METAL GEAR SOLID MILLION MONKEYS   作:竜田揚げ丸

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act5~信頼~

独房から通路を突き進む俺たちはリキッドの思惑を阻止するために走っていた。

 

「フォックス、次はどっちだ?」

「『ここは左、その先まっすぐだ。だがそこにはエレベーターがあり、周りからはほぼ丸見えだ。…何が言いたいかは、わかるな?』」

「狙撃手が配置しやすいな…ウルフか」

 

するとオタコンが連絡を入れてくる。

先ほどのリキッドも死体の話とは違い、悪いニュースではなかった。

むしろこの任務においては良いニュースだ。

 

『それなんだけど…さっきスネークが大量に送ってくれたチップで、パワーアップパーツが作れるみたいだ』

「パワーアップパーツ?銃のカスタムと同じようなものか?」

『うん。いろんなカスタムパーツがあって、それらを状況によって使い分けることによって、劇的な変化をもたらせる…らしい』

「例えば何ができるんだ。まさかいつでも煙草を吸える、なんてくだらないものじゃないだろうな。それはそれで俺は嬉しいがな。…待て、らしいだと?そんなものを俺に試験的に使えというのか?」

 

ところがまた意外な奴から連絡がきた。

俺を拉致して極寒のアラスカに送り込んだ友の声だ。

 

『スネーク、試験なら私がした。パワーアップパーツの考案者は私のハイスクール時代の友人でな。私がFOXHOUNDで総司令官になったとき、一度よこしてきたんだ。威力の向上も射程の向上も問題なしだ。ただし何分音が大きすぎたのと威力が高くなりすぎて建物が吹っ飛んだりでな。諜報には向いていなかったので正式採用は見送らせてもらった。以来奴はへそを曲げてしまったようで、送ってこなくなった』

「大佐…なんであんたがこの回線を知っているんだ」

 

ロイ・キャンベル、通称大佐…既に退役しているので階級もあったものじゃないが、俺が呼びやすいから便宜上こう呼んでいる。

 

『私にも伝手というものがあってな。彼が依頼し私が送り込んだピポ・スネークからの連絡が途絶えたのを心配した奴―――例のハイスクール時代の友人だ。奴が君も動いているから君にコンタクトを取ってくれ、という旨の通信がきたんだ。君の無線周波数がわからなかったから、私も動けなかったんだ。…しかし奴はなぜ君の無線周波数を知っていたんだ?』

『キャンベルさん。ひょっとしてそのご友人ってハカセのこと…ですか?』

『その通りだ、エメリッヒ博士。そのことは君には言っていなかった筈だが…。むっ、まさか奴め、もう既に君たちにコンタクトをとっていたのか!?私にスネークの無線周波数を送ったのは確かにあの男だ。何故知っているかと思ったら…そういうことか…。何が「ま~だあの小僧の周波数はわからんのか~キャンベル~遅いのう~」だ、あの煽りにしか聞こえない通信は自分がもう既に答えを知っていたからか…やつめ、FOXHOUNDに自分の開発品を売り込みに行って私にあっさり却下された憂さ晴らしか…今度会ったら…』

 

このままだと大佐の愚痴で時間を使うことになる。

時間もないのでそれは後で聞くことにして、大佐に各パワーアップパーツについての説明をするように求めた。

 

「大佐、その長い愚痴は勘弁してくれないか。時間がない。リキッドが何をしでかすのかわかったもんじゃない。ウルフが待ち換えているであろう場所には遮蔽物がない。狙撃にはもってこいの空間だ。なんか役に立つパワーアップパーツはないのか」

『あ、ああそうだな…あるにはある。だが素材はあるのか』

『あ、はい。未知の素材、僕らは通称として「チップ」と呼んでいるものが』

 

うーむ。と唸った大佐は紙をめくる音ともに、口を開く。

 

『ハカセによるとその「チップ」というのは何個かの元素に似た配列の、別の物で扱いようによっては危険なものらしい。よってこの任務が終わればチップ・そこから制作した武器もすべてハカセのもとに送れというように伝言をもらった。それで装備の話だが…「ガチャメカ」というものに属性を組み込むことができるらしいぞ』

