魔法の使い魔   作:R.O.M

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書き方を変えてみました。多分見やすくなってると思います。

親が買ってきた、超音波でゴキブリ等を追い払うマシンが気になりながら書きました。
自分はあれが超音波でどうにかなる図が思い浮かびません。


第四話

 魔法学院の教室までの道のりを覚えながら、いくつかある塔を、授業が終わる度に行き来しなければならないのだろうか。だとしたらそうとう面倒だなあ、と浩介はつぶやく。

 高校の教室移動ですら、特に階が二階ぐらい違う教室だと、面倒で仕方がなかった。昼休みの次の授業の移動先がその教室だったら、グラウンドでサッカーは諦めざる負えなかった。昼飯食う時間とか考慮すると、うん。

 

 ふと視線を隣を歩くご主人様の方へ向ける。

 

 手には、様々な色の紙……少し大きいが付箋だろう、が挟まった本を持っている。新学期初めての授業という事らしい。

 付箋の数からも予習はバッチシである事が見て取れた。正に勉強が出来る人間の教科書だ。

 

「なによ。今更料理が足りませんでしたって言っても知らないわよ」

 視線に気づいたルイズが、眉を顰めながら言う。

 

「ちゃんと食ってきたから大丈夫。ルイズが持ってるその本、教科書だろ。付箋が沢山付いてて関心してたんだ」

 

「あたりまえじゃない。学生として此処に来てるんだから、勉強しないで何をするのよ。

 ……それに、そうでもしないと……何でもないわ」

 

 指を立てて得意げに話していたルイズの顔に、少しだけ陰が見えた。

 それから何でも無いわ、と無理やり話を打ち切る。彼女が勉強を頑張る理由は、何やら話せない事情があるらしい。

「まあ、確かに」

 と敢えて深く聞かずに浩介は返した。

 悪い事情じゃなくて単純にルイズには夢があって、その夢を叶える為に頑張らなければならない。みたいな。

 どちらにせよ、考えた所で、本当の事は話してもらえるまで分からない。

 

 

 

 教室の扉を開けて中に入る。

 テレビで見たことのあるような、大学の講義室があった。授業を行うであろう先生が立つ段が最下段で、それから階段のように後列になればなるほど席の位置が高くなっている。

 思ったより時間がぎりぎりだったのか、教室は既にほかの生徒達で一杯だった。

 友人たちと楽しそうに雑談をしていたようだが、ルイズと浩介が教室に入ってきた途端、いっせいにこっちを振り向く。 そしてくすくすと笑い始めたのだ。

 

「……なんか、感じ悪いな」

 

「ふん」

 まるで何時もの事だと言わんばかりに、気にもしないように席へと歩くルイズを慌てて追う。

 生徒の中にはキュルケの姿も少し見えた。周りがすごい男子だかりになっている。

 因みにではあるが、キュルケを囲っている男子は誰一人としてルイズの方へ振り向かなかった。彼女以外の女性はアウトオブ眼中という奴なのだろう。あそこまであからさまな逆ハーレムは初めて見た。

 

 今の生徒達の反応を見る限り、ルイズはいじめを受けているようで。

 それも、今回の人間召喚事件以前からあまり良い扱いを受けていないような感じだ。

 

「(どの世界にもあるものなのかね)」

 浩介は溜め息をつく。

 落ち着いていたいじめが再燃したという事なら、火種は俺だろう。

 蛸人魚が居るくらいなんだから、同じ人型って事で大目に見て貰えないのだろうか。

 ルイズが席の一つに座った。続いて隣に座ろうと思ったが、ルイズに睨まれてしまった。彼女は何かを言う訳でもなく、俺の事を睨みながら、床を指さす。

 

 

「床ってのもある意味目立つんじゃないか」

 

「メイジの席だから、使い魔は座っちゃダメ」

 

「犬が座ってるんだから座って良いだろ?……わかった。じゃあ、他にこの席に座りたそうな人が近づいてきたら、黙って俺は教室の後ろに行くよ」

 

 

 そういうとルイズはむすっとした顔になりはしたものの、再び席に座る浩介に対して何も言わなかった。

 話題の種である俺が目立つのは、ルイズにはちょっと悪いけど、魔法使いのする講義という物をしっかりと見てみたい。

 というかある意味俺が待ちわびた、魔法的なものが分かる時が来たのだ。

 授業にしっかり付き合って、あわよくば帰るまでに沢山の魔法が使えるようになれば、万々歳だ。

 

