原作を読み直すって前回の前書きで言ったと思うんですが、それだけじゃなくて仕事やら他の事に時間を割いてたってのも遅れた原因にあります。ごめんなさい。
次話投下の際にこの短い三話も修正します。
昨日は夕飯を食べていないから結構お腹すいたなあ。浩介は目の前をペタペタと歩く、フレイムの後ろ姿を見ながら呟く。浩介が召喚されてからこの学院内で訪れた場所と言えば、保健室からルイズの部屋までのルート。そしてルイズとキュルケの部屋の中だけだった。寝込んでいたから全然案内とか受けていない。その点、フレイムはちゃんとご主人に教えて貰ったのか、自分の探索で見つけたのかはさて置き、食堂の厨房までのルートを覚えているようだった。
廊下や階段、ロビーのような場所でルイズ達と同じ制服を着た少年少女たちとすれ違う。それと、使い魔も。成程確かに、人間はおろか人型に近い生き物すら見かけない。変わりに、蛙やらコウモリやら鳴き声がやたらと野太い猫なんてメジャー物はもちろん、空飛ぶ目玉やらやたらとデカいモグラ(地面に出てきて良いのか?)という二度見どころか、三度見してしまうような生物も居る。
「こりゃもう……動物園だな」
とても大きい亀がノシノシと小さい豚を背に乗っけて視界を横切るのを見る。
「こら!イーディ!それは捕まえちゃいけない兎だ!」
「私のリーダに何するのよ!きゃっ、あっちいって!」
上手く制御出来ていないのか、度々あちらこちらで使い魔同士による騒ぎが勃発しているようだった。使い魔は主人に忠実という話を聞いた気がした浩介だったが、使い魔である自分が忠実とは言い難いかったし、相性がいいだけで実際は最初は皆躾から入らなければならないのかもしれない。人間って本当に大外れなんだろうか。
度々すれ違う生徒からジロリ、とみられるが、露骨に騒がれるような事は思った以上に無かった。自分の使い魔の事で忙しいらしい。ほっとする。
アルウィーズの食堂は、魔法学院敷地内に建つ複数の塔の中でも一番大きな塔の中にあるようだった。昼の青い空を見上げてみれば、数多の、翼を持つ獣が気持ち良さそうに飛んでいる。環境汚染、などという言葉と全く結びつかないであろう程澄み切った空だった。
フレイムは度々立ち止まって空を見上げたかと思うと、浩介の方をちらりと見て再び歩き出す。厨房は食堂の裏手のほうから入るようだ。煙が黙々と吐き出されているのが見える。しきりに給仕服を着た人が出入りしているのが見えた辺りで、フレイムは完全に立ち止まった。どうやら案内は此処までのようだ。
「ありがとうフレイム。キュルケにもそう伝えといてくれ」
火蜥蜴は頷くと、食堂とは別の方へと走って行った。
普通に厨房に入っても良い物かとちょっと入りかねていた所、あのー、と控えめな声でメイドさんから声を掛けられた。黒い髪をカチューシャで纏めていて、素朴な雰囲気を放っている。
「先程から、何やらお悩みのようですが……どうなさいましたか」
「食堂は貴族の人しか入れないから、厨房の方にお世話になって来いって言われてね、皆忙しそうに働いてるから中に入りづらくて」
「えっと、お世話になってこいと、どなたから?」
「ルイズって娘なんだけど。その娘の使い魔になったから」
このメイドさんと話しているとなんというか不思議と落ち着いた気分になる。黒髪で日本語を話してくれるだけで、同じ日本人に会えたって感じになるんだろう。ルイズの名前(フルネームは長すぎて覚えられなかった)を聞いてメイドさんは驚いた様子だった。
「貴方が、ミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」
「そうそう。やっぱり人間が召喚されたーっていうのは、噂とかになってるの?」
「ええ。召喚の魔法で平民を呼んでしまったって。しっかりと」
「あちゃー」
学校とかそういう所で派手に噂になったりすると、やっぱりいじめられたりしてしまうのでは無いかと不安になる。キュルケのような反応が、全員からくるんだろう。キュルケはまだ、喧嘩友達って感じがする言い方だったからまだ良いんだけども。
人の口には戸は立てられない。だが人の噂も七十五日と言うし、それまで変わりの使い魔が召喚できるようになるまでは付き合ってやろうと思う。まあ季節が変わる程長くこの世界に居るかどうか、わからないけども。
「えっと……?」
「ああ。村上浩介。変な名前だろうけど、コウスケって呼んでくれればそれで」
「コウスケさん、ですね。確かに変わったお名前ですね……、私はシエスタっていいます」
