魔法科高校の劣等生 -Masquerade Devil Hunter- 作:スダホークを崇める者
FGOのサンタイベと艦これの秋イベが重なり、そちらを優先してしまった結果です。
その間もチマチマと書いてはいたのですが、予想以上に執筆が遅くなったので少し時期をずらす羽目になってしまいました。
実を言うとまだ肝心の12話はまだ完全には書き終えていないのですが、それでも8割は終え、流石にこれ以上間を空けるのはどうかと思ったのでこのタイミングで投稿させていただきます。
まあ、今もFGOは内容が濃密な7章の攻略で大忙し、それが終わっても最終決戦が待ち構えていたりと思わずヒエーと言いたくなる状況ですが……。
ただ、執筆に対するモチベーションは全く落ちていません。
まあ、その要因はとあるアニメが始まったことなんですが……それは後書きにて
懇親会終了直後、深雪とほのか、雫の3人は時間を持て余していた。
達也は新人戦に向けて今から起動式の調整に入っているので忙しい。
兄の邪魔をするわけには行かないので、深雪は現在この二人と行動しているのだ。
そんな中、渡りに船とばかりにエイミィが現れ、ホテルの地下にある温泉に入らないかと誘ってきた。
軍の施設なのに大丈夫なのかと懸念を示す3人だったが、既に23時までの利用なら問題ないと聞いているらしい。
用意周到というか、アクティブというか……まあ、それこそが彼女なのだが。
後から共通の友人の里美スバルと滝川和美とも合流して、湯船にて女子同士ならではの戯れが始まった。
「わあ……ほのか、スタイルいい……。」
「え? そ、そうなの?」
適度な温度に保たれている湯からもたらされる幸福感に浸っている中、エイミィがほのかに羨望の眼差しを向けていた。
確かに、ほのかのプロポーションの良さは相当なものだ。
一高全体でも対抗できるものはそう多くはいない程で、モデルをやればさぞかし映えることであろう。
「剥いてもいい? いいよね?」
「え、エイミィ……? 何だか目が怖いよ……?」
エイミィの口調と雰囲気が女子グループで一定の割合でいる親父キャラポジのそれになってきている。
危機感を感じたほのかは即座に逃げの一手を決め込むが、エイミィも鋭敏な動きでほのかを追う。
この場が彼女たちの貸切状態であることが唯一にして幸いであった。
「た、助けて雫! このままじゃ私何かを失っちゃう!」
何を失うのかはさておき、長年の親友に助けを求めるほのか。
なお、ストッパーとなりえる深雪は先に身体を洗っているのでまだこの場にはいない。
残りの二人も面白がっている様子で止めてくれそうにもない。
だからこそ唯一の助けは雫だったのだが……現実は無情だった。
「……いいんじゃない? ほのかは胸、大きいし。」
「え、ちょっと雫ー! お願いだから見捨てないでー!」
いつもの落ち着き払った口調で静かにその場を去っていく雫。
その際に言い残した言葉に、若干の劣等感のようなものを感じるのは気のせいではない。
だが、誰もそれを指摘しない。 指摘したら何が起こるか分かったものではないのだから。
こうして唯一の希望を失ったほのかはそのままエイミィの魔の手に掛けられる……と思ったその時だった。
「一体何を騒いでいるの?」
サウナの方へ向かった雫と入れ替わりで深雪がゆっくりとした歩調で現れた。
この瞬間、ここにいる全ての人間の視線と意識は深雪に集中してしまっていた。
先ほどまで追いかけっこをしていたほのかとエイミィも例外なく、だ。
当の本人がその状況に気づいたのは、湯船に身体を預けてからであった。
「ど、どうしたのみんな。 そんなに惚けて……。」
「あ、ああゴメンゴメン。 つい見とれてしまって……。」
「駄目だよみんな! 深雪はノーマルで、そっちの世界の住人じゃないんだから!」
ほのかの必死の静止の中には、あんまり度が過ぎるとこの場が氷風呂になってしまうことからの懸念も含まれている。
……が、普段から紫輝に弄られているので深雪には一種の耐性は出来ている。
戸惑いこそあれど、この程度で心を大いに乱すようなことはなかった。
「そうだ、そういえばパーティどうだった? 他の学校でかっこいい人っていた?」
上手く論点を先ほどのパーティに反らした御蔭で変な雰囲気は霧散される。
そして、ここで話題に上がるのはやはりと言うべきか同学年で十師族跡取り……一条政輝だった。
会話をしたわけではないので外見の話に留まるのだが、なかなかの高評価な模様だ。
「そういえば、深雪のことを熱い眼差しで見つめてたよ、彼。 気付いてた?」
「そうだったの?」
紫輝も目撃した政輝の様子を面白そうに語るエイミィだが、深雪は気づいているはずもない。
他の一科生に囲まれている状況下でも、彼女はひたすら達也のみを視界に留めていたのだから。
後、給仕作業をこなしながらも悪魔関係の警戒を怠っていない紫輝への心配もほんの少しはしていたのだが。
「あのクリムゾン・プリンスの視線にも気付かないとはね……。 やっぱり、お兄さんがタイプってことでいいのかい?」
「スバル、私とお兄様は血の繋がった実の兄妹なのよ? 恋愛対象には出来ないわ。 それに、お兄様のような男性が他にもいるとは思えないし。」
あまりブラコン発言を聞くことのないスバルはそれを聞いて肩を竦め、イマイチ盛り上がらない答えだからかエイミィはつまらなさそうにしていた。
なお、ほのかと雫は意味深な沈黙を貫いている。
「……あ、じゃあ獅燿君は? ほら、深雪と凄い仲いいし実はお互い結構意識したりしてるんじゃないの?」
「なるほど、好きな子ほど弄りたくなる感情ってやつだね。 確かに彼ならば並んでいても違和感は無いけれど、その辺りはどうなのかな。」
矛先を紫輝に向けた上で改めて深雪に問い詰める。
紫輝と深雪のやり取りは大半からは呆れ半分微笑ましさ半分で、一部は妬ましいと思われている。
一部では実は隠れて……という噂も立っているくらいなので、真実を明らかにする絶好の機会だ。
「紫輝は……お兄様とは別の意味でそういう感情は持てないわ。 それは多分あっちも一緒だと思うけれど。」
「……多分、そういう感情を抱くには距離が近すぎる。 そういうことだよね?」
深雪の回答はこれまた意外なものだったが、雫は理解できた。
ほのかも同じくだ。 この二人はより近い位置で二人……否、達也を含む三人を見ているからよく分かる。
「そうね。 紫輝は事あるごとにちょっかいをかけてくる困った兄的ポジション。 血の繋がっていない家族という認識だから、親愛こそあれど恋愛感情は割と今更かもしれないわね。」
「はー……恋愛って色々と難しいんだねえ……。」
エイミィの呟きこそが、この場にいる大半の総意であった。
「ぶえっくしょい!……なんだなんだ、誰か俺の噂でもしてやがんのか?」
「紫輝が風邪は考えづらいし、多分そうじゃないかな……。」
真夜中の茂みで盛大にくしゃみをしたのは我らが仮面の悪魔狩り。
見回りついでに幹比古の精霊制御の練習に付き合っている最中だった。
なお、ややズレたタイミングで作業車の方のお兄様にもくしゃみが発生したのは言うに及ばずだ。
「おいおい幹比古……それってアレか? バカは風邪を引かない迷信か?」
「……ご想像にお任せするよ。」
