしばらく眠気に身を任せて微睡んでいたが――。

がばりと上半身を起こして目を大きく見開き、周囲をしきりに見回す。のんびりとした表情からは一変、困惑した様子。

 

「此処は一体……」

 

 突然の光に目が眩んで。体が浮かび上がるのを感じてそれから、と続けようとしてそこからの記憶が全くない事に気づいた。何か温かいものに包まれるような、そんな感じがして。というところまでだ。あれは一体何だったのだろう、と考えたが、今考えても答えは出ないであろうという事は心のどこかで感じていた。

 それより、である。彼ははいち早く状況を確認するべく周囲を見回す。身に着けていた携帯と財布が無い。自転車の鍵も落としてしまったのだろうか。取りあえず、ここが自宅ではない事は分かる。

 ふと、視界の端にピンク色が映る。大きなベッド(装飾や質感からしてかなり高価そうだ)の隅に少女がもたれ掛って眠っていたのだ。彼女が助けてくれたのだろうか。突然の光、このベッドが幾つも並んだ部屋の事、そして彼女の事も気になったのだが……。

ぐっすりと眠っている少女を起こして、いきなり質問攻めにするのは躊躇われた。

 

「(綺麗な髪の子だ……、ピンク色なのが気になるけど)」

 

 窓から差し込む温かい光か、眠っている少女の髪に当たって反射して輝いている。ふと気づけば、彼は見とれていた。陳腐な例えではあるが、正に宝石のような美しさだ。それに、彼女を見ていると何故か懐かしさを感じる。――彼女と前に、どこかで会った事があるのだろうか?

時間を忘れて見惚れていると、不意に扉が開く音がした。

はっとなった彼がが視線を向けると、部屋に入ってくるローブ姿の男が見えた。ローブから出ている右手には先端に紅い石が付いている大きな杖、そして左手には緑色の冊子の本を抱えていた。

禿げ上がった頭の中年。眼鏡を掛けていて、温和なイメージを抱かせる顔だ。

まるでお伽噺に出てくる魔法使いのような出で立ちだ。

 

 ローブ姿の男は、上半身を起こしている青年の方を見て安心したような顔をした後、ベッドの隅で寄り掛かっている教え子を見て困ったような、複雑な表情を見せた。それから、少女の隣まで歩み寄り、彼女を起こさないように――という配慮なのだろうか――、声量の少ない声で青年へ話しかける。

 

「失礼、ミスタ。起こしてしまったようですな」

「……大丈夫ですよ」

「それは良かった。私はこの学院で教師をしている、ジャン・コルベール。そちらの名前をお聞きしてよろしいですかな? ミスタ。」

「村上、村上浩介です」彼がそう答えた瞬間、コルベールの表情が険しくなった。少し気になったが、何かを悩む様子のコルベールの言葉を待つことにした。

 少しの間の後、コルベールが口を開く。

 

「失礼、お尋ねしますが、ミスタは何処の出身ですかな」

「……日本のXX県XX市ですけど?」

「ニホン?聞いた事が無い地名だ……ふうむ、此処は…この学院はトリステイン王国にあるトリステイン魔法学院です。これらの地名や学校名に聞き覚えは?」

「……いえ、聞いたことないです」

 

 事実、浩介にはコルベールの挙げた名に関する知識が全くと言っていい程なかった。というより、今、初めて聞いた地名なのだ。浩介のこの言葉に彼は更に表情を険しくした。先ほどよりも長い時間沈黙する。

 そんなコルベールとは対照的に、浩介の表情は明るい顔で反応を待っている。というのも、浩介からすれば「一人で屋根の修理中、屋根から滑り落ちて意識を失っていた見知らぬ相手を看病してくれた恩人と話している」というだけなので……。

まさか、自分が使い魔として召喚された、などとは思いもしない。

 

