魔法科高校の劣等生 -Masquerade Devil Hunter- 作:スダホークを崇める者
ちなみに、BWまではレートはやらずに育成ばかりで時折リア友と対戦してましたね。
FateGO、福袋ガチャの結果は槍アルトリアでした。 弓が欲しかったがまあこれはこれでいいけど。
間一髪のところでほのか、雫、エイミィの3人を助け、久々に紫輝が悪魔相手に暴れてから数日後。
一見平穏が戻ったかのように日常を謳歌している紫輝たち。
ただ、その中で達也、深雪、紫輝の3人はまだまだ警戒を解いてはいなかった。
特に深雪と紫輝は悪魔を呼び出せる者、ないしは悪魔を常時憑かせている者の存在を警戒していた。
八雲によって尋問中の暴漢たちの様子を二人で見に行った際に、最後に紫輝が行動不能にした一人だけ毛色の違う者を改めて確認した。
尋問をしている八雲も、『こっちは全く反応が無い。 恐らく悪魔を憑かせた結果精神が喰われたのだろう』と推測していた。
八雲の推測はまさに正しく、あの時は紫輝の手で行動不能になった際に他のスケアクロウに便乗して同種の媒体に寄生先を変えたのだ。
憑代が使えなくなっただけならば別を憑代としてしまえばいい。
……そもそも悪魔とは何なのか。
一言で語れば『別次元に存在する、基本的に悪意に基づく人外』、これが定義となる。
悪魔の居る次元とこちら側には当然ながら境界線は存在するが、これも言うほど頼りない。
力の弱い者は、その存在の小ささ故に境界線の網目をすり抜けてしまうのだ。
しかし、そんな方法でこちら側に来ても、下級の存在は媒体が無ければこちら側に存在し続けることは基本的に不可能。
スケアクロウは魔界の甲虫の群れが布人形に入り込んだものだが、時には人に憑りつく幽霊のような悪魔も存在するという。
そして、この悪魔……実を言うと日本では全くと言っていいくらい観測例がない。
理由は単純、日本は悪魔の居る次元との境界線が問題なく働いているからだ。
逆に、これが欧州やUSNAになると比較的境界線が曖昧になっているので悪魔がそれなりに発生しやすい。
実際、紫輝もとある伝手で日本以外の場所で悪魔を狩っていたりもするのだが……それは別の機会に話そう。
では、何で今回は下級とはいえ悪魔の自然発生が発生したのか……。
理由は先ほど語った悪魔の憑代となった暴漢である。
この暴漢に引き寄せられたように、同種のスケアクロウが集まってきたのである。
また、暴漢たちの負の感情も要因の一つだ。
悪魔にとって、負の感情というのはまさに最高の餌だから。
……さて、悪魔についての簡単な講義はこれくらいにして、紫輝達に視点を移していこう。
「そうか、だから下級悪魔が妙に発生していたのか……。」
この日の昼休み、紫輝は幹比古と先日の悪魔について話していた。
実際に幹比古の言う通り、日本では滅多にない悪魔の自然発生が起こっていること。
また、3人の一科生を襲った暴漢の中に悪魔憑きがいたこと。
幹比古もまた、悪魔の事情を理解している数少ない人間なので包み隠さずに話した。
「しかし、反魔法師団体が悪魔憑きを……。 世も末というか、なりふり構わずだね。」
「どこかで必ず仕掛けてくるのは目に見えてる。 警戒網はこっちで既に張ってあるから、後はあちらさんの出待ちさ。」
「で、紫輝はその時になったら一直線に悪魔を使っている連中の方へ行く、と。 いくら日本では知られていないと言っても、大丈夫なのかい? そこまで大っぴらに動いて。」
幹比古が二重の懸念を抱いている。
1つは、悪魔のことが公になることの危険性。
もう1つは、紫輝自身の事情についての危険性だ。
「まぁ、多分大丈夫だろ……連中も悪魔は秘匿兵器として使いたいだろうし。 後は、公にこそ知られてないが軍でも悪魔を認知している場所はあるからそこは別に気にする必要はないし、どうせあの人からの圧力も来るから問題ない。 俺のこともぶっちゃけ、何としてでも隠したいってことでもねえからなぁ……。 隠しておければ動きやすいって程度の話だからな、所詮は。」
「そんなに軽く考えていいのかどうか……まぁ、紫輝がそう言うならこれ以上は言わないよ。 でも、僕もその時は協力させてほしい。 まだ完全には戻ってないけど、足手纏いにはならないよ。」
「それは元よりそのつもりだったさ。 俺一人だと手が回らないなんてことになったら最悪だからな。 すまないが、頼むぜ幹比古。」
このタイミングで密談を終えて、二人は別れる。
実際、紫輝一人で手が回らないということは基本的にはあまりない。
しかし、そのための手段がなかなかに疲れるのだ。
物事はやはり効率を突き詰めるべきであり、今回はそのために幹比古に助力を頼んだ。
というより、幹比古自身も実戦で何か切っ掛けを掴みたいから対等な取引とも言える。
それに、並……いや、そこそこ優秀な現代魔法師よりもスランプ気味だが素質は超一流の古式魔法師である幹比古を連れて行く方が、戦力としても圧倒的にプラスだ。
悪魔……というよりこの手の化生は、まさに彼らにとって十八番とも言える相手なのだから。
そして、早速その日の夕方に事は起こった。
授業が終わり、部活も無いからといつもの面々で帰ろうとしたその時だった。
「全校生徒の皆さんっ!」
マイクの音が絞れていないのか、不快な音と共に放送から声が聞こえてきた。
あちこちから耳を塞ぐとともに苦情を言う者が出てきている。
その間、マイクの音量を調整して、仕切り直しとばかりに再び放送が始まった。
「全校生徒の皆さん、我々は校内の差別撤廃を訴える有志同盟です。」
差別撤廃……この語句から、ブランシュの下部組織エガリテの手先であることは判明する。
即座に紫輝は偵察役に念じた。
「(動いてる奴は居るか?)」
『(その心配は無用ね。 今回は生徒だけの動きみたい。)』
ほのか達を狙う暴漢をすぐに見つけ出した時のように連絡を取るが、今回は空振り。
生徒だけの動きならば、生徒会や風紀委員に任せておけばいい。
この時間の放送室利用は認められているはずがない。
非合法の手段で鍵を手に入れて今現在放送を行っているのだろう。
それならば、まさに餅は餅屋。 紫輝も流石にここで事態を引っ掻き回す気はさらさらない。
「紫輝、俺は呼び出しがあったから行ってくる。」
「了解。 大して長引かなさそうだから待ってるぞ。」
やはりというべきか、達也は呼び出しがあったようだ。
紫輝が同行を求めない、イコール今回は出る幕が無い。
その等式から、この騒動には悪魔は関係していないことを即座に理解した。
だから、達也も紫輝の同行は強要せず、彼の言葉に頷いた。
紫輝達は同盟の主張に全く意も返さずに達也を待つために一旦教室を出ることにした。
結果を先に語ると、穏便に騒動は収集したようだ。
最初は慎重に対処するか、多少強引でも強硬に行くかで方針が割れていたが、ここで達也が起点を効かせる。
登録しておいた壬生のプライベートナンバーに通話を試みて、交渉には応じるし、壬生の自由は保障すると伝える。
達也はあくまで彼女の自由だけを保障したと言っただけだが、あちらは勘違いをしてくれたようだ。 その甲斐あってあっさりと放送室占拠犯たちを捕縛出来た。
が、このタイミングで真由美が遅れて現れる。
学校からこの事態を生徒会の判断に委ねるということらしく、占拠犯たちの拘束を解除するように告げた。
そして、そのまま壬生たちを連れてどこかへ行ってしまった。
一同はあまりに早い流れに唖然としていたが、何はともあれ事態は落ち着いたことに変わりはない。
真由美のいいところ取りということで、摩利は少々不満そうだったが……。
なお、その後に何故達也が壬生のプライベートナンバーを登録しているのかについて深雪がひたすら問い詰めていた。
最初は紫輝も面白がって援護射撃していたが、最終的には達也に助け舟を出す形で場を収めていたとか。
その翌日、達也と深雪、そして紫輝は3人揃って駅である人物を待っていた。
それが誰だとは言うまでも無いだろう。
「あら、達也君に深雪さん、紫輝君まで……どうしたの?」
駅から出てきた真由美が3人に声を掛けてきた。
「昨日のことが気になったんですよ。 俺も他人事とは言えなくなった身なので。」
「右に同じくです。 達也同様に俺も勧誘された身ですからね。」
紫輝としては今後の相手の出方を予測するため、ということもあった。
同盟メンバーの動きとブランシュの動き、この2つは連動すると考えてもいい。
特に慎重かつ素早い対応を求められる紫輝にとっては相手の策を知っているか否かは生命線になるところだ。
ただ、生徒会でも風紀委員でもない紫輝にも話してくれるか……と思ったが、あっさりと了承してくれた。
「とりあえず、明日に同盟側と生徒会で討論会をすることになったの。 題目は言うまでもなく『一科と二科の差別』についてね。」
「明日、ですか。 随分と急な話ですね。」
相手に時間を取らせるとそれだけ策を講じられる危険性がある。
とはいえ、少々慌ただしいスケジュールであるのも確か。
この場合自分たちも討論の準備を今日1日で済ませないといけないデメリットがある。
だが、真由美の表情には曇りが見当たらない。
「大丈夫よ、生徒会側は私一人だけだから。」
