METAL GEAR SOLID MILLION MONKEYS 作:竜田揚げ丸
今回も駄文のくせやたら長いです。
ご了承ください。
トモウキの協力を得て、俺はデッキから戦艦内部へと潜入を果たした訳だが―――。
「オタコン。少々妙なことになっている」
『どうしたんだい、スネーク』
「あぁ。トモウキの陽動で、派手に侵入してきたんだ。侵入は悟られているだろう」
『それはそうだろうね。絶対にレーダーに映らなかったとは言えないし、ジェットデッキを戦艦の壁面に近づけるだけ近づけたんだ。気づかないほうがどうかしてる』
「確かにな。だが、隔壁一つ下りてない。まさか気づいていない、なんてことはないだろうが…」
俺もオタコンも、恐らくこの無線を傍受している者全員が薄々こう思っている。
―――何かしらの罠がある、と。
『気を付けるんだ、スネーク。どこから敵が出てくるかわからないぞ。常に警戒を怠ってはいけない』
「当たり前だ。警備が薄いように見える場所ほど何があるかわかったもんじゃない」
『長年の潜入任務をこなしてきただけはあるな、スネーク』
「おかげさまでな」
そうは言いつつも俺はマシンガンを下ろさず警戒をし続け、監視カメラに映らないように進んでいく。
時にはカバーアクションをしながら、周りを索敵する。
が、それでもピポサル一匹見つからない。もっとも基本的にはピポサルたちはワープを行ってくるので見つからないのも無理はないともいえるが。
しかし、進入が順調だったのもそこまでで、最初に墜とした戦艦内部で見つけた内面図ではブリッジにつながる通路が隔壁で塞がれている。
「こちらスネーク。ブリッジにつながる通路が隔壁に塞がれている。破壊は無理そうだ」
『だったら迂回するしかない。けど…』
「どうした?」
『やっぱりこの状況は妙だと思わないかい?最重要区画を隔壁だけで侵入を防ぐなんて…』
ここでナスターシャが通信に割り込んでくる。
『案外、ニッポンのサルゲッチャー達への対応に追われているだけなんじゃないのか?』
「確かに、考えられなくもないが…」
メイ・リンと大佐もさらに通信に入ってくる。
『スネーク、気をつけろ。誘導されている可能性がある。今まで以上に警戒をして進むんだ』
「了解だ」
そうしてブリッジへの通路から離れ、別のルートを探し始める。
すると進んでいくうちにどんどんピポソルジャー達による警備の光景が見えてきた…のだが、忙しなくピポソルジャー達が動いているのを目撃、その様子はさながら何かを警戒しているようだった。
そのうち一匹をネットショットやレーザーガンで誘導を行い、メカボーで殴って武装解除したうえでピポサルにレーザーガンを突き付けると、今の戦艦内部の状況をしゃべり始めた。
仮にオセロットが拷問を行ったらこいつは一分どころか三十秒持たないだろう、という考えがふと頭をよぎっていった。
「キ、キキィ!ウキキッ!(き、貴様どこから!?侵入者は二チームと一人じゃなかったのか!?)」
「生憎だが、俺はさっき入ってきたばかりだ。ところで…一人で行動している侵入者、そいつはこいつのことか?もしもこいつなら最後に目撃された場所も教えろ」
俺はハカセからオタコン経由で送られてきた「ハルカ」の映像をこの哀れなピポサルにみせてやった。
「キィ、キキッ!キィー!(た、多分、こいつだ…!さ、最後に報告が上がったのは…第二重機格納庫だ…っ!)」
それだけわかれば十分だ。破壊した装備からチップを回収し、ピポサルはゲッチュする。
重機格納庫…となれば、いくらサルゲッチャーでも一人では突破は難しいだろう。
「こちらスネーク…オタコン、ハルカに関する情報を手に入れた」
『よし。一体どんな情報を手に入れたんだ?』
「最後に目撃された場所だ。第二重機格納庫だと、先ほどのピポサルから聞き出した」
