魔法の使い魔   作:R.O.M

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誘惑と仕事と誘惑と誘惑のせいです。

ゼロ使の設定が詳しく纏められてる本とかwikiとかあったりしませんか。


第五話

爆発の勢いで所々、傷がついたり煤が付いて汚れてしまった教科書を拾い上げて、汚れを払う。

 教室の片隅に視線を向ければ、割れてしまったガラスや使い魔のカラスが落とした羽を箒で集めるルイズの姿が目に入る。あの後、騒ぎを聞きつけ飛び込んできた先生のおかげで、二次被害は喰い止められた。この爆発騒ぎ自体は初めての事ではなかったらしく、慣れた様子で生徒達とシュヴルーズ先生を教室の外へと連れて行った。そして、ルイズには罰として魔法を使わないで教室を綺麗にしろ、と言い渡して先生たちは戻って行った。なんにしても、死人が一人も出なかったのが幸いだ。

 

 先生たちと生徒が去ってそれからしばらく、使い魔と主人の間に会話は無い。

 

 無言で掃除道具を渡され、無言で掃除を初めてそれっきり。綺麗に板ガラスの部分だけ無くなってしまった窓から、時折、鳥のさえずりが聞こえてくる。変な感想だが、解放感が増していい雰囲気になった。問題があるとすれば、度々入ってくる風のせいで埃が巻き上がるのが、沈黙と合わさって何とも息苦しい。

 

 

 なにか、声を掛けるべきだ。

 でも一体、どんな言葉を掛ければ良いんだろうか。惜しかったな?

 全くもってあれが惜しいとは言えない。恐らく、正しく魔法が成功していたというのなら、今頃爆発などでは無く他の鉱石などに変化していたに違いない。形を保っていないのだから惜しいとはかけ離れている。あれはアレで凄いと思う。

 ならば、「ナイス爆発!次頑張れば良いさ!」……それも違う気がする。これがはじめの一回なら軽い冗談でも済ませられるだろうけど。

 きっと彼女は数えきれない程すでに、今回の錬金以外の魔法でも失敗を繰り返している。俺が召喚されるずっと前から、きっとこの学院に入学した時からは勿論、その前からも。

 

「……言いたい事があるなら言えば?」

 落ち込んでいるというより、ヤケになっている言い方だった。

 どんな批評をされても仕方ない、そんな諦めが見える。

 

「どうせアンタも、私の事馬鹿にしてるんでしょ」

「メイジの癖に魔法も使えない、って?」

「ッ……ええ、そうよ。どんな魔法を唱えても、何時もみたく爆発。せっかく、シュヴルーズ先生が期待してくださったのに。今日も変わらなかった……」

 

 俯いて、表情は伺えない。だが、声が震えていた。そして肩も震えている。

 結局、あの生徒のセリフを聞くまで『ゼロ』の二つ名について理解できなかった。彼女がどんな悩みを抱えているかも理解できていなかったのだ。貴族は魔法が全て。そして、その魔法が彼女にはない……。

 

 というのが、昨日の朝くらいまでの彼女の事だ。

 煤を綺麗に払って、多少なりマシになった教科書を手にルイズの傍へと歩く。上手い励ましの言葉とは自信持てなかったが、少なくとも言える言葉がある。

 

「期待に応えられるように勉強していたし、そのつもりで唱えたんだろ。だったら馬鹿にするつもりは無い」

 教科書をルイズへ向けて差し出しながら言う。

「……でも」

 ルイズは顔を上げてじっとこちらを見ている。何かを言おうと口を開いたのを遮るように言葉を重ねる。

 

「魔法を使えない事がこの世界では、どれほど屈辱的な事か計れない。俺の世界ではそもそも魔法は存在しない、使えない。ってのが常識だったから。杖を振っても何も起きない、魔法の言葉を唱えても何も起きない。それが当たり前だ、うん」

「空は飛べない。召喚も無理。錬金も勿論無理。そして、爆発を起こす失敗魔法だってない」

「俺から言わせれば、火薬も燃料も使わず爆発が起こせるだけで結構凄い事なんだよ。それすら出来ないからな」

 

 詰り詰りになりながらの言葉。

 使い魔が主人の実力を示す、とか魔法が使える事はかなり重要なステータスだという事は分かる。でも、俺はいかに魔法が凄かろうと、この世界で必要とされていようと、『魔法が使えない』というだけで予習まできっちりこなす努力家の全てを否定する気はきっと起きない。

 俺だって、魔法を使いたいけど使えない人間の一人だし。

 

「ああ、それに、ゼロなんていうのは少し古い情報じゃないか?