シエスタ、僕と一緒にシエスタしないかい。そんな全く持って失礼かつセンスの無い駄洒落が、頭の隅を過る。くだらないジョークや駄洒落が好きな浩介的には、ほんの少し顔がほんわかしてしまう。
午後のお昼寝タイムと同じ名前を持つメイドさんは丁寧にお辞儀してくれた。全く持って絵になるというか、携帯でぜひとも写真を撮らせて頂きたいと思った。ちょっとも下心は無いよ。
「私の方からもコックの方々にお願いしてみますね、どうぞ、お入りください」
「ありがとう。恩に着るよ」
「ちょっと待っててくださいね」
開けて貰った扉から中に入ると、貴族たちに振る舞われるのであろう料理の、香しい匂いにたちまち包まれた。外の空気も新鮮と言えば新鮮だけど、厨房のこの匂いも新鮮だと感じる。あんまり本格的な洋食は食べたこと無いからだ。時折、馴染みのあるパンの焼ける匂いがあるのも良い。
忙しそうに働くメイドさんやコックさん達の視線を受けながら、厨房を見回していたら傍にいた筈のシエスタの姿が無かった。しまった、ついつい途中から意識が厨房に向かっていたから。
と、厨房の奥からシエスタが出てくる。手には大き目のお皿が抱えられていた。
「すいません。賄食なんですけど……、コック長の腕は確かですから」
「全然大丈夫だよ」
タダ飯食わせて貰ってる身だから文句なんて言えないし。手を軽く合わせてから頂きます。
厨房隅で味わった異世界初の異世界メシは優しい味のするシチューだった。美味い。追加でパンがあればなおよしだが、そういう事は厨房の手伝いやらなんやらをしっかりやってからだろう。
「こんな美味いシチューを食べたのは初めてかもしれない、こんな賄食が食えるなら俺も喜んで仕事するよ」
「よかった。御代りもありますから、ごゆっくりしてくださいね」
「ありがとう……、俺ん家も時々シチューするんだけどさ、パンで食べるかライスで食べるかで時々、喧嘩になったりしてね」
くだらないだろ、と苦笑いしながら再びシチューに舌鼓を打つ。
と、シエスタがキョトンとした表情をしている事に気づいて、何か変な事を言っただろうかと自分の言葉を頭で確認する。
「えっと、ライスとは?」
ああ、そうか、と納得した。
この異世界…、多分現世界的に言えば昔のヨーロッパっぽい感じのこの世界には、米が存在しないのだろう。
シチューにごはんだなんて許されざるので別に構わないだろう。いや、全然構わなくなかった。
おおよそ、この状況に俺以外の日本人が置かれたとして、同じ事を思うだろう。日本人的にはヤバイと。
「えっと。シエスタはお米って食べ物を聞いた事はあるか?」
「……いいえ。オコメなんて初めて聞きましたわ。ど、どうなさいました!?」
「な、なんでもない。後でコック長にも聞いてくれると嬉しい」
「は、はあ。わかりました」
突然目を見開いたらそう反応せざる負えないよなあ、とか思いながら元に戻すように瞬きする。なんというかショックだ。これ以上考えない方がいいと思う浩介だった。シチューおいしい。
「おかわり、お願いします」
「はい」
―
「本当に美味しかった。ごちそう様」
「お腹が空いたら、何時でも来てください。私たちの食べている物で良かったら、お出ししますから」
「食わせて貰ってばかりじゃ、悪いよ。何か手伝える事があったら言ってください、使い魔の仕事の合間にでも手伝うから」
「ふふっ。それじゃあその時はお願いしますね!」
「任せてくれ」
最初は遠慮して一杯食べたらお暇するところだったけど、思いのほかスプーンが進んでしまった。シエスタとコック長にも礼を言って(ガタイの良いおじさんだった。彼はマルトーと言うらしい)厨房を後にする。
外には既に食事を終えた使い魔やら生徒達の姿がちらほら見受けられる。
ルイズ達の姿はまだ見えない。余りにも良い天気で、腹も満たされた事もあって少し散歩をしてみたくなる。厨房の裏手だし、生徒達の目も無い。芝生を走りまわるのもいいかもしれないとか思ってしまった。
「良い風だなぁー」
まあ、ごろ寝するんだけども。
こんなにのんびりした時間を過ごせるのは何時ぶりだろうか。子供の頃は遊びやらに夢中だったし、成長して働き始めてからは勿論そんな時間は無かった。寝転がって日向ぼっこの時間とか。
しっかりと寝た筈なのに、たちまち眠気が襲ってきた。使い魔であることや異世界に来ていることを忘れて、眠りこけるのも悪く無いような気がする――、そんな気がし始めて居た時だ。
「おお!?ど、ドラゴンだ?」
強い風が起こったかと思ったら、大きな鳥が羽ばたくような音と共に、蒼い竜が塔隙間を縫うように飛んでいるのが見えた。方向からするにあの鬱蒼と生えた森方角からのようだ……、徐々に近づいてきている!