浩介は中々どうすべきか悩んでいる様子のコルベールに助け舟を出すべく、一先ず別の話題を出してみる事にした。

「えっと、俺から質問して良いですか? 」

「ええ。勿論ですとも」

「そろそろ突っ込みますけど……何で魔法使いの格好をしているんですか?」

「何故と言われましても、私はメイジですからな」

 

 浩介はさも当然のように答えるコルベールの顔を見て、頷いた。どうやら何らかの事情で話せないんだろう。役になり切っている、熱心な役者なのかもしれないと勝手に納得する事にした。じゃなきゃ、日本語を話せるのに日本を知らないなどと言わないだろうし、助けて貰った相手に強く出る事も出来ない。

ただ、さっきから気にかかる事が幾つかある。

第一に、コルベールの口の動きだ。話している言葉と全然合っていない。(あ、と発音しているのに口い、の形をしていた。)

第二に、窓から見える景色に先程から異様な物がちらほら見える。屋根から落ちた時に頭をぶつけてしまい、しかも打ちどころが悪くて幻覚が見えてしまっている――、のは無理がある。

 

「コルベール先生は日本語を話せるようですけど……どこで習ったんですか?」

ちょっとだけ試してみることにした。彼の演技力を。

「ニホンゴ?いえ……私はそのような言葉は話しておりませんぞ」

 

ほほう、そう来たか。だが、それならば一体何語だという(事になっている)のか。ただ、あまりにもコルベールがすらすらと本心から言っているように見えるものだから、一つの疑いが出てきた。

魔法使いは嘘をつきたがらない。……もちろん、常識を持つ人間からすれば誰だって嘘はつきたくは無いだろう。だが魔法使いは特にそうだ。嘘をつくという事の重要さが違う。

コルベールは自らをメイジと言った。これが嘘だとして、魔法使いで無いものが魔法使いだと偽る事に得は無い。

 

『魔法使いは魔法使いである事を隠さねばならん……何故だかわかるか』

小さい頃に祖父から言われた言葉。聞いたその時こそはまだ小さかったし、良くわからなかった。でも今はわかっている。何故そうすべきか、何故祖父が寂しそうな顔をしていたのか、が。

 

「ごほん。失礼、ミスタ?」

「…あ、すいません。少しぼーっとしていました、それとミスタじゃなくて名前を呼び捨てにしてくれて大丈夫です」

「わかりました。……うーむ、すっかり治りきったという訳では無いようですね」

 

確かに、まだ眠気のような気怠さが残っている。それを除けば体調はすこぶる良かった。心配そうに様子を伺っているコルベールにどう話しかけるか思い悩んでいると、ふと、ベッドに隅にもたれ掛るように眠っていた少女がモゾモゾと動いた。

 

 

 視線の先の、桃色の髪の毛を持つ少女はしばらくモゾモゾしていたかと思うと先程の俺と同じようにバッと突然顔を上げた。

そして、俺――コルベール先生を順に見て。

 

「きゃあああっ!せ、先生!」

「おはようございます。ミス・ヴァリエール、少しお疲れだったのでしょう」

 

ガタゴトと椅子を揺らして慌てて立ち上がる女の子。彼女は――、ミス・ヴァリエールと呼ばれた子は、どうやら彼の教え子のようだ。

頬を赤く染めて、恥ずかしさに身を震わせて……キッ、と浩介を睨む。その仕草でさえ可愛く見えてしまう程、目の前の少女は綺麗な顔立ちをしていた。というか、今まで合ってきた女の子の中で一番お世辞抜きで可愛いのでは無いだろうか。まさに絵に描いたような美少女だ。

 

威嚇の色を見せる鳶色の瞳は少女の気の強さを主張しているかのようだ――と考えていたところで。

 

「あ、アンタ、目を覚ましたのなら私の事起こしなさいよ!」

「君があまりにも気持ち良さそうに寝てたものだから、起こしづらかったんだ。悪い」

「まあ、まあ。今日のところはもう遅いですし、彼もミス・ヴァリエールも疲れているだろう。部屋に戻って休みなさい」

 

