空人と雷人   作:シャインベルク

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第14話 月下の出航

 

 「そうか……そろそろ行くのか」

 

 

 今日出航すると決めた俺は、アイスバーグさんの所に挨拶に来ていた。

 

 

 「ああ、ルフィ達も行ったし今度は俺達の番だ」

 

 

 「寂しくなるが……まァいいさ。見送り位はさせてもらうぞ」

 

 

 「別にいいって。今生の別れでもないんだし」

 

 

 「そう言うな。あの船が実際飛んでいる所も見てみたいしな」

 

 

 ……なんかそっちが本音っぽいな。

やっぱり船大工としては実動してるとこが見たいのかね。

 

 

 「別にいいけどさ。一応今夜に出航する予定だから」

 

 

 「は?なんで夜なんだ?」

 

 

 「なんとなくだが、あの船は夜の方が似合うから」

 

 

 そういうと、訳が分からないといった顔になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「行くのか?」

 

 

 「ああ。今夜出航だ」

 

 

 「む?今すぐではないのか?」

 

 

 ありゃ、エネルならわかってくれると思ったんだが。

 

 

 「やっぱりこの船を出航させるなら、月下の方がいいだろう?」

 

 

 元々そこに行く為に造られたせいか、俺のイメージでマクシムと月はセットなのだ。

変なこだわりを笑われるかと思ったのだが、何の反応もない。

 

 

 「………」

 

 

 ノーリアクションはやめてくれ……恥ずかしい。

 

 

 「あ~、なんなら今すぐでも行く」

 

 

 「ヤハハハハハ‼そうだな‼我がマクシムには夜が似合う‼」

 

 

 わお、いきなり上機嫌になった。

 

 

 「こんな真昼に飛び立つなど勿体ない‼あの限りない大地が浮かぶ夜こそ‼

マクシムは輝くのだ‼ヤハハハハハ‼」

 

 

 やべぇ、上機嫌通り越してハイになってる……

 

 

 「えっと、じゃあ俺は買い出しに行ってくるから……」

 

 

 今のあいつに関わるのは危険だ。そう感じ取りこっそり逃げようとするが、

 

 

 「まぁ待てソラ」

 

 

 がっしりと肩を捕まれた。おい、掴むなとは言わんが覇気を込めて掴むな。

イテェんだよ、なんか日に日に強くなってる気がするし。

 

 

 「今の私は大変に気分がいい。付き合え」

 

 

 「いや、結構です」

 

 

 思わず敬語になってしまった。嫌な予感がプンプンする。

 

 

 「そう言うな。試したい技もあるのだ。」

 

 

 「いや、ホント、買い物しないと色々足りないから」

 

 

 「……ふむ」

 

 

 「んじゃそういうことで」

 

 

 「仕方あるまい。さっさと済ませてくるがいい」

 

 

 

 

 

 

 ふう、なんとか抜け出せた。倉庫から出る瞬間、チラリと後ろを振り返ると。 

 

 

 「………ハ?」

 

 

 

    黒い龍を従える、エネルの姿が見えた。

 

 

 

 「……よし、見なかった事にしよう」

 

 

 俺は何も見なかったことにして、町に繰り出していった。

背後から『ヤハハハ‼』と高笑いが聞こえてくるがキニシナイキニシナイ。

 

 

 

 

 

 気持ち時間をかけて戻ってくるとエネルがぶっ倒れていた。

どうやら調子に乗ってアレを出し続けていたらしい。

 

 

 「ふむ、まだ使いこなせんか。だが、これならば……」

 

 

 「お~い、大丈夫か~」

 

 

 「問題ない。今はほとんど雷も出せんが直に治るだろう」

 

 

 「雷も出せないって……ホント何してたんだよ」

 

 

 「貴様を倒すとっておきだ、教える筈なかろう」

 

 

 「あっそ……どうする?出航伸ばすか?」

 

 

 流石にエネルと同じレベルの電気エネルギーを生み出すのはしんどいんだが。

 

