警備部隊で働き始めて8日目。この部隊の問題点やその改善案は大方、まとまった。残るは人員の確保のみだ。
「まあ、これが一番難しいんだけどな」
現段階の計画書でも悪くないと思うが、あと一押しが欲しい。失敗は許されないんだ。元の世界に帰るため、絶対にこの課題をクリアしねーと。
「この団子うめーな」
夏侯淵に進められて、お昼ごはんにと思って買ってみたのが、なかなかいける。やはり一人で食う飯はいいな。今日は天気もいいし最高のぼっち日和だ……ぼっち日和ってなんだよ。
「なんかいい匂いがすると思ったら兄ちゃんじゃん!」
「……なにか用か? ……ちびっ子」
「ちびって言わないで言ってるのに!気にしてるんだから!そろそろ名前ぐらい覚えてよー。季衣だよ季衣!」
「……いや、それって真名ってやつなんだろ?真名は親しい人にしか呼ばせないものだと聞いたのだが」
「私がいいって言ったら、いいんだよ。それに兄ちゃん、華琳様の部下になるんでしょ?だったら仲間なんだし問題ないじゃん」
「いや、まだ部下になると決まった訳じゃないと前にも言っただろ」
「兄ちゃんならきっと大丈夫だよ!華琳様や秋蘭様も兄ちゃんのこと頑張ってるって褒めてたよ」
「それは、ありがたいこって」
いくら警備部隊で頑張っていても、計画書の内容に満足しないかぎり、曹操は部下にしないと思うがな。
「だから私のことは季衣って呼んでね!」
「か、考えておく。そんなことより団子食べるか?少し買いすぎ余りそうなんだ」
「いいの?実は最初からずっと食べたかったんだ!」
まああれだけ団子の方をチラチラ見ていたら誰でも気づく
「おいっしーーー。この絶妙なあまじょっぱいさが最高だね!」
自分で作った訳では無いが、こんなにうまそうに食べてもらえると悪い気はしないな。たまには誰かと食べる飯も悪くない。
「ほら、口元汚れてるぞ。拭いてやるからこっち向け」
「ん」
なんか小町の小さい頃を思い出すな
「さて、そろそろ見回りに戻るわ」
「そっか。だったら私も手伝うよ!」
「団子のことなら気をつかわなくていいぞ」
「そんな気つかってないよ!腹ごなしの運動のついでだよ」
「だったらいいんだが……」
「さあさあ、こうしている間にも騒ぎが起きてるかもしれないよ!早く早くー!」
「あ、ああ」
▽
「物取りだー誰か捕まえてくれー」
戻ってそうそう騒ぎとは、ついてねえ。
「き、季衣。追うぞ!」
「……うん!兄ちゃん!」
物取りは、土地勘があるのか細い路地を迷いなく進んでいるせいで、なかなか距離が縮まない。くそっ、このままスラム街に逃げられたら一瞬で撒かれるな。なにか手は……
「兄ちゃん、こっち!」
「ん? 物取りはそっちには」
「こっちの方が近道なんだよ!」
こんな道あったのか。ここら辺はよく見回りしていたが気づかなったな。
近道を抜けると先ほどよりも、かなり物取りとの距離は近づいていた。これなら捕まえられそうだ。
「どけー、邪魔だー」
焦った物取りは人が多くいるにも関わらず、無理矢理押し通ろうとして、道の端でかごを売っていた女の近くにあった機械を倒してしまった。
「な、なんやあんたっ! いきなり人の作ったカラクリに何してくれとんじゃ! ちょ、こら!ちょっと待ちい。凪―、そいつ捕まえてー」
「ん?何やらわからんが了解した。はああああぁ!」
物取りは凪と呼ばれた子に思いっきり吹き飛ばされた。……なんか手から火が出てなかったか?