「なるほど、七草先輩一人なら時間はそんなにいらないですね。 打ち合わせや辻褄合わせが必要ないですし。」
「それにしても、会長は討論会を楽しみにしているようにも見えるのですが……。」
一人でも論破できる自信があるという割には、と言える。
変に気構えられるよりはいいのだが、如何にも討論会が待ち遠しいといった雰囲気の理由は紫輝にも、達也にも分からない。
「ほら、もし同盟側が私を言い負かせるくらいのキチンとした持論を展開してきたら、それを逆に今後の運営に生かせるんじゃないかなって。」
「この状況をも生徒の意識改革のための材料にしてしまうってことですか。 何ていうか、七草先輩ならではですね。 流石です。」
含みのある言い方に聞こえるが、紫輝としては素直に賞賛している。
エガリテ、更に裏にいるブランシュが暗躍しているであろうこの時に……否、この時だからこその意識改革の為に一石を投じる。
真由美の意図が読めたと同時に、紫輝はもはや討論会ではなく真由美の演説会になるのではないか……とまで思ってしまう。
(部活があるだろうし……もしかしなくても襲撃がある可能性が濃厚だから見に行けないのが残念だな。)
それぞれ風紀委員と生徒会役員の達也と深雪は見に行けるからある種羨ましい。
達也はともかく深雪は同盟側の愚痴のような主張は耳に入れたくもないから紫輝と代わりたいと言うかもしれないが……。
何はともあれ、真由美から情報は聞き出せたのでひとまずは明日……それも放課後に焦点を置くことになった。
無論、協力者である幹比古にもその旨は伝えておく。
更に、偵察役にも明日は学校周辺を念入りに見ておくように厳命する。
もし襲撃が起こった場合、悪魔を率いる団体様がどこを陣取るかを素早く把握するのは何よりも大切なことだ。
そして、放課後に事前準備の仕上げに取り掛かる。
「……と、いうわけで明日にはブランシュが悪魔をけしかける可能性が濃厚です。」
『尻尾は掴んだ、というわけか。 ならば、私の残す役割は後始末……または情報操作の準備だね。 分かった、手配はしておこう。 後、『殺戮』と『狂気』については5月前には改造終了とのことだ。』
「あれ、意外と早いですね。 てっきりもう少しかかるものかと思ったんですが……。」
『耐久性を上げるだけ、と言っていたからね。 そちらの方は改めて連絡するよ。』
これで根回しも完了、いつでも来いという状態になった。
司甲のことも裏を取っておけばなお完璧だったが、それは恐らく達也がやる可能性が高い。
まぁ、先日の暴漢の件、また達也への妨害……更に彼がエガリテの信望者の証であるトリコロールの腕輪を付けていることから黒なのは確定なのだが。
(……それにしても、同盟の連中も必死だな。)
廊下では同盟の生徒が二科生と見るや否や片っ端から勧誘している。
あまりに強引だったり、過度な勧誘も見られるので適度に風紀委員が目を光らせていた。
ふと見ると、達也が丁度司甲に勧誘されている美月を助けに入っている姿が見えた。
(美月を勧誘……同じく霊子放射過敏症、か?)
眼鏡をかけていること、そして同じく霊子放射過敏症の美月を勧誘していることからの推測だ。
だからと言って別にどうこうというわけではない。
いつまでも長居しては自分も勧誘されかねないので、そそくさと部活へと向かった。
その日の晩、達也と深雪は八雲も元へ訪れていた。
目的は言わずもがな、司甲の情報を得るためである。
ちなみに、紫輝は同行していない。
部活の後に自主トレとばかりに更に滑り込んでいるのが理由だ。
トリプルアクセルの実演、他にも女子部員にルッツとフリップの跳び分けなどをアドバイスしていることから追加で滑り込みが必要なこともあってだ。
また、明日は部活どころではなくなる可能性が高いことを見越してでもある。
達也としても情報共有は当日の朝でも問題は無いので、同行を強要する理由も無かった。
「やぁ、来たね達也君、深雪君。」
灯りも何もない中歩いていくと、縁側に座っている八雲から声がかかった。
恐らく、起きているのに灯りをつけていないのも忍びの性という癖であろう。
「師匠、こんな時間にすみません。 どうしても急な用件でしたので。」
「いやいや大丈夫だよ、達也君。 それで紫輝君は……狩りに出てるのかな?」
「いえ、紫輝は部活動の延長です。 明日が大変そうだから今日の内に滑っておきたいと。」
「なるほどね。 彼も表向きは俗に染まってきたようだ。 上手く仮面を被れているみたいで僕としても安心だよ。」
紫輝の過去、そして現在に至るまでの事情を知る八雲は愉快そうに評した。
達也と深雪としても同意見なのか、苦笑いを浮かべていた。
ちなみに、『狩り』とは言うまでもなく悪魔狩りのことだ。
以前の紫輝は、ちょっと気が向けばすぐに悪魔狩りに赴いていたのだ。
まるで何かを満たすかのように。
その頃に比べれば、部活動に励んでいるだけ遥かに健全であろう。
……ただし、それは彼の表向き。 要するに外向けに着けた『仮面』なのだが。
「ところで、僕よりも風間君に頼んだ方が早いと思うんだけど。 藤林のお嬢さんもいるし、より確実だけど。」
「少佐に頼るのは……。」
「まぁ、そうだよね。 君たちの叔母上がいい顔をしない。」
それならば仕方ないか、と続ける八雲だが別に乗り気でないわけではない。
あくまで情報の正確性と迅速性に基づいて話を振っただけだ。
「司甲……旧姓は鴨野甲。 賀茂家という陰陽師の大家、鴨野家はその傍系だ。 ただ、現在ではただの一般家庭で魔法の適性は見られていない。 彼の眼は先祖返りのようなものかな。 ただ、彼の眼は達也君のクラスメイトほど強力な眼ではないよ。」
「美月のことまで調べてあるんですか……流石ですね。」
ここまで綿密に司甲のことを調べてあることも意外だったが、まさか『眼』を持っているだけの美月のことまで調べ上げているとは思ってもみなかったようだ。
「まぁ、それでこそ忍びだからね。 君たち兄妹、更には紫輝君については完璧な情報操作が故に調べられなかったけど。 さて、話を戻すけど……甲君には義理の兄がいるんだ。 母親の再婚相手の連れ子だね。 最初はやはりというべきか、少々ぎこちない関係だったんだけどある日突然仲が良くなったらしい。」
「……ある日、突然?」
司甲の情報の続きに、深雪は引っ掛かりどころを覚えた。
再婚相手の連れ子同士が最初は互いに戸惑って踏み込めないが故にギクシャクした関係になるのは一般的な話だ。
それがある日突然……というところに違和感を覚えたのだ。
「流石、女の勘というやつかな?。 そう、この義理の兄……司一こそが、ブランシュの日本支部リーダーさ。 しかも、表も裏も牛耳っている本物だ。 甲君は彼の傀儡となって第一高校に通っているらしいよ。 まぁ、これくらいで大丈夫かな?」
「はい、ありがとうございました師匠。」
これで全てのピースが揃った。
生徒を釣って同盟に誘う司甲、そしてその背後に居るのはブランシュの日本支部リーダーの義兄。
断片的だった情報は統合され、事件のあらましはこれで分かった。
明日は恐らく荒れることであろう、達也と深雪はそう予知していた。
翌日……公開討論会当日。
急ピッチで開催されたにも関わらず、全校生徒の半数程度が集まっていた。
「恐らく実力行使の為の別働隊がいるんだろうな……。」
「同感です……壬生先輩も放送室占拠メンバーも姿が見えないですし。」
それと、恐らく悪魔専用の別働隊も居るだろう……。
だが、それは紫輝が対応するので頭の片隅に留めておく程度にしておく。
そのために紫輝があれこれ策を講じているのも目にしているので、自分は安心してこちらに専念出来る。
そうこうしている内に討論会は始まった。
「魔法競技系クラブは非魔法競技系より明らかに予算が多い! これは一科生優遇が課外活動にも影響していることを意味しています! 不平等予算は是正すべきです!」
「それは各部活動の実績を反映した部分が多いからです。 非魔法系競技系クラブでも優秀な成績の部には見劣りしない予算を割り当てています。」
いきなり攻勢に出る同盟側だが、真由美は数字に基づいた事実を持って的確に反論する。
具体的な数値は討論に置いて単純にして強力な武器だ。
抽象的な感情論や陰謀論など、その前では無力同然。
打つ手が無くなってどんどん感情的な主張でしかなくなっている同盟側。
そうなっては誰も同盟側に勝ち目があるとは思えるはずもない。
完全に真由美一人の演説会になっている、とも言えた。
「私も生徒会長として、この現状に満足しているわけではありません。
真由美の言葉に傍聴している同盟メンバーが詭弁と反論する。
この反応からして、薄らと気付いているのかもしれない。
自らの才能の限界、そしてそれを理由に己に蓋をしている自分に。
しかし、その現実から目を逸らす。 気付かないフリをする。
それこそが人の弱さ。 自尊心を傷つけないようにする防衛行動だ。
「しかし、二科生を差別するからと言って今度は一科生を差別する、いわゆる逆差別をしても解決にはなりません。 一科生も二科生も一人一人が当校の生徒で、生徒たちにとって唯一の3年間なのですから。 ……ですが、実を言うと生徒会には一科生と二科生を差別する制度が残っています。 生徒会長以外の役員の指名の制限……現在は一科生のみ指名できる制度になっています。 そしてこの規則は、生徒会長改選時の生徒総会においてのみ改定可能です。 私はこの規定を、退任時の総会で撤廃することを生徒会長としての最後の仕事とするつもりです。」
