METAL GEAR SOLID MILLION MONKEYS 作:竜田揚げ丸
act8~協力~
フォックスと別れ、ハカセからの通信を拾った俺はニッポン上空の空中戦艦めがけて飛行機を飛ばしていた。
遡ること数時間前。ニッポンの空中戦艦はただで乗せてくれる訳がないため、どういう手筈で着艦するかを通信で話し合っていた。
「オタコン、戦艦に隙は無いのか?」
『えーと…』
通信の向こう側でカタカタとキーボードをたたく音がする。
恐らくは空中戦艦の隙を探しているのだろう。
『うーん…ちょっとキツイかなぁ…』
『確かに。私も映像などを確認したが近づくものには容赦がない。…ニッポンの報道陣はよくもまぁ奴らをテレビに収めようと思ったな。これがプロ根性というやつか』
大佐がニッポンの報道陣に対し感心していると、突如としてメイ・リンが大声を上げた。
おかげで俺も大佐もオタコンも、思わず無線機を耳元から離すことになった。
『あぁーっ!』
「…メイ・リン。頼むからもう少し音量を下げろ。耳が痛くてかなわん」
『全くだよ…。一体どうしたっていうんだい?』
『それはごめんなさい。でもちょっとこれ、見てみて!』
メイ・リンから映像ファイルが送られてきた。
そのファイルを開くと、そこには―――。
『スネーク、これ!』
「ああ。新種のピポトロンとかいう連中だ」
『それに、スペクターっていうピポサルまで…』
「だが…ピポトロンメタは居ないな…」
そこで、大佐は口を開いた。
『ひょっとすると、そのスペクターはピポトロンメタが化けた偽物かもしれんな』
『偽物…?確かにメタは変身能力を持っているようですけど…』
さらに、フォックスからも通信が割り込んでくる。
どうやら無事のようだ。
『俺も少しその話は聞いたが、スペクターはどこぞの島国でも目撃されている。
…そんな奴がなぜ空中戦艦にいるんだろうな』
「その話が本当ならばそちらが偽物の可能性もあるが…。
ん、待て。聞いたというのはどこからだ?」
そこで再び、通信の割り込みが発生する。
俺のよく知った声だった。
『私―――正確に言うと、私が一緒にいるサルゲッチャー達が捕らえたピポサルたちだな』
『ナスターシャ!無事でよかった!』
オタコンが叫ぶ。
彼女の名はナスターシャ・ロマネンコ。
シャドー・モセス事件のときにも俺のサポートをしてくれた、フリーの軍事評論家だ。
現在はフィランソロピーの一員となり、「シャドー・モセスの真実」という本を執筆・出版し、
組織の資金源としても活躍してくれている。
今日は休暇で彼女はタバコが切れたと外に出て行ったらしい。
「…さらりと聞き流したが、サルゲッチャー達といるのか?まさか、お前今…」
『ん?一応言っておくが、ニッポンじゃないぞ?』
『どういうこと?』
メイ・リンが聞きなおすと同時に、大佐はなにか納得したらしくそういうことかと呟いた。
ナスターシャはカチンと言う音を鳴らしライターで火をつけてタバコを吸っているらしく、ふぅーと息を吐き出した。
『ナスターシャ。君が共にいるサルゲッチャーたちというのは、サトルくんとサヤカちゃん、そしてヒカルくんだな?』
『あぁ。やはり知っていたか。今は彼らと―――!?』
「ナスターシャ!?」
『
謎の男の声が近くなり、逆にナスターシャの声が遠のく。
そのまま男は続ける。
『おっと、自己紹介がまだだったな。私はDr.トモウキ…かつて人間にして人類の脅威と名乗ったただの科学者!28歳独身、身長190センチ(頭髪込み)、体重65キロ(頭髪込み)、好きな言葉は『パーフェクト!』、そして知能指数は驚異の1300なのだ!