 

 「構わん。夜までには回復しているだろう。」

 

 

 「了解」

 

 

 さて、そんじゃ最終チェックだけしとこうかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「う~ん、いい夜」

 

 倉庫の扉を全開にして、外の空気を目一杯吸い込む。

日が沈み、夜の闇が辺りを埋め尽くした。満天の星空に美しい三日月。

 

 

 「見に来るとは言ってたけど……」

 

 

 アイスバーグさんに、フランキー一家。パウリーさんたち職長方まで。

 

 

 「来すぎじゃね?」

 

 

 「ニューアニキが『おもしろいモンが見れる』っていうもんで‼」

 「それに、お世話になりっぱなしでしたから‼」

 「見送りくらいさせもらいやす‼」

 

 

 「だから、ニューアニキはやめろ……」

 

 

 「たまげたな……お前らの船を見たことなかったが……」

 

 

 マクシムを初めて見たパウリーさんが目を丸くして驚いている。

まぁ、船大工からしたらありえない存在だもんな。

 

 

 「おめェら、目的果たしたらこの船くれ‼いや、むしろ今分解してェ‼

中どうなってんだ⁉もっと早く見せろやこんなモン‼」

 

 

 「あんたはどこのフランキーだ」

 

 

 目が血走ってますよ、怖い怖い。やっぱ見せなくて正解だったかも。

 

 

 「馬鹿たれ、今こんなの手に入れちゃあつまらんだろう。いつか自分達で造ればいい」

 

 

 ……この人達なら本気で造りそうで恐ろしいよな……

実際この島を浮かべる計画は立ててるんだろうし。

 男ならドンとやれ、って奴だな。

 

 

 「それじゃあ皆さん、お世話になりました‼」

 

 

 「ああ、またいつでも来い。修理なら格安で請け負ってやる」

 

 

 「ソラさん達もお元気で‼フランキーのアニキに会ったらよろしく‼」

 

 

 「伝えとくよ。それじゃエネル、いいぞ‼」

 

 

 

 「了解だ……5億V(ボルト)放電(ヴァーリー)‼マクシム起動‼」

 

 

 

 船全体に動力が行き渡り、その機能が目覚める。

次第に船体が浮き上がり、そのまま倉庫から飛び出す。

 

 

 「ホ、ホ、ホントに飛んでる~‼」

 

 

 「スッゲー‼夢見てるみてぇだ‼」

 

 

 「くっそ~、いつかあんな船造ってみてェ~‼」

 

 

 「ンマー、いつかな……」

 

 

 「それじゃ皆さん、御達者で~‼」

 

 

 徐々に高度を上げ、ウォーターセブンから離れていく。

どんどん小さくなっていき、雲の下に隠れてしまった。

 

 

 

 

 

 「やっぱりこの船には、夜空が似合うな」

 

 

 「同感だ。さてソラ、次の目的地はどこなのだ?」

 

 

 「ログは一応は魚人島ってトコだけど……その前にシャボンディ諸島だったかな」

 

 

 まぁ、飛んでいくなら魚人島経由じゃなくても赤い土の大陸(レッドライン)は超えられるが。

 

 

 「そこで海路が一旦集まるハズだから、強い奴もいるかもな」

 

 

 「ほう……それは楽しみだ」

 

 

 「ま、成り行き任せの旅だ。のんびり行こうや」

 

 

 「そうだな」

 

 

 ……おい、なんで放電しながらこっちくんだよ。

 

 

 「時間はあるのだろう?ならば付き合ってもらうぞ」

 

 

 「勿論だ。俺もまだまだ足りないからな」

 

 

 

 さて、大戦争までにどんだけ鍛えられるかね……あの人に会ってみるのもいいかもしれないな。 

 

 

 

 

 

 

  

 

 




出航だけで終わってしまいました。

次回時間が結構飛ぶかもしれません。
もしくは空中戦にするかもしれないです。

感想評価をくださる皆様、本当にありがとうございます。
どんどんお待ちしています。

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