ジト目で睨む紫輝だが、事実を言ったら何をされるか分かったものではないのでスルーする幹比古。
ただ、彼が思っているバカというのは『Fool』ではなく『Crazy』の方なので、ある意味褒め言葉ではあるのだが。
「それにしても、お前もだいぶ余裕が出てきたもんだな。 本来なら立っててもおかしくはない場所に居ても平気になってんだからよ。」
「……まぁ、歯がゆいし悔しくもあるよ。 でも、焦れば焦るほど、もがけばもがくほど悪循環だということに気付けたからね。 肝心な原因がわからないのは気味悪いけど……。」
「いっそ、達也にでも相談してみるか? 俺も魔法理論はそれなりだが、やっぱ餅は餅屋だろうからな。」
幹比古に巣食うスランプはその要因は未だに分からずだ。
このスランプの御蔭で紫輝にメンタル面のアドバイスを貰い、更に『悪魔』という名前のみしか知らなかった存在のことを知ることが出来たので今ではなってよかったと思っているくらいだ。
しかし、いつまでも甘えているわけには行かず、そろそろ本格的にスランプ解消に動きたいのだが……。
「そうだね……。 達也はあの時結界にも気付いていたわけだし、何かいいヒントをくれるかもしれない。」
「だな。 案外灯台下暗しな原因かもしれねぇし。 ……ところで、さっきからやたらと精霊が騒がしくねぇか?」
最初に違和感に気づいたのは紫輝だった。
幹比古の周囲に漂う四色の精霊が、明らかにざわついているように見える。
「何かを見つけたのか……? これは……『悪意』? でも、微妙に種類が違うような……。」
急いで感覚を同調させた幹比古が感じたものは、二種類の悪意だった。
一つは人間的な悪意だが、もう一つは底抜けなまでな……まるで悪魔が発するかのような悪意。
幹比古の呟きから、紫輝はすぐに状況を理解することが出来た。
「あー、何か読めてきたな。 多分片方は出やがった。 んでもってもう片方は人間のみ。 幹比古、お前は人間のみの方へ行ってくれ。」
「軍の管轄内を突破してくる上に悪魔連れもいるなんて、物騒だな……。 分かった、紫輝は悪魔連れの方をお願いするよ。」
精霊は二手に分かれて移動を始めたので、二人はそれぞれの方向についていった。
その追跡の最中、紫輝は空間を漂う違和感にいち早く気付く。
(結界まであるとは、結構ガチだなこりゃあ……。 まあ、俺としても好都合だがな。)
いつの間にか境界を破ってきた悪魔が放つ結界が一帯に張られていたのである。
恐らくは、幹比古が対処に向かった連中の仕事をより確実に遂行させるためのバックアップだろう。
それならば、悪魔をすべて葬ればいいだけの単純な話になる。
移動の最中に、そのための戦力を呼び出す。
『軍の施設に悪魔とは、よほどの命知らずか……。』
『私は感謝しているわ。 夜空の路上ライブなんて初めてだもの。』
憑依にケルベロス、魔具にネヴァンの機動力と制圧力を重視した組み合わせ。
相手の種類、数が分からないので必然的に難が無い状態にするのが鉄則だ。
アグニ&ルドラを使うのも考えたが、炎と風という属性が故に後始末が面倒という欠点があるので今回は見送った。
ケルベロスの憑依により更に早くなった脚の御蔭で、幹比古と別れてさほどたたずに対象の一団が見えてくる。
「人間は二人……で、悪魔の方は……ちっ、まさかのアレかよ。」
『……1年前のアレか。 よもやこの地で見ることになるとは……。』
『相変わらず不愉快な姿ね。 見てるだけでフラストレーションが溜まって嫌になるわ。』
ソレを目にした瞬間、紫輝だけでなくケルベロスとネヴァンからも嫌悪の雰囲気が漂う。
相手が連れている悪魔は、天然物ではまず見ることは無い種類だ。
剣と有翼種が融合したようなソレは、魔界で見ることはまず有り得ない。
見た目通り、剣と有翼種の悪魔を人為的に融合させた……いわば人造悪魔なのだから。
「1年前の時点で実用化の目途は立ってたみてぇだが、まさかもう他国に流れてるとはな……。」
『教団と繋がっていたのか、技術を盗んだだけなのかが気になるところだが……まあ、その辺りは自ずと分かるな。』
「とりあえずはひっ捕らえねぇとな。 ……ちゃっちゃと片付けるぜ!」
茂みから飛び出し、即座にケルベロスと共有したイメージを引っ張り出す。
対象は動いているので、足止めがてら通行ラインを塞ぐように『ブフダイン』を放つ。
唐突に現れた氷の壁を前にして、襲撃者=紫輝の存在に気付くが時既に遅し。
周囲に視界をやる時間すら与えられず、こんな場所ではそうそう聞こえない歪みがある音と共に放たれた『マハジオダイン』で一斉に気絶させられる。
「あー、やっぱ魔具でやる方が調整やりやすいな。」
『まあ、使い魔の扱いに慣れているネヴァンならではだろう。 ……我やベオウルフではこうはいかん。』
それだけでなく、魔法の制御を魔具に委ねることが出来る点も大きい。
『憑依』の場合は魔法の使用者は否応が無く紫輝になってしまうので、適性が低いと魔法の暴走が起こりかねない。
まあ、幸いなことに本来の紫輝は特に苦手分野は無いというややほのかに似ている傾向なのでそこまで問題は無いのだが……。
人間を処理したところで、有翼剣型の人造悪魔……『グラディウス』は紫輝を敵性因子として認識したようだ。
群れの一部が形状を変えていかにも突進しますよと言わんばかりに回転しているのがその証拠だ。
その中で、縦回転している種類を目ざとく視認した紫輝は考えるより先に懐から相棒の片割れを取り出した。
4月末に耐久性を大きく増して戻ってきた蒼色に金の装飾が映える拳銃、通称狂気の
オートマグとデザートイーグルという知名度の高い先輩・後輩に出番を取られがちの不遇なハンドキャノン、ウィルディ・マグナムをベースに魔改造された対悪魔用の拳銃だ。
ちなみに、もう一丁ワインレッドに黒の装飾と血生臭い見た目の
取り出されたルナティックから弾薬が放たれ、縦回転していたグラディウスは一撃でその刃が欠けて吹っ飛ばされる。
『……相変わらず出鱈目な拳銃ね。 それを平然と扱う貴方も貴方だけれど。』
「そりゃあこれは俺専用だからな。 他の奴には使えないし使わせたくもない。」
何せこの二丁、自動で使用者の想子と霊子を吸引して反動軽減と霊的ダメージを与える術式を発動させる形式の武装一体型CADなのだから。
想子の枯渇を招く以前に、霊子を精神から引き出す術が無い者では話にならない。
紫輝はペルソナの適性=霊子を能動的に扱えるということでこの点は余裕でクリアしている。
なお、縦回転のグラディウスを優先して狙っているのは、経験上こちらの方が攻撃までの間隔が短く危険だということを理解しているが故。
そうでない相手は基本的に後回し。 仮に攻撃されても軌道が直線的なので音にさえ気を使えば容易にやり過ごせる。
そうしている内にグラディウスも学習したのか、紫輝の背後で4体同時に縦回転待機を行う。
ピーキーなラインを描く攻撃を4体同時ならば1発くらいは入るだろう、そんな楽観的判断から来る行動か。
「俺の後ろに立つな……まあ、ライフルじゃねぇのが残念だがな。」
カーネイジ、ルナティックを一旦ホルダーに収め、即座にネヴァンを構える。
使い魔を呼ぶ旋律を奏でて瞬時に大量召喚、紫輝の元に突貫せんとするグラディウスを全て封殺してしまう。