急いで起き上がって、塔の陰へと走る。日向ぼっこをしていただけでまさかドラゴンが飛んでくるとは。
厨房の中に逃げ込ませて貰えば良かったんじゃないかとか、あれ使い魔じゃないかとかという考えは、寝落ちしかけていた頭で考えるのは無理だった。
空のように蒼い鱗を持つその竜は、大きさにして人間の数倍はあろうかというサイズだった。竜の中では小型か中型ぐらいなのだろうが、デカいものはデカい。あんなのと闘うハメになる事もあり得るのだろうか。
「いやあ……流石に勝てるビジョンが浮かばないや」
ドラゴンは厨房のすぐそばに、ゆっくりと降り立つ。黒い二本の角が生えていて、瞳は鱗と同じく蒼。
一体全体あのドラゴンは厨房まで来て何を?そして俺は意外にも気づかれていない?
塔の陰からソロリソロリと様子を伺う。こうして落ち着いてみると、以外にも何処か幼さを感じる顔つきだ。竜の顔つきなんてゲームでぐらしかマトモに見たことないんだけど。キョロキョロと大きな瞳で周りと仕切りに見回している所とか。
恐怖が薄れると、後に強く残るのは好奇心やらファンタジー代表格ともいえる存在への興奮である。
ドラゴンは作品によっては人間よりも優れた知能を持つだとか。
賢く、それでいて狡猾であり残酷な性格で宝石を好むとも。
それに主人公の相棒であったりする作品もある。
意外にも温和な性格であるだとかいう描かれ方もしたり。
はてさて、あのドラゴンは一体どんなドラゴンなのだろうか。
「きゅい!このお部屋からとっても良い匂いがするのね!でへへー、焼けたお肉の匂いもする~」
結論としては、視線の先で厨房の窓から漏れる匂いを嗅ぎながら、口から溢れかける涎を呑みながら人語を話しているドラゴンは、到底残酷だとか、冷徹であるというイメージとはまるで結び付くものでは無かったと言おう。
あの顔からあの口から、少女のように可愛らしい声が発せられているのか?
緊張が徐々に抜けていくのを感じる。幸いこっちには気づいていないようだから、反対方向から回る事にした。
あの竜の主人は一体誰なのだろうか。キュルケとフレイムが赤だったから、竜と同じような青色のイメージの人だろう。
誤字脱字等はいつも通り気が向いたらお願いします。
外伝の内容とかにも触れたいとは思ってるのですが、流れ的に無理だったらすっぱり諦めたいと思ってます。嘘です、やりたいです。
・主人公
男。来年の春から社会人ってぐらいの歳。
年下や同年齢とは割と普通に話せるが、不良と同年代の女性、年上は苦手。
性格はそこそこ明るく、父親譲りの頑固さが時々出る。
同年代の女性が苦手なのは過去に振られた時の事を思い出してしまうから。
今はこれぐらいしか書ける事がない悲しいオリキャラ。
・本当に原作読んだ事あるの?
原作を読んでから大分時間経ってるというのもあるんですけど、多分原作を読んでる時間より、二次創作の方を読んでる時間のほうが長い。だから色々混ざって設定を捏造したりしかねない。