『第二重機格納庫だって!?あんな危ない場所にいたのか!?』
「そうだな。あんなところまで一人で行くとはいい腕前だ」
俺は再びレーザーガンを握りなおす。
他にもいる警備のピポサルたちを撃ち装備を破壊し、手早くゲッチュしていく。
そうやってエレベーターまでたどり着き、エレベーターに乗り込む。
敵の本拠地だけあって、何事もなく先を通してくれるわけもなく、ピポサルたちがワープを行い襲いかかってきた。
俺はやや離れているピポサル達に対してはランチャーを、中距離まで近づいたピポサル連中にはマシンガンやレーザーガン、ショットガンなどを使用し撃破とゲッチュを行っていく。
たまに至近距離に近づいたピポサルには容赦なくメカボーを叩き込む等、ありとあらゆる手段を使っていくと最初は数で優勢だったピポサル軍団は徐々に姿を消していき、最終的には俺一人に制圧された。
そうしてエレベーターでの戦闘を終え、更に先に進んでいくと、戦闘音が先から聞こえてきた。
何が起こっているかを確認しようとすると、
「スピンショット!」
という声が聞こえたので物陰に隠れると、凄まじい音とピポサルたちの悲鳴が響いた。
何が起こったのかはわからないが、物陰に隠れた俺の横を数本の矢が飛んで行ったのは確認できた。
音が落ち着いたのを確認して物陰から出ると、そこには恐らく鎧であっただろう数々の金属片、倒れたピポサルたちと部屋の中心に立っている弓を携えている少女。
しかし、もっとも気にかかるのはおびただしい数の矢が横一列に部屋を一周しているしていること。
一体なにをどうやったらこうなるのか、俺にはよくわからなかった。
ここまでやったであろう少女に見覚えがあり、俺は声をかける。
「お前がハルカか?」
「ッ!?あなたは…何者ですか?」
俺のことを不審に思っている、ということをまるで隠そうともしない。それどころか少しでも怪しい行動をとればその手に持っている弓を引いて俺を射抜こうとしている。
なるほど肝は据わっていると思わず妙な納得をしたのだが、今の俺の任務は対象に不信感を抱かせることではではない。
『スネーク…いくらなんでも不審すぎるよ…そんな声のかけ方したら誰だって警戒するさ。今からでも遅くない、彼女の警戒を解くんだ』
「わかっているさ。対象に怪しさを抱かせたままだとこの任務は成功しないからな」
通信を入れてくるオタコンに対して俺はそう呟き、通信をそのままに改めてハルカに向き直る。
「自己紹介がまだだったな。俺はスネーク。一応お前を守ることが俺の任務だ」
「…任務…?ということは…軍人さん…?でもどうして私を…?」
「言っておくが、俺は軍人じゃない。そうだな…元軍人、という表現が一番しっくりくるな。
それで何故お前を俺が守らなければいけないのか、だったな。お前はハカセという男と知り合いだな?」
「そう…ですね…。ハイテクオリンピアで知り合いました。お父さんの大学の先輩だと」
「そのハカセからの依頼でな」
そんな話をするとある程度は俺を信用してくれたらしく、弓の弦から手を離した。
こちら側からもハルカに対し一応何個か言っておくこと、聞いておくことがある。
「…あまり効果がないと思うが、一応言っておくぞ。早くこんな物騒なところから離れて親父さん、あるいは母親と一緒に居たほうがいいだろう。なんでこんな危ないところに首を突っ込んできた?」
「お母さん、私が今より小さいころに死んじゃって。
今はたまたまお父さんと二人で暮らしてて、今日お父さんにお弁当を届けに行ったんです。そうしたらお父さんは居なくて…。
しばらくしたら空中戦艦の騒ぎと同時に、色々あって…。ひょっとしたらここにお父さんの行方に関わる「何か」があると思ったの。オリンピアの時みたいに…」