攻撃態勢に入っている状態だと多少のダメージですぐに墜落する性質はここでは見事に仇になっていた。
堕ちて地面に刺さったグラディウスはそれこそ陸に上がった魚。 カーネイジ&ルナティックによる狙撃だけで的確に葬る。
数こそ15体といったところだったが、紫輝とケルベロス、ネヴァンの手にかかれば1分ほどであっさりと殲滅は完了した。
「……まだ匂うな。 ったく、お友達がやられてるってのに薄情なヤツらだ。」
『こっちに来る気配は無いわね。 ……土の中を掘り進んでいる音は使い魔越しで聞こえるけれど、これって幹比古の方へ向かってるんじゃないかしら。』
土の中を掘り進む音……それでいて人工悪魔。
紫輝の記憶の中で、そのような特徴の種類は1種しかいない。
名は『カットラス』。 魚類型悪魔と剣を融合することで作られた陽動・奇襲を得意とする悪魔。
「すぐに向かうぜ。 不意を突かれでもしたら流石に面倒だろうしな。」
それだけ聞くと、ネヴァンは即座にカットラスの姿を見た使い魔の方向へ紫輝を誘導する。
幹比古の使用魔法を考えれば、カットラスくらいなら遅れをとることはそうそうないとは思っている。
だからこそ、不意を突かれでもしたらというのはあくまで建前。
本音はただ単に先ほどのグラディウスでは不完全燃焼だから獲物を取られたくないだけだ。
時を少しだけ戻して、不審者のみのグループを追った幹比古の方に視点を移そう。
悪魔を含むグループの方へ向かう紫輝を見送り、幹比古も精霊の導きに従い移動。
精霊の視覚越しの光景と自身の視覚が一致する頃合いで手頃な茂みに身を隠した。
(3人……当然のように全員が武装、か。)
顔もきっちりと隠した上で夜に溶け込むような黒ずくめの格好、それに加えて拳銃。
ただの不審者と片付けるには明らかにやりすぎな風貌であろう。
即座に無力化を目的とした術式を選択、その呪符を懐から取り出す。
後はこれを当てれば……というところで、少々身を乗り出しすぎたのか不審者グループの一人が幹比古の存在を察知した。
これまでの経験による危険察知が働いたのか、幹比古は即座にその場から横に飛び出す。
(くっ、行けるか……!?)
横に避けながら相手の次の手を予測せんと視界を向けると、そこには奇妙な光景があった。
自身を狙っていたはずの不審者の銃が、綺麗にいくつかのパーツに分解されていたのだから。
その影響で不審者たちも慌てふためいており、その間に幹比古が先に仕掛けていた術式、『雷童子』が完璧に命中して不審者たちは倒れ伏した。
だが、幹比古は警戒を解くことは無かった。
(誰が僕の援護を……? あのやり方だと紫輝はまず有り得ないし……)
少なくとも拳銃をパーツごとに分解するような魔法を紫輝が使うとは思えない。
そうなると、敵か味方か分からない。 最悪の事態を考慮して懐に手をやっている。
「幹比古、警戒を解いてくれ。 援護したのは俺だ。」
すると、相手の方からあっさりと姿を見せてくれた。
暗闇から現れたその顔は、ちょうどつい先ほど話題に上がった人物のものだった。
「達也? あの魔法は君がやったのか……。」
「ああ。 だが、何をやったのかは悪いがノーコメントということにしてほしい。」
「分かってるさ。 個人の魔法事情について首を突っ込みすぎるのはマナー違反だからね。」
紫輝関係で慣れているのか、達也のワケありの雰囲気も察して追及はしなかった。
幹比古の返答に一つ頷いて、達也は不審者たちの状態……具体的に脈を確認していた。
「死んではいないな。 一撃でキッチリと気絶させられる正確な遠距離攻撃……いい腕だな。 それに、あの反射回避も経験を積んでいないと出来ない。 大したものだ。」
「まあ、どこかの破天荒に連れ回された結果なんだけどね……。」
本来なら撃たれる前に仕留めることが理想だったのだが、それはあえて口に出すまでもない。
以前の幹比古ならばそこにこだわっていただろうが、今は結果良ければの考え方が出来る程度には柔軟になっている。
「……っ!? 達也、まだ何かいるから気をつけて!」
「何?……まさか、アレか?」
精霊のざわめきを感知した幹比古が真っ先に警戒態勢に再度入った。
一歩遅れてそれに倣う達也は、幹比古のその反応に既に当たりをつけている。
幹比古は精霊のざわめきの中で更なる情報を拾うために意識を集中させる。
感知したのは、何者かが地面の中を移動して、自分たちに奇襲を駆けようとしている姿だった。
言葉を発するより前に幹比古は呪符を取り出し、地面に手を添える。
そして、地中を走る何かがいる方向に対して地割れを起こすことで強引に引きずりだすことに成功した。
「後は頼んだ、紫輝!」
「オーライ! ナイスアシストだぜ相棒!」
地割れによって地中に留まることが出来ず、地上に現れたのは剣と魚介類が融合した姿をした悪魔、カットラス。
幹比古はこの丁度いいタイミングで合流した所に最後の仕上げを頼み、それを紫輝は快諾。
背中に背負っているネヴァンを手にし、形状を鎌に変えてから縦回転でカットラス達に向けて投擲する。
その返しで回転運動に巻き込まれたカットラス3体は全て紫輝の近くに纏められた。
地上に打ち上げられた魚類など、何の脅威にもならない。
止めは指を鳴らすと同時に現れた3つの氷塊。 憑依状態のブフダインによって作られたそれにより、カットラス3体は無慈悲に潰された。
「幹比古が対処してくれたお蔭で楽に処理できたぜ。 ますます板についてきたな。」
「精霊が教えてくれたのも大きいけどね。 ……まさかとは思うけどさっきのは新種かい?」
「新種と言えば新種だな。 どうやら今回は4月の時よりかは悪魔関係の技術は進んでいる相手みたいだぜ。」
「……なるほど。 あの時と同じような人造悪魔か。」
先ほどの悪魔についての説明に、達也も聞き手に加わっていたことに幹比古は疑問を抱いた。
表情にそれが出たからか、紫輝が苦笑しながら説明を行う。
「あー、幹比古。 達也、後ついでに深雪は問題ねぇぞ。 以前に悪魔の襲撃に巻き込まれたことがあるし、俺の裏の顔も当然知ってるからな。」
「むしろ言っていなかったのか……。 ちなみに俺の方は4月のテロでお前が紫輝の助力をしていたことは知っているからその点も安心してくれ。」
「何だ、そうだったのか……。 それなら大丈夫だね。」
達也と深雪、この兄妹ならば口の堅さならば問題は無いと安堵の表情を見せた。
その後、紫輝が今回の人造悪魔はとある筋から依頼を受けていて、そのバックアップも期待できるから余程の事態でない限りは心配しなくていいと追加説明。
幹比古もその余程の事態が来ない限りは首を突っ込まないことを約束した。
「お、そういえば幹比古。 丁度いいからこの場で相談しちまったらどうだ?」
「紫輝……この場でそれはどうかと思うんだけど……。」
「相談? すぐに済むようなことならばこの場でも構わないが……。」
気絶している不審者が別々の場所に3人ずついる状況下なので手早く話す幹比古。
魔法の発動速度がどうにも遅いのだが、どうにかならないものかと随分ざっくりとした説明になってしまったが……。
詳しい経緯……具体的に紫輝の荒療治のことは今は話していない。