「でかした凪! ちょっとあんた。うちのカラクリ壊した責任しっかり取ってもらうで。……兄ちゃんらも、こいつになんかされたんか?」
「そいつがさっき盗みをしてな。それで警備隊である俺が渋々、追いかけていたんだ」
「えらい、やる気のない警備隊はんやなー。目が死にかけとるがな」
やる気がないと判断されたのは、発言じゃなくて目なのね。まあ、実際やる気があるかと聞かれたらないんだけどさ。
「まあ、とにかく捕まえてくれて助かった」
改めて見ると、かごを売っていたのは呼び込みを含めて3人いた。手から炎みたいなものを……出したように見えた褐色の女。カラクリとやらを作ったという女。最後にやたら着飾った女。なんかちぐはぐな三人組だな。
「お兄さんお兄さん、感謝してくれとるんならかご買っていな」
「そんなことでいいなら買わせてもらう」
「まいどありー」
「ところでなんでかごなんて売っているんだ? かごなんかを売るより表の通りにわんさかある店で働いた方が効率がいい気がするんだが」
「できるもんならそうしたいんやけどなー。うちらはこの街から少し離れた村から出稼ぎに来とるよそ者やさかいに雇ってくれへんねよ。この街の裏通りにおる輩は大抵、うちらみたいなよそ者やで」
「そうなのか……」
この街の雇用問題の根底には、そんな問題があったのか。これは最後の一押しに使えるな。
「本当に色々と助かった。ありがとな。じゃあこれで」
「またうちら見かけたら買っていってなー」
▽
「一町ごとに詰所を作り、兵を常駐させる……ね」
10日目の夜、遂に今日で俺が部下になれるかが決まる。やれることは、やったつもりだが判断を下すのはあの曹操だ。気は抜けない。
「たしかにこれで問題のいくつかは解決するでしょうね。でもそれを実現するのに人手も経費もばかにならないわ。そこらへんは、どうするつもりなのかしら?」
「平時は半数を本隊の兵士から回してもらいたい。残りは募集をかけようと考えている」
「義勇兵ということかしら。それなら」
「有事でもないと集まらんだろうな。だから、給料は払う。それに加えて兵役を免除したりすれば今よりも人は集まるだろう。その中で優秀で本隊に所属したい者は引き抜いても良いしな」
「なるほど……兵役を課さない代わりに本隊の予備部隊としての性格を与えるのね。でも経費はどうするつもり? これだけの規模だと、活動費も今とはケタも違ってくるのだけど」
「治安が良くなれば商人や旅人も集まる。この10日間で色々話して回ってみたが、そうなれば同業者を呼ぶって人や出資をしてくれそうな人もおさえてある。それにこの街は、雇用先は多いが、他の国や村から来た者を受け入れる所は少ない。実際、手に職のない者のほとんどが他所から来た者だった。こういった者たちを雇えば更に治安も良くなるだろ」
「秋蘭」
「は、悪くない内容であるかと」
「桂花、あなた手を貸していないわよね?」
「はい……読み書き以外では一切貸しておりません」
なんでそんなに悔しそうなんだよ。そんなに俺が入るの嫌なんですか?
「比企谷八幡」
「ひゃい」
「あなたを正式に部下として向かい入れるわ。これからは私のことは華琳と呼びなさい」
「え゛、でもそれって親しい人同士でしか……」
「これからあなたは、私たちの仲間になるのよ。なら問題ないじゃない」
「か華琳様!そのような目も性格も腐敗した猫背男なんかに真名をお許しになってはいけませんよ!」
「何か問題でもあるのかしら?」
「そいつは男ですよ!それだけで問題大ありですっ」
ちょっと猫耳さん? ひどすぎない? まあ真名で呼ぶとか恥ずかしすぎるから良いのだけど。
「安心なさい桂花。真名で呼ばせるのはあなたもよ。良かったじゃない。この前あなた、猫耳って呼ぶなと怒っていたわよね。私に近しい部下同士は連携を強化するためにも真名で呼び合うようにと前にも言ったでしょ? だから春蘭と秋蘭、あと八幡もわかったわね」
「「は、華琳様」」
「お、おう」
夏侯……春蘭と秋蘭は納得したみたいだが、け……桂花の方は目を回して口をパクパクさせている。
「まったく、この子の男嫌いにも困ったものね。八幡、ちょっとこの子の真名を耳元で言ってあげなさい」
「か……華琳。それって俺に拒否権って」
「あら。あると思ってるの?」
ですよね。てかなんで、そんな楽しそうな顔してんだよ。そんなに部下を苛めて楽しいの? くそっ、こうなったら猫……桂花のやつが混乱している内に言ってしまおう。
「お、おい。け……け……けいふぁ」
「ひぃいいいい。なんであんたが私の名前をっ!耳が腐る、孕むー!」
「お、おい落ち着けって」
「きゃあああ、近づかないでよ!変態!私に触れたら死なすんだから!」
「はあー、近づきもしねーし触れたくもないから安心しろ」
「私に魅力がない胸がないと言っているのね!」
「そんなこと言ってねえ」
桂花の罵倒をBGMに長く感じた俺の試験は終了した。騒ぎすぎた桂花は、何やら華琳におしおきを受けたらしく、さらに俺を敵視するようになった……小町、お兄ちゃん初めて就職したけど、パワハラで早くも引きこもりそうだわ。
読んで頂きありがとうございます!
最近、もっと書く時間がほしいと思ってばかりいます。書くのってほんと楽しいです!
ところで季衣の戦闘時の立ち絵、めっちゃかっこよくありませんか?あのきりっとした感じがイケメンすぎると思うんですよ。
できるだけ早く更新するのでまた読んでくれると嬉しいです!では!