その男―――トモウキは早口でここまで一気にしゃべると、トモウキの声がどんどん遠のき、今度はナスターシャではない女性の声が近くなってきた。
『ごめんね、うちのトモウキ君が』
「…ちなみにお前は…」
『あ、私はアキエというわ。よろしく頼むわねぇ』
『二人とも…元気なのは何よりだが、もう少し自重をしたまえ。私はともかく、真面目に作戦会議をしていたスネークやエメリッヒ博士、それからメイ・リンが驚いているだろう。…すまないな、私の友人たちが』
『スネーク、彼らもハカセの知り合いさ。彼らの力を借りれば、さらに戦況は良くなるかもしれない』
この怒涛の通信を受け若干呆れてしまっていた。
俺は気を取り直して、ナスターシャに聞く。
「今回のピポソルジャー達や俺の装備はどう考えても普通の軍隊が使うものではないな。
これはどこかの特殊部隊が開発したものなのか?」
『お答えし―――』
通信の奥の方から「いいから退け!」というナスターシャの軽く怒った声がだんだん近くなっていった。どうもずっとトモウキとアキエに通信機を取られていたらしい。
『いや…このレベルの装備を作れる国は現在考えられない。それこそハカセやトモウキ、アキエのような連中でもない限りな』
ナスターシャがそう言った瞬間、通信機の奥の方で「カツラのおじさんもアキエおばさんも悪いことなんてしてない!」という少年の声が飛んできた。
そのあとに「いや、ハカセも擁護してやりなさいよ…」という少女の声と、「でもハカセなら開発しかねないよね。悪用するかは別として」という別の少年の声も聞こえた。
『…だ、そうだ』
「…随分慕われているな。アキエとかいうのはともかく、トモウキの方は昔ピポサルと組んでいたならもう少し警戒すべきじゃないのか」
『そう言うな、スネーク。少なくとも昔はいい奴だったのだぞ、昔は』
そういう大佐に対して、俺は思わず笑ってしまった。
サルゲッチャーというのは子供とはいえあまりにも素直だとつい思ってしまったのだ。
「まぁいい。それよりも、ニッポンの空中戦艦にどうやって乗り込むかだ」
『問題はそこよね。いくらスネークが潜入のプロとはいえ、あの戦艦には流石にセンサーぐらいはついているでしょうから、正面から突っ込むのは難しいんじゃないかしら』
『確かにね。むしろ拠点にセンサーもつけずに侵略行為をするのは考えづらいな。…ハッキングでも仕掛けてみようか?』
「やめておけオタコン。相手には
『スネークのいうとおりだな。エメリッヒ博士の案は私は賛同しかねる。むしろ端末内部から逆に情報やらを抜き取られる可能性もある』
『ふうむ…ではスネーク君の機体を絶対に戦艦に届かせるために囮を使ってみるのはどうだろう』
「
『けど、そのデコイはどうやって調達するの?』
『安心したまえ、お嬢さん』
トモウキが自信満々な様子で割り込んでくる。
奴はどうもこれならば侵入できると確信しているようだ。
『実は私はロボットを作成するのが趣味にして特技なんだが、ロボットを四機製造した。そのうち一号機―――まぁ機体名は「トモウキングセカンド」というんだが、私が乗り残りの三機に関しては完全に自動操縦させる。つまりは熱源を多くし、撹乱するということになる。さらに残りの三機についてはアキエ君と私で共同でAIを組み、あるコマンドで自壊させるようにした』
『なるほど…でもそれじゃスネークの機体がレーダーに引っかかるんじゃ?』
『それ以前に…一応一般人のトモウキ君がその「トモウキングセカンド」とやらに乗り込んでスネークのサポートをするのもおかしな話だろう』
大佐がそこについて危惧すると、トモウキは笑いつつもこう続ける。
『いえ、これも私の罪滅ぼしの一つですから。それにいざとなればゲットアミの転送装置を応用した脱出装置で脱出させてもらう。私が考えたプランとしては何かの方法で戦艦そのものに穴を開けてそこから突入するか、パワーアップパーツのパワーAを二基、もしくは三基その飛行機にセットして超高速で空中戦艦に突っ込むだろう。早い話が、スネークくんの乗っている機体を特攻させずに外部から穴をあけ機体をそのまま破棄するか、機体を特攻させて戦艦に機体を差し込み、そこから突入させるかの違いだ』
『もし後者の作戦を選択するんだったら、ステルス迷彩も飛行機に積んでいこう。レーダーに映っても多少はなんとかなるんじゃないかな』
オタコンがそこまで続けると、ナスターシャも口をはさんでくる。
作戦について、彼女なりに考察していたらしい。