「なるほど。 一応幹比古の魔法はこいつらを気絶させた雷撃とあの人造悪魔を引きずり出すための地割れの2つしか見ていないが、言えることが1つだけある。 幹比古、発動スピードについてはお前の能力云々ではなく使用している術式に無駄があることが原因だ。」
「え、術式に無駄が? ……2回見ただけなのにそこまで分かるものなのか……?」
「まあ、信じられないのも無理はねぇな。 だが、達也は魔法の構造が分かるのは事実だぜ。 ……にしてもまさか術式の方に問題とは、これまた灯台下暗しだな。」
幹比古から聞いた話から、紫輝もてっきり幹比古の魔法資質に何か問題が発生していたのかと思っていたのだから驚きを隠せなかった。
当の幹比古は、吉田家の魔法に欠陥があるという指摘に僅かながらのショックはあったが、それでもすぐに立ち直る。
「指摘した俺が言うのもアレだが、怒らないんだな。」
「まあ、紫輝が信頼を置いている君の指摘だから的外れということは無いだろうからね。 っと、僕は警備員を呼んでくるよ。 詳しいことはまた後で。」
「お、じゃあ任せたぞ幹比古。」
あまり時間をかけては不審者たちが起きかねないので、一旦追究は中断。 幹比古は警備員を呼びにこの場を去った。
再度呪符を取り出し、精霊との感覚共有を用いて警戒は怠らずに。
そうして紫輝と達也のみが残ったわけだが、幹比古が居なくなったことを見計らって近づいてくる人物が一人。
「割と容赦のない助言だが、普通に受け入れていて良かったな特尉。 それと、久しぶりだな
「やはり貴方でしたか、風間少佐。」
「お久しぶりです、少佐。 かれこれ半年以上ぶりですかね。」
二人共風間の気配には気が付いていたので、もし幹比古が自分から申し出ていなかったらこちらから頼むつもりだった。
紫輝の裏の顔はあちらも知っているから問題は無いのだが、達也に関しては守秘義務だから可能な限り隠さなければならない。
「何やら不審な気配がしたが、悪魔が現れたようだな。 ……それも、見たことのない種類に見えたが。」
「俺も去年初めて見たのですが、いうなれば人工物ですよ。 多分俺が潰したところから流出したんじゃないかと思ってます。」
「確かに、3年前とはまるで様相が異なっていたからな……。 予想以上に根深いな、悪魔の問題は。」
人工で境界を緩める手段はかなり前……少なくとも3年前のとある海戦の裏でも確認されていた。
打って変わって人造悪魔は1年前、USNAにて紫輝が初めて視認した存在なので殆ど周知されていないのも無理はないだろう。
今回出てきたのはグラディウスとカットラスだが、紫輝の見立てでは後3種はいるだろうと踏んでいる。
その中には、かつての己の仮面と似た悪魔もいるし、もしこいつが来たらそれなりに厄介なことになりかねない。
「達也も気を付けろよ。 俺が片付けたグラディウスはともかく、カットラスは割と厄介だからな。」
「まあ、九校戦そのものに悪魔を使うとは思えないが……警戒するに越したことは無いか。 ところで少佐、この者たちをお願いしてよろしいでしょうか。」
「そうだな、もう1ヶ所の方も含めて引き受けよう。 ……それにしても、予想以上に行動が積極的だな。 二人とも気を付けろよ。 達也はエンジニアという形だが九校戦の参加者で、紫輝は国外では名が知られているからな。」
「あー、確かにこれで俺が絡んでいるってことが向こうにバレる可能性もありますか……。 まあ、望むところですがね。」
最近のあまりの平和さに若干ながらの不満があった紫輝から発せられる獰猛な気配に、達也と風間は苦笑をせざるを得なかった。
風間も付き合いそのものはそこそこだが、紫輝の常に刺激を求める性格は熟知している方だ。
「今日はもう遅いから、詳しいことは明日だな。 我々もこのホテルに滞在しているから昼にそこで話そう。 」
「分かりました。 では、失礼します。」
明日は開幕式もある都合上達也は早く出る必要があるし、紫輝も早朝からリンクを貸切って練習を行う予定だ。
それもあってか、昼に風間と他の面々に会う約束を交わして挨拶もそこそこに足早に部屋へ戻っていった。
翌日、昨晩の一騒動など無かったかのように2095年度の九校戦開幕式は行われた。
この日から10日間、本線と新人戦合わせて20種目が行われる。
初日はスピードシューティングの予選と決勝トーナメント、バトルボードの予選。
一高の主な出場選手は、スピードシューティング女子に真由美、バトルボード男子に服部、女子に摩利。
初日からなかなかの顔ぶれとなっていた。
「で、そんな初日なのにスケートの方を熱心にやりすぎて危うく席を取りそびれそうになるって……まあそれでこそ獅燿君なんだけど。」
「悪い悪い。 予想以上に氷がフィットしてるわそこそこ調子がいいわでつい熱くなっちまってな。」
久しぶりに悪魔を狩れたことが要因となり、紫輝の調子が目に見えるレベルで上がっていたのだ。
あまりに調子に乗って4-3のコンビネーションジャンプもやったらしい。 惜しくもトリプルトウループが回転不足君気味だったが。
「まあ、この競技に限っては後ろで観た方がいいから丁度良かったんじゃない? ほら、前の方見てみなよ。」
エリカが指差した方向に視線を向けると、最前列に群がっている観客の姿が。
恐らく、真由美目当ての観客たちだろう。
……否、彼女の姿が現れた瞬間に黄色い声援が聞こえてきたから、それはほぼ確定であった。
「まあ、七草先輩ならしょうがないんじゃねぇか? ああいう騒がしいのが居ても何の違和感もねぇさ。」
こういう声援はほぼ慣れっこな紫輝だからこその感想だろう。
紫輝の覚えがあるレベルでは世界選手権で国も何も関係なく大声援が飛び交うくらいなのだから。
「大丈夫。 獅燿君はその内比にならないレベルのファンが付くと思うから。」
「今年ようやっと国際デビューの俺にそこまでのファンが付くものかね? そう思うよな皆の衆よ。」
「おいおい、俺ら素人に聞かないでくれよ紫輝。 っていうか、北山が第1号ってことでいいんじゃねぇか?」
「無論そのつもり。 だから獅燿君、ファン第1号特典として色々と贔屓よろしく。」
さりげなく何を言っているのだろうかこのお嬢様は……。
そのような言葉を含んだ視線を雫の親友であるほのかに向けるが、彼女は苦笑しかくれなかった。
「俺が出世したらな。 っていうか国内レベルなら贔屓しなくてもどうにかならねぇか?」
「全日本系統は争奪戦的に厳しい。 だからこそ頼んでる。」
「あー、そういう方面の伝手か。 ……なら達也の出番だな。 毎回チケット取れてるからそういう時は一番頼もしいぞ。」
「そういえば、達也さんと深雪さんは獅燿君の試合を見に行くことが多いんでしたよね。 ……あの、もし機会があったら私も……。」
「紫輝……お前、いいタイミングで巻き込んでくれたな……。」
チケット関係に頼るなら達也ということが伝わると、他の面々も紫輝の試合を是非見たいという流れになってきた。
テレビでスケートを見たことがあろうがなかろうが、表舞台で友人が活躍するところはこの目で見たいのだ。
そんな流れに巻き込まれた達也は表向きは紫輝に非難の眼差しを向けてはいるが、内心はそうでもない。
兄のような弟のような家族的存在の表舞台、それに関心を向けるものが増えるのは色々な意味でプラスだろう。
「さーて、俺のことは今はさておきだ。 七草先輩の方が始まるみたいだぜ?」
