天に立つ故に~The King of The World~   作:Shalck

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 と言うことでリメイク版となります。
 あのまま続くと思っていらっしゃった方々、申し訳ございません。
 プロットが破損した状態であの先を書くのは非常に難しかったのです。
 一応あのまま残しておきますが、こちらがリメイク前に追いついた時点で削除いたします。
 前作を見ていただいた皆様、及びお気に入りしていただいた皆様には多大なる迷惑をおかけしました。申し訳ございません。
 どうかこちらを見ていただけると幸いです。


001 「私を殺して見せろ」

 ――宣言――

 

 

 

 その者は王であった。

 あらゆる生物の頂点に立ち、神すら殺す力を持つ。

 その道に敗北は無く、あるのはただ数本の刃のみ。

 無数の剣が降り注ごうと、永遠の闇に襲われようと。

 剣を切り裂き、闇を照らす光となる。

 幾度の剣戟が襲い、数多の者達が襲い来る戦場であろうとも。

 彼は剣戟を躱し、数多の敵を切り伏せる。

 そして彼は言うのだ。

 神に、神如きに指図される覚えはない。

 この世の全てを征服せし王が告げる。

 世界よ、我を討ち倒せ。

 

 

 

 ――謁見――

 

 

 

 虚圏と呼ばれる虚の住む場所に存在する越境の地、ガンドラ。

 あらゆる者達の侵入を拒みしその王国は、終焉の名を持ち相応の力を持たなければ入れない場所に存在していた。

 天然の防壁であると共に、天然の牢獄でもあるその場所へと藍染惣右介は向かっていた。

 乾きの続く砂漠を、果てしない湖を、まるで何者かが意図して作っているかの様なその場所を抜けていく。

 彼には力があった。

 幼い頃から天才と呼ばれ、天才故に周りから理解されない程の力があった。

「ここ……か……」

 そんな彼ですら漸く着いたと言えるガンドラの入口。

 彼が何故そんなところにと言われれば、それは戦力を手に入れる為だ。

 この虚圏の王を名乗っていたバラガンを配下にした時、その場にいた多くの虚から聞いた言葉。

 ――終焉の地に眠りし神の如き王。

 虚が信仰していると言うことも可笑しかったが、それでもバラガンから決定的な証拠を聞いたことにより惣右介は動き出したのだ。

 ――終焉の地にいる奴は、最強にして唯一無二だ。

 最強。その言葉を聞いて動いてしまったのは、単に戦力が欲しいと言った話ではない。

 勿論戦力を手に入れると言う最優先の目的があるのは事実だが、最強と呼ばれる人物を見てみたいと思ったのもまた事実なのだ。

 山本元柳斎重國の様な本物の最強なのか、それとも偽物の最強なのか。

 惣右介としての見解は後者だったが、それでも見てみなければわからないとは思っていた。

 結果、霊圧を感じることはできなかった。

 霊圧を感じることができないと言うことは、そこには雑魚と呼べる存在しかいないと言う事である。

 所詮はガセネタかと若干の気落ちをしながらガンドラに入ろうとした瞬間。

 ――世界が止まる程の重圧を受けた。

 思わず片膝をついてしまうほどの重圧を前にし、惣右介は冷や汗が流れていくのを直に感じる。

 入口から入っただけだというのに、これほどまでの重圧を放つ場所が存在するのかと。

 霊圧ではない。霊力でも無い。

 ただ単純に、そこにいるだけで発生する重圧。

「――この終焉の地に辿り着く者が居るとはな」

 声が聞こえた。

 低くも尚、気高しさを感じる気品ある声。

 声をかけられるだけでもありがたいと思ってしまう程、その存在は異質だった。

