METAL GEAR SOLID MILLION MONKEYS 作:竜田揚げ丸
拷問が一旦終わり独房に放り込まれた俺は、通信機も取り上げられ装備も奪われていた。
だが諦めるわけにはいかない。メタルギアやメサルギアがなかったといっても、この空中戦艦には
そいつを止めるためにはまずはこの独房から脱出しなければならない。
独房の外のドアが開く音がする。
脱獄も予期している可能性もある。しかしこの機を逃せば黙って死ぬしか道がなくなる。
「ウキ。ウキキキッ(時間だ。出ろ)」
体が思うように動かない。入口から入ってきたピポサルを蹴り飛ばし、外に出る。
走ろうと思い、姿勢を作る。
が、しかし。
「自分から出て来るとは殊勝な心掛けだな、スネーク」
オセロットが兵を連れそこにはいた。
「オセロット・・なぜここに」
「シャドー・モセスの反省点の1つだ。―――囲め」
ピポサルたちが俺を囲む。まさかオセロット自身が現れるとは思ってはいなかった。
オセロットの声に合わせ銃口がすべてこちらを向く。
しかし、オセロット自身はリボルバーをこちらに向けていなかった。
「まさかまだ脱獄を予期していないと思っていたのか?」
「クソッ…」
今下手に動けば死ぬ。だからと言ってこの状況を脱する方法がない。
相手は数十のピポサルに一人の人間だ。
拷問の影響、装備がとられたこともあり戦おうにも戦えない。
「まさかBIGBOSSに習ったやり方でこの状況を脱せるとでも?だとしたらやめておけ」
「俺は奴の技は使わん」
「そうか、だが一応言っておく。俺のほうが上だ」
実際拷問の影響でやりあえば負ける。
思考を巡らせる俺とは違い、オセロットは余裕の笑みを浮かべる。
そのとき。
「ウキ、ウキキ(おいおい、だいぶ鈍ったんじゃないかスネーク?)」
誰かの声が聞こえた。この場にはピポサルが大量にいる。
その中の一匹かと最初は思った。
だが、それとは違うことに気づかされた。
ゴトッという鈍い音をたて、一瞬なにかの青い軌跡が見えたと思った刹那。
「キキィィィィィッ!」
俺のちょうど目の前のピポサルの一陣が吹き飛んだ。
オセロットが珍しく狼狽する。
「い、いったい何が…!?」
その間も青い軌跡は踊り、ピポサルたちをなぎ倒してゆく。
「ウキ、ウキキキッ(さあ、俺をもっと楽しませてくれ!)」
その一言と同時に、ピポサル部隊の壊滅はさらに加速してゆく。
青い軌跡をよく見ると、奴らの装備を一瞬にして破壊し、そこからゲッチュを行っているようだった。
「ウキ、ウキキッ(スネークッ!突っ立って見ている場合か!?)」
その言い方はまるで俺を知っているようだった。
俺もこいつの正体はほぼわかっているが、あえて聞いておくことがある。
奴の体は今も透明で、どこにいるかは目視ではわからない。
だが青い軌跡と兵士たちがどこを舞っているかでおおよその位置はわかり、その位置に質問を投げかける。
「お前は何者だ」
そうすると、奴は突如として機械のような、ノイズが少し走った懐かしい声でこう言ってきた。
「『ファンの一人だよ』」
流暢な人語に思わず笑みがこぼれる。
やはりこいつは…。
「くそっ…引き上げるぞ!」
オセロットが退却指令を出す。
それを聞いて一気にピポサルたちが扉へ向かう。
しかし、ピポサルたちが一斉に扉へ向かったため扉のあたりは詰まっていた。
それを見て、〈忍者〉が再び動き出した気配がした。
「ちいっ!しつこい奴だ!」
オセロットがそう叫ぶ間も忍者による青い軌跡のゲッチュは続く。
今やオセロットの連れてきたピポサルの半分以上がゲッチュされていて、形勢は逆転した。
その間に奴が落とした鈍い音がしたケースを開くと、そこには奪われた俺の装備が入っていた。
それを確認すると同時にドアが開いた。オセロットがドアにたどり着いたらしい。
また、入れ替わりにレイブンが通路に入ってきた。
「ウキ、ウキキっ(背中は任せろ、
「レイブン…すまないな」
「ウキ、ウキキ(なに、俺も今では自然にできたものではなくなった。だからこそ自然にできたお前に任せるんだ)」
「・・・」
オセロットは黙って扉を抜けていった。
後には大量の鎧の破片とチップと、レイブンに忍者、そして俺が残っていた。
「ウキ、ウキキッ(さぁ、来い
「ウキ、ウキキキっ(やれるな、スネーク?)」
「…もちろんだ」
奴は連射式Bランチャーを構え、忍者はカタナのようなメカボーを構える。
「ウキ、キキィィッ(さあ、行くぞ!)」
奴が叫び、Bランチャーが火を噴く。
ここには障害物がほぼない。
奴にとって拷問の影響で動きが少し鈍い俺はさぞ狙いやすい的だろう。
相手が
「ウキッ、キィイイ!」
忍者が俺の前に現れたのを気配で感じ取る。
放たれた砲弾を忍者がカタナで切り裂く。