シグナルが青になり、奥にある左右の射出口からクレーが複数発射される。
スピード・シューティングの予選は、5分間の間に打ち出される100個のクレーをどれだけ多く落とすかで競う。
競技者の立ち位置とクレーが飛ぶ範囲はそこそこに離れているので、単純に弾丸で1つ1つ撃ち落とすのはなかなかに骨だ。
しかし、真由美はその1つ1つ撃ち落とす戦法を取っている。
(流石は
素の射撃能力には自信がある紫輝だが、流石に魔法オンリーの射撃で十師族直系と張り合おうとは思っていない。
仮に本調子の状態でも、マルチスコープのような知覚系魔法が無いだけでディスアドバンテージで、速さだけならともかく精密さまで競う気には到底なれなかった。
感心している間に100個のクレーが全て射出され、真由美もきっちり100発のドライアイス弾でピッタリ落とし切っていた。
「それにしても、こんな真夏でドライアイスを作って更に撃ちだすとか相当なエネルギーをいるよな……それを100発って結構な負担になるんじゃねぇか?」
ふと真由美の使用したドライアイス射撃の仕組みについて疑問の声がレオから漏れる。
二酸化炭素を冷却してドライアイスにするために熱エネルギーを奪い、更に運動エネルギーを与えて亜音速弾として発射する。
1回や2回ならまだしも、100回行うには少々負荷が大きいのではないか。
そんな疑問に答えるのは、もはやこのメンツでの魔法解説役となっている筆記主席であった。
「確かに、エネルギー保存の法則を無視すれば面倒だし負荷もかかる。 だが、逆にそれを利用すればこの魔法の使用の負担は軽減出来るんだよ。」
「エネルギー保存の法則を利用する? 二酸化炭素からぶんどった熱エネルギーをどうにかするとかか?」
「そうだ。 具体的に言うと、奪い取った熱エネルギーをそのまま運動エネルギーに変えるスキーム、これさえあれば問題ない。 自然界だとエントロピーの逆転になるから有り得ないことだが辻褄は合っている。」
この方法ならばわざわざ新しくエネルギーを追加することなく魔法を完遂出来るので明らかに効率が上がる。
上手いこと現実世界を騙している魔法の使い方に、説明を聞いていた一同は改めて感心する以外なかった。
スピード・シューティング女子予選の後は、バトル・ボード女子予選が行われる。
バトル・ボード……通称『波乗り』は動力の無いボードに乗り、魔法を用いて全長3kmの水路を3周する競技だ。
自分と自分のボード、そして水面に対する魔法行使のみが認められている。
基本的にはボードの推進力とその他挙動、時折水面を操って他者を妨害する、魔法が使われるのはこれらの要素くらいだ。
「これは割と楽しそうだな。 すっげえ実況してぇんだが……。」
「紫輝が実況したら競馬とかのノリになるから止めた方がいいと思うんだけど……。」
「……そういえば、そういうゲームも持っていたなお前は。」
基本はレースゲームばかりだが、競走馬育成シミュレーションも時折やっていることも思い出す達也。
その際は割と熱狂して実況しているので、幹比古の懸念は割と当たっていたりする。
まあ、言ってもやるであろうから余程うるさくならない限り達也も口を挟まないつもりだが。
「相変わらずな紫輝はさておき……ほのか、新人戦の方は大丈夫か?」
「はい! ……でも、達也さんには調整してもらえないんですよね……深雪と雫は2種目どちらも調整してもらえるのに……。」
「ん? それでもミラージ・バットは担当しているし、バトル・ボードも練習や作戦立てに付き合ったりしたが……。」
「君たち全員ちゅうもーく、これぞ泥沼に嵌った朴念仁だぞー。 特にレオと幹比古はこうならないように注意しましょう。」
ほのかとのやり取りが泥沼化を見せている達也の様子を見て、助け船を出すどころか茶々を入れる紫輝。
まるで動物園に居る珍獣の案内をするか如くの扱いに流石にツッコミを入れようとする達也だが、矢継ぎ早に周囲から追撃が入った。
「お兄様、それは流石に……。」
「達也君の意外な弱点はっけーん。」
「そういう問題じゃないと思いますよ……?」
「朴念仁が過ぎると思うよ……?」
ほのか以外の女子4人からの何とも言えない視線と言葉、そして紫輝以外の男子二人からもおいおい……と言った視線が。
四面楚歌を通り越して八方塞がり。 こうなっては達也も余計なことを言えなかった。
そんなやり取りもありながらも、間もなく予選第3レースが始まる。
一高の三巨頭、優勝候補にも挙げられている摩利の出番である。
彼女の名前がコールされた瞬間、先ほどの真由美の時と同じ、下手をすればそれ以上の黄色い声援が響く。
「うっわ……あんなののドコがいいのやら……。」
「あー、こういう声援は俺も好きじゃあねえな……。」
摩利に対する熱狂的な応援を見て、エリカと紫輝は揃って顔をしかめていた。
しかも、この二人の思っていることは半分ほどは一致しているから面白いものだ。
なお、一致していないもう半分は言うまでもなくエリカにしかない摩利に対する悪感情である。
「ウチの先輩たちには熱狂的ファンが多いな……。 しかも今回は見事に女子ばかりとは。」
「渡辺先輩はカッコいいタイプですからね、しょうがないと思いますよ?」
「……ふん、相変わらず偉そうな女。」
美月の客観的な意見を聞いて、更にエリカは不機嫌になっていく。
エリカの摩利に対する感情は紫輝や達也も知っているが、詳しいことは聞くだけ藪蛇になる危険があるのでこちらから聞くことは無い。
そんなことを考えている内に、第3レースがスタートした。
「さあ始まりました第3レース! 第1高校渡辺選手がロケットスタートを決めて一気に逃げ切りを図らんとする! 2番手以降は割と団子状態だ!」
「本当に実況始めてる……。 しかも色々なノリが混ざってるような。」
摩利のロケットスタートを皮切りに、紫輝の実況も始まった。
声量は程ほどにしているのだが、その色々とカオスな実況は周りを苦笑させるには十分だった。
「おおっと! 後続が水面を操作して大波発生! 妨害と推進力を両立させた戦法だが、自爆しては何にも意味が無いぞぉ! 渡辺選手は一人安定して避けて早くも独走体制だ!」
「なるほど、移動魔法と硬化魔法のマルチキャストか……。」
「お、硬化魔法? どこに使ってるんだ、達也。」
自分の得意分野の話題だからか、興味津々と言った風に乗ってくるレオ。
紫輝もそのことを実況しようかと思っていたところだが、達也の講義を邪魔するつもりはないのでそこにはあえて触れなかった。
「硬化魔法が物質の相対位置を固定する魔法……ということは流石に分かっているよな?」
「そりゃあ得意分野だからな、大丈夫だぞ。」
「今渡辺先輩は自分とボードの相対位置を固定しているんだ。 そうすればボードから落ちることは無いからな。 更に、自分とボードを纏めて1つのオブジェクトと扱って移動魔法をかけている。 更に言うならコースに合わせて持続時間も調整しているな。」
「凄いですね……三巨頭の中でもテクニカルな渡辺先輩らしい、まさに巧みな戦い方ですね。」
魔法力そのものは同じ三巨頭である真由美と克人には劣るが、これこそが彼女のフィールド。
多彩な魔法を逐一選択、時にはマルチキャストで展開も行える手数の多さこそが最大の強みだ。
