その二つ名で呼ばないで!   作:フクブチョー

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Myth26 甘くせえと言わないで!

 

 

 

 

 

 

 

【王の理不尽】

 

リヴィエールがレベル3にランクアップした時に発現した。王族の血を引く男、リヴィエールが臣民たるエルフ達から魔法を徴収するスキル。レフィーヤが操るような短文詠唱の魔法であれば、威力は若干落ちるが、魔法本来の詠唱のみで召喚は可能だ。

しかしことアールヴの魔法となると話が変わる。

王族たるリヴェリアの魔法を理不尽に徴収するにはいかに彼でも手続きを必要とする。

 

しかし、それさえ為されれば……

 

【───献上せよ】

 

その凄まじさは原典(リヴェリア)を超える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、オラリオの地面に違和感をアマゾネスの少女が感じ取った。

 

「ティオナ?どうしたのよ」

「地面……揺れてない?」

 

その言葉を肯定するように今度は大きく地面が揺れる。地震かとも思ったが、違う。揺れは断続的に続いていた。

 

「っ!!」

 

街に破砕音が轟くと同時に、時計塔が崩壊する。何かとんでもない事が起こったと、察するには充分すぎる。震源を見やると黄緑色の蛇のような怪物が暴れまわっていた。

 

「なにあれ!また新種!?」

「あんなモンスター、ガネーシャ・ファミリアはどこから…!」

「アイズは遠い!私達で叩くわよ!」

「わかった!」

「は、はい!」

 

屋根伝いに駆け抜ける。凄まじい身体能力を持つティオネ達はあっという間に震源地へとたどり着いた。遅れてはいるが、レフィーヤも確実に近づいている。

 

「あ、あれ!」

 

ティオネが指差した先には一般市民2人を逃しつつ、詠唱を行なっている白髪の魔法剣士の姿があった。

 

「早いわね、流石」

「でも詠唱中みた……危ない!」

 

魔力を高めている最中に新種が襲いかかる。詠唱を続けながらも対応してはいたが、流石に普段よりは動きが鈍い。

 

頭のない蛇がリヴィエール目掛けて走る。黒刀を振るい、対応しようとしたが、その前にティオネ達が間に合った。蛇の頭を思いっきりぶん殴る。石畳に叩きつけられた蛇は見事に地面にめり込んだ。

 

「お前ら…」

「はぁい、リヴィエール。余計だ……た……」

「友達でしょ?礼ならいら……ない……わ、」

 

得意げな笑みを向けていた2人が同時に拳を抑えて震える。時間差で拳に尋常ならざる痺れと痛みが奔った。それも当然だ。あのリヴィエールをもってしても硬いと言わしめる物体を素手で殴って、無事な方がおかしい。

 

「〜〜〜〜〜!!」

「かったぁーーー!!」

「ど阿呆!得体の知れない新種相手にいきなり素手で殴る奴があるか!何年冒険者やってんだお前ら!」

「言ってよ〜〜!」

「言う暇なかっただろう。仕留めるのは俺に任せていいからお前らは周囲への被害を抑えてろ。お前らなら足で充分対応できる」

「わかったわ、任せて」

「あーもう!武器持って来ればよかった!」

 

三人同時に散開する。遠目からは三人とも消えたように見えただろう。いや、事実、そう見えた。遅れてきたレフィーヤの目からは。

 

───強い……三人とも。私なんて、足下にも及ばない

 

鉄以上の高度と凄まじい速度で振るわれる顔のない蛇の突進をアマゾネス姉妹は足で捌き、リヴィエールは斬り込みつつ間合いを詰めていた。もしあの中に自分が放り込まれたら、あっという間に打ち据えられて終わりだろう。

あんな素早く動く事なんて出来ない。あんな強い攻撃を繰り出す事なんて、出来ない。

 

───でも、私だって!

