第5話 ~新たなる日常は好奇心と共に幕を閉じ…~
早朝。
僕の日課は、夜明け前の井戸で水を汲むことから始まる……
「…っくしょいっ!…う~…」
季節は冬。
もう1、2ヶ月もすればふたたび芽吹きの時期となる…が。
「寒…うぅ」
同時に1年で最も冷え込む時期でもある。
(冷泉、お前ぇ
「大丈夫だよ…今日はかなり冷えるし、まあ仕方ないでしょ…多分」
下野の心配ももっともかもなぁ。幽霊が風邪をひくなんて話聞かないから風邪にいいものがあるか分からないし。
(ま、お前ぇがええっちゅうんならしゃああんめ。それより早くもっていかにゃならんべ?)
「ああ。早く済ませようか。」
向こうには水道があったが、こちらにはそんな便利な物は無く、精々井戸ポンプがある程度。でも、手作業で桶を上げ下ろしするよりは楽なんだし、前向きにとらえた方がいいよなぁ。
レバーを下ろす。
レバーを上げる。
下ろす。上げる。下ろす……と、単調な作業を40回ほど繰り返すと、持ってきた5個の甕が一杯になる。
「こんなとこかな。じゃ、持っていこうか。」
(はいよ。)
5個の甕の内2個を半霊に乗せ、2個を天秤棒で担ぎ、残るひとつを霊達のうち誰かに持ってもらう。
そうして汲み上げた水を1日分の生活用水に使っていくのだ。
掃除洗濯などにもこの水を使うため、総量は100L近くにもなる。
夜明け過ぎ。
空が明るくなるにつれて厨房も忙しくなっていく。
(冷泉、この鰤どうする?)
「あ、それは今晩の鍋に使うので下拵えだけお願いします」
(冷泉今晩もええけど早いとこ朝食取りかからんと間に合わんで!)
「え…あ。」
言われて外を見ると、もう日が昇り切っていた。この時期だから……あと1時間ぐらいで朝食の筈だ。これは急がないとまにあわないだろうなぁ。
「よし、じゃあ早く終わらせるとしようか。」
(おう!)
(まかしとき!)
(任せろ。)
朝食の時間まで1時間と少し。
今日は鯵の塩焼きに合わせていこうかなぁ……
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした。ではこちら失礼致します。」
朝食後。
まずは3人分の食器類を手早く洗っておく。
作る時は1時間近くかかっても、洗う時はものの15分で済んでしまう。……いや、3人分の朝食で15分って長くないか? 幽々子様結構食べられるから、そのせいなのかなぁ。
そんなことを考えながら洗い終え、棚に差しておく。多分そろそろ……
「冷泉~そっち終わりました?」ガラガラ
「今行くから待っててー。」
最近は午前中妖夢が暇らしい。
そのため、最近はこの時間に練習に付き合ってもらっている。
~中庭~
「じゃあ、いいですかー?」
「いつでも大丈夫ー。」
妖夢と20mほど距離をとる。最近はこの距離から適当にスペルを撃って僕がそれを避けることが多い。
「では…畜趣剣『無為無策の冥罰』!」
スペル宣言と共に妖夢が右から左へと動く。するとその後に十数本の予告線が引かれ、少しすると予告線の両端から大量の弾幕が打ち出される。一度練習に使われているので、前後から弾幕に挟まれないよう大きく下がって弾幕に備える。直後、僕の目の前から弾幕が飛んで行って…
「これなら…!」
弾幕が襲いかかってきた。けれども半分は僕から違う方向に飛んでいき、残りもやや隙間が多い。これなら余裕を持って避けきれる……筈だ。
「はっ…やっ…っと」
乗っている霊を操り弾幕の間をすり抜けた。
その瞬間だった。
「まだ読みが甘いですね…」
弾幕を抜けた先にあったのは、次の予告線だった。
「やばっ……」
もう、予告線の外に出る暇もなかった。
「あーもう今の罠かあ痛たたたたた!」
今度は回避する隙間もないほどの密度で弾幕が飛んできた。当然のように立て続けに被弾してしまう。
「うぅ~~」
「目の前の弾幕を避けるのに集中しすぎですよ。もう少し周りを見ないと被弾しちゃいますよ?」
「そうは言っても目の前の弾幕避けないことには……」
「…やっぱり、この辺の感覚は経験が関わりますからね。もう一回やりましょうか。」
「もう…一回?」
「早くしないとまた被弾しますよ?」
「え…ちょっと待って」
「獄界剣『二百由旬の一閃』!」
「うわああああああああ!!」
………………
1時間後。
「むぎゅ~~……」
「…持久力つけた方がいいんじゃないですか?」
「妖夢の特訓がハードなだけだって絶対……」
実際、僕はこの1時間ほどで20回近く妖夢のスペルを受けている。
そして、僕はそのスペルを一度も避けきれなかった。
「やっぱり弾幕使わないと避けきれないんじゃ……」
「駄目ですよ?弾幕撃つのも結構力を消耗するんですから、相殺ばかりしていたら実戦でもちませんし。」
「うぅ………」
僕と妖夢も素で会話するようになって結構経つけど(妖夢は素であの口調らしい)、弾幕のこととなるとかなわないんだよなぁ。
「あ、そろそろ昼食の準備しないといけないのでは?」
「あ、もうこんな時間か。」
(冷泉~?どこにおんねやまったく……)
「今行くー。」
「今日も期待してますからね~」
妖夢の声を背に厨房へと急ぐ。
昼食……どうしようかなぁ…………
昼食中。
今日は親子丼にアレンジを加えたものだ。
「~~~~♪」
「美味しいですね。アレンジもいいんですけど………一体何入れたんですか?」
「それは秘密ってことで……」
「変わった醤油を使っているのかしら?何かまではわからないけれど。」
「そうなんですか?」
「…そんなあっさり解るものじゃないんですけどねぇ………」
実を言うと、ほんの少しだけ魚醤(しょっつる鍋に使われるもの)を加えている……けど。
幽々子様にすぐ看破されてしまった。
こうなったらもう少し別のものも入れて……
「それはそうと、あなた方」
「はい?」「何でしょう?」
「この後少しついてきてもらえるかしら?」
「「わかりました」」
………一体何だろう?
昼食後。
「こっちよ~」
幽々子様について庭まできちゃったけど……ここ何かあったっけ?
桜ならいくらでもあるけど…
「あ、あった。これよこれ」
そういって幽々子様がひときわ大きな桜を指さす。
「幽々子様…その木がどうかしたのですか?」
「この桜ね、何かが封印しているせいでここ数百年一度も花がさいていないのよ。」
そして。
「だから、その封印を破って、この木…『西行妖』を満開にさせてみたいの。」
「かしこまりました。」
「了解、です。」
この一幕が、後に幻想郷を巻き込む異変の始まりであることなど、僕は知る由もなかった…………
御覧いただきありがとうございました。
冷「だから更新遅いってば」
いや…うん。いろいろあったんですって…
何はともあれ今回から妖々夢篇となります。
春雪異変に関わっていく中で冷泉は何を為すのか?
次回以降、またしばらくお待ち下さい。(しばらく月1更新が限界になりそうです)
あとお知らせを。
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