 扉が開いて、先生と思わしき女性のメイジ教室に入ってきた。

 

 紫色のローブと帽子を身に着けている。更に水晶玉でも足せば、完璧なイメージ通りの魔法使いの姿になりそうだ。それに加えて、ふくよかな優しい雰囲気を漂わせているんじゃなくて、意地悪な婆さんであれば。

 彼女は最下段まで来て、教壇の上に立つ。先ほどまでザワザワと落ち着きの無かった教室の中は、いつの間にか静かになっていた。一息つくと、彼女は生徒達を見回して満足そうに微笑む。

 

「皆さん。ごきげんよう。『春の使い魔召喚』は、大成功ようですわね。それぞれが素晴らしいパートナーを召喚出来ているようで、このシュルウーズ、とても安心致しました」

 

 隣のルイズが俯いて、何人かの生徒の小さな笑い声が聞こえる。

 シュヴルーズの視線は、ルイズとその隣に座る浩介の間を行き来する。

 

「驚きました。ミス・ヴァリエール、彼が貴方の使い魔なのですか」

 

 シュヴルーズ先生には、きっと悪気があってとぼけた声で言ったのでは無いだろう。

 だが、その発言はルイズを更に俯かせるのと、笑いを我慢していた生徒を大笑いさせるのには十分だった。

 

「おいおい、ゼロのルイズ!公爵家の娘ともあろうお人が、召喚出来ないからってその辺の使い魔を連れ込むなよ!」

 

 明らかにルイズに向けられた侮辱の言葉に、思わずしかめっ面をする浩介。

 気分の悪くなるような言葉の中に、幾つか気になる言葉が聞こえた。ゼロのルイズ。公爵家の娘。

 不快な気分を抑える為に、その二つの言葉に意識を向けようとしたところで、侮辱の言葉を浴びせられた当本人が動いた。

 突然ルイズは立ち上がると、ピンクブロンドの髪を大きく揺らして、怒鳴る。

 

 

「違うわ! ちゃんと召喚したもの! こいつが勝手に応じちゃっただけよ!」

 

「嘘つくな! 万年失敗ばかりしてるんだから、『サモン・サーヴァント』も出来ないんだろ!」

 

 

 屋根から落ちたかと思いきや気づいたらベットの上だったし、応じたって訳でも無いんだけどなあ。と頬杖を付きながら浩介は眉をひそめながら思う。命と生活を助けて貰っているから使い魔をやってるのであって、ぶっちゃけて言えば俺は被害者だ。とも。

 いきなり見知らぬ世界に拉致られたかと思いきや、使い魔にならざる負えない状況になって、挙句の果てに邪魔者扱いされれば、流石にキレそうだ。

 ルイズが拳で机を叩いた。

 

 

「先生、今の聞きました!?

 間違いなく、かぜっぴきのマリコルヌが私を侮辱しました!」

 

「かぜっぴきだとォ!?風邪なんて引いてない!

 忘れたんなら名乗り直してやる、俺は『風上のマリコルヌ』だ!」

 

「あんた自分の声が聞こえてないの?

 そのガラガラ声、何時聞いても風邪をひいてる声にしか聞こえないわ」

 

 

 売り言葉に買い言葉な、おさまるところの知らない言い争いはまだ続くらしい。

 相手側のかぜっぴき少年も立ち上がって、ルイズを睨みつけている。

 いくら喧嘩のレベルが低かろうと、この間に立ちあがって「まあ、落ち着けよ!」なんて言えるお兄さん力は残念ながら無い。

 つまり、この喧嘩を止めてくれるのと期待を向けるのは勿論、最下段の先生だ。

 杖を持った手が動くのを、浩介は見た。

 素早く、小ぶりの杖をまるでハエを追い払うかのように動かす。突然、隣に居たルイズが、力が抜けたかのように椅子に座り込む。マリコルヌとかいう学生も同じく席についていた。

 今のは一体、どういう魔法なのだろうか。『一振りで二人の人間の力を抜かせる魔法』なんて変な効果だ。

 

「ミス・ヴァリエール。それにミスタ・マリコルヌ。

 そんなみっともない口論、おやめなさい。メイジにとって大切な『二つ名』を悪く言うのも、関心しませんよ」

 