この宣言に、会場全体がどよめいた。
今までずっと続いた制度を本当に変えられるのか。
しかし、古い慣習に囚われ続けている状態ではまず革新など有り得ない。
今ここに、意識改革のための一石が投じられたのだ。
「私の任期はまだ半分ありますので、少々気の早い公約になってしまいますが……。 人の心は力ずくで変えることはできないし、してはならない。 それ以外のことで、出来る限りの改善策に取り組んでいくつもりです。」
完全に一人舞台となっていたが、暫くしてから割れんばかりの拍手が鳴り響いていた。
傍聴席は一科も二科(同盟側除く)も関係なく真由美に賛美を送り
袖で待機している達也たちも改めて感銘を受けての拍手を送っていた。
同盟側も流石にこれでは負けを認めざるを得ないのか、悔しそうな表情で俯いていた。
このままの流れで終われば、まさに良い討論会と言う形で締めることが出来ただろう。
しかし、現実はこの雰囲気も無粋な爆発音で一気に壊れることになった。
「じ、実技棟が襲撃を受けてる!?」
逸早く外を確認した生徒が爆発音がした場所が実技棟ということを目視。
あまりに突然の襲撃に傍聴席にいる大半がパニックになりかけていた。
……が、同盟側はこれを機にと騒ぎに乗じてこの場から離れようとしていた。
「委員長、動き出しました!」
「よし、全員残さずにひっ捕らえろ!」
逸早く気付いた達也の行動を皮きりに、各々待機していた風紀委員の面々が外に出ようとする同盟生徒を取り押さえた。
事前にマークしていたこともあり、一人も逃すことは無い。
しかし、事態はまだまだ動く。
「気を付けて! 外から何かが飛んでくるわ!」
窓を指差しながら真由美が壇上から叫んだ。
その直後、まさに彼女の言う通り窓ガラスを突き破って何かが投げられた。
それは、地面に落ちると即座にガスを噴出した。
何のガスかは知らないが、有害なことに間違いはない。
「皆さん、煙を吸い込まないように!」
この事態に対して一番に行動したのは壇上に居る服部だった。
ガスの噴出に気付くや否や即座に気体に対する収束魔法を放ち、その流出範囲を最小限に抑える。
そこから連続して移動系魔法を用いて、ガス弾ごと再び窓から外へ放り投げた。
(瞬間の判断でここまで……流石だな。)
ガスが流出して間もなく抑えたことで生徒に全く被害を出さないその判断の早さと手腕に、達也は内心で素直に服部を賞賛していた。
その視線に気付いたのか、服部は気恥ずかしそうに視線を逸らしていたが。
「全員おとなしくしろっ!」
と、今度は怒号と共に全身武装でやってきた、見るからにテロリストな風の人間がやってきた。
その手にはマシンガンを持っているが、この場においては全く脅威になりえなかった。
もう既に布石は打たれているのだから。
「ぐっ……!?」
突入しようとするテロリストたちはいきなり苦しみだした。
呼吸が出来ないのか、首を抑えている。
(MIDフィールドか。 全身武装で来たのが逆に仇になったな……使用者は委員長か。)
MIDフィールド、それは空気中の窒素の密度を弄る魔法だ。
マスクで覆われている空間に適用することで、呼吸困難を引き起こしたのだ。
テロリストたちは何もできずに倒れていく。
その後はもう相手の手が尽きたのか、講堂には襲撃は発生しなかった。
(……どうやら、動いたようだな。)
『眼』でもう既に動いている彼を捕捉した。
ならば、自分も事態収拾の為に積極的に動くべき時……達也はそう判断するや否や
「委員長、実技棟の様子を見に行きます!」
「私もお供します、お兄様!」
摩利に実技棟への出動許可を申し出る。
当然のように深雪もついていく意思を見せていた。
摩利も達也の対人戦闘スキルはこの目で確認済みなので、渋る様子もなかった。
深雪に関しても、その圧倒的魔法力(特に干渉力)は知っての通りなので心配する要素はない。
「分かった、頼んだぞ2人とも!」
了承の言葉を背に、二人は講堂の外へと駆け出していく。
入学して一月も経っていないのにも関わらず発生した面倒事。
壊された日常を取り戻すために、兄妹は動き出す。
ほぼ同時刻……演習林をひたすら駆け抜けていく人影が見えた。
それは言うまでもなく、自己加速術式を掛けた紫輝である。
木から木へ、まさに軽業師のようにスピードを落とさずに進んでいく。
実技棟への襲撃音からすぐに事態は察知できた。
部活の方はまだ外へ移動前だったのが幸いして、自分もテロリスト鎮圧に加わると言って別行動を開始する。
まずは預けてあるCADを非常時ということで返却してもらう(この途中でエリカとすれ違うが、気に掛ける余裕は無かった。)
次に、別の方角で行動を起こしているであろう幹比古の援護要員を呼び出す。
周囲に誰もいないことを確認してから、路地裏の時のように特化型CADを空にかざす。
そして、引き金をまずは一度引く。
あの時と違うのは、武器が飛んで来たり紫輝に憑依するのではない。
今回は、彼ら本来の姿でこちら側に呼ぶ。
『また我の出番か。 しかもこの姿で呼ぶということは……。』
「別方向で俺と同じように悪魔の引率に対応している幹比古の援護……行けるな、ケルベロス。」
ケルベロスと呼ばれたのは、目の前に居る氷を纏った三つ首の獣だ。
その雰囲気は、先日現れたスケアクロウと同じ禍々しいものも含んでいる。
しかし、その禍々しさの中にも高潔というか、品というものも確かに感じる。
スケアクロウのような醜いだけの案山子とは存在の格がまるで違う。
それは当然のこと……この獣は上級悪魔にカテゴライズされるだけの存在なのだから。
『御意。 我と幹比古ならば大抵は問題ないだろう。 そちらも武運があらんことを!』
人間で出せるか怪しい、それだけのスピードで駆けるケルベロスを見送る。
幹比古への援護は出した……ならば次は当然、自分の方の戦力だ。
まずは再び空へ向けて特化型の引き金を引くこと2回。
今度はケルベロスのように本来の姿ではなく、1体は武具として、もう1体は己に憑かせる。
『ようやく俺の出番かっ! だが何でケルベロスが召喚で俺が魔具なんだ!』
『喧しいわよベオウルフ。 貴方がケルベロスと同速で動いてミキの援護に間に合うのかしら? 魔具として呼び出されただけいいじゃない。 私はずっと諜報担当で今も憑依状態なんだから。』
篭手と具足からは荒々しい声が、そしてどこからともなく聞こえるのは妖艶な女の声。
武具の方はベオウルフと呼ばれていて、憑依しているのは……諜報担当、要するに紫輝が偵察役を命じた悪魔、ネヴァン。
この2体もまた、ケルベロスとタイプこそ違えど纏うオーラの質は同等……すなわち、カテゴリは上級悪魔に位置している。
「悪い悪い、ちょっと後に備えて燃料温存したくてな。 次は優先的に召喚するから、その時まで待ってろベオウルフ。」
『……まぁ、いいだろう。 今回は貴様の軟弱な拳を強化してやるか。』
『相変わらず、紫輝の言葉には忠実ねベオウルフは。 ところで、私には諜報役の労いは無いのかしら、紫輝? 今晩辺りにでも……。』
「R指定じゃねぇんだから止めろネヴァン。 吸血で勘弁してくれや。」
ベオウルフは粗暴に見えて紫輝の言葉は聞くから意外と扱いやすい。
俗に言うツンデレなのだが、アグニとルドラがそれを指摘した時は私闘になりかけた。
ネヴァンは……サキュバスに近いというところでお察しである。
このようなR指定になりかねない発言が多いし、それが本気なのか冗談なのか分かりかねるのがまた厄介だ。
まぁ、それ以外は良識的でベオウルフやアグニ&ルドラを制する、ケルベロスと並んでのツッコミ役になっている。
随分と俗に染まっている面々に見えるが、気にしたら負けである。
「……後は、こいつも持っていくかな。」
援護にはケルベロス、装備はベオウルフ、憑依はネヴァン。
3体の上級悪魔を使っている時点で並の相手ならば淘汰は容易だろう。
しかし、世の中『石橋を叩いて渡る』という言葉があるくらいだ。
慎重に慎重を重ねるため、更なる戦力を呼び出す。
今度は特化型CADを、あろうことか自分のこめかみに銃口を突きつける形で構えた。
これがリボルバー型拳銃ならばロシアンルーレットでもしているようにも見えるだろう。
自傷行為にも見えるが、これは今の紫輝がイメージを描きやすい構図だからだ。
……己の『内』に引き金を引き、『仮面』を引っ張り出すイメージ。
何の躊躇いも無く引き金を引く。
すると、ベオウルフの篭手が装備されている紫輝の左手に……一本の鞘に収まった刀が装着されていた。
「さーて、じゃあ行くか……パーティ会場にな!」
まるでこの状況を楽しむような笑みと共に、紫輝は駆けていく。
行く先々で見かけたテロリストは跳び蹴りにより奇襲で対応する。
テロの現場でなければただの通り魔にしか見えないだろう。
蹴りの瞬間は気配同調は解けてしまうが、すぐに走り出せば視認されることはない。
また、途中でほのかと雫たちの姿も見かけたが、今の姿を見られるわけにはいかないのでスルー。