『確かにいい案かもしれないが、加速して突っ込むというのはスネークに死ねと言っているものだぞ』
「では外部から穴をあける、という方法を用いるんだな?しかし、外部から穴を開けるというのはどうやって行うつもりだ?戦艦というからには、外部の装甲は堅いはずだ。そう簡単には穴は開けられないだろう。そのあたりは策が何かあるのか?」
『トモウキングセカンドにランチャーを搭載しているんだが、それを使ってある一定部分を攻撃する。所謂力業だ』
「フン、隠密行動もあったものじゃないな」
とりあえず皮肉を口にしておくが、先ほど空中戦艦を落としてきたのでよく考えれば隠密行動もクソもあったものではなかった。
というか薄々考えていたがわざわざこの機体で空中戦艦に体当たりをする必要ないのではないかと俺は思い始める。
そもそもハルカとやらとハカセ達がすでに空中戦艦に乗り込んでいる。
どうやって乗り込んだかは知らないが、侵入者がいる時点で程度はわからないがあの戦艦の内部はもう既に混乱が起き始めているはずだ。
ならば、彼らの身の安全を考えてもやはり戦艦に穴をあけるとか、特攻とかは避けたほうがいいだろう。
その旨を話すと、全員がある程度の納得をしてくれた。
『そうだったね…どうやって突入するかだけを考えすぎてた』
『ん?ハカセ達は今その空中戦艦にいるのかい?』
『そういえばトモウキ君やナスターシャには状況説明がまだだったな』
『ああ。私たちからすれば「如何にニッポンの空中戦艦に突入するか」という話で終わっている。その前後の情報を聞き忘れていたな』
そうナスターシャが言うと大佐は状況説明をなるべく簡潔に説明した。
説明が終わった後、後から通信に割り込んできた二人はなぜこうなったかについて納得をしたらしい。
『なるほどな…それでスネークがトモウキの作戦を却下したのか』
『ふうむ…つまり彼らはすでに戦艦内部に侵入しているというわけだ』
『うむ。その通りだ』
『けど、どうするの?穴をあけるっていうのは没になっちゃったんでしょ?』
『うん。けど、さっきからちょっと考えてみたんだ』
「何か思いついたのか?」
『その前に、これを見てほしい』
そう言って端末に送られてきたのは映像。
新種のピポトロン達と、スペクターと呼ばれる存在が映っている映像と空中戦艦が動く映像だった。
『ふむ…これがどうしたんだい、オタコン君』
『よく見てください。空中戦艦がこのスピードで動いているにも関わらず、このデッキみたいなところでもピポトロンやスペクターの毛はあまりにも動いていないんです』
「なるほどな。その位置にはあまり風が来ていない。そしてデッキかどうかはわからんが、そこにそいつらがいるということはそこから内部に入れる通路があるということだな?」
『その通りさ、スネーク!』
『だがその位置までどうやって移動するんだ、という話にもなってくるぞ。相手は全力で妨害してくるはずだ』
『なるほど…そこで私というラグジュアリィな囮の出番というわけだね、オタコン君』
『…ラグジュアリィかどうかは誰もわかんないわよ?』
メイ・リンがそう言うと通信から「それトモウキさんの口癖みたいなものだから…」と声が飛んできた。
恐らく向こうのサルゲッチャーの声だろう。口癖についてはよくわからん口癖だが彼らが言うならまぁそうなんだろう。
「…それで、どうやってそのデッキのようなところに行くんだ?それからそのデッキは艦尾側か艦首側かどっちだ?」
『デッキは艦首側にあるんだけど…スネーク、そっちにパラシュートとチップはあるかい?』
「ん?ああ、パラシュートはある。チップは…三枚だ」
『よし。よく聞いてくれ、スネーク。作戦としてはこれでどうだろう』
オタコンが言うにはこういうことらしい。
チップ三枚でジェットデッキ―――フライングデッキの改造品だそうだ―――を作成、それに乗り移る。
そのジェットデッキにはパワーAを何基かとステルス迷彩を搭載してある。
そしてトモウキがなるべく艦首側に注意がいかないように陽動を行い、こちらはステルス迷彩を起動したジェットデッキでなるべく迅速にデッキまで移動を行い、さらにそこからジェットデッキ下部のハッチで乗り捨て戦艦内部に突入、という手段になった。
この通信のあと、映像にあったデッキがどのあたりかが記されたデータが送られてきた。
ちなみにこのデータは俺たちが脱出した空中戦艦から見つけたものらしい。
そして現在。空中戦艦のその巨体がどんどん見えてくる。
既にジェットデッキは制作され、機体内部に置かれている。