 黄金に煌く長い髪、全てを見通すかの様な赤き左目に、その誠実さを覗かす様な青き右目。

 白き衣装に身を包み、黒きマントを翻すその存在。

 この虚圏に存在する神の如き王――アッシュヴァルド=フォン=ルシフェリオーレと言う規格外を前にして、天才はひれ伏した。

 勝てない。何だこの化物は。

 戦力になるなんていう甘い考えは捨てるべきだったと、神の如き王等と言う王と言う言葉の意味を食い違えていたと。

 考えれば分かることだったのだ。

 神話に登場する様な神が、その力を代行すると言われている清教徒が、王の前にひれ伏したことは多くあったのだ。

 アリが人間を崇めているかと言う話だ。

 アリが常に信じ、命令を受けているのは女王アリであり、人間ではない。

 種族が違うのならば、それを崇拝するのは間違っている。

 人間は人間の頂点である、王を尊敬するべきなのだ。

 決して神に縋るべきではなかった。

 神とは王の様に行動はせず、また神の力も努力によって覆されてしまうものなのだから。

 そして目の前に存在している王とはつまり――虚と言う存在の頂点に立っていると言う意味にほかならなかった。

 何処かを統治しているから王ではなく、本当に頂点に立っているが故に王。

 誰かから選ばれたのではなく、自ら王となった人物。

 上位の才能を持っているからと言って、頂点に勝てるはずがない。

「人間界ではこういうのだったな。初めまして、と」

 霊圧を感じられなかったのではない。

 あまりにも高すぎる霊圧によって、感覚がマヒしてしまっていたのだ。

「私の名前はアッシュヴァルド=フォン=ルシフェリオーレ。このガンドラの統治をしている」

「藍染惣右介と、申します」

 下手に出た。

 出ざる負えなかった。

 その惣右介を攻める者は誰一人として存在せず、また惣右介自身どうしようもない力の差を感じていた。

「死神と言うことで一応の警戒はしてみたが、無意味だったか」

 無意味。それが何を意味するのか大凡の理解は出来ているが、それでも呑み込むのにはかなりの時間を浪費した。

 プライドが邪魔をしてしまうのだ。

「あぁ気にしなくていい。貴公がその実力に達していないと理解しても私はしていたのだ」

 実力が達していないと言う言葉に悔しさが滲み出るものの、惣右介は動かなかった。

 ここで騒ぎ立てて、何の意味になるのか。

「プライドを押さえ込んだ……か。実に見事だ」

 唐突に自分が見透かされていた感覚に合い、伏せていた顔を上げてアッシュヴァルドを見る。

 その紅と蒼の瞳に込められた眼光に畏怖を覚えながらも、それでも惣右介はアッシュヴァルドを見た。

 ここで引くわけにはいかないのだ。

 自分が行動を起こしたのだから、最後まで完璧に行う。

 完璧主義者に近い惣右介だからこそ、プライドを捨ててプライドによってその意思を確立させたのだ。

「貴公がしていることは理解している。死神の理を外れ、虚と共に現世を掌握し、霊王を討つ」

 今度こそ惣右介は絶句した。

「実に見事だ。世界に変革を齎すだろう。つまり貴公がしようとしていることは、こうだ」

 そう言ってアッシュヴァルドは自分の下を指さした。

「天に立つ。そうだろう?」

 天を自らの下に向ける等異常と言う人物がいることを理解しつつも、それでもアッシュヴァルドは下を指さした。

 自分は天よりも上であると。

 だがしかし、それでいて彼は一度も神とは言わなかった。

 全ての噂でもそうだ。

 神の如き王とは呼ばれても、神と呼んでいた人物は一人も存在していない。

 それはそのはず。彼は神と言う存在を嫌っているからだ。

 だがしかし存在自体が既に神と言える領域に達してしまっている。

