天に立つ故に~The King of The World~ 作:Shalck
第一話にてお気に入り数がなんと100を突破いたしました。
ありがとうございます。
――序幕――
十一番目の城。別名アッシュヴァルドの城。
つまり言うところのアッシュヴァルドに渡された、アッシュヴァルド並びにその勢力が居座っている場所である。
十刃に与えられる虚夜宮よりも広く設計されているそこは、元々大広間と呼ばれる場所になるはずだったのだ。
だがしかし現在、その場所はアッシュヴァルド以下その傘下によって支配されている。
一体いつ傘下を呼んだのかと問われれば、結論的に言えば最初から居たとしか答えられない。
どこにいたのかと問われれば、それはアッシュヴァルドと言う存在に内包されていたのだ。
アッシュヴァルドとは、王であり、軍勢だ。
その体の中には無限の軍勢が居座り、そしてアッシュヴァルドもまたその無限の軍勢と匹敵する力を持っているのだ。
「お菓子」
そしてお菓子を強請る淡い緑色の髪を持つ、褐色のロリっ子。
彼女もまたアッシュヴァルドに内包されている魂の一つであり、無限の軍勢の一角であり、アッシュヴァルドそのものなのだ。
「……へい大将」
お菓子を強請られて持っていたポテトなチップスを渡した人物も、勿論ロリっ子と同じだ。
ロリっ子または少女の名はロア。
ポテトなチップスを渡した青年の名前はルフィア・ノイン。
「苦しゅうない」
「何だかロリっ子にこき使われているって言うことに背徳感が――いやなんでもない」
最近染まってきているなーと呟きながら、ルフィアは空を眺める。
空と言っても描かれた偽りの空であり、本当の空は現世に行ってこそ美しいものなのだが。
現在お留守番と呼ばれるべきものをさせられているルフィアは、自由奔放かつ本来ならば暴れる様な役割であるはずの自分がまともな役割をさせられていることに違和感を感じつつも、ため息でそれを隠した。
しかしそれは結局アッシュヴァルドに見破られたのだが。
――出現――
バラガンは焦っていた。いや、困惑していた。もしくは驚愕していた。
何故、いやこいつに常識なんてあるはずがないと半ば確信しつつもバラガンは現状を認めない。
現実逃避等何千年間もやっておらず、もしかすると虚になってから初めてかも知れないと思いつつも現実逃避をする。
「バラガン。どうかしたのか? 顔色が悪いぞ」
お前のせいだと堂々と言えなかったのは、バラガンがテンパっていることをよく表しているだろう。
数分前に唐突に現れたアッシュヴァルドは、普通にバラガンの前に現れ、普通に燕尾服を着た青年を呼び、普通に紅茶をすすり始めたのだ。絶対に普通ではない。
しかしそもそも普通とは何だと返してくるアッシュヴァルドに常識を問う等間違ってもできない芸当であり、同時に自分の不甲斐なさを確かめた瞬間でもあるのだ。
「あぁ、そう言えば私が唐突にやってきたのだったな。許せ」
許してしまいそうになる自分に気がつき、バラガンは普通に落ち込みそうになった。
最早普通と言う言葉がゲシュタルト崩壊である。
だがしかし、現実逃避をやめて現実を直視すればどうだろう。
目の前にいるのは金色の王。
数多の文明を滅ぼし、世界最強唯一無二の存在へと成り上がった破壊の権化だ。
「構わん。儂も暇していたところじゃ」
カタンと言いながらバラガンが出したのは、チェス。
かつて王国貴族達が作戦を練るために使用したと言われているそれを出され、アッシュヴァルドはそういうことかと自分の駒を並べる。
バラガンも駒を並べると、一投ずつ行っていった。
「それにしても貴様がガンドラから出てくるとはな」
一投を行いながら言葉を交わす。
「別に珍しい話でもあるまい。現世には何度か出ていた」
「それでもじゃ。儂は数百年は貴様を見てないからな」
傍から見ればただのニートだと言いながら、バラガンはチェックと告げる。
予想よりも早くチェックを取れたことに自分で驚きつつも、バラガンはアッシュヴァルドと言葉を交わす。
「ニートか。言い得て妙だが、本当にすることが無かった。立ち向かう者もいなければ、あの道を超えてくる者もいない。そんな時に現れた藍染惣右介に興味を抱くのは道理だろう?」
再びのバラガンのチェック。
それを聞いても未だにアッシュヴァルドは余裕の笑みを崩さない。
「貴様に喧嘩を売る奴なんて殆ど居ないだろう。儂ですら喧嘩したくないわい」
「まぁそうだろうな。私は貴公が私を殺すと言うビジョンが一切見えなかった」
かつて、若かりしバラガンはアッシュヴァルドに喧嘩を売ろうとして挫折した。