砲弾を切り裂きながら俺たちは少しずつ前進する。
「『今だ、撃ち込め!』」
合成音声の指示を受け、Hランチャーを構え、レイブンをロックして砲弾を放った。
砲弾を浴び、一瞬砲弾の連射が止まる。
「キィ…キキィィィィ!(まだまだ、これからだ!)」
しかし、忍者はその瞬間を逃さずに切りかかった。
切りかかったのを確認し、二発ほどレーザーガンによる追撃を行った。
「ウ・・キキィ…(グッ…これしきで膝をつくと思っていたのかぁ!)」
まだ奴には起き上がる気力はあったようだ。
しかし、その間に俺もダッシュブーツにより奴のすぐ近くに体を滑らせ、メカボーを振りぬいた。
「ウ、ウキキ(フ、フフフ…さすがだな、蛇よ…)」
奴の砲台はところどころへこみ、もはや使い物にならないのは明確だった。
俺はゲットアミを構える。
「ウキぃ…キキキ…(すまないが…一つだけ、最後にいいか?)」
「…なんだ?」
「ウキ・・・・ウキキっ・・・ウキキキキッ(俺の…頭に乗っているこのヘルメットを…破壊してくれないか)」
「ウキィ(なぜだ?それを壊せばお前は…)」
沈黙が広がった。
やがてレイブンが話し出した。
しかし、それは奴が健在だったころと何も変わらぬ声だった。
「うき、ウキキ(俺は…自然に還り損ねた。死した魂も鴉たちとともにあるはずだった。ここにいるのは俺の本意ではない)」
かつてシャドー・モセスでレイブンはこういった。
『俺の骸は自然に還る』
『お前もボスも、自然に創られた存在ではない』
ピポヘルはデータを入力しただけでその人物の思考・能力を再現できる。
ならば、今ここにピポサルとして、死者をここに呼び寄せるこれは自然が創りだすものではない。
まさに
それは、傍らに立つこの〈忍者〉にも同じことが言えるはずだ。
「人に創られた俺だからこそ…お前を今度こそ殺せというのか?」
「ウキ…ウキキっ(人工的に創られたものの最期ならば…自然に還るのはおかしな話だとは思わないか?)」
人工的に創られた俺には、否定はできなかった。
黙っている〈忍者〉。俺の判断に任せる、ということだろうか。
かと思えば、忍者が口を開く。
「『…わかった。だが、お前の今の肉体は殺さない。お前の
「そんなことが…できるのか?」
すると通信機が振動し、オタコンが話に入ってきた。
『前にピポ・スネークは君の戦闘データをピポヘルにインプットしたものだといったよね?』
「…ああ。結果的にあれはリキッドだったわけだが…」
そこで俺は気づく。
まさか、オタコンが言いたいのは…
「ピポヘルに入っているレイブンのデータを消せば…こいつはレイブンではなくなるということか?」
『うん。多少データは残るかもしれないけど、それだって仕草が微妙にそれっぽい程度になるはずだよ。いつもと変わらずゲッチュして、こっちに送ってきてくれ。僕が元のピポサルに戻してみせるよ』
俺はオタコンが説明したことを丸々レイブン(と〈忍者〉)に説明した。
するとレイブンはこう言った。
「ウキ、ウキキっ(任せてもいいか…?俺にはもう戦う力も意志もなくなってしまったしな。死者は大人しく去るのみ、だ)」
「…わかった。そろそろ転送するぞ」
「ウキぃ(ああ。構わん)」
そこで転送しようとして、レイブンはこう言った。
「ウキ…ウキキキっ‼(リキッドとFOXHOUNDを止めてくれ。死者は干渉してはいけない。それは自然の摂理に逆らうことだ)」
「わかった。必ず止める。―――ゲッチュ」
俺がそういうと、レイブンは満足そうに微笑み、転送されていった。
レイブンは倒したとはいえ、まだ任務は終わっていない。
が、その前に確認することがある。
「お前は、本当に忍者…グレイ・フォックスなのか?」
「『ああ。お前をサポートするためにあの世から帰ってきた』」
忍者――フォックスは冗談めかして笑うと、急に真顔になり、俺に質問してきた。
「『ナオミに…本当のことは伝えてくれたか?』」
「…それは」
忘れもしない。シャドー・モセスでフォックスが言ったことを。
フォックスの死に様も。
『お前から伝えてくれ…本当の仇は、この俺だと』
『追いつめられた狐はジャッカルよりも凶暴だ!』
『お前の前で…これで本当に死ねる…。ザンジバーランドの後俺は戦いを取り上げられた…。生きる実感のない…ただ死んでいないだけの無意味な生。長かった…それが今、ようやく終わる』
『スネーク…俺たちは、政府や誰かの道具じゃない…。戦うことでしか…自分を表現できなかったが…いつも自分の意志で戦ってきた』
『スネーク…さらばだ』
俺はそのあとREXを破壊し、リキッドとの激戦を制し、メリルとともに脱出した。
リキッドはFOXDIEにより死亡したが…今、奴の亡霊が再び世界を脅かしている。
「『スネーク。…すまないな、お前に気を遣わせてしまって』」