窓の外を見れば、確かにもう日が暮れかかっていた。それほど長く話し込んでいたのだろうか、と驚く。

窓から視線を戻せば、なにやら少女が納得いかない、それでいて何か話したい事があるような顔でこちらを見ていた。

 

「あ、俺、もう大丈夫です。どれぐらい寝てたのか分からないけど治療のおかげで」

 

ベッドから出て体のどこも怪我をしていない事を確認して、コルベールへとそう伝えた。決して無理をしている訳ではない。言葉の通り、怪我なんてものは最初から無かったかのように見つからない。結構な高さから落ちて大怪我――いや最悪死ぬことを想像するほどだったが、どうやらかなり運が良かったらしい。

俺としては、このままコルベールにあれこれ尋ねるより、年齢の近いヴァリエールさんに尋ねる方が良いと思ったからだ。

 

「ここの消灯は私が済ませるから、廊下の明かりが全て消える前に寮へ戻るのですぞ」

「……わかりました、失礼します。コルベール先生」

 

 一礼して部屋から出ていくミス・ヴァリエールの後を、慌てて追いかけた。

 

 俺の世話になったこの建物は、どうやら民宿でも病院でも無かった。今では全然目にする機会のないような、立派な建築物である事は確かなのだろうが、和風では無い。洋風のものだ。長い廊下の天井に……では無く壁に、凝った彫刻が一個一個丁寧に施されている綺麗なランプが暖かな火を灯していた。

 部屋を出てから口を開かずに黙々と速足で歩く彼女の後を、俺は同じく口を開かずについていく。声を掛けようと思ったのだけど、なんというか話しかけずらいオーラを纏っていて諦めた。話すのは部屋についてからでもいいか、と。

 

 

 が。

 

 「……面会拒否?」

 

 中世の城を思わせる建物の中を昇り降りし、石でできたアーチの門を潜り、石造りの重厚な階段を上った。外国に旅行に来たような気分で寮の部屋までの道を楽しんだのは良かった。――だが部屋について彼女の後を追って入ろうとした時。

 無情にも目の前で扉はデカい音を立てて閉まった。最初はまだ入ってないぞ、と思って扉を開けようとしたのだが、ドアにはしっかりとロックが掛かっておりノブが動かない。次にノックして、その後に声も掛けた。

 

 帰ってきたのは無言だったが。

 

 「参ったな、色々聞きたい事があるのに」

 

 溜め息をついて扉から踵を返す――、と聞きたい事の対象の一つである大きな蜥蜴が、廊下の曲がり角から顔を覗かせていた。ゴールデンレトリバーだとか、その手の大型犬よりやや大きいその爬虫類は、舌をチロチロと出しながらこちらの様子をじっと見つめていた。

 

 「…、あれ襲ってこないよな」

 

  額を冷や汗が流れるのを感じた。蜥蜴という表現が生塗い気がしてくるサイズの、あの生き物がもし本気で襲いかかってきたらきっとワニに追い掛け回される人の気持ちが味わえるに違いない。生憎と第一避難場所候補は開かずの扉と化したし、隣の部屋までの感覚はやけに長い。一部屋一部屋が大きいのだ。

 さて、早体感5分ほど睨めっこを続けているのだが、生憎と熊とか猪からの逃げ方は教えて貰っていても巨大蜥蜴から逃げる方法は教えて貰っていない。大抵、刺激するな!だとかゆっくり後退しろだとかというのがお決まりだが。

 

 「キュルキュル」

 「……げ」

 

 どうやら痺れを切らしたのは蜥蜴の方のようだった。そのまま曲がり角からこちらへと歩いてくる。テクテク、という可愛らしい擬音が似合いそうな足の運びだったが、その爬虫類特有の瞳はまっすぐこちらを離さない。そして、更に追加で恐ろしい要素を見つけてしまった。

 ――尻尾の先に壁に飾られているランプより大きな火がゆらゆらと灯っている。

 蜥蜴は蜥蜴でもその容姿はファンタジー物で良く見るサラマンダーそのものだ。奴らと来たら、様々な設定があるがやはり火を吐くというイメージの生き物だ!