「ミセス・シュヴルーズ。かぜっぴきはどう考えても彼女が即興で考えた中傷ですが、ルイズの『ゼロ』は紛れもない事実です」

 

 アリ○ールだとかファブ○ーズみたいな名前だなあ、と思ってしまった。汚れ物ゼロ的なセールスが出来そうだ。

 どうやらメイジには『二つ名』なるものがつけられるらしい。

 『†漆黒の騎士†』とか『太陽の戦士』とか、多分そんなのだろう。ああ、でもどっちもメイジ的には合わないな。

 それにしても一体『ゼロ』とはどんな特徴を捉えて名づけられたのだろうか。魔法の才能がすごすぎて並ぶ者がゼロ、みたいな……それだと侮辱の言葉として使われるのは違うような。

 

 意識を戻すといつの間にか数人の生徒から土のような物を口の周りにつけていた。不愉快そうな顔をしているから多分好きでそうなったんじゃないんだろう。興味津々に見ていたら睨まれてしまった。

 

 全く、この世界に来てから何回ガンを飛ばされたかわからないな。

 

 

 

「まずは自己紹介を。二つ名は『赤土』。赤土のシュヴルーズです。『土』系統の魔法をこれから一年、貴方がたに講義させて頂きます。

 さて、まさかもう忘れている……なんて事は無いでしょうが、復習も兼ねて」

「魔法の四大系統はご存知ですね?では、ミスタ・マリコルヌ」

 

 口論も無事収まり、シュヴルーズは再び杖を一振りして今度は石を卓上に出現させた。

 小さな石でいくつかあったが、これはまだ魔法と言うより、手品でも出来そうな感じがする。

 もし、今の一振りで石を無から生成したのだったら凄い。

 『土』はRPG等ではたまーに省かれていたりする不憫な属性だというイメージがある。いや、自分がプレイした作品がたまたま土を省いていたのかもしれないが。

 

 室内で行う土魔法と言われれば、……あまり想像が出来ない。地面を盛り上げて攻撃する、とか。岩を飛ばすとか。

 室内向きであるとは言えない魔法しか浮かばない。先程ルイズと喧嘩をしていたマリコルヌ少年が先生に当てられた。

 

「は、はい。四つの魔法は『火』、『水』、『土』、『風』の四つです!」

「その通り。今は失われた系統魔法である『虚無』を除いて四つ。含めて五つの系統が存在する事は、皆さんも知っての通りです。そして、『土』の系統はもっとも重要なポジションを占めていると、私は考えます。ごほん。もちろん、これは私が土系統からひいきをしている訳ではありませんよ」

 

 メイジは四つの魔法全てを使う事が出来ないのだろうか。それとも、特意不得意が激しく出るのか?

 ルイズの肩をちょいちょい、と突く。

 

「あによ」

「メイジって四系統全て使えるんじゃないのか」

 ルイズは授業中なんだけど、と先程の論争を引きずっているのか、不満そうな声で言う。

 

「はぁ。メイジは血筋によって生まれた時から得意な系統が決まってるのよ。

 『土』系統が得意な家系なら、全員が土系統の魔法を上手く扱える。

  そのほかの三系統に関しては、土ほど上手く使えないわ」

 そしてなんだかんだで答えてくれる。

 

「へえ。じゃあ『暁』の先生は土以外はへたくそって事か」

「まあ身も蓋も無い言い方をすれば、そうよ。あとアカツキじゃなくてアカツチよ」

「あ、赤土か。なんつーかそれっぽいな」

 呆れた目で見られた。

 暁とか格好良かったのに一気にグレードダウンしたなあ、とか勝手に勘違いしておいて思う。

 ああ。なるほど、それで生徒達の口周りに土がついていたのか。

 

 となると気になるのがやっぱり、俺が魔法を使えるとしたらどの系統なんだろうか、とかどうやってどの分野が得意か分かるのかとか。後は、我がご主人様は何系統が得意なのかとか。

 

「ルイズは何系統が得意なんだ?」

「うるさい」

 ついつい興奮してしまって、色々尋ねている内。

 

「ミス・ヴァリエール。授業中におしゃべりとは、余裕がありますね。

 予習をしっかり行っている事は素晴らしい事ですが、私語は慎みなさい」

「すみません……」

 悪い、ルイズ。と心の中で謝る。

 

