天に立つ故に~The King of The World~   作:Shalck

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 更新遅れてしまい申し訳ございません。
 絶賛スランプ状態だったので、投稿遅れてしまいました。
 いまだにブランクがあるので週一回更新は出来ないと思いますが、それに近づけるように精一杯努力しますのでよろしくお願いします。


003「私は……負けたのか」

 月。それは夜の暗い世界を灯す光源であり、世界にとって唯一と言っていいほどの夜の光だった。

 その月光に照らされているのは、黄金の王。

 月光を受け、夜であっても曇らないその輝きはまさに黄金と言うに相応しい人物だろう。

 対するは闇。

 月の光を受けるアッシュヴァルド・フォン・ルシフェリオーレに対し、その光を受けたアッシュヴァルドの影に身を委ねる仮面の王。

 名を――藍染(あいぜん)惣右介(そうすけ)

 虚夜宮から遠く離れたこの場所で、二人は向かい合っていた。

「手合わせの承諾、ありがとうございます」

「貴公が実力を見たいならば、私はそれに答えよう。ただ――出来る限り殺さぬ様にはするが、事故が起こる可能性もあるだろう」

 その様な可能性は存在しなかった。

 アッシュヴァルドの言葉は一つ。

 ――失望させれば殺す。

 手加減をした自分に絶望する程の人物ならば、後に自分に挑む価値も無い。

 ならばそんな時間は使うべきではないのだ。

「はい」

 それに肯定以外の言葉は返さない。

 肯定以外の言葉を返すならばそれは、自ら死に飛び込むようなものだからだ。

「では行くぞ」

 アッシュヴァルドの右腕に、光が集う。

 黄金の奔流がその霊力を表し、収束された黄金が槍の形となってアッシュヴァルドの右腕へと顕現する。

形成(Yetzirah)――天地開闢の神滅槍(グングニアス・ハイル・ディザスター)