 

 「どーどー、俺は食い物じゃないぞ」

 「キュルル」

 

 俺の僅かな牽制の声も虚しく、サラマンダーはとうとう長い距離を詰めて足元まだ歩いてきた。近くで見るとより一層迫力がある。可愛い鳴き声を上げているが、いーや騙されるな。ちょっとでも隙を与えたら最後俺の事を丸焼きにするに違いない。……唾を飲み込んで、出来るだけ体が動かないようにじっとする。きっと興味を失ってくれるに違いないと思っての選択だった。

 のだが。

 

 「やめろ!俺のお気に入りのジーンズを噛むな!引っ張るな!」

 「キュヒル」

 

 ジーンズを噛んだ口の隙間から生暖かい息が足に掛かって、背筋がぞくっとなった。命の心配をするべき所ではあるが、どうやら俺の事を玩具が何かと見ているらしいコイツが今引き裂こうとしているものは俺の貴重な一張羅なのだ。ダメージジーンズにするつもりもない。

 と、ここでサマランダーがじゃれるために噛みついたのでは無く、ルイズの部屋の向かいに引っ張ろうとしているように思えた。殺気も感じられないし。きっとそうだろう。

 

 「わかったわかった、行くよ」

 

 大人しく引っ張られて部屋の扉の前まで向かう。すると、一人でに扉が音を立てて開き、サマランダーはジーンズから口を離すと、部屋の中へと入っていった。……中は廊下より微かな光があるだけで薄暗かった。後ろで扉が閉まる音がした。

 

 「お邪魔します?」

 「つれてきてくれるか不安だったけど、偉いわフレイム」

 「あー、そのサラマンダー、君の子だったんだ」

 「ええ。正真正銘の火竜山脈産のサラマンダーよ?惚れ惚れするでしょ」

 

 声の主は女性だった。部屋の床には紅いカーペットが引かれていて、そのサイドに一定間隔で沿うように並んでいる燭台だかキャンドルだかには、暖かな火が灯っていて大きなベッドへと続いていた。机やクローゼットは邪魔にならないように脇にどけてある。…部屋主は演出が好きなのだろうかとかカーペットの上を歩きながら思う。

 天蓋つきのベッドに女性は腰掛けていた。容姿は赤い髪に褐色の肌、そして他の服を着ていようがきっと良くわかるであろう程のグラマーだった。良くわかるだろうに、尚更強調するかのように見る場所困るような薄い部屋着を着ていた。

 見る場所に困るので、話題の足元に寝そべっているサマランダーに目を向ける。

 

 「火竜山脈だとかは分からないけど、カッコいいし……んー、良く見たら可愛いな」

 「あら。フレイムは男の子よ」

 「そうか、じゃあ可愛いって言われても嬉しくないよな」

 

 通りでカッコいいと褒めた時は得意気な顔だったのに、可愛いと褒めた時は心外そうな顔してたのか。

 

 「尻尾燃えてるけど大丈夫みたいだな」

 「サマランダーの尻尾の火は、普通の火じゃないわ。燃やす物を選べる火なのよ」

 「なるほど。……えっと、自己紹介まだだったな、俺の名前は村上浩介。君は」

 「ムラカミコウスケ?変な名前ね。キュルケ・フォン・ツェルプストー。キュルケで良いわ」

 

 ごく一般的な名前だけど、と反論しかけたがこの国だか世界では、日本人系の名前は聞かないのだろうと考えた。の割には話している言語は通じ合っている通り日本語だ。彼女は、キュルケはルイズの学友なのだろうか。同じ寮のすぐそばの部屋なのだからきっと顔見知りでもある筈。ルイズに聞けなかった事が聞けるかもしれない。だが、質問の前に、何故部屋に呼ばれたのかを尋ねることにした。

 