「オリンピアの時?あれは強力なウイルスによって一時的にVR空間が乗っ取られた、という話だったはずだが…」
「それは表向きの話。本当は何者かが手始めにVR空間を完全に乗っ取り、そこからさらに現実世界をも手中に収めようとしたという話なの」
「…オタコン。どう思う?」
話を聞いていたオタコンはうーんとうなってたが、やがてこう言い放つ。
『いきなり信じろっていうのもちょっと難しいけど…ただ、一概に否定するのも難しいかな。
っていうのも実際ハイテクオリンピアが行われた時間、実際にVR空間に居た人たちは何もしていないのにVR空間からはじき出されたとか空間の色が反転したとか、色んな「異常」を訴えていたみたいだから本当にただのウイルスかもしれないし、ハルカちゃんが言った通り管理者権限が掌握されたのかもしれない。同じようにオリンピアに参加したハカセに聞けばなにかわかるかも』
そこで沈黙を保っていたうちの一人、大佐が口を開いた。
『あまり口外してはならないと言われていたので黙っていたが…。オリンピア暴走の際、私はオリンピア会場に居たしハカセにも後々詳細を聞かせてもらった。
エメリッヒ博士の言う通り、オリンピアの世界は色が反転し不気味なモンスターまででる始末だった。
ハカセから聞いた話だとハルカ君やサルゲッチャー達、そしてピポサルたちと共に乗っ取られかけたオリンピアの管理者権限のあるコアを停止させ、コアのあるエリアから命からがら脱出したと聞いた。そうだろう、ハルカ君』
「はい。あの時聞いた声は、確かに男のものです。あの声は忘れたくても忘れられません」
『ということだ。オリンピアの事件は実際にあったことだ。私が保証しよう』
「…わかった。大佐がそこまで言うんだったら、俺はその話を信用しよう」
『スネーク…。ありがとう』
『いいのかい?』
「ああ。大佐が意味や理由なく嘘をつく人間じゃない。それにこの場において大佐が嘘をつく必要がない」
『わかった。スネークが言うなら信じるよ』
大佐のお墨付きもあり、俺たちはハイテクオリンピアの事件は確かに何者かが起こした壮大な事件であるということについて納得をした。
それにしても、父親が行方不明、か…。
「ふん。父親を探しにこんなところまで来るとはな。仲が良くて何よりだ」
皮肉混じりにこんなことを吐き捨てた。
と、同時に今の一連の流れで気になったことがあった。
「色々あったと言っていたな。一体何があった?」
「あ…。それは…」
ハルカが何かを言おうとした瞬間、彼女の顔が険しくなる。
俺の後ろを見ているようなので振り返ると、黒を基調に一部の体色が違うピポサル———―向こうの空中戦艦の資料で見たピポトロンと呼ばれる三匹のピポサルが立っていたのだった。
「ピポトロン…‼」
『ピポトロンだと!?スネーク、気を付けろ!奴らは戦闘になると容赦がないうえ、戦闘能力も凄まじいぞ!』
「わかっているが…まだ向こうには戦闘の意思はなさそうだ。少し様子を見させてもらう」
とは言いつつも、いつでも銃やメカボーを抜けるようにしておく。
奴らは俺の存在を認めると、なにやら話し合いを始めた。
聞き耳を立てると、どうにも奴らの俺に対する対処のようだ。
意訳すると、青い体色のピポトロンが、
「オイ、なんかもう一人人間がいるぞ、どうするレッド」
と言うと、すぐさま黄色が、
「どうする?消すか?」
とさらに聞き、赤色は腕を組みながら少し考え、
「やるぞ」
と言うと、こちらに向けて青色が突っ込んできた。
向こうの戦艦のデータに書かれていたので辛うじてメカボーを抜いて対応できたものの、想像以上に早く少し体制を崩してしまった。
当然ながらその隙を奴らは見逃さずに、黄色のピポトロンが黄色と黒の混じったエネルギー弾を打ち出してくる。