恐らくテロリストの襲撃を受けたが返り討ちにしたのだろう、危うくGの方でR指定になりかねない無残な人体らしきものも見えた。
その後はあそこで待機していれば風紀委員の誰かが来て避難誘導を行うであろう。
要するに、今は演習林には誰も居ないし、来ない。
まさに、自身のために用意された会場になっていた……何ともいえない過大解釈だが。
……ひたすら走っていくと、徐々に臭ってきた。
人間に利用されるがままな故に標的にされる、哀れな下級悪魔の臭いが。
場所と相手の数の問題で不完全燃焼だった前回とは違い、相手の規模も場所の広さも申し分ない。
もう目の前にまで迫っている獲物を思い、また紫輝は笑みを零した。
一方、幹比古は既に悪魔を率いるテロリストの隊を目と鼻の先に居た。
しかし、まだ前に出るつもりはない。
紫輝ならば突っ込んでいるところだが、幹比古はそこまで危なっかしい思考はしていなかった。
「……ケルベロス、どうだい?」
『恐らく、こちらはそう強いヤツは出てこないだろうな。 居るのは7ヘルズの内プライド、ラスト、スロウスのみ。 追加が来ても中級の下が限度と言ったところだ。 今の幹比古でも問題ない。』
紫輝から送られた頼もしい援軍からの情報提供から、ホッと安堵の息を吐く。
今のスランプの状態で中級の中でも上位、またはそれ以上が出てきたら対処の仕様がないからだ。
正直に言うならば、中級ですら相手にしたくは無いのだが……。
『何、いざという時は我が盾にでもなろう。 お主は何も気にせずに、その力を振るえば良い。 スランプが晴れるかどうかではない、やるだけやってみるのだ。』
幹比古の迷いや不安を察知したが故に激励を送る。
「ケルベロス……そうだね、紫輝がこうして僕に任せてくれた、つまり信頼してくれてるんだ。 その信頼には答えないとだね。」
腹は括ったようだ。
声にも力強さが戻り、表情も引き締まっている。
それを見るや、ケルベロスは幹比古と共に一歩前に出る。
『先手必勝!』
ケルベロスは空中に向けて咆哮する。
突如聞こえてくる獣の咆哮、そして異常な気配にテロリストたちはすぐに反応する
が、それではあまりに遅すぎた。
咆哮とほぼタイムラグなしに降り注ぐ多量の氷柱で、一方的な先制攻撃を許してしまう。
上手く座標も調整されており、既に出現している悪魔のみをピンポイントに叩いている。
そして、人間のテロリストのみが残ったところに幹比古は活性化した精霊を直接ぶつける魔法、『雷童子』を放つ。
ケルベロスが放った氷柱の雨に気を取られていたのか、あっけなく直撃して気を失った。
「やっぱり、まだまだ遅いな……。」
『だが、威力の調整は完璧だ。 殺さないようよく加減が出来ている。 紫輝ならばこうは行くまい。 それに、発動速度に合わせて動けるようになってるから無駄は無くなっているぞ。』
幹比古は悪魔と対峙するのは今回が初めてというわけではない。
一高に入学する前、紫輝が受けた依頼に巻き込まれる形で1回、悪魔と戦ったことはあった。
その時は紫輝がほぼ一人(ケルベロスやネヴァンは使ったが)で撃退、幹比古は殆ど何も出来なかった。
感じたのは劣等感と無力感だった。
同じように魔法が上手く使えないはずなのに。何故それほど戦えるのか。
何故自分はここまで戦えないのか……力が弱くなってしまったのか。
『まずは認めろ、今の自分を。 ただただ理想のみに妄執いずれ破滅を生む。 足を地に着けろ。 今の自分を客観的に認識し、その上で自分の理想を描き、邁進しろ。 ……俺も、今はこれを使える代償として魔法はロクに使えない。 これはまだどうにもならないことだ。 その状態でもいいから足掻く。 色々手を尽くす。 今の俺で出来ることをやるだけやる。 自分を否定するな。 現状を認めるところから改革ってのは始まるもんだ。』
幹比古の焦りや劣等感、色々なものを見抜いた紫輝の言葉だ。
彼にも、幹比古のスランプの原因など分からない、分かるわけがない。
それでも、理想に縛られているだけで明らかに迷走しているのは分かった。
理想と比べて今の自分を否定して、逃げていることも。
……それを指摘されて、最初は反発もした。
しかし、紫輝に反論すればするほど、否応が無く目を逸らしていた己の現状を実感していった。
最終的には、今の自分……何故か魔法の発動が遅い現状況を、少しずつだが認めるようになった。
更に、最近は紫輝だけでなく二科にも関わらず並み居る一科生を退けた者も現れた。
要は使いよう、幹比古は紫輝の言葉をより信じて、今に至っていた。
『む、まだいるようだな。 休む暇は無いぞ幹比古!』
「ああ……すまないが、前衛は任せるよケルベロス!」
今もなお足掻く神童と、氷晶の獣。
一人と一体は、まだまだ湧いてくる多量の悪魔とテロリストに一歩も怯む様子も見せずに立ち向かっていった。
実技棟へ向かった達也と深雪はその途中でテロリスト3人と交戦していたレオと合流する。
テロリスト3人は深雪が重力制御魔法で宙に浮かして叩き落として無力化。
なかなかの容赦のなさに、レオとCADを取りに向かっていたエリカも若干引いていた。
実技棟自体はほぼ教師が制圧したので心配はいらないとのこと。
ここで達也は実技棟が狙われたことに違和感を覚えていた。
実技棟には型遅れのCADしかないので、襲撃されても授業くらいにしか影響がない。
狙うならばもう少し学校運営に影響が出る場所にするのが妥当だ。
イコール、この実技棟の襲撃が陽動では……そこまで結論が出たところで、意外な人物から解答が告げられた。
「彼らの狙いは図書館よ。 壬生さんもそこにいるわ。」
「……小野先生?」
その場にいた全員が大いに驚いていた。
一教師である遥が何故テロリストの狙いを正確に知っているのか。
困惑する一同を代表して、達也が口を開いた。
「後ほど、ご説明していただいてもよろしいでしょうか。」
「却下したいけれど、そういうわけにはいかないでしょうね。 その代わり一つだけお願いしてもいいかしら。」
あまり時間は無いのだが、それはあちらも分かっているから手短にはなるはず。
それに、情報提供をしてくれた相手を無碍に扱えるほど鬼ではない。
あくまでもお願いを聞く、だけなのだが。
「カウンセラーとしてお願いします。 壬生さんに機会を与えて欲しいの。 彼女は去年からずっと剣道の成績と魔法実技の成績のギャップで悩んでいて……。」
「甘いですね。」
頼みごとが壬生のことなのは予想していたからか、途中で達也はバッサリと切った。
あまりにも潔い切り方に深雪を除いて呆気に取られてしまった。
「おい、達也。 流石にそれは無いんじゃねぇのか?」
人一倍人情に厚いからか、レオが食って掛かる。
しかし、達也は特に色を感じさせない表情で続けた。
「レオ、余計な情けで怪我をするのは自分だけじゃない。 その責任を負えるだけの覚悟が無いならば、それはいらない世話というものだ。 紫輝も同じことを言うし、そうするぞ。」
ただそれだけを言い残して、達也と深雪は図書館へと向かった。
エリカもそれに続き、レオも完全に納得は行っていない表情ながらも続いた。
図書館前に到着した時はまさに大乱闘状態だった。
かろうじてテロリストを抑えることが出来ているが、相手も物量作戦で来ているので拮抗がいつ崩れてもおかしくない。
悪魔が居ないことを軽く確認して、紫輝とその協力者(幹比古のことだが)が抑えてくれていることはすぐに分かった。
自分たちにとって相性が悪い存在が居なければ何も遠慮はいらない。
「うおおおお! 装甲(パンツァー)!」
いの一番に飛び出し、プロテクターのようなCADで近くのテロリストを殴りつけたのはレオだった。
精密機械であるCADで殴っているのを見て、達也は即座にレオが硬化魔法を使っていることを見抜いた。
分子の相対位置を固定することで、レオのCADは外装が破られない限り壊れることはない。
更に、音声認識を採用しているのでセンサーなどの類の不具合を心配する必要もないというおまけつきだ。
魔法の効果が続く限りは耐久が減らない武器と同じ扱いになるのだ。
「起動式と魔法式の展開が同時に……?」
図書館に入るのに邪魔になるテロリストを無力化する片手間でレオの戦いっぷりを見ていた深雪が疑問を口にする。
この疑問に答えるのは、素手で敵の無力化を終えている兄の役目である。
「アレは逐次展開だ。 前の魔法の効果が残っている間に起動式を準備して、切れたら即座に発動する。 必然的に魔法の効果はほぼ切れ目なく持続する形になるということだ。」
「なんていうか、本人に似てアナログな……って、レオ危ない!」
聞こえていたら確実にまた口喧嘩になりかねないことを呟きかけたところでレオの背後にナイフを構えている敵の姿を視認するエリカ。
レオに呼びかけるが既に遅し、テロリストのナイフがレオに刺さる……ことは無かった。
むしろナイフの刀身が砕け散っていて、狼狽えるテロリストにアッパーをかまして気絶させた。
「なるほど、制服にまで硬化魔法を……。 まるで全身をプレートメイルで覆っているようなものだな。」
この様子ならばガス欠にならない限りレオに傷をつけるのは難しいだろう。
この場は彼に任せた方が明らかに効率的だ。
「レオ、この場はお前に任せる!」