 

【解き放つ一条の光 聖木の弓幹 汝弓の名手なり】

 

速度重視の短文詠唱。素早い相手への奇襲としてはかなり有効な魔法。レフィーヤの魔力で撃てば威力もそこそこある。

 

───気づいてない。いける!私だってアイズさんの力に……

 

「っ、馬鹿レフィーヤ!違う!」

 

まるで後ろに目でもついているかのように、魔法を発動させようとしているレフィーヤに向かって静止の言葉を白髪の魔導士が掛ける。しかしもうここまで詠唱した魔法は止められない。

 

【狙撃せよ妖精の射手 穿て必中の矢】

 

「クソっ!!」

 

彼の姿が搔き消える。どこへ、とレフィーヤが思った時には横からの衝撃に突き飛ばされていた。

 

「り、リヴィエールさん、何を……」

 

するんですかと続くはずだった言葉は轟音に搔き消える。石畳が割れ、地中から凄まじい速度で何かが立ち昇る。何かはリヴィエールの腹部にまともに突き刺さり、勢いのまま、空へと打ち上げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───まさかこいつらが来るとは……いや、別に不自然とまでは言わないか

 

詠唱を続けながら走り回る。力不足だと言う気は無い。二人の実力は一級冒険者を名乗るにふさわしいものだ。

しかしそれは飽くまで【大切断】の所以たる大双刀などの武器を持っている彼女達だ。流石の二人も素手で深層クラスのモンスターとは戦えない。

いや、戦えないとまでは言わないが、相当不利な戦いになるのは間違いない。

そしてこの新種は打撃や斬撃ではラチが明かない。今の二人にこの怪物を打倒する力はない。

 

リヴィエールは戦闘スタイルを変化させる。自分が避ければいいという回避重視のスタンスから、この二人を庇いながら戦うガード重視のスタイルに。

 

ツタの一撃をなんとか逸らす。受けた両手に痺れが疾る。デュランダルたるカグツチでなければ砕け散っていた。受け流しにも限界がある。

 

───そもそも俺はタンク向きの戦闘スタイルじゃない。早いとこケリをつけないと、持たない

 

【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に(うず)を巻け】

 

体に鈍く響く鈍痛に耐えながらリヴィエールは詠唱を続ける。召喚する魔法は【ウィン・フィンブルヴェトル】。現在存在する氷結魔法の中で最強の魔法。この術なら新種の細胞一つに至るまで凍りつくす事が出来る。周囲に無駄な破壊をもたらす可能性も低い。この状況にうってつけの魔法だった。

 

【閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪け、三度の厳冬――我が名は……】

 

リヴィエールの詠唱はそこで止まる。あと少しで完成だと言うのに7つ目の感覚が近距離に魔力の高まりを知覚したのだ。

 

視線を向ける。その先にいたのは栗色の髪に青い瞳を宿した麗しく、年若いエルフ。手を翳し、魔法を発動させんとしている同胞の姿だった。

 

───あいつまで……

 

来てたのかと思う時間はない。

 

「っ、馬鹿レフィーヤ!違うっ!!」

 

魔力を高める彼女に叫ぶ。レフィーヤの魔力量はエルフの中でも屈指。そんな彼女が魔力を高めては……

 

───俺が今までやってた事が、水泡に……

 

「クソッ!」

 

だから群れるのは嫌いなんだ!

 

超高速の領域で駆け抜ける刹那の空間で、飛んでしまった事の後悔を思う。しかし、もう止められない。止まる気も、ない。

 

『…………どうして君はそんなに一人になろうとするんだい?』

 

……ほらな、こうやってつい手が出ちまう。

 

同族の少女の華奢な身体を突き飛ばしている最中、主神の言葉が脳裏に浮かぶ。その答えはコレだ。

 

俺はやっぱり、甘くせえ。

 

鉄の塊が腹をえぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空高く打ち上げられたリヴィエールが重力に従って地に堕ちる。ろくに態勢も整えず。あの剣聖が受け身すら取らずに地面に落ちた。

 

「リヴィエールさんっ!!」

「な、なにあれ!尻尾!?」

「リヴィエール!?」

 

私を、庇って……私のせいで……

 

