東方霊歌録   作:栂池

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どうにか8月中に間に合う……なんてことにはなりませんでした。


第4話 〜料理番が宿す程度の能力?〜

(冷泉はん今晩どないするん?)

 

「うーん…鯖は揚げびたしにして、あとは適当にあわせていきましょうか。」

 

(了解。ほなネギと舞茸取ってきてくれん?)

 

「わかった。」

 

 

 白玉楼の料理番となってから1週間。

 ようやく献立の組み立てにも慣れてきた……のはいいのだけど。

 なんで海が見当たらないのに鯖があるんだろう………

 買い出しに行ってきた妖夢曰く「商店で安かった」そうだけど。

 やっぱり、向こうにいた時の常識が通用しないなぁ。

 もう「幻想郷(ここ)」はこういうものだって考えたほうがいいか。

 

 

「えーっとネギと舞茸ネギと舞茸……」

 

 

 あったあった。

 僕より他の皆の方が料理上手いから僕が雑用やってるけど、いつかは僕も腕を上げたいなぁ。

 

 

 

「冷泉~?」

 

「幽々子様?どうかなさいました?」

 

「ちょっと話があるから夕食後残って欲しいのよ。」

 

「わかりました。」

 

 

 

 …幽々子様が話?一体何だろう?

 

 

~夕食後~

 

「ごちそうさまでした。」

 

「ごちそうさま。」

 

「お粗末様でした。……ところで、話ってのは何ですか?」

 

「うーん……ここじゃちょっとやりにくいから中庭にいきましょ。」

 

 

 

 

 中庭?ここじゃあできない話って……幽々子様は何をしようとしているんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 -中庭-

 

「幽々子様、中庭じゃないとできない話って何ですか?」

 

「ええ。話というのは、貴方の『能力』を見極めたかったのよ。」

 

「…能力、ですか?」

 

「そうよ。外界の人間が『能力』を持つのはまれなんだけど、外界から自力で冥界まで来るなら、何かしら能力を持っていてもおかしくは無い筈よ?」

 

「でも、僕は『能力』なんて代物、使った覚えがないんですけど?」

 

「貴方が『能力』に気づいてないかもしれないし、それに『能力』は先天的に得るものだけではないわ。」

 

「そんなもんですかね?」

 

「そんなもんよ。一度試してみなさいな。」

 

「まあやってはみますけど……何をすればいいんです?」

 

「そうねぇ…貴方の正面に向けて意識を集中させてみて?」

 

「正面………正面………」

 

 

 僕が正面に意識を傾けた瞬間。

 

 

「…これは?」

 

「どうかしたの?」

 

「なんだか前に壁があるような感覚がするんですけど…」

 

「壁ですって?」

 

「冷泉、いくらなんでもそんなもの…あ、あれ?」

 

「妖夢、どうしたの?」

 

「幽々子様…冷泉の前……その、何というか………見えない壁、というか…その、と、通れないんですけど?」

 

「そこまで怖がらなくても…あら?確かに壁があるみたいね。」

 

「…本当に、そんな物が?」

 

「そうなんだけどねぇ。これどうとったらいいのかしら……冷泉、今度はそこに落ちてる葉をイメージしてみてくれる?」

 

「葉…ですか?構いませんけど。」

 

 

 

 

 訳も分からぬまま、僕が葉っぱのイメージを前に籠めた。

 その直後。

 

「あら。今度は葉が浮いてるみたいな感触ね。」

 

「ゆ、幽々子様…どうなってるんですか?少し……その…怖いんですけど。」

 

「だから怖がらなくていいわよ。多分これが冷泉の『能力』でしょうから」

 

「これが僕の『能力』ですか?そんな壁と葉らしきものしか作れないのがですか?」

 

「そう悲観することもないわよ。多分、貴方のイメージさえ確立できていれば、何でも生み出せるはずよ。そうねぇ、さしずめ『不可視の物体を生みだす程度の能力』といったところかしら?ふふ、面白そうな能力ね。」

 

「イメージって…なら最初に作ったあの壁は何だったんです?僕何もイメージしてなかったんですけど…」

 

「あの壁ねぇ…『能力』の基になっている過去の記憶の類じゃないかしら?」

 

「過去…!」

 

 僕の過去。

 その中に見えない壁なんてものに関わるようなことが一つだけある。

 

 

 

「でも……なんで…」

 

 

 

 あの時のことはもう忘れたつもりでいたのに。

 

 あの時のことにはもう二度と関わるつもりはなかったのに。

 

 

 

 

 

 なのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故今更、しかもこんな形で現れるのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故………………!!