「おう、任されたぜ達也! どんどん先に行ってくれ!」
達也に信用された上でこの場を任されたからか、レオの声は一段と覇気が増したものだった。
それを聞いて、心置きなく達也は深雪とエリカを連れて図書館の中に入ることが出来た。
外の喧噪とは裏腹に、内部は妙な静けさが漂っていた。
「これ、待ち伏せっぽい気配あるよね。」
この空気から待ち伏せがいると逸早く判断したのはエリカだった。
無論、達也もそれは分かっている。
「少し待ってくれ。 ……階段下に二人、階段を上りきったところにも2人。 更に特別閲覧室に4人……ここに壬生先輩が居るな。」
達也の口からは淡々と敵の場所と人数らしきものが告げられていく。
彼の『眼』……精霊の眼(エレメンタル・サイト)ならば、人間の待ち伏せを看破するのはお茶の子さいさいだ。
「へぇ、達也君の前では待ち伏せも意味なしってことね。」
「当然よ、紫輝でも真似できないお兄様だけの力だもの。」
深雪の紫輝と比較しての賞賛を受けても苦笑しかできなかった。
達也の眼はあくまで一般魔法師も持っているイデアの感受性を機能拡大したものだ。
あちら側にいる悪魔まで感知は当然だが出来ないし、それは紫輝の役割……どちらが優れているかは比べるのは難しい。
紫輝と達也は互いが互いを補っている……この言い方の方がしっくりくるであろう。
「じゃあ、今度は私が一番もーらいっと。」
先ほどのレオの奮闘に刺激されたわけではないだろうが、今度はエリカが飛び出した。
無謀な行動に見えるが、待ち伏せが分かっても避けることは不可能なことに変わりは無い。
ならば、先手必勝とばかりに仕掛けてしまおう……少なくともエリカはそう考えたのだろう。
「さーて、行きますか!」
「な、何者だ!?」
達也の言った通り、階段下には二人の生徒が居た。
スタンバットを得物にはしているが、エリカには何の関係もないことだ。
持ち前の俊敏さで瞬時に懐に飛び込んで一撃。
一人を無力化すると、もう一人に反撃の暇を全く与えずにそのままもう一閃。
奇襲から一気に二人の生徒を無力化することに成功していた。
「まぁ、これくらいはね。」
ここで階段下の異変に気付いたのか、上の生徒二人がこちらに向かってきた。
一人は刀を持ち、もう一人は見た目は丸腰だが汎用型CADを所持しているので後衛だろう。
接近戦役がエリカに肉薄して、後衛が魔法でエリカを狙う。
単純にしてまともな戦法だろう……エリカの後方に二人が控えていなければの話だが。
「なっ起動式が!?」
紫輝が行ったことと全く同じ方法で達也は後衛の起動式を破壊して攻撃を未然に防ぐ。
その間隙を縫って深雪が後衛役の脚を凍らせ、止まれないまま階段から転げ落とした。
それでもここは通さぬとばかりに刀を持っている生徒は果敢にエリカに斬りかかっていく。
(トリコロールのリストバンド! 剣道部は本当に真っ先に汚染されてたってわけね……)
相手の顔から壬生の演武相手だったのは既に思い出していた。
彼がこのリストバンドを付けているということは、剣道部は本当に初期の段階からエガリテの手に落ちていたということだ。
「剣をこういう風に汚してさ……本当にムカつく話よね……。」
誰にも聞こえないような呟きだったが、明確な怒りが露わになっていた。
剣道部員たちを貶めて、更に己が身を置く世界に泥を塗ったことに。
しかし、その怒りはあくまで己の内に留めておいた。
被害者とも言える生徒たちに八つ当たりをするわけにもいかないから。
「ほらほらお二人さん、早く先行っちゃって!」
鍔迫り合いの最中に兄妹に先を行くように促すことから、こちらも同じく余裕が見える。
レオと同じく任せるのが最適解と判断した達也と深雪は、争っている二人の邪魔にならないようにそれぞれの方法で一気に上の階へ上った。
深雪は重力制御で一気に飛び上がり、達也は階段の壁を足場代わりにして跳躍。
「ひゅー、流石ね。 ……じゃ、こっちもこれで終わりっと!」
鮮やかな移動を見せられて素直に賞賛しながら、エリカは一気に決着をつけにかかる。
達也と深雪が先に行ったことに気を取られていたからか、均衡はあっけなく崩せた。
鍔迫り合いを押し返すことで制し、勢いそのままに得物である刀を叩き落とす。
最後に峰打ちとばかりに致命打にならないような一撃を繰り出して無力化。
これでこのフロアの制圧は無事に完了、後は兄妹が仕上げを終えるまでこの場で待機するのみとなった。
(……あれ、そういえば紫輝君って今どこにいるんだろ。)
達也と深雪が全く話題に挙げなかったから完全に抜け落ちていた。
紫輝のあの性格を考えれば、避難することはまず考えられない。
となれば、どこかで交戦しているのが妥当なのだが……。
(まぁ、達也君と深雪が何も言わないってことは心配いらないってことかな。 今まで見た片鱗だけでも結構出来るのは分かってるし。)
身体能力、そして暗殺者が如く気配を悟られずに移動できる技術。
魔法の規模と干渉力で多大なディスアドバンテージがあっても、テロリストのような有象無象ならどうとでもなる。
……ただ、今紫輝が相手をしているのは人から外れたモノなのだが、それはエリカの知る由ではなかった。
達也たちが図書館制圧に加わっている頃。
紫輝もようやく演習林にて進撃をしようとする悪魔とテロリストの集団に接敵することが出来た。
こちらは主力だからか、やたらと隠密に隠密を重ねて奥の方に潜んでいた。
『見た感じは7ヘルズの一部、鋏に人形ってところね。』
「(まぁ、それなら問題なさそうだな……よし、じゃあ時間無制限食べ放題始めますか。)」
時間の猶予もあまりないので、様子見もそこそこに紫輝は飛び出した。
わざとらしく物音を立てたので、テロリストたちは当然襲撃者の存在には気付く。
一人が紫輝を視認して手持ちのマシンガンを構えるが、引き金を引こうとしていた。
そこに、何かが発動したような兆候と共にその男は即座に銃口を紫輝とは全く関係ない方向へ向けていた。
「な、おい俺たちを狙ってどうする!?」
「邪魔をする奴は容赦しないぞ!」
紫輝を照準に収めていると思い込んでいるのか、そのままマシンガンの引き金を引いた。
しかし、周囲からしたら突然自分たちに向けて銃口を向けられるという異常事態だ。
周囲の仲間は咄嗟にマシンガンの範囲から逃れる。
「はい、いらっしゃーい。」
それを見越していたのか……実際はそういう風に仕向けたのだが、紫輝が鞘に収めたままの刀で一人に強打、一撃で昏倒させる。
最初に紫輝が使ったのは、一応精神干渉に分類される魔法だ。
精神と言うよりも、認識に関する魔法なのだが。
早い話が敵味方の認識を一時的に狂わせて混濁させるという効力を持つ。
本来ならば今の紫輝では使えないはずの、繊細だが強力な魔法だ。
紫輝が近くに居るからか、別のテロリストがマシンガンを構え、また近くの悪魔にも紫輝をターゲットにするよう命令をする。
「おいおいおい、んな玩具をこんな場所で振り回すなよ、教育に悪いだろうが!」
マシンガンを自分に向けていることにすぐ気が付いた紫輝は、一気に距離を詰めながら抜刀。
周囲の悪魔……人形型のマリオネットや7ヘルズの最弱ヘル・プライドを接近の最中で斬りながら、本丸であるマシンガンも真っ二つにする。
疾走しながらの居合斬り……さながら疾走居合と言ったところか。
一度の加速での発生させた斬撃の数は3……本家に比べればまだまだであった。
一旦刀を納め、得物が使い物にならなくなって焦っている人間には右腕を覆うベオウルフの右籠手によるアッパー。
簡易的なソレだが、今の紫輝は少々ながらネヴァン憑依の影響で腕力は上乗せされている。
元々腕っぷしはそこそこなところに悪魔の力、更に腕力自慢のベオウルフの力が込められている籠手もあるが故に、そこまで力を籠めなくても人間一人を気絶させるのは容易であった。
むしろ本気を出したら絶命させかねないのだが。
『横から来ているぞ!』
ベオウルフの言葉が飛ぶが、それより先に横を向いていた。
すると、先ほど巻き添えを食ったヘル・プライドと似ている7ヘルズが突進動作に入っていた。
プライドとは違って赤いボロ布を纏っているこいつはヘル・ラスト。
敏捷性に特化した下級悪魔で、忙しなく移動して集団戦に感けている対象に肉薄する悪魔。
基本的に雑魚の7ヘルズの中では唯一面倒と言える種類だ。
その特性通り、紫輝が意識を逸らしているところに奇襲を仕掛けてくる。
「狡猾なのはかまわねぇが、もう少し腕力鍛えろよ。」
突進と同時に降ろされる鎌を余裕綽々で受け止める。
ベオウルフの上乗せがあるとはいえ、そこそこの速度で降ろされた鎌を容易に受け止められたことに、相手も明らかに動揺したようだ。
鎌ごとヘル・ラストを上空に投げ飛ばし、跳躍して追いついたところに踵落としを浴びせる。
地面に落とされるまでもなく、肉体を両断されてそのまま元の媒体の砂となり散って行った。
あまりの手際の良さに、テロリストたちも呆けてしまっていた。
「おいおい、一丁前にマシンガン持ってるのに棒立ちとか、映画の背景にでもなりに来たのか? ボサっとしてねぇでさっさとかかってこいよ愚鈍が。」
立ったままで何もしていない無能共に呆れて思わず挑発してしまう。