足手まといとなってしまった。その事実に未熟なエルフは打ちのめされる。打ち上がった尻尾のような物体はビクリと一度脈打つと、その真の姿を見せた。

頭部に幾筋もの線が走り、咲いた。

ハエトリグサが人を食らうために進化した姿と言えばわかりやすいだろうか。

仕留めた捕食するためにモンスターが変貌していく。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ‼︎』

 

咆哮が轟き渡る。花弁が開かれ、中央には牙の並んだ巨大な口が存在し、口腔の奥には魔石が見えた。

 

「咲い……た?」

「蛇じゃなくて……花⁉︎」

 

モンスターの正体にティオナ達が驚愕する。蛇だと思い込んでいたのは食人花のモンスターだった。

 

「リヴィエール!起きなさい!レフィーヤ、逃げて!」

「ああもうっ!じゃまぁ!」

 

二人を助けようとするアマゾネス姉妹だが、食人花から湧き出た触手が彼女らの行く手を阻む。

 

ーーー嫌だ、嫌だ…

 

倒れるリヴィエールに肩を貸して背を向ける。しかしレベル3とはいえ所詮は魔導士。身体能力でこのモンスターに敵うわけがない。ましてや今はリヴィエールの長身痩躯を背負っているのだ。動きは尚鈍い。

 

何度でも、守るから。

 

彼女の脳裏に憧憬の彼女の言葉が響く。

 

…………チッ。

 

まだ艶やかな黒髪だった頃の剣聖の姿が蘇る。いつだったか、ダンジョンで助けられた、あの時の自分を失望と苛立ちの目で見た翡翠の瞳と舌打ちの音が。

 

───嫌だ、嫌だ…

 

だから、次はレフィーヤが私()を助けて?

 

その達の中には自分は入っていない。入れる資格は私にはない。アイズはそう言ってくれたけど、私なんかが彼女の役に立つ事なんてあるのだろうか?

 

リヴィエールに至ってはそんな言葉をかけてくれたことさえない。もう自分が足を引っ張るのは想定内と言わんばかりに、無言で自分を守ってくれた。

 

そんな無力な自分が悔しくて、両目から涙を溢れさせながら必死に動く。掴んだ彼の腕に力が篭った事に負の思考に囚われていたレフィーヤは気づかなかった。

 

───嫌だ、嫌だ……

 

もう嫌だ!!

 

レフィーヤの腕が振り払われ、背中が突き飛ばされる。肩からは重みが消え、刀が鳴る硬質な金属音が一つ鳴った。気づいた時にはもう食人花の首は宙を飛んでいる。

同時に金色の風が視界を横切る。猛スピードで駆け抜けた疾風は食人花の吹き飛んだ首を細切れにする。

 

───同じ……また、同じ……また、私は……

 

『アイズさんに手を差し出してもらっても……いつか隣で戦いたいから……憧れてるから……その手は掴めないんです』

 

そんな自分の言葉が滑稽に響く。何が憧れ……何がその手は掴めない……そんな事が言える程、私は偉いのか、強いのか?

 

『剣を振るい、魔法を自在に操る貴方のスタイルに。ヒューマンである貴方に出来るのなら私にだって。そう思えたから私は努力出来ました』

 

努力の結果がコレか?彼の足手まといになった上に、なす術なく喰われようとしていた私が、一体今まで何を努力してきたというのか。

 

───きっとまた、自分は……

 

 

あの憧憬の二人に守られる

 

 

並び立つ金と白の背中は悔し涙で歪んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ツゥ……

 

腹部に響く鈍痛に僅かに眉をしかめる。先の一撃はかなりのダメージを彼に与えていた。

 

───チッ……トんでたか

 

リヴィエールは優れた剣士だ。パワーもスピードもテクニックも全て高次元に纏まっている、オールラウンダー。隙などないと言っていい。

しかしたった一つ、弱点を上げるとすれば、リヴェリアなら耐久力と答えるだろう。

 

基本的にリヴィエールのディフェンスは触らせない事を前提としている。どんな強力な一撃も当たらなければ意味はない。見切り、躱し、斬る。やられる前にヤる。先手必勝のスタイル。つまりは触らせないという戦闘型。故に攻撃を食らうという事が基本的に少ない。

