東方霊歌録   作:栂池

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ようやく後篇ができました。


前回

幻想郷は平和です




18,8,25 一部台詞修正


後篇 ~信州の紅葉~

 東京 立川。

 朝を迎えた立川駅に、日光が射し込んできた。

 僕は今、下りホームで電車を待っている。あと5分ぐらいで高尾行きの電車がやってくるだろう。

 ちなみに今は朝7時20分といったところだ。

 

 立川でも木々が色づき始め、秋が深まりつつある。さすがに朝晩は冷えるようになってきた。

 それから待つこと5分。

 

  --間もなく 5番線に 高尾行きが 参ります--

 

 放送が入ると、オレンジ帯の電車が滑り込んできた。

 早速ボタン式のドアを開けて中に入る……と、暑い。

 どういうわけかわからないが、車内は暖かいを通り越してむしろ暑いほど。

 寒くなってるとはいえ、もう少し暖房抑えてもいいのに。

 僕を含めた十数人が乗り込むと、高尾行きはすぐに発車した。

 立川から高尾まで、およそ20分。高尾で松本行きの鈍行に乗り換え、目的地までさらに3時間ほど列車に揺られ、そこでバスに乗り換えることになる。

 のだが、今朝起床が早かったのでまだ眠い。ひとまず高尾までひと眠り……

 

  --間もなく終点 高尾 高尾 お出口は 左側です 大月、甲府方面はお乗り換えです--

 

 どうやらもう高尾らしい。次の列車まで乗り換え時間はわずか2分。荷物を取りだしておかないと面倒なことになるから、先に出しておかないと。

 列車は左右に揺れながら高尾駅のホームに入った。幸いホームの向かい側に連絡の松本行きが停まっている。僕が乗り込むと、少し音を立てて列車は動き出した。

 

  --ご乗車ありがとうございます。中央東線、普通松本行きです。相模湖、藤野、上野原の順に、終点松本まで各駅に停まってまいります。途中大月には8時25分、甲府9時26分、小淵沢10時7分、上諏訪10時47分、塩尻11時7分、終着 松本には11時24分到着の予定です。--

 

 スピーカーから、高尾までとは変わり車掌による放送が入った。

 座席に体を沈ませると、なんだか急に眠くなってきた。やっぱり朝が早かったからか?ま、上諏訪まで3時間はあるし、ひと眠りしてもいいか……

 

 

 

 

 

少年睡眠中……

 

 

 

 

 

  --間もなく、上諏訪、上諏訪です。4分停車致します。出口は左側です--

 

 おや?もう上諏訪か……?

 まだ残る眠気を振り払って体を起こすと、列車はもう停車するところだった。

 

  ---上諏訪ー、上諏訪ー、ご乗車ありがとうございましたァ上諏訪に到着です。1番線、到着の列車は普通松本行きです。---

 

 しまった……確か次のバスの発車まであまり時間がなかったはず。しかも乗るバスは1本乗り遅れたら次は2,3時間後になってしまう……急がないと。

 僕は慌てて列車を降りると、目の前にあった改札を通り、駅前広場を見回した。すると、

 

  --このバスは 横峰 経由 上田駅前 行きです-- 

 

 よかった。バスはまだバス停に停まっていた。僕が急いでバスに乗ると、待っていたかのようにバスのドアが閉まり、発車した。

 今日の目的地はこのバスで30分ほど山を上がった所にある高原。丁度紅葉の見ごろを迎え、諏訪湖と紅葉の競演が見られるはずだ。

 今日は道路も空いているし、この分なら時間通りに高原までいけるだろう。

 

 

 

 

 

少年乗車中……

 

 

 

 

 

 30分後。

  --次は 横峰高原牧場 横峰高原牧場 です--

 お。次が目的のバス停だ。ボタンを……

  --次止まります バスが完全に止まるまで 立ち上がらないでください--

 誰かが押したみたいだ。車内には僕のほかに数人乗っているから、誰かは分からないが多分近くの牧場観光の客だろうな。

 山間のバス停に停まり、バスを降りると、後からもう二人降りてきた。観光案内をあてにしているし諏訪湖観光のついでに来たという感じだろうか。

 バス停の目の前には大規模な観光牧場がある。だけど僕の目的はこっちじゃない。

僕は農場に背を向け、森の小道に入っていく。森の中を少し進むと、そこには……

 

「おぉ……」

 

 広さは20m四方といったところかな。森の中のやや開けた場所に着いた。紅葉が舞い、眼下に諏訪湖を見下ろす、観光案内などには載らない絶景が広がっている。誰かが来るような場所でもないし、しばらく昼寝でも……

 あれ?人がいる?

 

「…………」

 

 いつのまにか、後ろに女性が立っている。いつの間に来たのか……というか妙な格好だなぁ。

 ドレス(しかも紫色だ)を着て日傘をさしている……のは分かるけど、イベントでもないのにそんな格好する人なんて見たことないぞ?

 

「…………」

 

 女性はこちらをじっと見ている。

 ……何だろう。女性の姿に違和感を感じるな。無論奇妙な格好のせいでもあるんだろうけど、…どう表現したらいいのかな?何というか…

 人じゃ…ない?

 よくわからない。話してみれば、何か分かるかなぁ?

 

 

 

 

 

「……うわっ!?」

 

 

 

 

 

 

 ……………痛ってぇ。どこかの石につまづいたみたいだけど……そんな石あったっけ?

 

 

「……………あれ?」

 

 ここどこだ?

 さっきまで森の中にいたのに……なんで僕は丘の上にいるんだろう?

 足元にあるのは……彼岸花かな?

 それに2~30cm程度の石がごろごろしてる。こいつらに躓いたんだな多分。

 

「っくしょい!」

 

 ………寒い。

 さっきまで無かった雪が降ってるし、やっぱりさっきまでとは違う場所なんだろうなぁ。

 

「あら?」

 

「はい?」

 

 誰か話しかけてきた。よかったこの近くに村でもあるんだろうなぁ。

 と、声のしたほうを向くと………

 

「どうしたんだい。お前さんも暇潰しか?」

 

「………ひっ」

 

そこには、さっきまでいたのとは違う人がいる……んだけど。

 

「あの………そこに置いてあるのって……」

 

「ああ、これかい?鎌だけど。どうかした?」

 

「う、うわあああああ!!!!」

 

 冗談じゃないって!こんなところで死にたくはないよ!?

 僕は全速力で近くの森に駆け込んだ……あちこちの石に転んだりもしたけど。

 ここ妙に石多いなぁ。

 

 

 

 何とか森に入れた。もうあの鎌を持った人は振り切っただろう。

 そう思うと、疲れがどっと吹き出したような気分になった。

 こんな右も左もわからない場所で、生きられるのかなぁ。

 僕は、ちらちらと降る雪の中でそう考えずにはいられなかった…………




前回「少し早めに」と書いておいてもう18日経ってしまいました。

次回

何とか6月1日に間に合わせます。
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