ポケモン世界に転生したので好き勝手に生きてみる 作:にわか党
ダンバルとタテトプスをゲットした翌日、何かがぶつかり合う音で目が覚める。
俺が身体を起こした事で一緒に寝ていたヒマナッツとラルトスも起きてしまった。
小さな口で欠伸をする姿が今日も愛らしい。
「またやってるみたいですねー」
「ヒマー」
音の正体に心当たりがある俺達は起きて早々に寝室から出て裏庭に向かう。
ウッドデッキまで出て見えてくる草原には、予想通りの光景があった。
「コルッ!」
「テプッ!」
尻尾をバネの様に使い、高くジャンプしたスコルピがタテトプスに触肢をクロスして突撃した。
それを盾の役割りを果たす顔でタテトプスは受け止め、弾き返す。
このぶつかり稽古が音の正体。
昨日の御飯の後にスコルピにバトルでの歓迎を受けたタテトプスが今と同じくほとんどの攻撃を受け止め、それを俺が褒めた事から始まった。
ムキになったスコルピがタテトプスの防御を突破しようと何度も技なしで挑戦して昨日は結局それが叶わずに終わりにさせた。
「スコルピは負けず嫌いなんですねー」
「ラルラル」
俺の肩でラルトスが相槌をうってくれる。
「しかも、今日はダンバルも加わってません?」
「ヒマー」
スコルピのタックルが受け止められると、次はダンバルがタテトプスに向かって攻撃を仕掛けていた。
それをタテトプスが上手く捌く。
防御面では相当に優秀な子だ。
「ヒ、ヒ、ヒ!」
「おはよう御座います、ヒンバス」
裏庭に出て池に近付くと、池に潜っていたヒンバスが水面から顔を出した。
後で尾鰭のケアをすると言ってから池を通り過ぎて草原に向かう。
先ずはラルトスの朝練に付き合ってあげるのだ。
草原に着き、ヒマナッツとラルトスを地面に下ろしてぐっと身体を伸ばす。
今日も空は気持ちの良い快晴。
良い一日になりそうですねー。
「コル、コル!」
「ダンバルッ!」
「テプー!」
潰された。
俺達に気付いたスコルピ、ダンバル、タテトプスがこっちに近寄って来たと思ったら加速して飛び付かれ、俺は下敷きになった。
愛が物理的に重い。
「ラルッ!」
それを見たラルトスがねんりきを俺に乗る三匹に使い、浮かばせた。
「ラル、ラルラル!」
ぷりぷりと怒るラルトスに身体の自由を奪われた三匹はあたふたしている。
しまった、ガンタを呼んでおけば良かった。
これでは珍しくラルトスが怒ってるシーンを残せない。
『私ニ、抜カリハ、アリマセン』
背後にいたー。
え、もしかしてずっと後ろにいましたの?
「ラルトス、そろそろ下ろしてあげて下さい。皆、悪気はないんですから」
「ラル…」
しぶしぶ下ろす事を了承したラルトスが腕を下げ、ねんりきが解かれた三匹は地面に落下する。
出来れば優しく下ろしてあげてくれませんか。
「ねんりきのコントロール、上手になりましたね」
やっぱり俺の愛が成長にブーストを掛けたんですかね。
まあ、それは冗談として。
「ラルラル!」
さっきまで怒っていたとは思えない嬉しそうな様子に俺が夢心地になる。
「皆も、おはよう御座います」
しょぼんとしていた三匹を撫でて回り、気にするなと伝えた。
タテトプスは撫でる代わりに顔を磨いてあげる。
だいぶ元気が出てきたところでラルトスの朝練に入り、三匹もぶつかり稽古を再開した。
「今日はもっと速く動かしてみて下さい」
ねんりきのコントロールに慣れてきてはいるが、まだそこまで速く浮かばせた物を動かすのは難しいみたいなんですよねー。
歩行するくらいのスピードならコントロール出来ているのに、それ以上スピードを上げると俺の身体がフライアウェイしてしまう。
「ラッル…」
緊張した面持ちで両手をかざすラルトスに待ったを掛けた。
「もっと力を抜いて、リラーックスです。練習なんですから失敗を怖がらないで下さい。ラルトスの為なら何度でも飛ばされますから」
むしろ、ヒマナッツは俺が吹っ飛ぶのを期待すらしてる。
深呼吸をして改めて両手をかざし、ねんりきで俺を浮かばせた。
そのまま横に動き出し、次第にそのスピードが上がる。
そして、吹っ飛ぶ俺。
着地後、直ぐにねんりきを使ってもらって浮く。
更に吹っ飛んだ。
その後もそれを何度も繰り返す。
俺は体力もチート仕様な為、数十回飛ばされてアクロバティックな着地を決めるくらいは何でもない。
「ヒマー!」
ヒマナッツからの声援で気力的にも無限回復。
今の俺は阿修羅すらも凌駕したりしなかったり。
しかし、ラルトスはお疲れ気味。
「今朝はここまでにしましょう」
「ラルラル!」
ぶんぶん首を左右に振り、続行を要求された。
「焦っては駄目です。がむしゃらに頑張る事も大事ですが、休む事もまた必要ですよ」
出来るだけ優しく言い、ラルトスの頭を撫でる。
頑張り屋さんなんで偉い子なんですけど、無理をさせないのもトレーナーの役目。