ファルナは冒険者が得た経験をもとに進化する。ダメージを受けなければ耐久力も決して上がらない。

もちろんリヴィエールは怪我をした事がないわけではない。傷を負ったことはあるし、一年前の惨劇の夜には致命傷寸前の大怪我を負った。並の上級冒険者程度には耐久力もある。

 

しかし何年もソロで潜り続けている彼が並程度の耐久力しかもっていないという事は異常事態だ。危険に晒された回数に比べ、傷を負った回数は極端な程少ない。

加えて彼はハーフエルフ。種族としても打たれ強い種では決してない。

 

───戦闘中にマトモに攻撃食らったのっていつだっけ……

 

深層モンスタークラスの一撃をなんのガードもせずにモロに受けるという事はほぼ初体験だ。並程度の耐久力では歯が立たない。

 

───7つ目の感覚、応用編。痛覚遮断

 

第六感を含めた全ての感覚を研ぎ澄ますスキル、7つ目の感覚。常時発動型スキルではあるが、その精度は集中力次第。そして誤解されがちだがその能力は何も感覚を鋭敏にするだけではない。練度が高ければわざと感覚を鈍くすることもできる。戦闘時に痛覚を遮断するという事はあまりよくないのだが、そうも言っていられない。

 

「おぉおおおおおお!!!」

 

カグツチが食人花の首を両断する。頭部と思わしき花が宙へと飛ぶ。首だけになった食人花を燃やそうとアマテラスを召喚しはじめたその時、一陣の風がモンスターを細切れにする。この風は知っている。

 

───来たか、思ったより遅かったな。

 

あの三人がいる以上、近くにいると思ってたのだが、今日は別行動だったらしい。痛覚遮断を解除しつつ、毅然と振る舞う。アイズの前で弱った姿など見せられない。これは兄としてのプライド。

 

───それに本体が出てきてくれたおかげでケリはついたしな。

 

「リヴィ、大丈夫?」

「あ?ちょっと見ない間に偉くなったなぁアイズ。お前がこの俺の心配か?」

「痩せ我慢してるリヴィの顔は知ってるつもり」

 

見抜かれた。ポーカーフェイスには自信があったんだが…伊達に長い付き合いではない。

 

やるね、兄妹。だがそれは俺もだぜ?

 

「お前こそ、今のリル・ラファーガはだいぶ無理したろ?あまり力を入れてると」

 

リヴィエールの言葉は遮られる。再び地中からモンスターが湧き出たからだ。

 

───新手!?

 

腰のカグツチを抜き放とうとして、刹那、躊躇する。腰に力を入れた際、ダメージを食らった腹部の筋肉がひきつり、激痛が奔った。

その刹那の間でアイズは新手に突貫した。このレベルが四体程度なら帯剣している彼女であれば、問題ない。

 

持っている剣がデュランダルであったなら。

 

そう、相手はあのリヴィエールの受け流しを持ってしても、カグツチでなければ破壊されていたと思える硬さと強さを持った怪物なのだ。

 

アイズの細剣が砕け散る。剣の耐久力がモンスターの硬さとアイズの技に耐え切れなかったのだ。

 

「アイズっ!!」

 

リヴィエールの怒声が響き渡る。エアリアルを発動させ、打撃を加えながら飛翔する。

 

「よせアイズ!エアリアルは使うな!こいつらは魔力に反応する!俺の痛覚遮断が終わるまで……ああ、くそっ!!」

 

途中でいらない事を言ってしまったと気づく。そんなことが分かればアイズは自分にタゲを集めるためにエアリアルを使うに決まってる。事実魔法を発現させながら距離を取りはじめた。自分に引きつけて距離を稼ごうという腹なのだろう。

 

引き止める事は諦め、目を閉じる。代わりに痛覚遮断の完遂に全速力を使う。リヴィエールの集中力を持ってすれば2秒で終わる作業だが、この2秒、戦場では充分に命取りになり兼ねない時間。

 

目を開いた時、アイズは食人花に取り囲まれていた。逃げ場はない。

 

【盾となれ、ゲオルギウスの鎧】

 

アイズの周囲が光のベールに包まれる。円形の障壁は見事にモンスターの牙を防いでいた。

 

───この魔法……リヴィ!