「例えば?」

『ふむ…これなんかどうだろう。「リフレク」というもので、相手のエネルギー弾を弾くことができる…「メカボー」系列及び「アタックブーツ」にセットが一番安全性が高い・・・君の「メカボー」ならマグネシウム似の配列の「チップ」とテルル似の配列の「チップ」から製作可とあるな』

「エネルギー弾を弾く…確かに最適だ、レイブンとの決着の前に言ってほしかったものだな」

「『俺が使っているこのカタナのような「メカボー」には、エネルギー切れの心配のないように常にリフレクがついている設計のようだ』」

 

レイブンのランチャーの弾丸を切っていたのはリフレクによるものか…。

シャドー・モセスでは普通に切っていたからあまり違和感はなかったが、よく考えると確かにおかしい。

 

『あとはこれは…性能アップパーツ?…なるほど、これは武器に属性ではなく付与効果を与えられるわけか…銃のカスタマイズのようなものか』

 

紙がめくる音が聞こえたのち、得意げに話し出す。

紙はおそらくハカセが検証して大佐に送ったものだろう。

 

『「ロングレンジ」…弾薬の飛距離を伸ばすが、そのかわりエネルギーの消費が激しくなる。ランチャー系統、ガン系統、あとはリモコン系統で使用可。…これはどれとどれを組み合わせるとに制作できるんだ?』

「ロングレンジか…どれだけ飛距離が伸びるかだな。ところで大佐」

『どうしたスネーク…私は製作素材について探すのに忙しい…あった‼スネーク、カドミニウム似の配列の「チップ」、ネオジム似の配列のチップから作れるそうだ。…で、どうしたスネーク』

「さっき系統、といったな」

『ああ、言ったとも。…なるほど、どのようなものがつくれるか、だな?』

「それについてだが、その紙に書いてあるのか?」

『探してみなければ何とも言えんが…』

 

と、そこで今度はオタコンが話しかけてくる。

こちらはこちらで紙をめくっている。

 

『それはさっきハカセからFAXで送られてきたから、武器制作に必要な「チップ」については僕から言えるよ』

「何があるんだ?ほかのFOXHOUNDの連中にも転用できるかもしれないから後で聞かせてくれ」

『わかった』

 

オタコンとの話に区切りをつけ、大佐に話を戻す。

 

『話を戻そう。ウルフと戦おうというんだったらには「ロングレンジ」で遠距離化したH(ホーミング)ランチャーに「リミッター」、それから「レーダー」をつけてみたらどうだろう』

「「リミッター」に「レーダー」?それはどんな効果で、どんな「チップ」を使えばできるんだ?」

『その前に、H(ホーミング)ランチャーはあるんだろうな?』

「ああ。レイブンに使ったものがあったはずだ」

『よし。まず「リミッター」だな。これはエネルギーの消費を抑える効果がある。ランチャーに組み込んだらまさに鬼に金棒だな。「レーダー」はH(ホーミング)ランチャーの追尾性能を高めるパーツだそうだ』

「なるほどな。エネルギーの消費を抑えたうえで相手を捉え確実に相手をたたく、ということか」

『その通りだスネーク』

 

フォックスに対してこの方法を話すと、フォックスはなるほど、と頷いた。

だが、とフォックスは言葉を繋げる。

 

「『それだけではウルフの位置は割り出せない。だから俺が奴の弾道から奴の位置のおおむねの場所を割り出す。お前はその位置に向けてH(ホーミング)ランチャーを撃て』」

「できるのか、そんなことが」

「『任せろ』」

 

戦友の力強い言葉に頼もしさを感じる。

だが、彼女も通信からまけじといった。

 

『そんなことしなくても、私がソリトンレーダーを使えばおおよその位置はわかるのよ?割り出すのに数は多いほうがいいはずでしょ、私も手伝うわ』

「メイ・リン…確かに、ソリトンレーダーはモセスでも敵の位置も割り出していたな」

 

オタコンから通信が入ってくる。

 

『作戦は決まったね、それじゃランチャーをこっちに』

「ああ。パワーアップパーツの取り付けは任せる」

『それもだけど、元のランチャーの飛距離を強引に引き上げてそのうえで「ロングレンジ」「リミッター」「レーダー」を取り付けるから、貸してくれるかい』

「わかった。それからオタコン」

『どうしたスネーク』

「レーザーガンにも「ロングレンジ」をつけてくれるか」

『わかったよ、スネーク。ついでだ、メカボーにリフレクもつけちゃおう』

「そうか・・・無理はするなよ」

『…ありがとう、スネーク。取り付けるから、少し待ってて』

 