達也は相手によって悪魔の種類、また憑依・魔具により行動の選択肢を増やしてきた紫輝の姿がチラッと浮かんだ。
本人も意識しているのか、実況しながらもその視線は完全に独走状態の摩利に向けられていた。
「絶妙な間隔と緩急で襲い来るコーナー群を捌いた後は勾配きつめのストレート! ここで渡辺選手は振動・加速の二系統の魔法も加えてきたがこれはますます差は離れるばかりか!?」
「……と、紫輝が実況している通り振動と加速魔法も用いているから、渡辺先輩は常時3、4種類の魔法をマルチキャストしているということだ。」
「完全に高校生のレベルを超えていますね……うう、何だか逆にプレッシャーが……。」
「ほのか、私たちは私たち。 そんなに意識してもしょうがない。」
新人戦でバトル・ボードに出るほのかが思わず圧力を感じてしまうほど、凄みがあるのだ。
同じく真由美の百発百中を見た雫も、口では落ち着いているが圧力を感じていない訳では無い。
この午前中だけでも、口伝だけでしか認知することが無かった三巨頭の内二人の実力を目の当たりになり、他の面々に比べれば冷めていた紫輝も少しは熱を帯びたようだった。
なお、エリカのみは摩利の活躍が気に入らないのか達也の絶賛に対して『性格が悪いだけ』と酷評していた。
日が高くなり、時刻も昼時という頃合いに、達也と紫輝は並んでホテルの中を歩いていた。
わざわざ深雪たちと別行動しているのは、言うまでもなく昨晩の約束が理由だ。
目的の一室は分かりやすく彼の部下が立っていたので一発で視認することが出来た。
それぞれが『大黒竜也』、『仮面の悪魔狩り』という名を出し、中に居る人物に来訪を取り次いでもらった。
ドア越しから入室許可の声が聞こえ、すぐにドアが開かれたので二人は凛とした姿勢のまま入室した。
「「失礼します。」」
普段からしっかりしている達也だけでなく、紫輝もいつもの軽い雰囲気はどこへやら、真面目モードになっていた。
これが世界各地で名を上げている『仮面の悪魔狩り』の仮面を纏った紫輝である。
「達也、紫輝、よく来てくれた。 まあ、とりあえず掛けてくれ。」
「いえ、自分はここで。」
着席を勧める風間だが、達也はあくまで休めの姿勢を崩さずに立ったままでいるつもりだった。
対応としては無難で間違ってはいない。 何せ上官とその部下の関係なのだから。
ただ、元々友好関係のある協力者という立場で呼ばれている紫輝もそのせいで着席しづらくなってしまうのだが。
「あくまで今日は『戦略級魔法師 大黒竜也』としてではなく、我々の友人『司波達也』として呼んだのだからそう遠慮するな。 紫輝も同じくだぞ。」
「それに、君たちが立ったままではこちらも話しづらいからな。」
風間だけでなく、その場にいるもう一人の男性も静かに促していたので達也も立ったままでいる理由は無くなった。
ちなみに、席が円卓になっているのはただのこだわりからである。
「柳大尉、お久しぶりです。」
「半年ぶりだな。 紫輝も暫く会っていなかったが、元気そうで何よりだ。」
「かれこれ年末以来ですね。 今年に入ってからは入学関係で忙しかったですし……また機会があったらお手合わせお願いします。」
紫輝の依頼に無表情ながらも了承の意を見せた男性は柳連。
階級は大尉で、体術と本人特有のとある古式魔法を組み合わせた白兵戦を得意とする。
紫輝にとっては白兵戦の鍛錬相手であり、素手での戦いについては彼から学んだこともかなり多い。
「達也君、先日のサードアイ調整は本当に助かったよ。 アレは君じゃないと手に負えない代物だからね。」
「いえ、こちらこそありがとうございました真田大尉。」
「紫輝君のカーネイジとルナティックも改良してからどうかな。 対悪魔を想定としたCADは共同制作とはいえこちらも初めての試みだったからね。」
「真田さんの改良案にはあちらも絶賛してましたよ。 俺としても使いやすくなってましたし、本当にありがとうございます。」
一見穏やかな雰囲気を見せる男性は真田繁留。
階級は柳と同じく大尉で、防衛陸軍兵器開発部の技術士官である。
紫輝のカーネイジ&ルナティックにもそこそこに携わっており、4月末までに行われた改修の案を出したのも彼である。
「私も二人に会うのは久しぶりですね。 ところで紫輝君、あっちの方も順調?」
「滑る方なら今も調整中ですよ、響子さん。 まあ、初戦からPB(パーソナルベスト)狙うつもりで行きますよ。」
紫輝にスケートの進捗を訪ねた女性は藤林響子。
階級は中尉。 独立魔装大隊内部では風間の副官のポジションにいる。
また、電子・電波魔法を用いたハッキングを得意としており、二つ名は『
国内で紫輝が軍と共同で作戦を行う際には彼女のサポートに助けられたことも多い。
紫輝との会話から分かるように、彼女もまたスケオタである。
軍の方で忙しいが故に現地観戦は少ないが、そちらの知識については雫以上だと思われる。
「しかしすっかり学生生活が馴染んできたんじゃないか、紫輝。 達也が相変わらずな分新鮮味があるぞ。」
「それは一体どういう意味合いで言ってるんですか山中先生……。」
「そりゃあお前が学生やってるなんて裏事情知ってる人間からすれば違和感ありありだろうに。」
制服姿の達也と紫輝を見比べてなかなか酷いことを言っている男性は山中幸典。
階級は軍医少佐で、影響が無い範囲で達也に人体実験を頼んでいる辺りやや破天荒タイプな人物である。
紫輝にはその矛先は向かないので、彼からすればちょっと豪胆な行動をするおじさんである。
この面々に隊長である風間を加えた計5人が独立魔装大隊の幹部メンバーだ。
挨拶もそこそこに再会の祝杯を交わし(ティーカップだが)、風間の方で捕らえた工作員の情報から話は始まった。
「やはり昨夜の侵入者は
「ああ。 目的などの詳細な情報はまだ調査中だ。 しかし、まさか人造悪魔を使うとはな……。」
事前に注意こそ受けてはいたが、こんなにあっさりと遭遇するのは達也としても想定外だ。
紫輝も、九校戦が進んできた段階で来ると思っていたので割と面を食らっていたりする。
「確か、紫輝君がUSNAで見たのと同じ種類という話だったね。 その組織は確か潰したと聞いたけど……。」
「悪魔を使って魔法に浸ってしまった世界を正す。 そんなお題目を抱えた反魔法師集団でしたね。 資料とかもこっちで押収しましたが、多分裏で流出してたんでしょう。 それについてはもうあの人たちに申請してありますよ。」
「悪魔関係は彼らに任せるのがベストだな。 手間をかけさせてしまうが……。」
「お気になさらず。 バックアップを受けているのはお互い様ですから。」
悪魔の脅威を理解して、更に一人での討伐が厳しい場合は色々なサポートを受けているだけで紫輝とその上役からすれば有り難いのだ。
達也経由で知り合ったが、今や必要不可欠なパイプの1つである。
「それにしても、昨夜もそんなに遅くまで警戒してたの?」
「いえ、俺は競技用CADの調整をしていたので遭遇そのものは偶然ですよ。」
「俺もダチに付き合って深夜徘徊してただけですよ。 まあ、警戒はしていなかったといえばウソになりますが。」
二人の言い分を聞いて、山中は少し吹き出し、真田は苦笑を浮かべていた。
「あの天才技師のシルバー殿が高校生大会のエンジニアとはなぁ……。」