 次の瞬間惣右介は流れるように刀を抜き、アッシュヴァルドが右腕を振るう前に行動を開始する。

 振られてはまずいと言うことを本能的に察知した惣右介だからこそ、その前に殺すと言う手段を取れたのだろう。

 だがそれも、彼の前では意味の無い行為へと成り下がる。

 スっと、アッシュヴァルドは体を捻り後ろに傾ける。

 まるで決められていた道を通るかのように惣右介の刀がアッシュヴァルドの上を流れていき、同時に惣右介は自らが無防備になっていることに気が付く。

「――ッ!」

 全力の緊急回避。

 地面を蹴り後ろに下がると、アッシュヴァルドを睨みつけたまま刀を構える。

 ――十回殺された。

 今の一瞬で悟った回数は十回にも及び、明確なイメージとして惣右介の頭の中に残る。

「よく避けたな」

 アッシュヴァルドの賞賛の言葉も、今の惣右介には入ってこない。

 吹き出した冷や汗が、まるで滝のように流れ落ちる。

 今の一瞬ですら、死のイメージが見えたのだ。

「行くぞ」

 アッシュヴァルドが槍を振るう。

 黄金の奔流を纏った黄金の槍は震え、尋常ではない程の霊圧が刃となって惣右介を襲う。

 惣右介は卍解も、始解も行わない。

 直接的戦闘能力に一切関係のない能力であるが故に、超常的な戦いにおいて戦術の一つとしてしか使えないからだ。

 一度使ってしまえば、彼には二度と通用しない。

 例えそれが鏡花水月であったとしても。

「ならば」

 剣技にて彼を圧倒するしかない。

 構えを変えた惣右介に、アッシュヴァルドは少しだけ驚いた表情を見せる。

 間違っても、これをアッシュヴァルドに勝つ為の試合だとは思ってはいけない。

 恐らくこの世界において初めて藍染惣右介と言う男にだけ許された、戦う前の準備運動なのだ。

「行きます」

 刀を上段に構え、加速する。

 天才とは即ち、天に才能と言う決して覆らない能力を与えられた人物。

 その天才である惣右介の瞬歩は、通常の瞬歩よりもその速さを増す。

「――ハァッ!」

 真正面からの突き。

 瞬歩による尋常ではない加速と、惣右介と言う天才の技術を持って放たれたその突きは――まさに神速となってアッシュヴァルドの顔に向かっていく。

「なるほど」

 だが相手は天才を超越した王である。

 半歩ずらすだけと言うただそれだけの技術で、神速の突きを躱す。

 しかしそれも想定内。

 ある意味で信頼とも取れる、避けると確信していたと言う事実で、その突きで放った刀を横に払う。

 最低限の動きで避けた故の欠点。

 次の動きに対する対処の遅さを突いた惣右介であったが、たかだか数百年生きた小僧如きにアッシュヴァルドと言う王の思考をトレースすることなど出来るはずがない。

 アッシュヴァルドの突き出した左腕が刀と激突し、衝撃波が周りの砂を吹き飛ばす。

 響いたのは金属音に近い音。

 すぐさまアッシュヴァルドから離れた惣右介は、額からツーっと流れる一筋の血を見て理解する。

 刀の衝撃ごと弾き返されたのだと。

 アッシュヴァルドの左腕は篭手の様なものに覆われていたが、すぐに霧散する。

 ――霊圧だ。

 鋼皮とも違う、自らの霊圧を纏うことで防御力を増す行為。

 初歩的なことではあるものの、それを行っている人物の霊圧が高すぎるが故に最早別物だった。

「はぁ!」

 いつの間にか目の前にいたアッシュヴァルドの右腕に持つ槍が振るわれる。

 その出現に気がつくのが遅れてしまった惣右介は刀でその一振りを防ごうとし、瞬間空が見えた。

 まるで映画の場面転換を見ているかのように変わってしまった世界に、惣右介は何が起こったのか理解できない。

 別に特殊なことをされたわけでもなかった。

 ただ吹き飛ばされただけ。

 それがあまりに早すぎた為に意識が落ち、気がついた時には吹き飛ばされたいたと言うだけの話だ。

「うぐぁぁぁあああああ!?」

 遅れて体に激痛が走る。

 まるで体が粉々に砕かれたようなその痛みは、瞬時に体中を走り巡る。

 だがそれでも立ち上がったのは、惣右介の中に男の意地の様なものがあったからだろう。

 目の前にいる超えたい人の為に、自分がこの程度だと思われたくないと。

 この程度であの人が超えられるはずがないと、心の底から思っていたからだろう。

 故に立ち上がる。

「耐えた、か」

 アッシュヴァルドは再び目の前に現れた。

 瞬歩や瞬転と言ったレベルではない。

 まさに瞬間移動。

 音もなくただ動くだけで、その存在は点と点を結ぶかのように移動する。

「流石は挑もうとしただけあるということか」

 朦朧とする意識の中、惣右介はそれでも刀を構えてアッシュヴァルドを見る。

 倒さなければいけない敵を見る。

「一撃耐えた。それだけでも山本元柳斎重國以来だ。あぁ、久しい」

 何を言っているのか、既に惣右介の耳には入ってこない。

「やはり素質はある。もしかすれば本当に、私が貴公に本気を出す時が来るかもしれんな」

 アッシュヴァルドからしてみれば、素質があった。

 惣右介自身からすれば一撃しか耐えられないと言う事実であるものの、アッシュヴァルドからしてみればそれだけでも久しぶりのことなのだ。

 耐えられたと言うことですら、特別視されてしまうほどに。

 刀を構え、そして前のめりに倒れた惣右介に対し、アッシュヴァルドは笑みを浮かべる。

「選別だ。受け取るがよい」

 アッシュヴァルドが手のひらを向けた瞬間、惣右介の傷がみるみる消えていく。

 本来ならば使わなかったであろうはずの能力だったが、惣右介のその気持ちに免じて使用することにした。

 そしてアッシュヴァルドは気を失った惣右介を連れ、虚夜宮へと戻るのであった。

 

 

 