その内心には、怒りで少しでもマシにならないかという期待感も込められている。
達也か深雪が聞けば小言が飛んでくるだろう。
「撃て撃て撃て! まだ二人やられただけだ!」
挑発に対する答えは6人ほどによるマシンガンの一斉射撃。
しかし、ネヴァン憑依の影響で脚力も上がっている紫輝からすれば避けるのは造作もない。
全く面白味も無いので、紫輝は一気にカタをつける算段を整えていた。
『威力はちゃんと調整するのよ?』
「言われるまでもないさ。 とりあえず人間は面白くないんでとっとと沈んでくださいってな!」
銃撃が収まり始めたと同時に紫輝はネヴァンからイメージを引き出した。
ターゲットは6、死に至らしめないほどのダメージの……雷撃。
次の瞬間には、紫輝が放ったとは思えないレベルの電撃が6人のテロリスト全員に襲い掛かっていた。
起動式や魔法式の兆候もなく発生した電撃に対応できるはずもなく、6人は揃いも揃って気絶していた。
「……大丈夫か? これ。」
『まぁ、くたばってはいない。 以前に比べればまあ調整出来てはいる。』
『生きてるだけマシってレベルにも見えるけれど……って、後ろ!』
ネヴァンに言われるまでもなく、振り向きざまに手刀を放つ。
そこに居たのは霧状の見た目に仮面を装備して鋏を構えていた悪魔……名はシン・シザース。
その憑代である仮面を狙った手刀は、ベオウルフの加護もあり致命打と化す。
当然のように一撃で沈んでいったが、紫輝は消滅を確認する間もなく跳躍してすぐその場を離れた。
地面から紫輝のいた位置に向けて鋏が向けられていたのだ。
別のシン・シザースが地中からの奇襲を目論んでいたのだ。
シン・シザースは仮面という憑代こそあるが、その実態は幽霊に近いものがある。
早い話が、物質をすり抜けることが出来るのだ。
だからこそ地形を無視して地中から紫輝を奇襲したのだが、紫輝お得意の直感により失敗に終わった。
「下から来るぞ、気をつけろぉ! ってか? 狙いは悪くねぇが、相手が悪かったな。」
某E社のコードネームに名字を入れる主人公のセリフ(上と下の違いはあるが)を口ずさみながらテロリストを気絶させた電撃で仮面を破壊する。
今回は何の遠慮も無い雷なのであまりの威力に地面までも焼け焦がしていた。
憑代である仮面さえ破壊すれば、何も脅威は無い。
そういう意味では、対策さえ知っていればスケアクロウなどよりも対処は楽だ。
『ふん、まだまだ暴れ足りないな。 ……というか、もう少し俺を使え。』
「安心しろ、ここからは余計なのは来なさそうだから安心してお前を使えるさ。」
テロリストとはいえ、人間を殺したら色々と面倒だ。
やってることはともかく、今の紫輝は一応は魔法師。
自衛目的とはいえ非魔法師の殺害はよろしいことではない。
だからこそ、手加減の必要な人間は早急に無力化したのだ。
……しかし、これは言うまでもないがただの建前。
(まぁ、ハッキリ言って今更なんだがな……。)
過去の所業を顧みて自嘲するように笑みを零す紫輝。
正直に言えば、今回はただ後始末が面倒なだけだ。
別にこんな有象無象が生きていようがくたばっていようが紫輝はどうとも思わないし、思うのも面倒なのだ。
ただ、周りに余計な手間を掛けさせたくない……その一心で殺さないでいるだけ。
逆に悪魔ならば、よほどのことが無い限りは殺すことを躊躇する必要はない。
更に、今回の戦場には悪魔憑きは居ないのも好都合だった。
まだまだ限りを知らないほどに現れる悪魔の群れを見て、紫輝はさぞ楽しそうに口端を歪めていた。
本格的な悪魔狩りが始まった時と同刻、達也と深雪は特別閲覧室に到着する。
中ではテロリストたちが作業しているからか、厳重に扉は閉められていた。
しかし、達也のオンリーワンの前ではそのような障害は無力と化す。
シルバーホーンの銃口を扉に向けて引き金を引く。
するとどうか、半ば防壁と化していた扉はまるで豆腐のように脆く崩れた。
「な、一体何をした!?」
中に居た壬生を含む4人が、あっさりと扉を破って閲覧室へ入ってくる達也と深雪に驚愕していた。
その隙をついて兄妹はテロリストが閲覧室のデータを盗み出そうとしていることを確認。
扉を破った時と同じ手段で、記録用のキューブも即座に破壊した。
「これでお前達の企みも詰みだな。」
勝ち誇った風でもなく、ただ淡々と事実のみを告げる達也。
それが気に障ったのか、テロリストの一人が懐から拳銃を取り出した。
「貴様、生かしては帰さんぞ!」
しかし、それは何よりも愚策だった。
この愚者は達也に引き金や刃を向けることが一体どういうことか身を以て知ることになった。
「なっ、手が凍って……ぐああああっ!」
「……愚か者。 お兄様に手出しをすることは私が許しません。」
拳銃を握っていた手は一瞬で凍り付いていた。
それを行ったのは、氷のように冷たい視線をただ送る深雪。
無慈悲なその光景に、達也以外の周りの人間は完全に動きを止めてしまっていた。
「壬生先輩、これが現実です。 能力も含め何もかもが平等な世界というのは、誰もが等しく冷遇された世界と同義。 貴女が言う平等は、理想の中か耳障りの良い世界にしか存在しません。 貴女はただ利用されていただけです。」
壬生に突き付けられたのは夢も理想も無いただの現実だった
学校の中にある差別を取っ払うという甘美な空想に誘われ、結果やってることはただのテロ行為。
しかし、その現実を受け入れたくないのか、壬生は必死にそれを振り払わんとしていた。
「どうして……私が間違っていたの!? この学校には確かに差別はあるじゃない! 司波君だって、そこの妹さんといつも比べられて苦い思いばかりしてきたんじゃないの!? 獅燿君だって同じはず! いえ、彼はスケートで活躍してることもあるからそれ以上のはずよ! 誰もが貴方たちを雑草と蔑んだでしょ!」
逃避行とばかりに彼女の中で達也にとって痛い点と思われる箇所を付く。
否、達也だけでなくこの場にいない紫輝のことまで言及していた。
それは禁忌(タブー)、侵してはいけない領域だとも知らずに。
「誰もが……? それは有り得ないことです。 少なくとも、私はお兄様と紫輝、どちらも蔑んだりしません。 世間の魔法師としての評価は私の方が上かもしれません。 しかし、そんなものは何の意味もないと私はよく知っています。 それに、お兄様と紫輝のどちらにも色眼鏡を押し付けず、その御力を認めてくださっている人は大勢います。 貴女にも、そのような方がいらっしゃるはずですよ。 それにも関わらず、自分で自分を蔑んで価値を落としている……可哀想な人です。 誰よりも己を雑草と蔑んでいるのは、貴女自身なのですよ……壬生先輩。」
深雪は心外とばかりに少しばかり怒気を含めていた。
3年前に一度失った命を再び与えてくれた兄。
ずっと前から自分と兄を悪魔から守ってくれた、血のつながらない兄貴分。
達也は言うに及ばず、紫輝に対しても蔑む理由などどこにもありはしない。
自分だけではない。 エリカ、レオ、美月に真由美、摩利……これだけ認めてくれる人間が居るのに、一体どこが「誰もが」になるのだろうか。。
更に、壬生は気付いていない……自分のことを気にかけてくれている人間のことを。
少なくとも二人は……否、もっといるだろう。
それに気付く様子も無いから、深雪は彼女を『かわいそうな人』と哀れんだ。
深雪の痛いところを突く反論を聞いて壬生は呆然としていたが、邪魔立てが入った。
「壬生、アンティナイトの指輪を使え!」
空気の読めない有象無象の言葉だが、壬生は半ば無意識でキャスト・ジャミングを発動させる。
続いてテロリストは煙幕を放って達也と深雪の視界を封じてきた。
(なるほど……だが、無駄なことだ。)
視界と魔法を封じて近接戦を挑んでくることはお見通しだった。
丁度ナイフを片手に向かってくる二人の気配を察知。
何事も無いように1発ずつ拳をお見舞いしてどちらもノックダウンさせた。
また、キャスト・ジャミングも特に気にせずに深雪は煙幕を収束させ、視界を回復させる。
壬生は逃走したのか、この場には既にいない。
「お兄様、壬生先輩を見逃してよろしかったのですか?」
「問題ないさ。 壬生先輩の今の状況だと逃走経路を選ぶ余裕はないはず。 そうなれば……後はエリカに任せるべきだ。」
エリカならば、剣を通して彼女を止めてくれる。
後からそれだけ言うと、深雪も納得したのかこれ以上は何も言わなかった。
達也の読み通り、壬生はとにかく逃げることを優先して最短ルートを通っていた。
何から逃げているかは彼女自身も分かっていない。
達也たちから逃げているのか、それとも己から逃げているのか……。
「こんにちは、一昨年の全国女子剣道大会準優勝の壬生沙耶香先輩ですよね?」
階段を降りて出口はすぐそこというところで突然声を掛けられた。
必死に逃げているから気付くことが出来なかった。
いつの間にか、自分に立ちはだかるように女子が立っていることに。
「……貴女は誰?」
「あ、初めまして。 1-Eの千葉エリカでーす。」
人懐っこい笑みを浮かべて軽い自己紹介。
しかし、壬生はその雰囲気に騙されることなくエリカを観察していた。
あわよくば通り抜けることも考えたが
(……横を通れそうにない。 強行突破しかないってことね……!)