何とか早く上達させてあげたいんですがね。
「朝食、食べに行きましょ?」
「ラル!」
俺の提案に元気に頷いてくれた。
本当に良い子ですわー。
「ヒマヒマ!」
飛び跳ねて自分も行くと飛び付いて来たヒマナッツを受け止める。
もちろん忘れる訳がないです。
「スコルピ! ダンバル! タテトプス! 朝食ですよ!」
ぶつかり合っているスコルピ達も呼び、皆で洋館に戻った。
既にウッドデッキには俺達の朝食が用意されている。
朝から激しい運動をしていたスコルピ達はポケモンフーズに向かってダッシュ。
俺達がウッドデッキのテーブルに着いた時にはもりもり食べている真っ最中だった。
「よく噛んで食べて下さいねー」
「コル、コル!」
「ダンバルッ!」
「テプー!」
良いお返事です。
ヒンバスも池の縁で優雅にポケモンフーズを食べているのが見える。
さて、俺達も食べますか。
「ヒマヒマ!」
席に着いた途端にポケモンフーズを食べ始めたヒマナッツに続いて俺とラルトスも朝食にする。
「今日も御飯が美味しいですねー」
「ラルラル!」
食べてるのはパンですけど。
木皿に入ったサラダをモシャモシャ食べながらタテトプスにポケモン図鑑をかざす。
まだデータ見てなかったんです。
『タテトプス』
性別:♂
特性:がんじょう
技:まもる、てっぺき、ずつき
「防御面は…本当に、優秀ですねー…」
「ラルラル」
ラルトスも同感だと頷く。
『シロー様、口ノ中ニ物ヲ入レタママ、話スノハ、御止メニナッタ方ガ、宜シイカト』
注意された…。
行儀がなってなくて、すいません。
「以後、気を付けます」
「ラル」
口の中の物を飲み込んで背筋を伸ばす俺を見て、正座になって上品な食べ方になるラルトスも可愛い。
スコルピ達が食べ終わって草原に駆け出して行ってからものんびりパンを食べ、空になった皿をガンタがせっせとトレイに載せて運んでいく。
食べるの遅くて申し訳ない。
「ヒ、ヒ、ヒ!」
「忘れてませんよ。今、尾鰭のケアをしてあげようと思っていたところです」
テーブルから離れ、ヒンバスの待つ池の縁に座って尾鰭のケアを始める。
ゆっくり丁寧にやる事でヒンバスも気持ち良さそうだ。
『ピリピリッ』
腕のポケモン図鑑が鳴る。
メールの着信を知らせるものだ。
ケアを続けながらメールを開く。
送り主はオウカさん。
まあ、今のところ彼女しか俺のアドレスを知らないから当然ですな。
オウカさんは一昨日のポケモンハンターを捉えた事がニュースで報じられてから元々あった人気が更に増したとネットにも載っていた。
どうもあのおっさんは警察も手を焼く程のお尋ね者だったらしい。
「今日はオウカさん、トレーニングなんですねー」
「ヒマ?」
隣にいるヒマナッツとラルトスにオウカさんからのメールに添付されていたフライゴンと写っている写メを見せた。
既に保存済みです。
「テプ、テプ」
池の縁に座る俺の背中に硬い物が擦り付けられる感触。
振り向くとタテトプスが自分の顔を磨いていた。
まあ、見なくても分かってましたがね。
嬉しそうなので好きなようにさせてあげる事にし、ヒンバスの尾鰭のケアを続ける。
「はい、出来ましたよ」
「ヒ、ヒ、ヒ!」
綺麗になった尾鰭を左右に振り、その仕上がりに満足してくれたヒンバスから御礼のスリスリ。
たまりませんな。
「タテトプスも磨いてあげますよー」
「テプ!」
背中で顔を磨くタテトプスに向き直り、少し粗めの布でピカピカに磨いてあげる。
磨きまくって鏡並にしてやりましたよ。
「テプ! テプ!」
喜んでくれたタテトプスから御礼のずつき。
この痛みもいつか快感に変わりそうな自分が怖い。
「タテトプス、まだ草原にいるスコルピとダンバルを呼んできてもらえます?」
「テプ!」
頷いて草原にスコルピとダンバルを呼びに行ってくれた。
オウカさんからのメールにはヒンバスの写メも添付されていたので、俺もヒンバスを含めたウチの可愛い子達を自慢したいのですよ。
『撮影ハ、私ニ、御任セ下サイ』
何も言わずとも理解しているガンタが現れ、俺の服を目にも止まらぬ動きで着替えさせた、いやん。
「テプー」
タテトプスがスコルピとダンバルを連れて戻って来た。
「ありがとう御座います」
「テプ、テプ!」
背中を撫でてタテトプスを褒めた後、皆でガンタに写真を撮ってもらった。
そのクオリティの高さは言うまでもない。
ウチの子達の愛らしさが際立ってますわ。
「送信っと」
『シロー様、本日ノ御予定ハ、御決マリデスカ?』
「あー、シンオウ地方のシンジ湖とかどうですかね。あそこ色んなポケモンいるみたいですし」
『デハ、ソノ様ニ』
返答を得たガンタはいそいそと洋館に戻っていく。
今日のお弁当は何ですかねー。
「ラッル」
肩にラルトスがジャンプでぶら下がる。
「今日は大きな湖ですよー」
「ラルラル!」
ラルトスの笑顔は今日も変わらず眩しいです。