ポケモン世界に転生したので好き勝手に生きてみる   作:にわか党

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 目の前に聳える白の巨塔。

 ミアレシティはプリズムタワーの根元付近に俺とガンタは立っていた。

 

「この前も見たけど大きいですねー」

 

『中ハ、ミアレジム、資料館、美術館、展望台ト、ナッテイマス』

 

「で、目的の宝玉は美術館にあると」

 

『ハイ、ココニハ、ライトストーン、ガ展示サレテイマス』

 

 レシラムを操る宝玉なのにカロス地方にあるとは。

 それだけ宝玉の力が伝わっていないって事で良しとしましょう。

 いや、本当にどこかの馬鹿が宝玉を一つでも使おうものなら大変な事になるらしいですし。

 俺のポケモン愛でライフの邪魔をさせない為にも可能性は潰しておかなくてはね。

 

「では、ガンタさん。やっておしまいなさい」

 

『ハイ。ソレデハ、ミアレシティ、ノ、セキュリティ、並ビニ、端末、モニター、ノ、ジャック、ヲ、開始致シマス』

 

 ガンタがそう言って数分、塔の巨大モニターや周囲の人達の端末が全て同じ画面に切り替わった。

 

『今宵19時、月夜の静寂を破りプリズムタワー4F美術館よりライトストーンを頂きに参上する』

 

 その文章の下にはシルクハットにモノクルを付けてニヤリと笑う男の横顔(プロフィール)がイラストとして描かれている。

 

「なんだこれ?」

 

「何やっても画面戻んねーし」

 

「てか、今時ここまでして予告状?」

 

「でも、何か面白そうだな!」

 

 通行人達の声を聞きながら俺とガンタはプリズムタワーから離れて行った。

 歩道を歩くと街中のモニターが予告状の画面。

 なかなか壮観ですな。

 むむ、前からくるあの白バイには見覚えがあります。

 俺が手を挙げると道路脇に白バイが停車した。

 

「ジュンンサーさん、この前はどうも」

 

「あら、君はいつかのスピード違反少年じゃない」

 

 覚えて頂いていたようです。

 

「その後、あのラルトスはどう?」

 

「今はキルリアに進化して毎日元気にしていますよ」

 

「そう、軟派なだけのトレーナーじゃなくて良かったわ」

 

 手厳しいですな。

 

「それより急いでいたようですが、この予告状関係の事ですか?」

 

「まあね。私は交通だから捜査に関わる訳じゃないんだけど、予告の時間にプリズムタワー周辺で混雑が予想されるから応援に駆り出されちゃって。今日は早く上がれる筈だったのに……」

 

「大変ですねー」

 

 とか言う俺が元凶なんですがね。

 申し訳ない。

 

「じゃ、私は急ぐからもう行くけど今度スピード違反で見かけたら即逮捕だからね?」

 

「肝に命じておきます」

 

 颯爽と白バイで去って行くジュンサーさんマジかっけーです。

 できれば後ろに乗せて頂きたい。

 無理か。

 

「俺たちも行きましょうか。準備もありますし」

 

『ハイ』

 

 手品には色々と準備と種が付き物ですから。

 

 

 予告状を出した同日、夜18:59。

 プリズムタワー周辺は予告状を見て集まった野次馬と多くの警察官で賑わっています。

 俺はそれを上空から確認していた。

 

『シロー様。予告時刻、ノ、1分前デスガ、準備ハ宜シイデスカ?』

 

 小型通信機から聞こえてきたガンタの声に身の回りを確認。

 白いタキシードとシルクハットにマント、青のシャツと赤いネクタイ、神様が付与したらしい変装能力で髪を黒に顔も変えた。

 そして、左目にはモノクル。

 飛んでいるのはこれも白いハンググライダーによるもの。

 はい、1412先生リスペクトです。

 

「そろそろ行きましょうか」

 

『御武運ヲ』

 

 ガンタが作った改造ハンググライダーを操作して人が密集しているプリズムタワー入り口付近へと滑空する。

 気付いた野次馬達がこちらを指差しているのが多く見られます。

 低空でプリズムタワーを旋回し、街灯の上に降り立った。

 もちろんハンググライダーはマントの中に収納。

 これが憧れでした。

 

「おい、あれ」

 

「うぉ、マジで来たのかよ」

 

 野次馬がざわざわと騒がしくなってきましたな。

 拡声機の調子を確認っと。

 

『初めまして、皆さん。私が予告状を出した怪盗です。今日は我がショーにお集まり頂き誠に有難う御座います』

 

 うぉー、と辺り一帯が喧騒に包まれる。

 あ、ちょっと耳痛いんで押さえて貰えないですかね。

 

『あー、あー、君は完全に包囲されている。無駄な抵抗は止めて投降しなさい』

 

 歓声を抑えるように機動隊員の一人から拡声機で投降勧告がきた。

 周りを見渡すと機動隊員やライボルトを始めとしたポケモン達に囲まれていた。

 これがポケモン達だけなら最高なんですけどねー。

 

『残念ですが、これからショータイムなのでそれには同意出来ません』

 

 不敵にポーカーフェイスで応えます。

 

『全員、奴を捕獲しろ!』

 

 俺が断るや否や、捕獲命令ですか。

 血の気の多い事ですな。

 

「ライボルト、でんじは!」

 

「「「「「ラーイ!」」」」」

 

