第97管理外世界の皆さまこんにちわ。
帝国軍参謀本部直属のサラマンダー戦闘団で指揮官を務めますターニャ・デグレチャフ魔導中佐です!
時空管理局がこの世界に攻め込んで来て2年目になります。これも存在Xの悪意でしょうか。
何だかんだと言いながら我が祖国は持ちこたえていました。
私も部下の兵達も何とか管理局のクソったれどもと戦っています。
管理局がなんぼのもんじゃいと言いたいのですが、いかんせん、あの次元航行艦が制空権を握っているので、敵に頭を押さえられています!
ここにきて、人類は一致団結しました。
悪い管理局の侵略から世界を守るため、僕達、私達は正々堂々と戦っています。
私も局員を確実に殺して頑張っていきます。
むこうの技術が優れていても工夫すれば、豚を調理できるのです。
と言う事で、今日もこれからお仕事に行ってきます!
そうそう、東ではコミーの連中が殺られているそうで気持ちが良いです。シルドベリアの資源採掘を巡る交渉で管理局と交渉決裂したそうです。
聴こえてくるニュースでは連邦の首都モスコーが攻撃を受け、内務人民委員部長官のエージョフが失脚しロリヤが就任したとかどうとか、そんな事よりアカは死ねば良いのです。
ラッーパロ条約なんて軍事協定を結んでいたのに、管理局が来る前は帝国に先制攻撃を行おうとしていたって言うじゃないですか。これだからコミーの連中は信用できない。
良いアカは、死んだアカだけだ。フルメタルジャケットか何かでそう言っていたが、全く同感だ。米帝さまは正しい。
「中佐殿?」
おっと、ヴァイス大尉が怪訝な表情を浮かべていた。現実逃避はここまでにしよう。
今、第203航空魔導大隊を中核としたサラマンダー戦闘団は、かつての仮想敵国である共和国の領内に進出している。
ふん、皮肉な物だな。時空管理局が来なければファリウス共和国やアウストリア連合王国と戦っていたかもしれん。
だが現実には肩を並べて戦う戦友と成っている。
敵の敵は味方?
戦後を考えれば自国の力は温存して仮想敵国に消耗して貰うのが望ましい。
現にパリースィイは敵の制圧下にある。
厄介な事に、日和った裏切り者が敵についている。
共和国軍の脱走兵や投降兵に志願兵。どいつも管理局に寝返った豚だ。
裏切りと内ゲバはコミーの特技と思っていたが、共和国軍にも同類が居たようだ。
「203の準備は」
「いつでも動けます」
戦意に不足はない。信頼できる部下の存在は戦場で何よりもありがたい。
「さすが私の古巣だな」
魔導部隊は狭い。中隊で12名、大隊で36名。増強されている第203航空魔導大隊ですら定員は48名。顔見知りがどこかに居る形に成る。
「光栄です」
管理局の連中も狂っている。私みたいな年端も行かない子供を魔導師として動員していた。祖国への貢献、忠誠を求められた訳ではない。管理外世界から連れて来られているそうだ。
この世界への侵略も人手不足解消が目的だったらしい。それで戦争を始めるとは度しがたい馬鹿だ。
侵略の尖兵、機動6課が今回の標的だ。
精鋭である連中を失えば管理局の動揺も大きい。
「サラマンダー01よりサラマンダーへ。管理局のクソったれと裏切りの豚どもをぶち殺せ。前進」
通信系を戦闘団全体に切り替え指示を出した。楽しい遊びの時間の始まりだ。
エンジンを響かせて偽装網と偽装材料で飾り付けられた戦車を先頭に、装甲車やトラックが前進開始する。魔導師は飛行術式を展開して傘を形成した。
戦車はロメール将軍の第7装甲師団から送り込まれた4号戦車F2型で最新だ。75mm長砲身であれば、連中のバリアジャケットと言うふざけた格好の防御装甲は撃ち抜けるはずだ。
今回の作戦に賭ける上の意気込みが感じられた。
管理局との戦争で我々は学んだ。偽装し隠蔽する事を。
戦場で頼りに成るのは砲兵の火力支援だが、彼らが陣地占領し展開するまで無事で済む確率は低い。撃ったら位置が暴露し、予備陣地に移動するまでに撃破されるからだ。
敵のデバイスは、こちらの演算宝珠以上の魔力を引き出す装置で厄介だ。
安定しているとは言え無いライン戦線から、私達を引き抜いて行う作戦だ。失敗は許されない。
パリースィイ市外縁部は昔ながらの城壁と堡塁が存在する。管理局は質量兵器を禁止していると言うが、この戦争に限れば既存の兵器を運用していた。すなわち砲兵、機関銃、地雷等の火器使用だ。