手を出さなければ何もしないと言うアッシュヴァルドの言葉を信じ、アッシュヴァルドがガンドラから出てこない限りの王政を行ってきた。
「それは儂が貴様を怖がっていたと?」
三度目のチェック。
「そうだ」
そう答えたアッシュヴァルドは、チェックメイトと言って駒を動かした。
ぬぅと唸りながらその盤面を見ると、いつの間にか兵士が王の首を取っていた。
「この様な勇気ある兵士が、王を打倒しに来る時を私は今か今かと待っているのだ」
その状況にぬぅんと声を漏らしながらも、あまりに綺麗に決まったこの盤面を見て彼は再度驚く。
誰一人として、アッシュヴァルドは駒を奪われていなかった。
殆ど王の駒しか動かしていなかった事実に驚愕と共に敬意を称し、バラガンは自らの敗北を明確に認めた。
認めないわけにはいかなかった。
「ふんっ。その一人がボスだったと言うことか」
「私の記憶にある中で、私に歯向かう勇気ある兵士は藍染惣右介。そして山本元柳斎重國を置いて他にはいない。しかしそれも過去の話だ。現在では私の重圧に戦意を喪失しないかもしれん」
人とは変わっていく生き物なのだからと告げ、アッシュヴァルドは口を閉ざした。
「ワザと負けるつもりは無いだろうな?」
バラガンのそれはある種アッシュヴァルドに対する侮辱でもあったが、その程度のことで怒りを出すことなどない。
むしろそう見られてしまうのも当然だと考えているのだから。
「そんなはずがあるわけ無いだろう。私は王だ。頂点に君臨する者として、誰であろうと敗北するつもりはない」
言語道断。そう切り捨てた。
それを聞いたバラガンは少しだけホッとすると同時に、藍染惣右介と山本元柳斎重國のその戦意に驚愕を顕にしていた。
一度相対したのならばわかる、その絶対的な能力。
あまりの格の違い。
明確な力の差。
どれをとっても、人間が諦める理由にするのは当然とも言えるものだ。
それでもなお諦めない。
彼に挑むとするならば、人を超えた精神力が必要になると暗に告げられていた。
ここで自分もそこに入る、等と明確に決定できる程バラガンは世間知らずではない。
自分よりも強い者達がいることを知っているし、その者達の上がいることも知っている。
井の中の蛙の如く、小さな世界で生きているのでは統治を行う王としての器が知れてしまう。
「ならいい」
答えはそれ以外には必要無かった。
話し合いを終えたアッシュヴァルドは席を立つと、そのまま自らの宮殿へと戻ることにした。
その背中を眺めるバラガンに対し、見えない笑みを浮かべながら。
――出会――
ユーリ・リオン。
この名前を知らぬ者は、破面の中に存在しないだろう。
先日発表された十刃にて、初加入にして第二刃の名を与えられた少女。
まだ幼さが残る容姿だと言うのに妖艶であり、また同時に清楚であった。
矛盾しているかのようなその美しき少女に目を奪われる者達は多いが、彼女はその一切を無視し、またその目を奪われた者達は周りの者に釘を刺され、誰一人と会話せずに目的地へと向かっていた。
目的地。そこに居るはずの人物、アッシュヴァルド・フォン・ルシフェリオーレと会談をする為である。
ゆっくりと歩いていた彼女の前に、見慣れぬ人物が現れた。
いや、この虚圏に置いて見慣れてはならない人物が現れた。
「およ? 可愛い女の子がいる!」
死神。そう理解し何故ここにいるのか、そう考える前に行動に移していた。
目の前に敵である人物がいる。
何処から侵入したのかもわからない目の前の人物が、近づいてきた。
行うことはただ一つ。
――斬って捨てる。
自然な歩調で踏み出した一歩に力を込め、加速する。
近づいてくるこの死神を斬ると確信し刀を抜いたところで、動きが止まった。
「可愛い~」
抱き締められていたのだ。
何故、どうしてと言う情報が錯乱する中でも、死神はユーリを抱き締め続ける。
「凄い。マシュマロみたいに柔らかくて白い肌。食べちゃいたいくらい可愛い!」
何を言ってるんだと思いつつも、その手に持っている刀で死神を切り伏せようとして止まる。
刀がいつの間にか鞘にしまわれ、そしてニコニコと笑顔で死神は言った。
「ダメだよ。おイタしようとしちゃ」
ゾッと、その笑顔に寒気を覚えた。
ただヘラヘラと笑っているだけのはずのこの死神には、本当の笑みが一切存在していないと。
塗り固められた仮面をつけているだけの、本当の顔の見えない人物だと。
「あ、もしかして貴方がユーリ・リオンちゃん? いやー、昨日アッシュに教えてもらった子の中に君見たいな子がいたから、もしかしたらって思ったんだけどね」
アッシュ。
その名前を聞いた瞬間、ユーリの思考は急激に覚醒していく。
目の前にいるこの人物は、アッシュヴァルドの配下であると。