隙がありそうで全くない。
恐らくどうやってもただで通り抜けることは出来ない雰囲気なのは肌で感じていた。
そう結論付けるや否や近くに落ちていたスタンロッドに目をつけ、すかさず手に取り構えた。
「そこをどきなさい! さもないと痛い目を見るわよ!」
「そんなに慌てなくてもいいのに……。 まぁ、これで正当防衛は成立……ってことでいいのかな? 元より言い訳するつもりもないけどね。」
エリカの呟きを宣戦布告と受け取って、壬生が先に仕掛けた。
半ば不意打ちだが、そもそもこれは試合ではないので反則も何もない。
しかし、エリカは唐突な一撃に焦りを見せず警棒による的確な一撃で捌く。
そして、ここからが彼女の本領発揮だ。
(え、後ろから!?)
いつの間にか背後についていたエリカの一撃をかろうじて受け切る。
明らかに人間離れしかけているスピードに、壬生は動揺を隠せなかった。
二度、三度と一撃、離脱の連続をいなして目が慣れてきた四度目で警棒を完全にスタンロッドで受け止める。
このまま鍔迫り合いに持ち込む……しかし、それは叶わない、
(こんな一瞬で距離を……まさか、自己加速術式!?)
背後に回るのも速ければ、離脱も凄まじく速い。
そして、このエリカの戦い方は壬生にとっては見覚えのあるものだった。
そう、それはまさに……
(渡辺先輩と……同じ魔法剣技?)
彼女の脳裏に浮かんだのは、1年前のクラブ勧誘期間の一コマ。
剣術部とのいざこざがこの年もあったのだが、当時2年だった摩利が竹刀を得物に剣術部を片っ端から無力化していたのだ。
今の相手……エリカと同じように、魔法と剣技を併せた戦い方で。
(それなら、これを使えば……!)
魔法を使っているならば、それを妨害すれば戦力は半減するはず。
その思考から、壬生はアンティナイトを用いてキャスト・ジャミングを発動する。
(うっ……これってキャスト・ジャミング……?)
深雪のような圧倒的魔法力や紫輝のような裏技を持っていないエリカはキャスト・ジャミングへの対抗策はない。
サイオン波による影響をモロに受け、自己加速術式は解除される。
それを好機と見て、壬生は猛攻を仕掛けた。
面、小手、胴……並の相手ならば確実に一本を取れるほどの、激しい連撃。
男子の桐原相手にも真正面から互角に戦えるほどのものだが、今回はまさに相手が悪いと言わざるを得なかった。
(く、全然決め手にならない……!)
紙一重のところではあるが、この猛攻を完全にエリカは防いでいる。
そして、決めようと思ったのに決められないそのツケがここに来て現れてきた。
徐々にだが、壬生の息が上がってきた。
本来ならこのキャスト・ジャミングとの連携でカタをつけたかったが、完全に計算が狂っていた。
「あれれ、先輩もうお疲れですか? だったら、今度はこっちの番ね!」
エリカも相手の疲れに気付き、ここぞとばかりに反撃に入る。
先ほどのように自己加速による変幻自在な立ち回りこそないが、一撃一撃はその分重い。
疲労が見える壬生も何とか防いでいるが、ここで二人の間にあるもう1つの差が表面化してくる。
甲高い音と共に、壬生の使っていたスタンロッドが真っ二つになった。
(くっ……まさか、武器が先に参るだなんて……)
エリカの警棒型CADは硬化魔法を攻撃、または防御の瞬間に発動させて効力を得る。
本人の技術依存になるが、使いこなせればそれこそ優秀な武器だ。
対して、壬生が使っていたのは何も付与されていないスタンロッド。
この途方もない性能差で、先に得物の方がギブアップしてしまった。
「まだそこに武器はあるわ。 この程度でギブアップなんて嫌でしょ?」
あくまで一本を取る……それ以外の決着はエリカも望むところではない。
別の生徒が使っていた本物の日本刀を使うように壬生に促していた。
「……そうね。 そして、もうこんなものには頼らない。 私の実力で、渡辺先輩と同じ技を破る!」
アンティナイトの指輪を捨てて、気持ちを新たにエリカに向き直る壬生。
「私の技は、あの女のとは一味違うわよ?」
摩利と同じという部分を否定しながらも、同じく構えるエリカ。
恐らく、最も速い一撃が飛んでくる……壬生は見切りをつけた。
長い長い静寂……僅かだが、エリカの予備動作が見えた。
(見えた……!)
壬生は予測される軌道に合わせるように刀を上段に振るう。
入ったか……と思われたが、聞こえてきたのは金属音と打撃音。
エリカの最初の一撃で日本刀は刃の真ん中で折れて、もう一撃で壬生の手に追撃を入れる。
まさに、一瞬の決着であった。
「ごめん先輩、骨が折れてるかも。」
「多分、罅が入ってるわね……。 でも気にしないで。 手加減なしで打ち込んだのよね?」
「うん、先輩は誇っていいよ。 千葉の娘に本気を出させたんだから。」
あっけらかんと壬生を賞賛するエリカ。
真剣同士の実戦形式ではあるが、そこさえ除けば試合の後のやり取りと何も変わらない。
見てる方が気持ちよくなる光景であった。
「千葉……って、あの剣術の大家の!? その千葉家の人だったなんて……。」
「ちなみに、渡辺摩利はウチの門下生。
アイツは目録で私は印可だから、剣術のみなら私の方が格上なのよ。」
どんどん出てくる意外な事実、そして繋がり。
しかし、壬生はそれを飲み込むことで精いっぱいだった。
先ほどの激闘の疲労、そして憑き物が落ちた影響は大きかった。
「ごめんなさい、担架を呼んでくれない……? ちょっと、疲れ、ちゃって……。」
それだけ言い残して、壬生は意識を手放した。
倒れるその身体はエリカが受け止めて、そのままの体勢で支えていた。
「大丈夫……優しい後輩が、ちゃんと運んであげますから。」
このエリカと壬生の決闘の決着により、図書館の戦いも終わりを迎えた。
軒並みテロリストが無力化されているが、悪魔はまだまだ残っている。
とはいえ、幹比古とケルベロスの戦いは終わりが近いわけだが。
「こいつらが最後か……!?」
やや息は乱れているが、紫輝譲りの周囲警戒は怠っていない。
ケルベロスの助力もあってか、体力の消耗はそこまででもない。
その状態で相対するのは、鋭利な刃物と機械染みた鎧をまとう案山子。
メガスケアクロウ……弱小悪魔スケアクロウのサイズを大きくして、更に仰々しい外装にした下級でも上位に位置する悪魔である。
最初に相手した7ヘルズなどに比べれば、明らかに面倒な相手である。
それを象徴するように、攻撃的フォルムの鎧を武器に自身を回転させて幹比古の周りを移動していた。
しかも、数は3体。 高速回転するソレに囲まれ、逃げ場はない状況だ。
だが、幹比古の表情には焦りは無かった。
それを諦めと受け取ったのか、メガスケアクロウは3体同時に仕掛けた。
(よし、狙い通り! まずは……)
自身の身体能力を考慮したタイミングで、3体同時攻撃の合間を縫って回避する。
3体同時とはいえ、下級故のがさつさか角度が甘いので抜け道はいくらでもある。
メガスケアクロウ3体は対象を失ってそのまま見事に激突。
その合間を縫って、地面に手を当てながら事前に用意していた術式を発動させる。
『土遁陥穽』……精霊を用いて対象に土砂を浴びせ、更に地割れにより発生させた穴に落とす魔法だ。
攻撃と言うよりも時間稼ぎの趣が強い魔法である。
が、幹比古にとってこの時間稼ぎこそが大事なのだ。
発動速度が遅いからこそ、何者にも妨害されない時間が欲しかった。
呪符を取り出し、時間を掛けつつもメガスケアクロウが復帰する前に発動する。
悪魔に対して最も有効打となりえる、情報体に直接ダメージを与える対悪魔術式……『迦楼羅炎』を。
燃焼の概念を直接ぶつけたその一撃は、情報体そのものはまだ弱小と言えるメガスケアクロウには効果的……否、致命的だった。
大穴の中で悶え苦しみ、外装から黒い瘴気となって昇華していく。
最終的にそこに残ったのは、仰々しいだけの外装だけとなった。
『見事だ、幹比古。 これで我らの役目は一旦終了だな。』
労い、そして賞賛の言葉を掛けるケルベロス。
彼がここにいることは、即ちこの周辺の敵の全滅を意味していた。
「そっちもお疲れ様、ケルベロス。 ところで……さっきから聞こえてくる戦闘音とこの声は……。」
『恐らく、移動して戦っている内に紫輝の方に来てしまったのだろうな。 まぁ、あちらはネヴァンとベオウルフ、更に自身の仮面も使っているから心配無用だろう。 終わりも近いだろうから合流に向かおう。』
斬撃音だったり、爆裂音だったりと音の発生源は多種多様。
一体どれだけ派手にやっているのか……今もなお戦う紫輝のやりたい放題っぷりに苦笑しながら、一人と一体は静かに歩みを進めていった。
最後に残った戦闘区画……紫輝が担当する箇所だが、まさに乱戦状態だった。
軽く見るだけでも悪魔の多種多様さが幹比古側の比でないことが分かる。
テロリストが連れた悪魔だけでなく、自然発生までもれなく付いてきたからだろうが……。