 

視線を向けるとこちらに向けて手をかざしている彼の姿が見えた。腹部の怪我がなければ斬殺して終わりだったのだが、アイズの動きの速さが災いした。今の彼の状態で駆けつけるには時間がかかる距離まで離れられてしまった。そのため行使された短文詠唱魔法によるガード。とあるダークエルフから盗んだ魔法である。

この強力なモンスターの攻撃を完全に防御しているのは流石と言えたが、この行動は怪我をしているリヴィエールにとっては自殺行為だった。モンスターの標的がリヴィエールに変わる。

一直線に向かってきた連中を何とか剣で対応するが一手遅れる。痛みは我慢できても人体の構造上、異常がある部分の動きはどうしても鈍くなる。

 

───このままだと、ヤバイな

 

ジリ貧なのは、明白。頼みの綱はガネーシャの救援だがそれまで俺の体が持つかどうか……

 

「ムグッ」

 

喉奥から熱いものが込み上がり、真っ赤な唾液が吐き出される。どうやら内臓がいくつかイかれてるらしい。

 

───あ、ヤバ

 

【盾となれ、ゲオルギウスの鎧】

 

もう剣で対抗するのは諦める。先ほどの守護魔法を今度は自分の周囲に展開する。

 

───だがコレも長くは持たないっ!

 

降り注ぐムチの嵐はまるで鉄球の雨。ガード越しでもその威力と硬度は伝わる。元々防御の戦いを得意とする戦士ではない。いずれ張った結界は破壊され、致命傷を貰う。

 

「こっち!お願いだから……こっちに来て……!!」

 

エアリアルを発動させ、食人花に攻撃を加えるアイズだが焼け石に水。アイズもヒューマンとしては魔力量は多い方だがリヴィエールとは比べ物にならない。この怪物はより強い魔力に吸い寄せられる。惹きつけるにはリヴィエールと同等かそれ以上の魔力量が必要となる。しかしそんな存在、オラリオどころか魔法大国すら含めてもリヴェリア以外に存在するかも怪しい。

 

───かといって魔力を緩めるわけにもいかない。ガネーシャの連中もまだ来る様子はない…………どうする………どうする!

 

この状態でウィン・フィンブルヴェトルをやるか?いや、流石に無理だ。戦いながら詠唱は出来ても、魔法を行使しながら詠唱なんて出来ない。なら結界を解除して剣で斬るか?ダメだ、身体が何ともなければ可能だろうが今の状態ではリスクが高すぎる。

 

───っ!?

 

光のベールにヒビが入った。もう限界が近い。

 

───クソッ、無茶でもやるか!

 

【終末の……「リヴィ君っ!!」

 

詠唱を始めようとしたその時、悲壮感が込められた悲鳴が耳朶を打つ。その声に覚えのあったリヴィエールは思わず視線を向けた。視界に入ったのは両手で口を多い、絶望の涙を浮かべるエイナ。

 

そしてもう一人……

 

あのバカこっちに来たのか、と一瞬考えたが、その思考はすぐに傍へと追いやられる。たった一つ、この状況を打開する無茶ではない手段が彼女の姿を見て浮かんだからだ。

 

確かにこのオラリオでハッキリと自分と同等以上の魔力量をもつ魔導士はリヴェリアしかいない。だがたった一人、僅かにだが自分に匹敵する魔法を扱える可能性がある例外の存在を思い出した。

 

ウィーシェの森の由緒正しきエルフ。血筋で言えば混ざりである俺などよりはるかに魔法の素養のある存在。俺とリヴェリアと同じ、複数の魔法を扱える異端児。

 

「レフィーヤぁあああああ!!」

 

希望の名は千の妖精(サウザンド・エルフ)といった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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