そして死神であるが、自分達の協力者であると。
「初めましてユーリちゃん。私
灰円卓と言う言葉に、聞き覚えがないわけではなかった。
アッシュヴァルドの所属する、計13名の怪物達。
そのリーダーがアッシュヴァルドであり、そしてまた全員がアッシュヴァルドと言える存在だった。
「……ユーリ・リオン」
警戒を完全に解いたわけではないが、幾分か解いたユーリは一度竜胆から離れる。
黒く美しいショートカットの髪に、赤い瞳。
大和撫子を思わせるきめ細かく繊細な肌と顔立ちは、正しく日本人女性の鏡と言えるだろう。
だがしかしその顔に貼り付けている偽りの笑顔が、その美しさと相まって逆に悲壮感を出していた。
彼女は何を背負っているのか。
そうユーリでも考えてしまうほどに。
「う~ん。やっぱりユーリちゃんは可愛いなぁ。本当にもう」
それにしても撫でてくると思いながらも、それでいて無駄に出ていない脂肪が自己主張してこないのでそこに対しては近親感を感じているユーリだった。
周りの破面達の視線など気にせずにいる二人だが、さてここで竜胆に抱きつかれているユーリの姿を説明しよう。
青みがかった紫色の腰まである髪に、何も考えていない様な黒い瞳。
幼いと共に妖艶なその顔立ちと、マシュマロの様に白いと竜胆が評する肌。
身長も竜胆よりも低い彼女達が抱き合っているその姿。
男性型破面にとって非常にご褒美とも言えるその絵面は、後にユーリ・竜胆の頭文字を取り百合っ子と呼ばれる様になりファンクラブまで出来たものである。
どれほど凄まじい破壊力を持っていたのかは、あえて割愛しよう。
美女と美少女の絡み合いは、それでいてユーリが引き離さなかったことにより5分ほど続いた。
その竜胆から感じる暖かな温もりに、ユーリが心を解いてしまったのが原因とも言えるだろう。
「ユーリちゃんは何で宮殿じゃなくてこんなところを歩いてたの?」
「……ちょっと散歩。後、アッシュヴァルド・フォン・ルシフェリオーレと会談を行いたいと思って」
「あー、アッシュ? アッシュならさっき出かけちゃったから少しいないなぁ。あ、良かったら私の部屋で待ってる?」
待っていると言おうとしたユーリだったが、何故か貞操の危機を生存本能が感じ取り断った。
残念だなと言っていた竜胆の表情が本当に残念そうだったので、やっぱり行くと言おうとしたがその瞬間の竜胆の獲物を見つけた瞳に負けて行くのはやめた。
その代わり後日遊びに行くと言う予定を立ててから、歩いていた竜胆と別れユーリは自らの宮殿へと戻る。
その道中、ユーリの内心は大きく暴走していた。
かつて生きていた頃のユーリは、その妖艶さから実の父に犯され、また同級生に犯され殺されると言う悲劇を体験している。
それ故に男性に対して著しい拒否反応を見せていたのだが、今回竜胆には大丈夫だった。
つまりこのことからユーリは、女の子なら大丈夫かもしれないと思ったのである。
「……悪くないかも」
本当に貞操の危機を感じるべきは、竜胆なのかもしれない。
キャラクター紹介
アッシュヴァルド・フォン・ルシフェリオーレ
本作の主人公にしてラスボスにして最強の王。
王様であることに拘りを感じており、神と呼ばれることを嫌う。
独自の価値観と思想を持ち、それに則った行動を行う。
藍染惣右介
漂白剤をぶっかけられた、ある意味主人公。
ルフィア・ノイン
子守りと留守番をさせられている青年。
最近ロリっ子にこき使われていることに背徳感を感じ始めている。
ロア
ロリっ子。
褐色の肌に、淡い緑色の髪を持つ少女。
リメイク前では大人気だったロリっ子。
バラガン
第一の被害者。
葛城竜胆
灰円卓第八位の少女。死神の格好をしている。
灰円卓の元ネタは勿論黒円卓。それで、アッシュは灰って意味だから灰円卓になった。
可愛い子大好き。
ユーリを貞操の危機に陥れたが、逆に現在は自分が貞操の危機。
ある意味第三の被害者。
ユーリ・リオン
第二刃。第二の被害者。
最初は被害者で、竜胆に迫られることに抵抗していた。
しかし最終的に女の子ならいいかもと言うとんでも理論に落ち着いた。
あとがき
まずは最初に青坂さん、鵺一さん、hawkinsさん、評価して頂きありがとうございます。評価していただいたこと、とても感謝しています。
そして藤井蓮さん。とても参考になりました。前作からありがとうございます。
リメイクと言うことでキャラクターにテコ入れしたりと、色々大変ではございますが、頑張って更新していきたいと思います。
後、戦国アスカzeroのイベントと艦これのイベントが重なってしまうので、更新は遅くなってしまうかもです。