「そうですね。ならば、あなたに錬金の魔法を実践して頂きましょう」

「え?わたし?」

「ええ。この教卓の上の石ころを、あなたの望む金属に、『錬金』の魔法で変えてごらんなさい。出来ますね?」

 

 どうやら話し込んでいる内に、授業の内容が本格的にスタートしてしまっていたらしい。

 『錬金』とはまた意外な魔法だ。釜やチョークで行う物とは違う『錬金』を見ることが出来るとは。

 のだが、肝心のルイズが完全に固まってしまっていて反応が無い。一体どうしたのだろうか。

 

 ……いや、まあ流石に察しがついてしまっていたが。ごめん、ルイズ。

 

「先生」

「はい、ミス・ツェルプストー。どうしました?」

 キュルケがすかさずフォローしてくれそうだ。ありがたい。

 

「やめておいた方が良いと思います」

 

 あれ。そこは友の背を押すか、代わりに私がやります的な感じではないのか。

 きっぱりと、『やめておいた方が良い』と言い切ったキュルケに同意するように他の生徒も一斉に頷く。

 何やら様子がおかしい。先ほどまでにやけ顔だった生徒達が青い顔をしているのだ。

 ルイズは俯いたまま動かない。

 

 しかし、シュヴルーズは気づいていないのかキュルケの言葉に憮然として返す。

 

「危険?錬金の魔法に危険?

 ……よくわかりませんが、『トライアングル』である私も傍について居ますから安心しなさい。」

「で、でも、先生……ルイズを教えるのは初めてですよね?」

 

 楽器の名前を出してどうしたんだろう。

 安心させるように、胸を張って言う先生に尚もキュルケは食い下がる。

 どうやら、ルイズが魔法が得意ではないという理由とはまた別の物があるらしい。

 

「はい。ですが、彼女が努力家であるという事は常々他の先生方から聞いています。

 ミス・ヴァリエール。失敗を恐れ、固まっているようでは成功するものも成功しませんよ?」

「ルイズ、やめて」

 

 キュルケの静止も虚しく、先生に励まされたからだろうか、決意の固まった顔でルイズが席を立つ。

 「やります」

 そう、緊張した面持ちで答えた彼女は、つかつかと教室の前へと歩いていった。

 隣に立つシュヴルーズは笑顔だ。

 

「がんばれルイズー」

 届いたかわからないが、声援を送っておいた。

 相変わらず血の気の引いた顔の生徒達が気になるが、これはこれでいい気味だ。

 ついでにここで『錬金』を成功させておけば、彼女に対する評価も上方修正されるに違いない。

 

 目を瞑って先生に教えられた呪文を、小さく復唱する姿は、なんだか神聖な物を感じさせる。

 性格はなんというかサボテンちゃんだし、体の方もまだ発展途上というか、まだまだだけども。

 なんというか、陳腐な言葉だが、綺麗な子だと改めて思った。

 

 そして、ルイズは短くルーンをハッキリと大きな声で唱え、杖を振り下ろす。

 

 単純明快に、たった今起きた事を説明するとすれば。

 声たかだがに、見惚れるような呪文の唱え方をした我が主人は、石を『錬成』ではなく……。

 

「ゴホッゴホッ……、なんだこりゃあ……」

 

 突然石が光を纏ったかと思った次の瞬間、石と机が爆発した。爆竹や家庭用花火が爆発したのレベルでは無い。

 すぐ近くにいたせいか、爆発音で鼓膜が破れてしまった上に、座っていた椅子まで吹っ飛んで派手に尻を打ってしまった。煙や炎が出ていない辺り、二次被害は発生していないようだ。……いや、背後で起こっている騒ぎが二次被害か。

 やれ使い魔が食われただの、足元にガラスの破片が転がってきたりとか。ああ。

 シュヴルーズ先生はヤムチャしている。爆発の中心にいたから心配だが、おそらくこの爆発を起こした本人であろうルイズが、何事もなかったかのように煤を払っているから多分大丈夫だ。

 

「……ちょっと失敗みたいね」

「ちょっとじゃねえよッ!ゼロのルイズ!」

 

「いつだって成功の確率、ほとんどゼロじゃないかよ!」

 

 ようやくではあるが、浩介は生徒の言葉で彼女の二つ名の持つ意味を理解した。





・主人公の外見描写が無いような?
 >特に深い意味はありません。

・ゲーム版の内容に触れたりする?
 >外伝と同じく、出来れば。
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