 故に、神の如き王なのだ。

 ――それはさておき。ここで惣右介の心に小さな変化が起きた。

 自分が天に立ちたいのは何故か。

 その答えは勿論、掌握したいからだ。

 天才と言われ、理解されなかった自らが上に立つことで理解したかったからだ。

 自分の存在意義と呼べるものを見つけたかったからだ。

 その為にここまでの行動を起こしたというのに、その目的がバカバカしく思えてしまったのだ。

 目の前に、あまりにも桁が違う天才が存在しているというのに、自分の存在意義等見つける必要があるのかと。

 彼の方がそんなことはぶち当たるはずなのに、そんなことは一切していないと。

 己を鍛え、強くなり、王となった彼の前でそんな言葉を吐いていいのかと。

 良い訳がなかった。

「天に立つ。ですが――天から眺めた景色は私にとってきっと、面白みの無いものでしょう」

 上に立つならば、もっと上を目指した方がいい。

 叶わなそうだとしても、目の前にそれが存在しているのならばそこを目指した方がいい。

「ほぅ」

 アッシュヴァルドの口元が歪む。

 そこから放たれるのは覇気。

 アッシュヴァルドが生きてきた1万年以上の歴史で二回目の、目の前で堂々と宣戦布告をされたと。

 それも力の差が理解できていないからではなく、倒さなければならないと言う事でもなく、ただ目標としたいから倒すと。

「面白い。面白いぞ藍染惣右介」

 心が、思いが、吹き出す様に溢れてくる。

 そして思うのだ。待ってきて良かったと。

 この生と死の歴史は無駄では無かったのだと。

「誰もが私を見て諦める。誰もが私を見て頭を垂れる。勝てないと。無理だと。私はそれが途轍もなく気に入らんのだよ。故に――真っ直ぐに私に勝負を挑む貴公は評価するべきだ」

 アッシュヴァルドはそう告げると、一切の重圧を解除した。

 力の放出をコントロールするなど、彼にとっては造作もない。

「何を望む、藍染惣右介」

 ここで惣右介には二つの選択肢が存在していた。

 一つは選んでしまうので、ここでは残った一つについて述べるとしよう。

 その一つとは、現在戦うことだ。

 現在戦い、そしてその力を理解する。

 分析と言う彼の得意な分野だからこそだが、理由が他にもある。

 それがもう一つの選択肢を選ぶにはプライドが邪魔をするからだ。

 プライドを捨て、戦う覚悟があるものしかその選択肢は選べないのだ。

 そして彼はそれを選ぶのだ。

「教えを、乞わせてください」

 もう一つの回答。頭を下げる。

 勝てない。それを理解し頭を垂れた惣右介を見てアッシュヴァルドは一瞬諦めたのかと思ったのだが、そうではないと理解した。

 今までの者達と違い、彼の勝てないには一つ言葉が付け足されている。

 今は。

 今は勝てない。

「……良いだろう。存分と教えてやろう」

 自らを殺す者を自ら作り出す。

 鍛えると言う概念に触れることとなったアッシュヴァルドではあったが、その心には新たなる試みに胸が高鳴っていた。

 未知に触れることが出来ると言う快感にだ。

「来て頂きたいのです。私の宮殿に」

「軍門に降れと?」

「いえ。協力していただけるだけで良いのです」

 その後の会話に、さして意味は無かった。

 ただこの地に通いながら鍛えるのは時間的に不都合な為、ただ単純にスペースや訓練できる場所が手に入るその場所に来ていただきたいと言うささやかな願いなのだ。

 願いと言うよりも、お願いに近い。

 故にアッシュヴァルドはそれに対して対価は求めず、普通に良いで許可を出した。

「では行こう藍染惣右介よ。私を殺して見せろ」

 

 

 

 ――開幕――

 

 

 

