「そうか……そろそろ行くのか」
今日出航すると決めた俺は、アイスバーグさんの所に挨拶に来ていた。
「ああ、ルフィ達も行ったし今度は俺達の番だ」
「寂しくなるが……まァいいさ。見送り位はさせてもらうぞ」
「別にいいって。今生の別れでもないんだし」
「そう言うな。あの船が実際飛んでいる所も見てみたいしな」
……なんかそっちが本音っぽいな。
やっぱり船大工としては実動してるとこが見たいのかね。
「別にいいけどさ。一応今夜に出航する予定だから」
「は?なんで夜なんだ?」
「なんとなくだが、あの船は夜の方が似合うから」
そういうと、訳が分からないといった顔になった。
「行くのか?」
「ああ。今夜出航だ」
「む?今すぐではないのか?」
ありゃ、エネルならわかってくれると思ったんだが。
「やっぱりこの船を出航させるなら、月下の方がいいだろう?」
元々そこに行く為に造られたせいか、俺のイメージでマクシムと月はセットなのだ。
変なこだわりを笑われるかと思ったのだが、何の反応もない。
「………」
ノーリアクションはやめてくれ……恥ずかしい。
「あ~、なんなら今すぐでも行く」
「ヤハハハハハ‼そうだな‼我がマクシムには夜が似合う‼」
わお、いきなり上機嫌になった。
「こんな真昼に飛び立つなど勿体ない‼あの限りない大地が浮かぶ夜こそ‼
マクシムは輝くのだ‼ヤハハハハハ‼」
やべぇ、上機嫌通り越してハイになってる……
「えっと、じゃあ俺は買い出しに行ってくるから……」
今のあいつに関わるのは危険だ。そう感じ取りこっそり逃げようとするが、
「まぁ待てソラ」
がっしりと肩を捕まれた。おい、掴むなとは言わんが覇気を込めて掴むな。
イテェんだよ、なんか日に日に強くなってる気がするし。
「今の私は大変に気分がいい。付き合え」
「いや、結構です」
思わず敬語になってしまった。嫌な予感がプンプンする。
「そう言うな。試したい技もあるのだ。」
「いや、ホント、買い物しないと色々足りないから」
「……ふむ」
「んじゃそういうことで」
「仕方あるまい。さっさと済ませてくるがいい」
ふう、なんとか抜け出せた。倉庫から出る瞬間、チラリと後ろを振り返ると。
「………ハ?」
黒い龍を従える、エネルの姿が見えた。
「……よし、見なかった事にしよう」
俺は何も見なかったことにして、町に繰り出していった。
背後から『ヤハハハ‼』と高笑いが聞こえてくるがキニシナイキニシナイ。
気持ち時間をかけて戻ってくるとエネルがぶっ倒れていた。
どうやら調子に乗ってアレを出し続けていたらしい。
「ふむ、まだ使いこなせんか。だが、これならば……」
「お~い、大丈夫か~」
「問題ない。今はほとんど雷も出せんが直に治るだろう」
「雷も出せないって……ホント何してたんだよ」
「貴様を倒すとっておきだ、教える筈なかろう」
「あっそ……どうする?出航伸ばすか?」
流石にエネルと同じレベルの電気エネルギーを生み出すのはしんどいんだが。
「構わん。夜までには回復しているだろう。」
「了解」
さて、そんじゃ最終チェックだけしとこうかね。
「う~ん、いい夜」
倉庫の扉を全開にして、外の空気を目一杯吸い込む。
日が沈み、夜の闇が辺りを埋め尽くした。満天の星空に美しい三日月。
「見に来るとは言ってたけど……」
アイスバーグさんに、フランキー一家。パウリーさんたち職長方まで。
「来すぎじゃね?」
「ニューアニキが『おもしろいモンが見れる』っていうもんで‼」
「それに、お世話になりっぱなしでしたから‼」
「見送りくらいさせもらいやす‼」
「だから、ニューアニキはやめろ……」
「たまげたな……お前らの船を見たことなかったが……」
マクシムを初めて見たパウリーさんが目を丸くして驚いている。
まぁ、船大工からしたらありえない存在だもんな。
「おめェら、目的果たしたらこの船くれ‼いや、むしろ今分解してェ‼
中どうなってんだ⁉もっと早く見せろやこんなモン‼」
「あんたはどこのフランキーだ」
目が血走ってますよ、怖い怖い。やっぱ見せなくて正解だったかも。
「馬鹿たれ、今こんなの手に入れちゃあつまらんだろう。いつか自分達で造ればいい」
……この人達なら本気で造りそうで恐ろしいよな……
実際この島を浮かべる計画は立ててるんだろうし。
男ならドンとやれ、って奴だな。
「それじゃあ皆さん、お世話になりました‼」
「ああ、またいつでも来い。修理なら格安で請け負ってやる」
「ソラさん達もお元気で‼フランキーのアニキに会ったらよろしく‼」
「伝えとくよ。それじゃエネル、いいぞ‼」
「了解だ……5億
船全体に動力が行き渡り、その機能が目覚める。
次第に船体が浮き上がり、そのまま倉庫から飛び出す。
「ホ、ホ、ホントに飛んでる~‼」
「スッゲー‼夢見てるみてぇだ‼」
「くっそ~、いつかあんな船造ってみてェ~‼」
「ンマー、いつかな……」
「それじゃ皆さん、御達者で~‼」
徐々に高度を上げ、ウォーターセブンから離れていく。
どんどん小さくなっていき、雲の下に隠れてしまった。
「やっぱりこの船には、夜空が似合うな」
「同感だ。さてソラ、次の目的地はどこなのだ?」
「ログは一応は魚人島ってトコだけど……その前にシャボンディ諸島だったかな」
まぁ、飛んでいくなら魚人島経由じゃなくても
「そこで海路が一旦集まるハズだから、強い奴もいるかもな」
「ほう……それは楽しみだ」
「ま、成り行き任せの旅だ。のんびり行こうや」
「そうだな」
……おい、なんで放電しながらこっちくんだよ。
「時間はあるのだろう?ならば付き合ってもらうぞ」
「勿論だ。俺もまだまだ足りないからな」
さて、大戦争までにどんだけ鍛えられるかね……あの人に会ってみるのもいいかもしれないな。
出航だけで終わってしまいました。
次回時間が結構飛ぶかもしれません。
もしくは空中戦にするかもしれないです。
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