「…あれで本当によかったのか、俺は今でも悩むことがある」
「『…お前が信じなければ、だれがその選択を信じるんだ?俺は…俺も死者の仲間入りをした。お前の選択が正しいか正しくないかなんて、結局はデータの塊の今の俺が判断できるものじゃない』」
「…それもそうだな」
「『フン…ところで今は、ナオミは何を?』」
「ナオミは今、刑務所だ」
「『・・・そうか』」
フォックスはどこか悲しげな笑みを一瞬天井に向けて浮かべたかと思うと、俺に向き直ってきた。
「『今はナオミのことだけじゃないな。言っておくことが何個かある。一つは…リキッドがアメリカに向けた声明を出したらしい』」
「何…?」
話を聞いていたらしいオタコンが声を上げてきた。
少し慌てたような、余裕のない声を。
『あ、ああそうだスネーク。確かにリキッドがアメリカに向けてメッセージを向けてきたらしい』
「リキッドは何を?」
今度はメイ・リンだ。焦りを感じとれる声だった。
『それがねスネーク。リキッドは自分の…シャドーモセスでFOXDIEによって死亡した自分の遺体を渡せっていうの‼』
「自分の死体を…?」
今更リキッドが自分の身体を要求するとは…。
なにをしでかすつもりだ…。
「『スネーク。ここで話し合っていても始まらない。早くリキッドを止めよう』」
ここで悪いニュースが入ってきた。
よりにもよってこのタイミングで。
『それが…もうリキッドの遺体を運んでるどころか、もう空中戦艦に積まれたらしいんだよ…』
「なんだと!?抗うそぶりも見せずにか!?」
「『どうも迷っている暇はないな』」
「まだFOXHOUNDもオセロットを含めて5人も残っている。早めに行かなければ…」
ここで再び驚かされることとなった。
ステルス迷彩の効力の良さも。
「『いや…4人だ』」
「なぜだ…レイブンはたった今倒して、あとはマンティス、ウルフ、オクトパス、オセロット、そして…リキッド5人じゃ…」
「『俺が既にオクトパスはゲッチュしておいた』」
「相手は仮にもFOXHOUNDだぞ?どうやって…」
「『汚い手だが…周りに敵がいないことを確認して、不意打ちで…な』」
オタコンがため息をつく。
『スネークの話とモセスでのグレイ・フォックス本人の発言を聞いてたらもっと高潔そうな人に感じたんだけど、意外と狡いんだね、グレイ・フォックスって…。とにかくFOXHOUND一人減っているんだったら、空中戦艦を多少は早く移動できるね』
「だがなぜだ?オクトパスをゲッチュしたならほかのFOXHOUNDもゲッチュすればよかったじゃないか?」
「『ああ、だが勘のいいリキッドに、人間のオセロット、こちらの思考を読んでくるマンティスは一人で倒すのは難しいだろう?ウルフも大概勘がいいし、レイブンは狭い部屋にばかりいたから、狭い場所でランチャーを撃たれたらお前のサポートもできないし…な』」
もう一つの疑問をフォックスにたたきつける。
否、たたきつけようとした。
「お前は何故…再び俺のサポートに徹し、戦おうと思ったんだ?」
「『…そんなことはどうでもいい。長話をしすぎた。早くいかなければならないだろう』」
確かにその通りだ。ここで長話をしている余裕はない。
かと言ってその質問の答えも気になる。
「『フ…釈然としない、という顔をしているな。互いに生きてリキッドを倒したら教えてやろう』」
「・・・・わかった」
俺たちは床に散らばったチップを回収した。
するとオタコンが話しだした。
『よし…装備も取り返したみたいだし、FOXHOUNDを退けつつブリッジに向かってリキッドの遺体を見つけてくれ。それから本物のピポ・スネークも生きていたら回収してくれ』
「わかった。任務を再開する」
メイ・リンが話に割り込んできた。
『スネーク、浅い川も深く渡れってことわざ、知ってる?』
「いや、知らないな。どういう意味だ?」
『ニッポンのことわざの一つらしいわ。浅く見える川でも気を付けて渡れ、って教えね。スネークも勘が戻ってきたっていっても油断しちゃダメよ』
オタコンが半笑いでつぶやいた。
『なんか、いよいよそれらしくなってきたね』
「まぁ、そうだな。―――そろそろ任務に戻る」
そう言って俺とフォックスは通路を歩き始めた。
リキッドとの決着もつけなければいけない。止める義務が、俺にはある。
相変わらず遅筆です、申し訳ない。
…細やかなネタが、キレた…かもしんない。ネタ考えなきゃ。
レイブンさん早く退場しすぎたな&キャラ崩壊している奴が何人かいるなコレ…申し訳ない(二度目)
オクトパスさんも活躍させずに退場させてしまった…申し訳ない(三度目)
さて謝罪会はここまでにして、実は話のおおまかの流れは構想してありますので次回以降もまた読んでいただけると幸いです。