俺は機体を自動操縦にし、すでにジェットデッキに乗り込んでいる。仰向けの体制だ。
『そろそろ時間だが、準備はいいかね?』
「ああ、もちろんだ。だがこの作戦、改めて考えるとかなり危ないな。誰かに裏切られたりでもしたらこの作戦はおしまいだからな」
『…まさかここまで信用がないとは思わなかったよ。だが安心したまえ!サトル君やサヤカ君、ヒカル君の前で彼らの信用を裏切る行為はしないさ!』
「だといいがな…」
『スネーク、いい加減彼を信用してやったらどうだ?私もいくらなんでもピポサルに協力したのはどうかと思うが、それで敗北したのにまさかこの期に及んでピポサルたちに協力はしないだろう』
『…一応ピポサルたちに協力したのには事情があるし、愚かな行為だと思っているのだがね…』
「なにか言ったか?」
『まさか、なにも言っていないとも―――そろそろ時間だ、私は発進しよう。ラグジュアリィな囮役は任せたまえ!いざ!トモウキングセカンドwithサーヴァントモウキーズ、テイクオフ・アンド・トランスファー!!』
トモウキがそういうとともに、空中戦艦の前に派手なカラーリングの機体が四機登場した。
そのカラーリングはとても目立つ。普段の潜入任務ならば絶対にお引き取り願いたいカラーだが、こと今回のような陽動においては非常に歓迎するカラーだ。
『さあ、私に注目してもらおう!ミッサーイル!ミッサーイル!』
ミサイルミサイル言いながらミサイルを撃ちまくるトモウキングとサーヴァントモウキだが、その動きはふざけているとしか思えないトモウキの発言とは違いとんでもなく速い。
もちろん空中戦艦もただ黙って攻撃を受けているわけではない。
機銃を連射したり、ミサイルを撃ったり、さらにはゴリアックまで出撃させていた。
しかし不意に、サーヴァントモウキーズが高速で動き始め、そしてある位置で止まった。
そして――――。
『行くぞサーヴァントモウキーズ!ラグジュアリィ・ビーム!フォーメーションスクエア!』
いきなりレーザーを放った。
そのレーザーはミサイルはおろか、ゴリアックまでもあっさり破壊し砲門を溶かしてゆく。
しかもご丁寧に一つづつ砲門を潰していく。
その光景に思わず唖然とし、さすがにIQ1300は伊達ではないのかと感心していると、
『ふむ…スネーク君!』
「…どうした?」
『すまないが、エネルギー出力を抑えてラグジュアリィ・ビームを撃っていたんだが、砲門が多く潰しきれなかった。そしてここからが本題だがもうエネルギーが切れそうだ。これでトモウキングセカンドwithサーヴァントモウキーズは空中を高速で漂うことしかできなくなってしまった。ミサイルも撃ちすぎたし私にはもうどうしようもないのであとは君に任せよう。グッドラック!』
この言葉だ。正直言って先ほど少し感心していたのを後悔したくなった。
とはいえ砲門をかなり潰してくれたのはありがたい。
『スネーク、いまがチャンスだ。多分今を逃したらどうしようもない。ジェットデッキで突入させる』
その言葉に同意し、改めて覚悟を決めた。
パラシュートで降下するタイミングはオタコンが通信により口頭で指示する手はずだ。
「準備完了だ。いつでも行ける」
『それじゃあ、発進させるよ!』
ゴォォォという音を鳴らし、とんでもない加速を行いジェットデッキが先ほどまで俺が乗っていた機体をぶち割って飛んでいく。
すさまじいGだが、これくらいには耐えきれる。
『スネーク、ハッチ開放ポイントまで20秒だ!』
オタコンが叫ぶ。
更にカウントダウンが始まった。
『開放ポイントまであと10…9…8…7…6…5…4…3…2…1、ハッチ開放だ!』
突如としてハッチが開く。それからほんの数秒待って俺はパラシュートを開く。
わずかに空中を舞い、そしてぎりぎりデッキまでたどり着く。
パラシュートを外し、デッキの上をゴロリと転がる。
俺は仲間たちに連絡を取った。
「こちらスネーク…デッキまで到着。これより新たなる任務を開始する」
俺はそう通信を入れ、そして手近にあった扉を開いた。
遅くなりました最新話にして新章第一話です。
突入のアレは小難しく書いてありますが、MGS3のスネークイーター作戦のドローンの奴をイメージしていただけるとわかりやすいかと。
なおこの突入、大分迷った末に書き上げた展開なので悪い点などがあっても、
「あれ、ここおかしいぞHAHAHA」ぐらいの感覚で見ていただけると嬉しいです。
さて、最後に。
遅くなって申し訳ありませんでした。