メカボーにつけたリフレク機能に賭けるしかない。そう思った瞬間だった。
「サンシャイン・アロー!」
ピンク色の矢が奴らの撃ったエネルギー弾を迎撃、互いのエネルギーが形を保てず霧散する。
青色にとっては予想外の出来事だったのか、少し動きが鈍ったように見えた。
この距離ならばと俺はショットガンを抜き青色に向けて連射する。
二、三発は当たったのだが、残りは避けられてしまった。
追撃しようとしたが、今度は赤色に接近してきたのを確認し今度はマシンガンを引き抜き弾丸をばらまいて一時的に距離を取り、Hランチャーで狙いをつけておく。
距離を取った先で、ハルカは先ほどの話をつづけた。
「…あいつらに誘導される形で…ここに来ました」
『なるほど。奴らもオリンピアの参加者、しかも黒幕に近い立場だったから何かあると感じたんだな?』
「…リスクの高い道を選んできたな。毎度この流れだったのか?」
「…どちらかというと…私が仕掛けたときの方が多かったような…」
「好戦的な奴だ」
とそんな話をしていると、赤色が接近してくる。
しかし、そんな中でも俺とハルカは冷静に作戦を固める。
「突っ込んでくる赤と追撃してくるだろう青は俺が何とかするが、お前には遠くにいる黄色を頼んでいいか。狙撃によさそうなものを持っていることだしな」
「わかりました。思いっきり行きます」
という会話が終わった瞬間、赤色は俺に向けて鎖を使いリーチを伸ばした斬撃武器で襲い掛かってくる。
それを二人そろってダッシュブーツで回避しその勢いのまま狙いをつけたランチャーをぶち込み、ランチャー本体を赤色に向けて投げる。
更に青色が突っ込んでくるのを確認しすれ違いざまにメカボーで殴る。
その間に、ハルカはダッシュブーツの勢いのまま数本矢をつがえて叫ぶ。
「ホーミング・アロー!」
矢が黄色を追っていき、ハルカ自身も追撃に向かっていった。
俺は青と赤、両方の相手を行うことになった。
赤色が妙なポーズをしたかと思うと床から紫色の棘が生えてきた。
ただ、よく見ると生えてくる場所の床は分かりやすいので回避は容易く、これを避けたあとには赤、青ともに逃げていったのだった。
赤、青、黄色が揃い、俺のことを利用させてもらうと言い残し、去っていった。
「逃げられたか。…怪我はなかったか?」
「はい…なんとか。それよりスネークさんは大丈夫ですか」
「俺なら大丈夫だ。お前の援護もあったことだしな」
そういうと、ハルカは俺にこう言ってきたのだった。
「疑ってすいませんでした。スネークさんのこと今なら信じられそうです」
「身体を張った価値はあったということか。だがな」
この先に進めばこういう危険はたくさんあるだろうし、家にでも戻っていろ。
そう言おうとしていた俺に「でも」とハルカは続けた。
「私は、お父さんに関する情報を知りたいから。
…やっぱりまだ、家には戻れません」
「…強情な奴め。怪我しても知らんぞ」
『うーん、やっばりスネークが守ってやるしかないよ。
ハカセには守れとしか言われてないんだし、本人にその気がないならやっぱり保護させるっていうのは難しいと思うよ』
『私からもお願いする。彼女を守って先に進めば、この件やオリンピアの件の両方に繋がる何かが見つかっていくような気がしてならん。君の負担を多くする羽目にはなってしまうが…』
俺ははぁとため息を漏らし渋々と言った。
「わかった。だがあまり前には出るな」
そういう風に釘をさし、最大の譲歩の言葉を口にしたのだった。
毎度の如く遅れて申し訳ないです。
一年に一度くらいのペースで駄文ですが、応援していただけると作者は泣いて喜びます。
さて。新年あけましておめでとうございます。
今年の豊富はなるべく早く最新話を投稿し一年に2話くらいを書き上げることです。
最後までお付き合いのほどよろしくお願いします。