 虚夜宮と呼ばれる破面達の城。

 十刃と呼ばれる十人の最高戦力が決定するこの瞬間を楽しみにしていた者達は、招集に応じて集まっていた。

 第一刃、バラガン・ルイゼンバーン

 第二刃、ユーリ・リオン。

 第三刃、ヴェルデ・アルビオン

 第四刃、アースガルト・フルディング

 第五刃、ガンテンバイン・モスケーダ

 第六刃、クロノス・ハルフィス

 第七刃、チルッチ・サンダーウィッチ

 第八刃、ネフリム・ピーター

 第九刃、アーロニーロ・アルルエリ

 第十刃、ヤミー・リアルゴ

 このメンバーが発表され、虚夜宮内部の自らの塔が決められた後、一つだけ空いている場所があることに気がついた。

 元々十作られるはずだったものが、十一に変わっているのだ。

「ここで君達に大切な話があるんだ」

 破面。虚を超越した存在であるその者達であったとしても、一部を除いて惣右介の言葉は絶対だ。

 いや、破面だからこそ絶対なのかもしれない。

「今回私は協力者を得ることに成功した。勿論ただ協力していただく為だけに呼んだのではない。呼んだわけがない」

 演説の様なその言葉に、破面達は一体誰が呼ばれたのか考える。

 山本元柳斎重國や、零番隊等の憶測が飛び交う中でバラガンだけは理解していた。

 いや、彼だからこそ理解できてしまったのだろう。

 彼もまた、アッシュヴァルドと言う存在に触発された一人なのだから。

 カツカツと音を立てながら現れたその人物に、破面達は息を呑む。

 霊圧が感じられない。全て抑えている状態だというのに、察してしまったからだ。

 彼が王であると。

「私達の協力者にして、最終目標。アッシュヴァルド・フォン・ルシフェリオーレだ」

 最終目標。その言葉に動揺してしまった者達も多いだろう。

「霊王を討伐し、天に立つ。確かにそれで我々の目標は達成されたかもしれないが、ふと思ってみたのだ。一番を、最上位を目指すことはいけないのかと。

 彼はこの世界で最強だ。唯一無二だ。今でも私は勝てないと思うし、きっと君達もそう信じているだろう。だがそれは今の話だ。

 無理だ。勝てない。そう言っている間は本当に勝てないだろう。だが勝てると確信すれば、おのずと力が湧いてくるはずだ。

 今戦うことは勇気では無く蛮勇だ。勝てるはずの無い戦いに挑む愚か者だ。だから我々は口惜しくながらも、恥ずかしながらも思うのだ。今は勝てないと。

 そう。今はだ。いつ勝てないかなんてものは、その時にしかわからない。我々はその線を超えるのだ。その線の向こう側へ向かうのだ。

 その術は彼が教えてくれる。彼を倒す勇気を、彼がくれる。悔しいだろう。悲しいだろう。それを力に変え、プライドを捨て、今の力を蓄えるんだ。

 そしてそれを使用し、アッシュヴァルド・フォン・ルシフェリオーレと言う最も高い目標を、討ち取る。それが我々の求めるべき姿であり、同時に最強へ向かう道なのだ!」

 そう言って一息吐くと、惣右介は続けていった。

「諸君。諸君は一番ではなくて満足か?

 十刃ですら、第一刃を取ろうと努力したものも居るだろうし、その第一刃を取ったバラガンはきっと当然だと思うと共に、一位と言う優越感を理解しているだろう。

 もう一度問おう。本当に一番ではなくて不満が無いのか?

 一番になろうとは思わないのか?

 その頂点に立っている人物が、頂点に立つ為の力を教えてくれると言っているのだ。

 無様に這い蹲ってでも、足を舐めてでも、それを行う価値があるとは思わないのか?

 永遠に底辺を彷徨っていて満足か?

 最強の称号を手に入れなくて本当に満足なのか?

 私は満足しない! 断じてだ!

 やるならば一番を、最強を目指すのが通りだろう!

 ……皆。私は君達に最後に問いたい。

 最強になりたくはないか?」

 演説を終えると同時に、破面から大歓声が聞こえてきた。

 それを聞いていたアッシュヴァルドも、珍しく拍手をして褒め称える。

「私がアッシュヴァルド・フォン・ルシフェリオーレだ」

 マイクを受け取ったアッシュヴァルドが、静かにそう告げた。

 静まり返った破面達を前に一言。

「天に立つ。故に私は貴公等に力を貸そう。そして天に立った時、私は貴公等の挑戦を受けよう」

 再びの大歓声。

 こうしてここに破面とアッシュヴァルドの同盟が結ばれた。

 その余波が影響を与えるのは、すぐそこまで迫っているのだ。




 前回との相違点等は、あえて書きません。
 所見の方もいらっしゃると思うので。
 次回よりキャラクターの紹介及び簡単なあとがき、また質問ご感想に対するコメントをさせていただきたいと思います(まぁ質問や感想が来るなんて……)。
 それではまた次回お会い致しましょう。
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