そうして数分後。あるいは数十分後だったかもしれない。

 

『できたよスネーク。キャンベルさんとも相談して、レーザーガンには「チャージ」のパワーアップパーツをつけといた』

「「チャージ」?」

『うん。自然とエネルギーが回復するらしい』

「なるほど、そいつは便利だ…そろそろ切るぞ」

『頑張って。あ、最後に』

「どうした?」

『ウルフを…彼女をゲッチュしてやってくれ…話したいことがあるんだ』

「…それでお前の気は済むのか?」

 

オタコンは黙ってしまった。俺は奴にウルフは会わせないほうがいいと考えている。

だが心のどこかでこれでオタコンがウルフへの感情に区切りが付くのならと思っているのも事実だ。

 

「…わかった。お前を信じよう」

『ありがとう…スネーク。本当にありがとう』

 

黙っていたフォックスが口を開く。

 

「『…どこか危ういな。本当に信じて大丈夫か?』」

「ああ。奴は俺の相棒だ。奴ならば大丈夫だ」

「『…ふ、お前も信じられるものを見つけたようだな』」

「ああ」

「『だが、その信じられるものを次の世代に伝えられるのか』」

「俺は子孫を残せない。だから無理だろう」

「『ふん…それはどうかな。次の世代に伝える方法ならあるかもしれないぞ。…装備が帰ってきたようだからな、先を急ぐぞ』」

 

信じるものを次の世代に託す。…子孫を残せない俺にはやはり無理なのだろう。

そう考えて、カスタマイズされた武装を確認する。

 

「何も問題はない。行こう」

「『ああ』」

 

そうしてエレベーターへと俺たちは躍り出た。

と、同時に射撃音がする―――互いに何も言わず、戦闘が始まった。

撃たれた弾丸はフォックスによって反射される。

フォックスのおおよその着地した位置を確認してウルフはどの位置から狙撃して来たのかを推測する―――。

 

「『スネーク、お前の右後ろの方角だ!』」

 

言われた通り俺は右後ろを向く。

 

「これから構える…フォックス、飛んでくる弾は任せた」

「『しくじるなよ、スネーク‼』」

 

そうしてHランチャーを構え、ウルフを探す―――。

メイ・リンの声が響く。

 

『少しずれているわ、左に十五度程度修正して。―――そのあたりの上下の位置にいるはずよ、探してみて』

「わかった」

 

おおよその位置を割り出す。ウルフを見つければHランチャーが熱源として捕捉するはずだ。

そのとき、ランチャーは音を出した。

 

ピ―――――――――ッ‼

 

見るとターゲットを捕捉していた。

構えているため、あとは引き金を引く。

鮮やかな光とともに、その光弾はある一部分を目指して飛んでいく。

ゴシャァッという何かが壊れた音が鳴る。

当たったかどうかは光弾のせいと距離が遠いのもあってわからない。

 

「やったか…?」

「『いや…奴はピンピンしているな。物陰に隠れたか・・・』」

 

狙撃音が再びする。先にフォックスが狙われるが、フォックスは飛びのいて回避を行った。

さらにもう一発。俺を狙っているに違いないのでメカボーを引き抜いておく。

 

『スネーク、タイミングを合わせるんだ、君ならばあの光弾は弾けるはずだ』

 

大佐の声とともに光弾は飛んでくる。速度が早かったからメカボーを振りぬくことはできなかったが、刀身を斜めにして弾くこと自体には成功した。

 

「『さすがだな、スネーク。いい判断だ』」

 

フォックスの声に反応せず、ランチャーを構える。

熱源が二つあった。片方がウルフだとしてもう片方は何かとは思った。

しかし、それを考えたところでウルフに弾は届かない。

メイ・リンに通信を入れて聞く。

 

「今度はどのあたりだ?熱源が二つある。そう遠くは離れていないはずだが…」

『少し右側かしら…少し角度を、スネークから見て右側に変えてみて』

 

メイ・リンの助言に従って角度を少しいじっていると、オタコンが通信を割り込ませてきた。

 