『流石に多いわねぇ……紫輝、ガス欠の心配はない?』
「ないない。 全く、まさに時間無制限悪魔狩りバイキングだなぁ!」
何度目か分からない雷撃を遠くに居る棺桶を持つ7ヘルズ……ヘル・グリードに浴びせる。
ヘル・グリードの持つ棺桶には7ヘルズの同族の精神体が多量に閉じ込められており、状況を見て増量させてくるので面倒極まりない。
だから、棺桶が見えたら速攻でネヴァンから引き出す雷撃で仕留めていた。
嫌気が差しているネヴァンに対して、紫輝はだんだんテンションがおかしくなっていた。
次に目に入ったのは、多量のマリオネット。
その内の一部がショットガンを向けたり、ナイフ投擲の動作に入っていたので即座に跳躍する。
時間差で放たれた弾丸やナイフは全て空振り、そして紫輝は自然落下の勢いそのままに、ベオウルフで武装した右手を握り拳で群れの真ん中に叩きつける。
地面の振動は大げさなまでに増幅され、共に光に模した熱波が襲いかかる。
『ははは、いいぞもっと蹂躙するのだ紫輝!』
「ノッて来たなぁベオウルフ! 最高にイカれた放課後で楽しすぎるぜ!」
ベオウルフも紫輝もアドレナリン全開なのか、テンションがおかしくなっていた。
次に目に入ったのはこちらに向かって転がってくる機械染みた外装の悪魔。
幹比古も相手をしたメガスケアクロウだ。
転がっている状態は外装に装着されている特徴的な刃のせいで非常に危険。
しかし、紫輝は避けるという選択をするつもりはなかった。
「よーし、折角だからお前で遊んでやるよ。」
不敵な笑みを浮かべながら転がってくるメガスケアクロウの真正面を陣取る。
対象を見つけたからか、メガスケアクロウは更に加速。
そのまま轢かれるか……と思いきや、何故かメガスケアクロウの身体が空を舞っていた。
「ははは、サッカーなんて何年ぶりだろうな。」
あろうことか、紫輝は転がるメガスケアクロウに合わせて蹴り上げを行ったのだ。
更に、落ちてくるメガスケアクロウを逃さず足で捉えて再び蹴り上げる。
落ちてきたら蹴り上げ、また落ちてきたら蹴り上げ……これをひたすら繰り返す。
悪魔を使ったリフティング……要するに完全に玩具にしているだけだ。
とはいえ、メガスケアクロウの外装と重量に耐えうるベオウルフを装備していないと出来ないことなのだが。
「あー、やっぱりすぐ飽きるな……では、ボールは適当に蹴るっと!」
すぐに飽きてしまい、先ほどまでより高く蹴り上げる。
それと同時に自分も跳躍して、タイミングよくシュート。
良い場所に蹴りが入ったからか、地上を転がるよりも凄まじい勢いで飛んでいくメガスケアクロウ。
そしてその先に居たのは下っ端であるスケアクロウの集い。
圧倒的重量差と、蹴り飛ばされたベクトルで一匹残らず潰される、または轢殺されていた。
なお、ボールとなっていたメガスケアクロウも限界を迎えたのか、共に塵に帰っていた。
「これ実際のサッカーだったら何点くらいだろうな。」
『普通に考えてレッドカードもので無得点でしょ……。』
『ははは、レッドカード上等! ファウルせずして何がサッカーだ!』
「ベオウルフ、それだともう悪魔次元サッカーって競技に変えるべきだな、さぞかし楽しそうだが。」
どこぞの超次元サッカーだと突っ込む人間が居ないことが惜しい。
今度メンツを揃えてやってみるか……とか阿呆なことを考えていたら、地中から甲高い声と共に次の相手は現れる。
見た目こそ獣だが、二足歩行で歩いており明らかに集団で行動している。
スケアクロウや7ヘルズに比べたら、外見も比較的品がある見た目だ。
それでも醜いことに変わりはないが。
『ブレイドが出てくるって……随分と境界が緩んでるわね。』
ネヴァンがブレイドと称したこの悪魔は中級クラスに分類される。
ここからは霊体そのものが形を成して襲ってくるケースが基本になるので、下級が出てくるよりも大きな境界の揺らぎが必要になってくる。
要するに、ここ日本では滅多に出てこないレベルの悪魔なのだが、今回は例外だろう。
人工的手段でこじ開けられた穴が大きくなっているだけの話なのだから。
そうこうしている内にざっと見て6体ほどのブレイドが各々の方針で襲い掛かってくる。
4体は紫輝を取り囲むように動き、2体は後方待機。
前に出てきた4体は次々と紫輝をその鋭利な爪で引き裂こうとしていた。
しかし、4体と言っても同時でも何でもないから一つずつ対処するのみ。
センチ単位での位置関係を把握して、一番近い背後のブレイドを刀の鞘で殴り
左から来る個体には腹に蹴りをかまして
真正面から来る個体には裏拳をぶつけて爪を砕いて
最後に来た右の1体に対しては抜刀、一気に叩き斬って葬った。
4体の攻撃を全て流すと、今度は後方待機していた2体が爪を飛ばして攻撃するのを察知する。
後方待機する個体がいる時点でそれも織り込み済みだ。
先ほど鞘で殴り倒した個体を爪を飛ばす個体の内1体に向けて投げ飛ばす。
更に爪を砕いた個体も同じようにもう一体に向けて投げ飛ばし、爪が飛んでくるのを防ぎつつ2体共一時的に行動不能にする。
既に納刀状態に戻していた刀を、自己加速術式で2組に近づくと共に抜刀。
先ほど見せた自己加速からの抜刀、3連斬で、計4体をまとめて無に帰した。
最後に蹴り飛ばしたブレイドのことも忘れずにネヴァンの電撃で処理。
「……どうやら、このブレイドで最後か。 まぁ、それなりに満足かな。」
『……これだけやってそれなりってところが悲しいというか何というか……ねぇ?』
『俺はまだ満足していないぞ! 次こそはまともに呼ぶのだぞ、紫輝!』
放課後悪魔パーティ第一幕はお開きのようだ。
演習林の状況はかなり悲惨なことになっているが、それは見て見ぬ振りをする。
「こっちも終わったみたいだね。 ところで、この惨状は……。」
『……まぁ、いつものことだ幹比古殿。 だから紫輝はここを迎撃地点に選んだのだ。』
一息ついているところに幹比古とケルベロスが合流する。
戦闘後の爪痕の深さは凄まじく、この悲惨な光景を見た幹比古は乾いた笑みを浮かべ、ケルベロスは悟りきった表情だ。
倒木が目立っていたり、焼け野原があったり、掘り起こされた跡もあったり……。
この後始末も既に依頼済みだから何も問題は無いのだが。
「さて……俺はとりあえずあっちと合流してくる。 その後に本丸に突っ込む予定だが……幹比古は来るか?」
「行かせてもらうよ。 ここで下がるのは僕の気が済まないからね。」
一度関わったからには最後まで関わり見届ける……紫輝は特に反対する理由も無かった。
後でまた落ち合う、ということでこの場は一旦別れる。
ケルベロス、ネヴァン、ベオウルフをあちらへ一旦戻し、刀を再び無意識の海へ帰す。
「んじゃ、事情聴取タイムと行きますかね……。」
自己加速術式を発動させて、達也たちの待つ図書館へ一直線。
入学早々に起こったこの騒動も、もう既にフィナーレは間近だ。
はい、校内テロは対悪魔も加わって更にカオスになりましたとさ。
紫輝もそうですが、幹比古も結構暴れております。
言うまでもないかもしれませんが、原作キャラで一番優遇されているのは何といっても彼です。 なんていうか、原作だと強さというかえげつなさがイマイチな感がしてたんですよね……いやそれでも強いしえげつないんですが。 正直自分は達也よりも幹比古の方が敵に回したくない。
そして遂に紫輝の残った手札の公開。 ベオウルフはスパーダ関係の憎悪がまるで無いし、紫輝の力はちゃんと認めているのでやや素直じゃない、でもハイになったらやたらと紫輝とシンクロするようになってます。 キャラが違うけどご容赦を。
また、全員が自分の属性の~ダイン系統、またハマオンorムドオンは使えます。
DMC3魔具5体の場合は
ケルベロス→ブフ系統
アグニ→アギ系統
ルドラ→ガル系統
ネヴァン→ジオ系統、ムド系統
ベオウルフ→ハマ系統
という風に対応しています。 他にもネヴァン以外は物理スキルが使えたりしますがそれは後ほど……って既にケルベロスの物理スキルは出てるんですよね。 名称は設定資料の方で明かしますが。
そして、紫輝が最後に呼んだ刀は第1話冒頭のシーンと合わせれば何なのかは分かる人は分かります。 また、これだけ呼び出し方が異なる理由も分かる人は分かるかと。 ちなみに私は某Pの召喚はやっぱり3が一番好きです。 1とか2の貫禄あふれる仁王立ち召喚も好きだけど。
今回の戦闘はそこそこに色々な悪魔を出しましたが、正直まだまだ出し足りない。
でも、あんまりやりすぎると字数がとんでもないことになりますし……これでも抑えた方なんですがね、流石に28000字はどうなんだと。
でも前後編で分けるのはしっくりこないからこのまま投稿。 本当すみません(´・ω・`)
さて、次話はいよいよ入学編ラスト。 戦闘は今回ほどの量ではないですが、ここまでで書ききれてない要素は詰め込んである……はずです。