 戻ってきた惣右介は、漸く目を覚まし寝ていたことに気が付く。

「私は……負けたのか」

「アホちゃいます?」

 唐突に声をかけられた惣右介が瞳をそちらに向けると、市丸ギンが珍しく本当に呆れたような顔で立っていた。

「あの人に本当に勝てると思ってはったんですか?」

 ギンの問いかけは当然だろう。

 無論惣右介は勝てると言うつもりで挑んではいないが、勝つと言う明確な意思を持って戦っていた。

 そこに可能性や確率等関係はない。

「勝てるとは思っていなかったよ。勝つと言う意思は持っていたけどね。まさかここまで圧倒的な差を見せ付けられるとは思わなかったけど」

 視認出来る程の濃度を持った霊力、それがどれほど恐ろしいものか惣右介は理解していた。

 理解できたからこそ、その壁の頂点を見ることが出来たのだ。

「天高く聳える壁。しかしその壁は宇宙には繋がっていなかったらしい」

「頂上が見えた言うんですか?」

「あぁ。ただ――私が今の時点で足掻いたところで、何千年経っても届かない場所にはあったがね」

 人類が飛行機と言う空を飛ぶものを開発するのに、何千年の歴史があったのだろう。

 人類がロケットで空に向かうまでに、どれほどの年月がかかったのだろう。

 アッシュヴァルドを倒すということは、そう言う話だ。

「確かに彼は最強だ。私が見てきた中でも唯一無二。しかし人類は今まで、出来ないと思ったこと可能にしてきた。だからこそ、私も彼を倒すことを諦めない」

「あんまり無理ばっかしないで欲しいと、周りは思ってると思いますけどね」

「そこは要相談かな。頂きが見えたからこそ、心が震える」

 到達したいと言う思いが、溢れかえる。

「ギン。私は天に立つ。アッシュヴァルドと言う王が存在する天に、私は立つ。そこで初めて対等だ」

 天。そう評したアッシュヴァルドと言う壁に、ギンは想像と共に思いを馳せる。

 さながら子供の様なその表情ではあったのは、空に向かって手を伸ばす昔を思い出していたからだろう。

 決して届かないものはない。

 人の夢は人の努力によって叶えられる。

「ボクは藍染隊長に着いていきますんで」

「ありがとうギン」

 そう告げると、ギンは軽い足取りと共に去っていった。

 東仙はどうしたのだろうと思った惣右介であったが、東仙は現在ストーキング中なので割愛する。

 彼は幼女の道に落ちたのだ。

 そして惣右介は拳を握り締めた。

 ――敗北が、己のプライドを傷つけないはずがなかった。

 天才だと、隣に立つ者がいないと慢心してきた。

 その結果が敗北だ。

 あまりも圧倒的な相手による敗北だ。

 これではまるで道化ではないか。

 確かに藍染惣右介と言う人物を評価するならば、野心家で残虐性を併せ持つ人物と呼べるだろう。

 しかし人間は変わるものである。

 惣右介の属性が混沌・悪だったのであれば、現在は混沌・中庸と言ったところだろう。

 日々進化するのと同じように、人は日々変わっていく。

 惣右介と言う男が、ただアッシュヴァルドに勝利することだけを求める修羅になるのも、時間の問題と言えるだろう。

 敗北は人を成長させるのだから。

 




藍染惣右介
 この作品の第二の主人公。
 アッシュヴァルドに勝つことだけが目的化し始めている模様。
 今後の場合によっては修羅へと変貌する恐れがある。

アッシュヴァルド・フォン・ルシフェリオーレ
 主人公! 王様! 黄金!
 とりあえず最強要素を詰め合わせた王様。
 現時点で最強。
 この物語は彼をどう倒すかを考えるのが、非常に難しい。
 ラスボス。

天地開闢の神滅槍
 アッシュヴァルドさんの死神風に言うと斬魄刀。
 虚風に言うと刀剣開放第一形態。
 もちろん能力を有しているものの、現状その能力は使われない。
 というか使う必要が無い。

市丸ギン
 あまりに高すぎる壁に、手を伸ばすことを諦めた人物。
 というよりも藍染が高い壁だというのに、その藍染でも高いという壁の時点でお察し。

東仙要
 見事ロリコンに成り下がりました。
 現在の趣味はロアの観察日記。
 目が見えないはずなのに観察とはこれいかに。
 目下目が見える方法を検索中。

人類の可能性
 出来ないと思っていたことを平然とやってのける!
 ただし最初はだれもが批判される模様。
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