演算宝珠で展開した防御装甲に激しい跳弾の火花が散った。
空堀と鉄条網を挟んだ先にあるトーチカから、機関銃の射撃が浴びせられたのだ。
「2時方向に敵散兵!」
右方警戒をしていた味方から報告が飛び込んできた。
防御膜として展開している魔導障壁は12.7mmは耐えられる。防御を意識すれば40mmも持ちこたえられる。さらに、その下には防殻もある。だから部下の魔導師連中を心配はしない。
問題は後続する生身の歩兵だ。
「グランツ中尉」
頭越しだが、傍に居たグランツ中尉に排除を命令した。
指揮官の立場上、私にも仕事がある。爆炎でトーチカごと焼き殺す様を見れないのが残念だ。
すぐさま飛んで行くグランツの背中を見送った。
視点変更:とある魔法少女
キャロやエリオと同じ年頃の女の子が敵として現れた。
金髪碧眼に白い肌でお人形みたいだけど、殺傷モードの攻撃を躊躇しない所に怖さを感じた。
その子は味方を全滅させてここまでやって来た。
「何で皆を傷付けるの?」
私の質問にその子は可笑しそうに笑った。
「貴様らがそれを言うのか」
「答えて!」
だから少しキツイ言い方に成ったかもしれない。その子は不快そうに眉を潜めた。
「うるさい雌犬。きゃんきゃん吠えるな」
そう言うと私にも攻撃を仕掛けてきた。
「管理局に踊らされる駄犬風情には理解できん」
戦争をしたがる人の気持ちなんて分かりたくもない。だけど話し合いを諦めては駄目だと思う。お話しをすればきっと分かってくれると思っていた。
話をするために私はレイジング・ハートを構えた。
視点回帰:デグレチャフ
機動6課は手強い。捕虜の尋問で、ある程度の調べはついていたが、さすがはエースだ。
だが奴等は戦争の仕方を知らない。殺す事も殺される事も覚悟をしていない。
生きるための闘争を行う戦場では何でもありだ。
私は腰に手を伸ばすと軍用シャベルを手に取った。魔導刃よりもシャベルがしっくりと手に馴染む。
シャベル、それは文明の利器だ。
野ぐその処理から馬鹿の始末、敵との近接戦闘まで何でもこなす。
キョトンとした表情を浮かべた我が敵、高町なのはの顔面にシャベルを叩きつけた。
「にゃっ」
クソったれは奇妙な鳴き声をあげて吹き飛んだ。
ああ、まったくまるでお子様だな。
足りないオツムに血の上った雌犬が向かってくるが、管理局のエースをまともに正面から相手をするつもりはない。
「中佐殿!」
部下の心配そうな声が聞こえてくる。
余計な気遣いはいらん。それよりはしっかりと援護をして貰いたい。
「予定通り囲め」
一騎討ちは弱者の戦法で戦争ではない。私は戦争をしてる。
だから絶対に死なない。
私の降下機動に敵は食いついて来た。大した飛行制御だが、栗色の髪を風になびかせて頭部はがら空きだ。
管理局の魔導師を相手にする時のルーチンワーク。味方の火網に誘い込んで袋叩きにする戦術だ。たんと鉛弾をご馳走してやる。
アドレナリンが分泌されてテンションがあがって来た。殺してやる、殺してやるぞ雌犬!
視点:とある帝国軍参謀将校
初戦でレガドニア協商連合が裏切り、魔導師の居ないダキア大公国が降伏した事で帝国は南北を敵に挟まれた。協商連合を潰してダキアを叩いたら、今度はインドア王国の裏切り。最悪な情勢下で、帝都ベルンの参謀本部作戦室は前線からの報告にわき返っていた。
参謀は客観的視点を求められるが、敵のネームドである『エース・オブ・エース』を撃破したと言えば仕方がない。これまでに散々、苦渋を舐めさせられた相手だ。当然と言えば当然か。
「管理局の魔導師に対する攻撃ドクトリンは、サラマンダー戦闘団の成果で実証されたな」
ゼートゥーア将軍の言葉に同意する。
帝国にとって反攻成功は軍事的、政治的にも意味が大きい。
「いささか過激ではありますが」
デグレチャフ中佐の部隊には14.5mmの対狙撃ライフルが与えられていた。
防殻を貫通できると期待され、そして実証された訳だ。
迎撃に当たる魔導師の数を揃えられない以上、対抗手段は必要だった。
工場で量産できる通常の兵器と言う事が一番素晴らしい!
「極めて単純だったな。大口径の火力集中。鉄量がシールドを削り撃ち抜く」
問題は敵魔導師の機動力だ。動き回られれば厄介だ。
まだ研究課題は残されている。