『ロックができないのか。だったらもう目視でやったほうがいいかもしれないね』

「目視?ここから奴の居場所は見えない」

『そうなるかなぁと思って、レーザーガンにロングレンジを搭載するときに銃に改造を施してみたんだ。さ、ロングレンジの機能を起動してみてくれ』

 

言われるがままにレーザーガンに持ち替えて「ロングレンジ」の機能を起動させる。

するとレーザーガン上部からスコープが飛び出てくる。

さながらスナイパーライフルだ。

 

「…オタコン、お前が機転が利くのは認める」

『どうしたんだい?まさか故障でもしたのか!?』

「違う。改造するのはいいが、使う奴()に説明しろ」

『あ、あれ?説明してなかったかな?』

 

オタコンがそうすっとぼけた瞬間、3つの回線に乱入された。

一つ目はメイ・リンから。

 

『そうね…通信記録とか確認してみたけど、ひとっ言も説明してなかったわね』

 

二つ目は大佐から。

 

『いや、私も通信を傍受していたがそんな話はしていなかったはずだ』

 

三つめは、ハカセからだ。

しかし割り込んできた瞬間に大佐は食い気味に割り込んだ。

 

『よくわからんが、ワシもそう思う』

『ハカセ!よくも周波数を知っていたのに私に知らないふりをして私を虚仮にしたな!』

『おおぅキャンベル。連絡がとれたなら何よりじゃ』

 

大佐はふぅーっと息を吐き、待て待て落ち着けロイと呟くと、冷静に聞き直した。

 

『…それで、何の用だ』

『いやぁ。進捗を聞きに来たんじゃ。それで、今はどういう状況かの?』

 

俺が冷静に説明すると、ハカセはふーむと考え込みやがてこう結論を下したのだ。

 

『いやわざわざ狙撃戦をやらんでも、フォックスがステルス迷彩を使って透明化して、直接たたきに行けばよいじゃろう』

 

現在狙撃戦をしているがその狙撃戦を提案したフォックスを見ると、さっとウルフがいるであろうほうを見て目をそらした。

俺はため息を吐き、こういった。

 

「…そうでなくても、エアキャンサーを使って最初みたいに行けばよかったな」

『…いまからエアキャンサー作るね』

 

そう言ってオタコンがえーとだのうーんだの言いながら探し始めた。

その後、ごそごそと音がしてからオタコンが一言。

 

『…スネーク、怒らないで聞いてくれるかい』

「おおむね分かったが、とりあえず言ってみろ」

『…もらったチップ…ほとんど使っちゃった…』

「だろうな。銃弾とエネルギー弾に耐えれる盾を作ってこっちによこしてくれ」

『…わかった』

 

そう言ってオタコンは力なく通信を切った。

フォックスはこっちを見て言い訳を始めた。

 

「『俺は一応ピポサルだからな。しょうがない』」

「・・・」

 

盾が届くと、俺はレーザーガンをしまって盾を持って走り出した。

直接叩きに行ったほうが早いようだ。

 

「『どうするんだ』」

「盾を使って弾丸を防ぎつつエレベーターで同じ階まで行く。フォックスはステルス迷彩を使って直接たたきに行け。後ろから狙撃して援護はする」

「『なるほどな。だから銃弾を防ぐ盾なのか』」

 

そうこうしている間にエレベーターに着いて、盾を構える。

撃たれた時の弾道から考えて高低差は恐らく二階だろう。

エレベーターが上昇する。

 

「『右からくるぞ‼』」

 

言われると、メカボーを引き抜き弾丸をはじく。

やはり弾丸をはじけると便利だ。

 

「フォックス‼銃弾が来るぞ!」

「『了解だ』」

 

その言葉をいうと同時にフォックスが走ってエレベーターの恐らく落下防止であろう低い壁にたどり着き、そこで伏せてステルス迷彩を起動させる。

これでフォックスの位置は少なくともウルフの目視ではわからなくなっただろう。

奴のスコープに温度感知機能がついていれば一発でばれてしまうのが弱点だが。

フォックスの姿が消え、奴の銃口がこちらを向いているのを感じる。

奴は…モセスの時にやったあの罠を、今度は俺を餌に行うのだろう。

あの時の俺は何と言ったか。

そうだ。他人のためには闘わないと、本能に従うといったはずだ。

なら俺は本能に従い、生き残る。

そして、俺は今何の為に闘っているのか。

答えは簡単だった。俺は未来のために闘っている。

フォックスから通信が来る。

 