「レベルが違いすぎて流石にイカサマな気がするけどね。 どれだけ仕上がりに差が出るのやら。」
「大半がクアドレスの中一人だけショート・フリー合わせて5本クアド飛ぶのが混ざってるようなものでしょうね。」
九校戦エンジニアの中に達也が混ざるのは、どうあがいてもチートキャラが混ざるようなもの。
山中、真田、紫輝は茶化してはいるが、実際言っていることは微塵も間違ってはいない。
何せ、今やすっかり名前が売れている『トーラス・シルバー』の片割れなのだから当然と言えば当然だ。
「達也君だって立派に高校生ですから……。 というか紫輝君、ある意味ではトーラス・シルバーより名前が売れている貴方がそれを言ってはダメでしょう。」
「国内ではまだしも、他の国では一気に知名度が上がる『仮面の悪魔狩り』だからな。 もし九校戦で名前を連ねていたらそっちが卒倒しかねん。」
「それはそれで面白そうですね。 ちょっと来年出たくなりました。」
「お前の場合、それが現実的だからなおさら怖いのだが。」
他の国が九校戦のような行事のことまで把握しているかは謎だが、柳の言ったこともあながち間違ってはいない。
あちこちで出没した、軍ですら対抗が難しいとされる悪魔を狩っている世界規模の有名人がローカルな大会に居たらそれこそ愉快な反応間違いなし。
そんな光景に愉悦を感じた紫輝が割と洒落にならないことを呟く。
達也も割と……否、施されている封印が解けたら確実にあり得るその未来に冷や汗を流していた。
「そんな紫輝君はひとまずさておき、達也君は選手としては出ないの? いい線行くと思うんだけど。」
「おい藤林……たかが高校生の大会に戦略級魔法師が出るのもどうなんだ。」
「去年の九校戦では十師族の七草家や十文字家がAランク魔法を普通に使ったくらいですもの。 達也君なら『
響子もなかなかに酷い言い草だが、周りにそれを否定する空気はまるでなかった。
物質を分子レベルにまで分解できる魔法、雲散霧消(ミスト・ディスパージョン)。
達也が使える2種類の魔法の1つ、『分解』のバリエーションの1つだ。
人体に使ったら凶悪極まりないこの魔法だが、対悪魔となってしまうと極めて相性が悪いのだ。
依代を仮に分解したとしても、核である霊子情報体は無傷なのだから。
逆に紫輝は対人戦がそこまで得意ではないので、上手く達也と紫輝で対人と対悪魔で役割分担が出来ていたりするのだ。
「藤林、軍事機密指定の魔法だからそれくらいにしてくれ。 後、達也……分かっているとは思うが。」
「分かっています。 もし
「ああ、それでいい。 紫輝の方は私からわざわざ言うことは無いが、くれぐれも気を付けてくれ。」
「ですね。 連中がなりふり構わずになってきたらこちらも色々と手を尽くしますよ。」
二人に改めて確認の意を取って、風間は一つ頷く。
実際、達也は選手としての出場は想定すらしていないので杞憂に終わると思っているが……。
紫輝は、後で上役に連絡していざという時の人員の準備を要請することを頭の片隅に留める。
それからは特にこれと言った連絡事項は無かったので、大人たちとの雑談会に適度に混ざることとした。
独立魔装大隊幹部陣とのティータイムを終え、達也と紫輝はスピード・シューティング決勝トーナメントの会場へ到着する。
「あーらら、これは席探すの苦労するな。」
あまりの席の埋まり様に紫輝は思わずぼやいてしまう。
優勝候補筆頭の真由美の試合だからだろう。 前の方は相変わらず黄色い声援を飛ばしそうな者が多いが……。
とりあえずは空席を求めて暫くさまよっていると、覚えのある声が聞こえてきた。
「そこのお二人ー、こっちだよー!」
「お、流石はエリカ抜け目ないな。」
皆が二人分の席を確保してくれていた御蔭で立ち見の心配はなくなった。
その恩恵に与り、二人は深雪を挟んで座ることにした。
「ん? 幹比古の姿が無いが、休んでいるのか?」
「熱気に中てられたって。 まあ、これじゃあしょうがないんじゃない?」
「そうですね、私も眼鏡が無かったらダウンしてたかもしれません……。」
紫輝が入学前に振り回したとはいえ、それでも基本的な体力は簡単に改善されるものではない。
もう少しプライベートでも振り回しておいた方がよかったかと呟く紫輝だったが、深雪からのため息混じりのツッコミを受ける。
「っていうか、二人とも一体どこに行ってたんだ? 全く見当たらなかったぜ。」
「ちょっと知り合いと会ってな。 紫輝も少しスケート関係者と話があったようで少し会場から離れていたんだ。」
「まあ、この期間が終わったらすぐにコロラドだから色々とな。」
「確かに、色々詰める必要はあるね。 コロラドだと会場の高低差の影響を考慮して動く必要があるから。」
上手く紫輝関係の具体的な嘘で余計な追及は免れる。
唯一事情を知っている深雪は何とか表情を崩さないように徹しているが、二人以外でそれを気にするものはいない。
「それにしても、ここまで会長狙いの観客が多いと相手選手もやりづらそう……。」
「だが、それを負けの言い訳にするのは三流がやることだ。 アウェーの中でも勝つのが本物なのさ。」
「紫輝もその予定ですもの。 ちゃんと有言実行しなければいけないわね。」
ほのかの呟きに対する紫輝のシビアな回答。
一瞬だが、同じ競技者としての鋭い顔を垣間見せて周囲の人間はその瞬間だけでも息を呑んでしまう。
慣れっこな深雪はプレッシャーをかけるような軽口を返して、紫輝に不敵な笑みを零させていた。
「何か本当に紫輝君が出ないというのも勿体ないよねー。 少なくともそういうメンタル面なら明らかに一線を画してるし。」
「ま、そればっかりはしゃあねえさ。 ……さーてここいらで静かにしよう。 始まるぜ、そろそろ。」
紫輝の言うように、既に真由美と相手選手がスタンバイしていた。
先ほどほのかの言っていた通りに相手は真由美を意識しているのか、顔がやや強張っている。
……が、実際に始まったらそれを何とかごまかしながらも確実に移動魔法を使って2個のクレーをまとめて破壊していた。
真由美は予選と同じくドライアイスの弾丸で正確に撃ち抜いているので、相手のクレーを破壊することによる自殺点はお互いに有り得ない。
完全にミスをした方が負けというシンプルな試合となっていた。
こうなると、傍から見れば真由美の方が不利に見える。
何故なら、この対戦形式のルール上どうあがいても直線的弾道には綻びが生じるのだ。
それは死角。 早い話、相手のクレーが射線を封じている間は弾を発射することが出来ない。
相手もそれが分かっているから試合前の様子とは裏腹に着実にポイントを重ねているのだろう。
だが、相手は完全に失念していた。
今隣に居るのは、現在十師族2番手の力を持つとされている『七草』の直系ということを。
「お、おい……今下からクレーが破壊されてなかったか!?」
「下から!? 一体どうやって当てたんだ!」
丁度真由美から見ると死角が発生している状況のはずなのに、彼女のクレーが破壊された。
それも、一瞬見えた弾道から判断するに下からの狙撃……一体何があったのか、観客は戸惑うばかりだ。
しかし達也と深雪、紫輝は何があったのかちゃんと把握していた。