 だって、現にルイズが魔法を成功してくれたもんだから、俺が異世界から召喚される事になったんだろ?」

 

 批評が来るとばかりに思っていたであろうルイズは、意外そうな顔を見せて(すぐに不満気な顔になった)。 

 

「……そうね、特に役にも立たないし、成功に入れて良いかも分からないけど」

「正直その評価はひどいと思った」

「事実でしょ」

 

 やはり少しばかり煽っておくべきだったのかもしれないと思ってしまった。兎も角、憎まれ口が返ってきたのだから、元気が出たと見て大丈夫だろう。

 俺がもし、ドラゴンや凄い実力を秘めた者であったなら励ましの言葉は説得力というか、励まし力があるんだろう。いや、言葉無くとも彼女に自信を与えられるに違いない。美味しい料理を作ってあげられたら、美味しい紅茶を淹れてあげられたら、言葉の変わりにそれらを送ってあげられたかもしれない。……残念ながら料理はあんまり得意では無いから無理だ。これが限界。

 

「じゃあ、せめて雑用ぐらいでは役に立って認識を改めさせてやろうかな」

 

 掃除は苦手じゃない。寧ろ好きって程でも無いけど、気分転換なんかによく掃除はしていた。

 とりあいず、今はこの惨めな残骸と化した元机を片づけなければならないだろう。それから窓ガラスも運ばないと駄目だな。Tシャツの長袖を捲りながら、俺は少しばかり元の調子に戻った主人と共に作業を再開した。

 

 「平民ごときに励まされるなんてちょっと屈辱的だけど、……その、ありがとう」

 「ツンデレか」

 「ご飯抜くわよ」

 「ええ……」

 

 

 

 

 

 昼飯に間に合ったのはある意味奇跡だ。貴族はてっきり掃除がド下手だというイメージがあったし、実際手際も良くなかったが、一度始めれば小さな事でも真剣に取り組むルイズの働きぶりは中々のものだった。協力も出来たのも大きい。二人して手の届かない場所は、俺が踏み台になる事でサポートしたり。(最初は肩車をしようとしたが、何故かルイズがひどく恥ずかしがったのでやめた。下着姿を見られても平気なくせに)替えの椅子等が保管されている部屋を教えてもらったり。すっかり元通りとは言えないが、及第点だろう。

 昼食をとる場所はそれぞれ違うので、塔から出た所でルイズと別れる。朝と同じく、昼食をとる為に厨房へ向かう。

 日はすっかり頭上に上り、照り付けてくるもんだから熱い。逃げ込むようにして、朝とはまた違う匂いがする厨房の中へと入った。

 

「すんません、世話になりきたんですけど……ん?」

 

 何やら様子がおかしい。メイドやコックがこぞってキッチンでは無く、食堂に入るためのドアの傍に立っている。食堂で何かが起きているようだが、何せ厨房中の職員が集まっているもんだから様子が伺えない。少し扉から離れた位置に立っているマルトーへ尋ねる事にした。

 

「おお、坊主か。ちょっと今不味い事になっててな」

 眉を顰めながらマルトーが言う。

「不味い事とは」

「貴族のませガキのポケットから落ちたか知らないが、床に落ちていた二股の証拠をシエスタが、親切心からだぞ?拾って渡したんだ」

「良い子ですね」

「そうだろ!まあ、よりにもよってその場で渡しちまったもんだから、ガキの二股が見事に露呈したんだ。二人の女に続け様に制裁を受けたんだが……、その後ガキがなんつったと思う?『君のせいで二人のレディ』が傷ついたではないか!だとよ!」

 頭に来ているのか、鼻息を荒くして事の次第をマルトーは話してくれた。

 それが本当だとしたらとんだ責任転換だ。悪いのは二股を掛けたその貴族で、シエスタはこれっぽっちも悪く無い。

 メイドとコックを押しのけて、食堂を見れば、教室でも見かけた金髪の少年がシエスタに向けて顔を赤くしながら喚いているのが見えた。すっかり萎縮してしまっている様子のシエスタがしきりに頭を下げているのが見える。

 

「どうして助けに行かない」

「馬鹿!そんな事をしたらどんな報復を受けるか……俺だって悔しい!

 だが、平民は貴族には逆らえねえ……」

「……わかった、俺が話してみる」

「聞いてたのか? そんなことをしたら…オイ!」

 

 必至に呼び止めようとするコックの一人を無視して、食堂へと入る。とにかく、俺は平民じゃなくて使い魔だから何とかなるだろうぐらいの気持ちで。

 ざわざわと騒ぐ生徒達の視線と声を無視して、貴族とシエスタの傍まで歩いていく。

 突然の乱入に、貴族の少年とシエスタは驚いた様子でこちらを見る。

 

 「……なんだね君は」

 「使い魔」

 真正面から向き合って、シンプルに答えてやった。制服にマントを身に纏い、バラが胸のポケットに刺さっている。なんてこった。こんな天然記念物どころか、もはやニホンオオカミが如く絶命しているとまで思っていたギザ人間が居るとは。

 

 「ああ。ヴァリエールが召喚したとか言う平民の使い魔だね?