 「えっと、挨拶以外で何か俺に用があったりするか」

 「ええ。あの娘が召喚した人間がどんな人が気になってね」

 「……あの娘?ルイズって子の事か」

 「そう。あのゼロのルイズが人間を召喚したのもそうだけど、貴方、召喚された時死んだみたいに気絶してたから全く動かなかったのよ。まあ、その様子を見るに治療は上手くいったみたいね」

 

 何やら聞き慣れない単語がチラホラ聞こえたが、それよりも、自分が大怪我を負っていたという所に気が行った。

 

 「死んでも可笑しくない高さから落ちたんだけどな、気絶か……俺がその、召喚。されたのって何時なんだ」

 「今日の昼前よ。春の使い魔召喚の儀式で貴方は召喚されたのよ」

 「そうか、それほど時間が経ってる訳じゃないんだな。ありがとう、教えてくれて」

 「ちゃんとお礼言っておきなさいよ?あの娘ったら『自分のせいで人が死んだんじゃないか』ってすっごく心配してたんだから」

 「そうだったのか……」

 

 運の良い事にその召喚と呼ばれる儀式のおかげで俺は一命を取り留めたようだった。あのまま地面に真っ逆さまに落ちていれば、スプラッタ死体になっていたに違いない。そんな意図せずとはいえ俺の命を救ってくれたのだ、礼を言わなければならないな。後、心配までさせてしまったのだからそこを謝らなければ。

 

 「へー。今貴方とってもいい顔してるわよ、頼りないイメージだったけど、そんな顔も出来るのね」

 「え、ああ。ありがとう?」

 「どういたしまして。で、フレイム通しで見てたけど部屋に入れて貰えなかったんでしょ。特別に一晩だけ寝る場所を貸してあげるわ。ベッドは無いけど、椅子と机と後毛布で我慢してちょうだい」

 「いや、確かに締め出されたけど……流石に女子の部屋には泊まれないよ。先生に見つかったりしたらどうするんだ」

 「心配性ね。別に良いじゃない、見つかっても『使い魔同士で親睦深めてましたーっ』って言えば大丈夫よ。多分」

 

 多分なのか。つまり、人間は駄目だけど使い魔なら大丈夫という屁理屈というのか。心配してるのはそこでもあるんだけど、別の方でも警戒してほしいもんだ、と思う。

 確かに外は寒かったし、廊下の前でごろ寝するのも色々どうかと思ったので素直に世話になる事にした。この部屋は沢山火がついているから暖かいし。

 それからしばらく、彼女が眠そうに欠伸をするまで色々な事を尋ねた。

 

 

 受け取った毛布を体に巻いて、椅子に座って眠りにつこうとしていた時。窓を叩く音と窓の外で男の声が何かを言っているのを聞いた。

 

 「あぁ、そうだった。今日はマティソンと話す予定だったの忘れてたわ」

 

 目線を向けると面倒くさそうにベッドから降りるキュルケが見えた。窓へ歩いていき、開ける。

 

 「キュルケ!今日の約束は僕のはずだっただろう?」

 「ええそうね、マティソン」

 「じゃあさっき部屋の中に居た男はなんだ!……お前だ、そこに座っている奴!」

 「フレイム」

 

 窓から部屋に入り込んでこようとした男に向けて、キュルケの言葉に反応したフレイムが火を吐いた。割と洒落にならない感じで放たれた火は男に命中して、そのまま男の体は外へ投げ出される。というか、ここって確かすごく高い位置にあるはずなんだが。

 

 「……今の彼氏?やっぱ部屋から出ようか」

 「違うわ。気にしないで頂戴。今日は私も疲れてるからどの道相手にする気は無いし」

 「お、おう」

 

 それにしてもあのマティソンとかいう男子学生大丈夫だろうか。

 

 「まあ、空飛べるし大丈夫だよな」

 

 俺は再び毛布を体に巻き付け直して、座り込んだ。

 




あらすじが適当すぎたのでそのうち修正します。
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