「七草先輩が作ってんのは弾丸だと思ってるならそれは大間違いってこった。 そんな単調なことはしねえさ、あの人は。」
「そう、会長が作っているのはその銃座。 あらゆる方向に応じて作り出すからどの方向にも撃てる。」
「それに、会長にはマルチスコープもありますから死角はありません。」
『魔弾の射手』……それが今真由美が使っている魔法の名だ。
ドライアイスを射出する『ドライ・ブリット』の射出点をコントロールするバリエーション、Aランクに値する。
射出点を操るところから始めるので、知覚系統魔法も並行して使わないと当てることもままならないだろう。
その点真由美は『マルチスコープ』があるので文句なしだ。
「凄いですね……。 まさに百発百中なんて。」
「これが競技だからいいが……もし、戦場で殺傷力最大の『魔弾の射手』が使われたらどうなることやら……。」
既に試合は真由美の勝ちだと確信した達也が、呟いた一言に大半の人間は顔を青くしてしまう。
死角の無い全方位攻撃を、殺傷力最大などで放ったら、並の相手では全く為すすべなくあの世行きだ。
(アレを使われたら……まあネヴァンの出番だわな。 全方位から来るならこっちも全方位防御を固めてれば問題なしだ)
ネヴァンを展開する前でも持ち前の直感で回避も不可能ではない。
そのイメージを即座に浮かぶのも、持ち前の実戦経験の賜物であった。
その後の試合も真由美は『魔弾の射手』を駆使して圧勝。 他の選手との段違いのレベルを示してスピード・シューティング優勝を飾った。
夜、紫輝は達也の部屋を訪れていた。
同室の幹比古はまだダウンしていて休んでおり、レオはどこかへ散歩へ行ってしまう。
そうなっては一人で時間を持て余してしまうので、気配同調を上手く使って達也の部屋までたどり着いたのだ。
「一人で暇なのは分かるが、何も気配同調を使うまでしなくてもいいだろう……。」
「日頃からの鍛錬、これを怠ったらあっさりと感覚が鈍っちまうからな。 八雲先生でも同じこと言ってたぜ?」
確かにそうだが、この部屋に来るときに使う必要はないだろう……と言おうとするが、言っても無駄と判断して途中でやめた。
それに、悪用しているわけではないのでとやかく言う必要もない。
「ところで、何か武装一体型CADのデータが見えるが……お前のことだから見た目通りに加重とか加速付与とかじゃねえよな。」
「言い方が妙だが、まあそうだ。 競技には全く関係ない玩具だが、お前なら興味を持つだろうな。」
達也は紫輝にデータを見えるように画面を回す。
その中に、どのような系統の魔法に対応しているCADの項目を見て、紫輝は思わず口端を歪めていた。
大剣を思わせるこのCADだが、その使用用途は初見では到底行き着かないものなのだから。
もし使ったら確実に初見殺しになる。
「これは使ってみたいが……もしあっても俺じゃあテストは無理だろうな。」
「確かに、今のお前だとこの系統魔法は厳しいな……。 本来のお前でも少々厳しいかもな。」
「まあ、周りでこのCADを使いこなせそうなのはアイツしかいねえな。 ビジュアル的にもしっくり来るからな……ん?」
暫く話していると、ノック音が聞こえてくる。
誰が来たのかはドア越しの気配察知で分かっていたが、紫輝はわざわざドアを開けに向かった。
扉の先に居たのは、生徒会で行っていたささやかな祝勝会に参加しているはずの深雪だった。
「あら、紫輝……貴方も来ていたのね。」
「レオは散歩、幹比古はダウンで暇を持て余していてな。 達也に用事があるんなら、俺は引っ込んでようか?」
「特に込み入った話ではないし、気を使わなくても大丈夫よ。」
深雪を中に通すと、早速彼女は達也に用件を告げた。
曰く、祝勝会の時に服部が明日は担当エンジニアとじっくり調整するという話があったらしい。
しかし、この担当エンジニアは明日の女子クラウド・ボールの副担当なので代役を用意する必要が出てくる。
クラウド・ボールは試合数の関係上副担当がいないと回らないのだ。
そこで、明日明後日共にオフであるエンジニアに達也が挙がった……というわけだ。
「伝えてくれてありがとう。 ……ただ、ホテルの中とはいえこんな夜更けに女の子一人で出歩くのはあまり褒められないぞ?」
「申し訳ありません、お兄様。」
「反省の意がねえなこのお嬢様。 ……まあ俺もネヴァンの使い魔で見張ってるから問題はねえけどさ。」
久々にご登場のピコハンで軽く深雪の頭を小突きながら紫輝は補足する。
とはいえ、ネヴァンの使い魔索敵は基本悪魔に対する反応を第一としているので確実ではない。
ただでさえ昨晩無頭竜の構成員が潜入したこともあって表情には出さないが二人はややデリケートな状態だったりする。
「とりあえず達也、深雪を送ってけ。 お邪魔虫な俺はさっさと部屋に戻ってるぜ。」
「いや、別にお邪魔虫ではないが……。」
「俺のことなんか放置プレイ安定だろうが。 今は最も大切な深雪に構ってやれ。 新人戦になったら一緒の時間は減るんだから、今のうちにイチャついとけ。」
それだけ言い残すと、紫輝は言葉通りさっさと部屋を出て行った。
達也は紫輝が一体何を言っているのかまるで分かっていない様子だったが……。
「も、もう紫輝ったら……でもお兄様、深雪もお兄様のことが何よりも大切ですからね……。」
深雪はすっかりと出来上がってしまっているようだった。
これでは暫く時間はかかるか……表面に出さぬように達也は内心で苦笑していた。
そんなわけでようやっと九校戦がスタートです。
ちょこちょこカットが入ったり、本作独自のシーンが入ったりしますが流れは基本変わりないです。
さて、前回第9話では銀盤カレイドスコープのキャラが一部出てきましたが、近い内にまた別の作品のキャラがゲスト出演します。
それも今現在絶賛放送中のユーリ!!! on ICEからです。 まあ見ている人は誰が出てくるかは想像できるかなと。
まさか自分がスケート混ざりの二次創作を書いている最中にこのようなものが放送されるとは……毎週楽しみに見ていますよ。
ただもう後はファイナルを残すのみで今すっごい寂しいです。 っていうかあの作品ところどころこちらの涙を誘う箇所が多いから毎回大変大変。
終わった後はすぐに全日本なんですが、ユーリロスのせいでちゃんと見ることが出来るのか……。
……とまあ、この作品のおかげでスケート方面のネタが色々と浮かんだので、今はそれをモチベーションにしている状況です。(魔法科ごめんなさい)
後、前回説明しようとして忘れていたのですが第9話で名前だけ出てきた黒須柊という人物、実はペルソナ2の彼の血縁設定です。(苗字で分かると思いますが)
その血筋から表現力については相当なもの。 技術面も両立できるという紫輝の同年代のライバルの一人です。
それにしても、スケート方面はユーリの方にも女子選手はいるからカレスコとの兼ね合いが大変そうだ……。
……ここまでやるならもうスケートだけで別作品を書けと言われそうですが、そうなると魔法科とデビルメイクライ要素が無くなってそれはそれで物足りなくなるのでちゃんと両立します。
そうじゃないと、このタイトルの意味が無くなってしまいますしね。
では、次回もまたいつになるかはわかりませんが(今月中は厳しそう)、何とか隙を見ては執筆していくのでこれからもよろしくお願いいたします。