『お前から見て左前だ!防げ!』

 

言われた通り盾を左前に出し、弾丸を防ぐ。

エレベーターはなかなかのスピードだが、しばらく止まりそうにない。

俺はエレベーターが止まるまでの間、弾丸をはじき、防ぎ、反射して身を守り切った。

 

「フォックス、行けぇ!」

 

これはフォックスの身体能力に任せたハッタリだ。

通常の人間の身体能力などたかが知れている。

しかし、強化外骨格を纏ったグレイ・フォックス(のデータを使ったピポサル)の身体能力ではどうか。

シャドー・モセスで奴はメタルギアREXの攻撃を避け、目となるレドームを破壊した。

加えて先ほどオセロットがフォックスと遭遇したので、フォックスのことを報告していないはずがない。

その話からリキッドが先ほどのモセスの話に発展させたとしてもおかしくはない。

敵のデータは一つでも多いほうがいいからだ。

そしてそのフォックスがここのエレベーターからその身体能力で直接奴にいる通路に直行できるかもしれないから、近場を警戒するだろう。

通信を切っていなかったため、意図を汲んだ上で通信に割り込んできたメイ・リンによるサポートがありがたかった。

 

『射線を32度ほど変えて。大丈夫よ、私と私が作ったソリトンレーダーがついているもの』

 

俺はHランチャーを構えた。

移動している間に奴が位置を変えてくれたのが幸いだった。

二つの熱源の反応しか捉えなくなっていた。片方は止まることなく動いていたが、もう片方は止まっていた。

メイ・リンの通信から考えても止まっているほうがウルフだ。

仲間を信じ、トリガーを引く。迷いはなかった。

 

『よく当てたな、スネーク。あとは俺がやる』

 

爆発音がしたが、どうやらうまく当たったらしい。

フォックスがそう通信を入れたと同時に、さらに追撃の音がした。

傍から聞いても痛そうな音だった。

 

『敵を無力化した。…長かったな』

「誰かが妙な作戦を立てなければこんなことにはならなかったがな」

『いいからさっさとこっちに来てゲッチュしろ』

「了解だ」

 

俺は熱源が二つあるところに移動した。

移動しているとき気づいたが、この戦艦はやたら通路が狭い上に足場と足場の間に溝がある。

高低差があるため落ちたらただでは済まないだろう。人間だったころのリキッドなら案外何とかなるかもしれないが。

俺はそう思いながらもウルフの元にたどり着いた。

 

「ウキ…ウキキ(また、私は待たされた)」

『スネーク…』

「わかってる」

 

オタコンと短いやり取りをすると、ウルフの纏う雰囲気は幾ばか柔らかくなった。

 

「ウキ、キキィ…?(彼…?)」

「…ああ。何と言っていたかは、あとで本人から聞け」

「…ウキ、キィ…(そう…。私は、少し前まではスコープなしに世界を見ていた。けれど)」

 

そういった後、ウルフはこう言った。

 

「ウキ…キキィ(急に、またこのスコープ越しに世界を見る日々が始まった)」

 

つぶやいた後に、こちらにウルフは首だけを向きなおした。

どこかやりきった、すがすがしい顔でこう言った。

 

「ウキぃ、キキィ(しかし…それももう終わりだ。また私を…今度こそ解放してほしい)」

「…それをやるのは今回は俺じゃない。奴も俺も英雄(ヒーロー)なんかじゃない」

 

そうして俺は相棒に通信を入れる。

 

「…オタコン。いいな?」

 

オタコンは息を吐き、わかったと返事をした。

 

「お前を解放する役はきっと、あいつが一番いいはずだ。―――ゲッチュ」

 

ウルフは、転送されていった。

昔俺が聞いた狼の遠吠えが聞こえたような気がした。




遅くなりましたact5です。
すみませんできるだけ早くとかほざいていた割にめっちゃ遅くなりました。
内容は相変わらずペラッペラですが、楽しんでいただけたならば幸いです。
オタコンとウルフの会話についてとか、この作品の「裏」、つまりスネーク以外の視点もそのうち書く予定ですのでそこまでご期待しないで気長に待っていていただけると嬉しいです。

では次回でまたお会いしましょう。
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