 

 

 

 

 

「…泉?冷泉!?」

 

「?…妖夢……?どうした?」

 

「どうしたって……それはこっちのセリフだすよ…急に顔色変えてどうしたんですか?」

 

「い、いや……」

 

「その『能力』の源……あまりいい記憶じゃないみたいね。」

 

「…はい。僕はもう忘れたつもりでいたんですけど……」

 

「記憶なんて、そう簡単に捨てられるような代物じゃないわ。それこそ、一回死ぬぐらいしないと……ね。」

 

「…過去から逃れることはできない、ということですか。」

 

「そういうことよ。さ、次いきましょ。」

 

 

 

 

 

 …あれ?

 

 

 

「幽々子様、僕の能力を見たかったのではないのですか?」

 

「勿論それもあるわよ?でも『能力』を扱えるとわかったからには弾幕ごっこのやり方も教えておきたいのよ。」

 

「弾幕ごっこ…ですか?」

 

「ええ。この幻想郷一帯で用いられる決闘の手段。昔は普通に戦っていたけれど、死者が出るのを防ぐために弾幕ごっことスペルカードルールが制定されたの。」

 

「……はあ。」

 

「やり方自体は簡単だからやってみなさいな。」

 

「どうやるんですか?」

 

「自分の中の霊気を形にして打ち出すだけよ?」

 

「それ絶対『だけ』じゃないですよね!?」

 

 

 

 幽々子様…さも簡単そうに言いますけど、どう考えても難題ですよね?

 

 

 

 

 

少年練習中……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

「上手いじゃない。これならある程度は実戦で通用すると思うわよ?」

 

「確かに撃つだけなら簡単でしたけど……」

 

 

 

 僕自身意外なことに、弾を撃つだけなら5分程度で出来た。

 けど、こうやって実用レベルになるまで1時間は確実にかかっているんだよなぁ。

 

 

 

「じゃあ後はスペルカードかしら。妖夢、確か余ってるのあった筈よね?」

 

「はい。こちらに。」

 

 

 

 そう言って妖夢が差し出してきたのは、何も書かれていない5枚のお札だった。

 

 

 

「これをどうするのだすか?」

 

「適当に念じればいいんじゃないかしら?」

 

「そう言われましても…」

 

 

 

 よくわからないまま札を手に取る。すると、

 

 

「うお?」

 

 

 仄かな光と共にお札に何やら文字が浮かび上がってきた。

 

「それが貴方のスペルよ。使う時は札を掲げてスペルを宣言すれば発動するわ。」

 

「これが…スペル……」

 

 

 

5枚のお札を眺めてみると、それぞれ

防符「不可視の障壁」

反射「リフレクソロジーの応用」

鏡符「無際限の魔鏡」

炎符「火焔乱舞」

狂気「見えざる災厄」

と記されていた。

 

一度試してみたいけど、どうなるかわからないしその内妖夢に教えてもらおうかなぁ。

 

 

「夜も更けてきたし、今日はもうここまでにしましょうか。」

 

「はい。幽々子様。」

 

「冷泉~明日の朝もよろしくね~」

 

「かしこまりました。おやすみなさいませ。」

 

 

 

 僕に一声かけると、幽々子様はそのまま寝室へ向かわれた。

 後には僕と妖夢だけが残された。

 

 

「私達も寝ましょうか。」

 

「そうですね。」

 

「それではおやすみなさい。」

 

「あ、あの…」

 

「?どうしたんですか?」

 

「いや、妖夢にそのうちまた練習に付き合ってもらえないかなと思って……駄目かな?」

 

「そういうことなら構いませんよ。でも、覚悟しておいてくださいね?」

 

 

 そう言うと、妖夢は意味ありげな笑みを向けてくる。僕は、

 

 

「…お手柔らかに頼みますよ?」

 

 

 こう返すことしかできなかった。




……というわけで能力説明回となりました。

スペルカードの中身などは次回以降始まる第二章で明らかになります。


次回

あの異変が始まります。



 追記
 09/03 01:06
 タイトルを修正しました
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