 …それで、一体何の用だい。見ての通り、取り込み中でね」

 「話は聞いた限りじゃ、君が怒っているそのメイドさんは、何も悪い事をしていないらしいんだが。君が二股をしたのが全ての原因だろ?」

 

 俺の言葉に、少し落ち着いていた少年の顔が再びさっと赤くなる。

 周囲からは、口ぐちに「その通りだ」「ギーシュが悪い」「男って最低!」という野次と笑い声が上がった。対照的にシエスタの顔はどんどん青ざめている。俺の服の袖をつかんで、首を横に振る。

 

 「駄目ですよ!コウスケさん!私が悪いんです。

 後でお渡しすればこういう事にならなかったんですから!」

 「君はこの少年専属のメイドでも、友達でもないんだろう。

 そこまで気を回す事を求めるのが間違ってる。それに」

 

 今にも泣きそうなシエスタから視線を外して少年――先程の野次から聞こえたが、ギーシュに視線を戻す。

 

 「遅かれ早かれ、そういう事ってのは必ずバレるもんだ。

 シエスタが空気を読んでも、浮気野郎は同じ目にあってただろうさ」

 「ぶ、ぶぶ、無礼だぞ!貴様! 平民ごときがこの僕に、ギーシュ・ド・グラモンに向かって浮気野郎とは」

 「貴族から見ようが、平民から見ようが浮気は浮気だぞ」

 

 怒りにまかせて言ったつもりも、ギーシュを煽るつもりで言った訳でもないのに、彼の顔はどんどん赤くなる。こうなってくると、冷静さなんて一かけらも残っているようには見えない。隣で涙をちょちょぎらせているシエスタも同じだ。もうちょっと落ち着いて欲しい。

 不意に耳が引っ張られた。吃驚して振り向くと、ギーシュ程ではないが同じく顔を赤くしたご主人様の背伸び姿が。

 

 「アンタ。自分が何をしてるのか分かってんの!? アンタも謝りなさい!」

 「待ってくれよ。ルイズだって見ていたんだろ、女として許せないんじゃないのか」

 「ええ!浮気をする奴は最低よ。馬に蹴られて死んだ方がいいわ!でも、平民は貴族に意見しちゃダメなの」

 

 ルイズの言葉に、今度は女性陣からの厳しい言葉がギーシュへと飛ぶ。なんだかこうなってくると、少し彼が可哀そうに見えてきた。

 

 「ふふふ……、流石ゼロのルイズ。そしてその使い魔も。ゼロは魔法だけじゃなかったみたいだね」

 「おい……ここらへんで止めとけよ、なっ?今ならまだ被害を抑えられ」

 「うるさい黙れ!そこのメイドよりなっていない貴様の使い魔に貴族の礼儀を教えてやろう!決闘だ。ヴィストリの広場に来たまえ!」

 

 最早ヤケクソになったギーシュの言葉に部屋中歓声に満ちた。

 困惑した様子のルイズの肩を揺さぶって正気に戻す。

 

 「決闘ってなんだよ。ケンカか?暴力沙汰は勘弁だぞ」

 「そんな生易しいものじゃないわよ!アンタ、下手したら死ぬわよ!あれでもアイツも貴族なのよ!」

 「そんな事言われても」

 

 喧嘩している暇なんてあったら、二人のお嬢さんに謝りに行けよ、と抗議しようとしたが、時すでに遅し。肩をいからせながら、ギーシュは食堂を出て行った。数十人の男子生徒が面白そうにあとについて出ていくのが見える。食堂に残っているのは、女性陣か争いごとにまるで興味もなさそうな、草食系男子だけだ。

 よほど貴族の学校生活というのは娯楽に飢えているらしい。

 すっかり床に座り込んでしまったシエスタに声を掛ける。

 

 「あー。何かややこしい事になったけど、一先ず厨房に戻って休んできたほうがいい」

 「死んじゃう……私のせいでコウスケさんが……死んじゃう」

 「いや、そりゃない」

 「……?」

 

 何か勘違いをしているようだが。先ほどのギーシュの決闘宣言に俺は返事を返していない。

 

 「だって俺、そのヴェストリの広場に行く気無い」

 「「へ?」」

 「腹減ってるし。ちょっと残念な奴が勝手に息巻いて出て行っただけだろ、しばらく外の空気吸わせてやればいいじゃねえか」

 「え、いや、アンタ」

 「すまんルイズ。後は頼んだ、平民には止められそうにない……ぐえっ」

 「めんどくさいから謝りに行くわよ。ああいうタイプは無駄に根に持つんだから」

 

 こっちの世界でも、悪く無くても謝らなければいけない時があるようだ。……仕事は大変である。後お願いだからそんなに強く引っ張るのはやめてほしい。




・段々文字数減ってるね
>本当に許してほしい

・ヒロインはルイズ?
>予定は未定なので言えません。
サイト君ハーレムの女の子は全員好きです。ハーレムはありませんが。自分がバリバリ書けるタイプだったら、数人のルートが書くと宣言できたかもしれない。

・誤字
>気が向いたら指摘してください。
短いので多分そんなに誤字る事は無いと思うのですが。
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