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前篇 ~晩秋の幻想郷~
「冷えるわね……」
幻想郷。
現世から隔離された山里。この地には、冬の足音が聞こえつつあった。
博麗霊夢は、博麗神社で咲夜・藍の手を借り、宴会の準備をしていた。
「咲夜ー?」
「どうかしましたか?」
「蔵から酒持ってきて貰える?」
「わかりました」
紅霧異変から3ヶ月。紅魔館の人々(といっても5人と妖精しかいないが)の存在も見慣れたものとなり、霊夢とレミリアも互いの家(館と神社か)を行き来する程度の仲になっていた。
「ねぇ霊夢」
「なによレミ」
レミリアが霊夢に話しかけた……のだが、
(何なのよこの忙しい時に!)
ただでさえ紅魔館の面子が増えた分大事になっているのだ。そのあたり、咲夜が手伝ってくれるのは有難かった。
「あとどれ位かかるかしら?」
「何言ってるのよ。あと2,3時間はあるわよ?」
「そんなに?」
「まだ昼過ぎなのに、今から宴会始めてどうするのよ。宴会は夕方からよ?」
「むぅ…なら、仕方無いわね」
どうやら大したことではなかったらしい……と思っていたら、続けてとんでもないことを言い出した。
「咲夜、お茶にするわよ」
(……………えっ?)
霊夢はレミリアの言葉に驚きを隠せなかった。
「今『お茶にする』と言わなかった?確かに時間は丁度いいかもしれないけど、それなら何も神社でやらなくても…というか、咲夜が行った蔵、結構離れてるからまだ戻ってこれるはずが……」
「かしこまりました、お嬢様」
返答は一瞬で返ってきた。
「って早っ!?」
「あ、霊夢、酒ってこれでよかったかしら?」
「あ、ええ、ありがと……ってか咲夜!」
「はい?」
「あんた蔵行ってくる時時間止めてたでしょ!」
「え、ええ……遠かったので」
(そんなとこだろうと思ったわよ、能力が能力だし)
霊夢は、咲夜の「時間を操る程度の能力」からだいたいの見当はついていた。
「まったく…いい?咲夜」
「何でしょう?」
「弾幕ごっこしてない時に能力使うのは控えて頂戴」
「……努力するわ」
「咲夜~?早くお茶にしましょ?」
「はい、だだちに」
そう言うや否や、咲夜はてきぱきと紅茶を淹れ、どこで用意したのかお茶菓子まで並べていた。そして1分と経たないうちに、
「咲夜。今日は何かしら?」
「はい。今日はキームン茶のストレートにスコーンを合わせてみました」
「へぇ、美味しそうじゃない」
神社の軒下でティータイムを始めた。
「霊夢~貴方もどう~?」
「私は今それどころじゃないのよ~!」
そう言って、霊夢は小走りに藍のいる厨房へ向かった。
「藍~そっちはどう?」
「あ、霊夢さん。こっちは大体終わりました。後は炒め物とかですしそういうのは直前にやっ
たほうがいいかと」
「ありがと」
八雲 藍。 幻想郷を覆う博麗大結界の発案者の式……なのだが、普段主である八雲 紫があまり活動的ではないため、こうして単独行動することも多かった。
「そういえばさ、藍」
「はい?」
「紫は今日どうしてる?」
霊夢はふと気になって尋ねてみた。家で寝ているのだろうと思っていたのだが、
「紫様なら、今日は珍しく朝から出かけてます」
意外な答えが返ってきた。
「あの紫が?」
「はい。そろそろ冬眠の時期なので、その前に人界に行ってくると仰ってました」
「ふぅん。いつ帰ってくるのかしら?今日は紫も勘定にいれて準備しているから、夕方までには帰ってきてほしいものだけど」
「さあ……でも、今日の宴会には行くつもりのようだったので、じきに帰ってくるとおもいます」
「そう………それにしても、紫はどこへいったのかしら?」
霊夢がそういってふと人里のほうを見たときだった。
「あら……」
「雪ですね…」
雪が舞い始めた。
「今年は結構雪が早いわね。強くならなければいいのだけど」
幻想郷に、冬の足音が聞こえ始めていた………
読んでいただきありがとうございます
次回は少し早めに出したいと思います
次回は主人公が登場します(多分)