闘拳伝ユウイチ   作:ブレイアッ

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 いつもより早めの投稿。


十一話 激闘!? 荒涼高校!

 

 

 校舎の壁を登って、屋上から侵入した僕と宇春は。

 

「こんにちは。ふっ!」

「な、あがっ!?」

 

 目についたテロリストのメンバーを手当たり次第に()していた。

 

「不意討ちの手刀で両腕を痺れさせて武器を使えなくしてから溝尾(みぞおち)に一撃で一発ノックダウン……随分手馴れてるね?」

「まぁ、馴らされたから……」

 

 主に父さんのせいで。

 

 あれは、弟子入りしてもうすぐ一年ってくらい経った時の事。父さんが梁山泊にやって来て僕の成長具合を見て「私と妻の技も伝授したい」って言い出した。

 『剣皇武龍』と呼ばれ、『表の比翼、裏の武龍』とまで称された達人らしい父さんの武術を学べるのはまたとない機会。

 それに、『武』を通じて亡くなった母さんの事を知れるのだから師匠達に頼み込んで許可を貰った。父さんから技を教わるってことは、師匠が1人増えるって事だったし、師匠達の方では「育成方針やら改造計画が大幅に書き直しになったらしい」って武田師匠がぼやいてたな……。

 でもあの顔は隊長会議中に寝てた顔だった。フレイヤ師匠の目がヤバかったし。

 

 そんな感じで始まった父さんからの授業は、超々実戦一辺倒。

 

「これはこういう技だよ。見たね? 覚えてない? それは実戦で覚えるんだ」

 

 って技を見せられてからどこかの銃弾飛び交う戦場に叩き込まれる。しかもその技を習得するまで迎え無し。たまに父さんが誘導して仕向けたであろう伐刀者と遭遇するし。

 

 今思えば「武術の世界(こちら側)に来てほしくない」からって僕を武術から遠ざけようとしていたらしいけど、父さんは生粋の武術家で達人だったから

 

「一般的な生活ってこんな感じだよね!」

 

 っていう達人目線の物だったんだよなぁ……。

 梁山泊に住み込み始めて、日本の中学校に行った時に初めて武術から遠い生活ってのを知ったよ……。

 

「おーい?」

「はっ!」

 

 しまった、ぼんやりしてた。

 とりあえずさっきシメた人から生徒の居場所を聞き出さないと……!

 

「全校生徒は体育館に集めてるんだってさ。行く?」

「あ、もう聞き出してたんだ……」

 

 テロリストの人、僕が殴った時よりボロボロになってるや。鼻と鳩尾を的確に殴られてる。宇春何やったんだろ……。

 

「体育館ね、よし。行こうか」

 

 

===

 

 

「うーん……なんか騒がしい?」

 

 校舎から体育館までを繋ぐ渡り廊下まで響く怒声と何かがぶつかる音が聞こえてくる。

 もしかして人質になった生徒の誰かがテロリストに立ち向かって乱戦になったとか?

 

「宇春はここにいて。様子を見てくるから」

 

 勢いで巻き込んじゃったけど流石にドンパチに付き合わせるのは悪いしね。

 とりあえず体育館近くの木に登って、その上からジャンプ。壁の凹凸を掴んで登って2階の窓から中を覗──。

 

 ガォンッ! バリィンッ!

 

 と、銃声の後に僕の顔面近くの窓ガラスが割れた。うへぇ、また右耳の鼓膜が破れた。

 

 気を改めて、軽く中を覗くとたくさんの生徒、おそらく全校生徒が集められている。

 全員の視線は銃を撃った人に向いているみたいだ。何があったのかはわからないけど、どうやらテロリストの一人は気が立っているみたい。

 緊急事態だ。まだテロリストが何人か把握出来てないけど早く中に入っちゃおう。怪我人や死人が出てからじゃ遅い。

 幸い、ちょうど良い感じに穴が空いてるし。

 

 

===

 

 

 窓から体育館の2階に侵入成功。姿勢を低くしたまま、すぐにテロリストの配置を把握……って。

 

「テロリストみんな気絶してるじゃん!」

 

 思わず立ち上がる。

 目出し帽を被ったテロリストの人達はみんな気絶させられて、一ヶ所に山積みになっていた。

 

「む、遅かったな、新白の。不届き者は既に余が倒してしまったぞ」

 

 その上に座る褐色の肌をした男子生徒。というかこのテロリスト達の目的の人物であるヨギ・ティダード・ルディが白い歯を見せて笑みを浮かべながらこちらに手を振っていた。

 

「ルディ王子、少しは人質らしく大人しくしててくださいよ。助けに来た僕の仕事が無くなるじゃないですかぁー」

「何を言う。ちゃんと人質らしく、大人しくして不届き者との距離を詰めてから倒したぞ!

 銃を持った人間が無辜の民に襲いかかり、銃口を向けるならば我がブンチャック・シラットの使い時ではないか。民を守れんのでは父上を越えられぬのでな」

 

 カッカッカ! と笑うルディ王子。

 流石と言うか何と言うか。王様に見知らぬ土地に投げ出されたおかげか精神的な強さが凄まじい。

 人質という立場すら利用したのか、この人は。

 

「……う、うおおおお!!」

 

「むっ?」

「あっ!」

 

 しまった、ルディ王子との会話に夢中になりすぎてた。意識を取り戻してた人がいたことに気付けないなんて!

 

 僕達には敵わないと判断したのか、テロリストの男の人は逃げの一手だ。一目散に体育館の扉に向かっている。

 って、その先は!

 

 バンッ! と体育館の扉を開け放たれる。

 

「わっ」

 

 開かれた扉の先、そこには宇春が──。

 

「そこを、どけええええええ!!」

 

 男がナイフを抜き、宇春に向けて突き出す。

 

「ふっ」

 

 それに対して宇春は避けるんじゃ無く、前に一歩踏み出しながら左手で相手の手首を宇春から見て右真横に押し反らし、同時に鳩尾に右の掌底を打ち込んだ。

 

「うぐっ」

 

 予想外の反撃に男は溝尾を押さえながら後ろによろめいた。

 今の技、もしかして枕手(パクサオ)

 

「ぐああああっ! 手が、俺の手があああっ!?」

 

 男が右手を押さえて蹲る。

 うわ、突きを反らした力が強すぎて骨が折れてる。いや、力を骨に収束するよう発勁したのかな?

 宇春、普段の佇まいからただ者じゃないなとは思ってたけど、魔力無しの一撃で成人男性を倒せるほどか。

 

 うん、強いな。弟子級上位はあると見た。

 

 何はともあれ、これでテロリストは制圧完了。お仕事完遂だ。20号さんに連絡しよう。

 

 ……そういえば、新型胴着、試す機会無かったな。ナノゼイロンってのがどんなのか試してみたかったのに。

 

 

===

 

 

 潜伏してるテロリストがいないかを改めて調べて確認して、テロリスト達を新白連合の武器隊、ワルキューレの皆さんに引き渡す頃には日が傾き始めていた。

 ふと生徒手帳を見ると、黒鉄さんからメールが来てた。

 

「おぉ! 黒鉄さん、試合に勝てたんだ。良かったぁ……ん? 続きがある」

 

 ふむふむ、なるほどなるほど?

 

 

 

 

 つまり……道場破りのお誘いか。

 

 

 

 




 次回、道場破り!

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