 複数のライボルトから放たれたでんじは。

 ふむ、なるほど。

 でんじはによる麻痺で動けなくした後に拘束しようという訳ですか。

 無難な作戦ですな。

 しかし、甘い。

 でんじはが迫り来るのを見ながら指に挟んだ煙幕玉を炸裂させた。

 

「「「「「ライッ!?」」」」」

 

 捲き起こる白い煙幕に周囲が包まれて見えなくなる。

 

「くっ、ハトーボー、かぜおこし!」

 

「ハトー!」

 

 機動隊員の指示でハトーボーがかぜおこしで煙幕を吹き飛ばす。

 晴れる煙幕。

 まあ、とっくに街灯から下りた俺の姿は無い訳ですが。

 

「い、いない?」

 

「まだ近くに居る筈だ探せ!」

 

 さて、俺はどこに居るのでしょう?

 答えは簡単。

 準備していた装備で機動隊員に変装して彼らに紛れています。

 俺を囲んでいた事が仇になった訳です。

 まだまだ俺のターンは続きます。

 

「あー、ごほん」

 

 喉を調整して取り出したるは拝借した警察の無線機。

 

『こちらプリズムタワー内部! 例の怪盗が現れました!』

 

「何!?」

 

「クソッ、いつの間に!」

 

「素早い奴め、半数を残してタワー内の応援に行くぞ!」

 

 狙い通りの展開です。

 俺はタワー内に入っていく機動隊員に紛れてちゃっかり侵入に成功します。

 そして、もう一手。

 

『大変です! 奴は既に4F美術館へと侵入した模様! 至急、応援を!』

 

 更に変声した声で偽の情報を通信機で流す。

 ただ、このままだと偽の情報だと知らされたら意味を無くしてしまうので、ここでガンタのサポート。

 

「おい! 何だ!? 通信が出来ないぞ!」

 

「こっちもだ! こんな時に故障か!」

 

 通信電波抑止装置。

 ガンタに内蔵された機能の一つ。

 これで通信機での連絡は不可能。

 

「とにかく、美術館への応援へ急ぐぞ!」

 

 そうなりますよね。

 という訳で俺も便乗して美術館へと侵入させてもらいましょうか。

 階段を駆け上がり、4Fに辿り着いた時には機動隊員で美術館はいっぱいになっていた。

 良い感じになってますな。

 ライトストーンも下調べした時同様、館内中央に展示されている。

 

「どういう事だ奴はどこにもいないじゃないか!」

 

 そろそろ偽情報がバレる頃あいですかね。

 

「いやいや、既に居ますよ」

 

 声を戻してそう発した瞬間にガンタが美術館の照明を落とす。

 照明を戻した時には機動隊員の変装を解き、ライトストーンのショーケースすぐ隣に姿を現した。

 目を見開く機動隊員達の表情が面白い事になっています。

 

「どうやってここまで……」

 

「奇術においてやってはならない三原則を知っていますか? 一つ、披露する前にこれから起こる現象を説明してはならない。一つ、同じ奇術を繰り返してはならない。そして、最後の一つは……奇術の種を明かしてはならない、です」

 

 仔山羊様宜しく笑みを浮かべる。

 よし、言いたかったセリフも言えました。

 

「なるほど、手品の種は秘密という訳ですか」

 

 機動隊員達とは気質の違う声がした。

 声に振り向いた先には現状では場違いな白衣に眼鏡の男。

 

「失礼、僕は」

 

「ミアレジムのジムリーダーであり発明家でもあるニスラ氏ですね」

 

「知って頂けているとは光栄ですね」

 

 ニヤニヤと笑うニスラ氏は眼鏡を上げる仕草をして続ける。

 

「君は奇術師として一流なのかもしれない。しかし、僕は発明家としてその上をいく超一流だ。見たまえ、そのショーケースは僕が開発したミサイルにすら耐えうる超硬質ガラスに僕の認証無しには解鍵不可能なセキュリティシステム。不用意に開けようものならセンサーが反応してレーザーによって対象を焼き切る。どうだい、これを聞いてもこの先に手を伸ばす勇気が君にあるかな?」

 

 ペラペラと御丁寧に解説頂いたところ申し訳ないがそんな情報入手済みですよ、ガンタが。

 それでも、ニスラ氏が全員の注意を引いてくれたおかげでこちらも種を仕込むのが予想よりも楽に済んだ。

 どうもです。

 

「手を伸ばすも何も既にライトストーンは我が手の中です。それでは失礼」

 

 再度、照明が消える。

 その隙に俺はまた機動隊員に変装して紛れこむ。

 照明が点いた時には俺の姿とライトストーンは消えている、ように見える(・・・・・・)

 

「馬鹿な……僕の発明は完璧だった筈……」

 

 茫然自失のニスラ氏。

 

「嘘だ、これは何かの間違いだ!」

 

 取り乱したニスラ氏が機動隊員を押しのけてショーケースに近付き数多のセキュリティを解除していく。

 ガンタならもちろん簡単に解鍵出来るだろうけど、あの数のセキュリティをハッキングしていくのはスマートじゃない。

 だから、今回はこうする。

 

「よし、開いた! あれ……ライトストーンがある? それにこの紙は……?」

 

 あって当たり前。

 まだライトストーンを手に入れてなんかいませんし。

 さっきのは嘘です。

 ショーケースに紙状のモニターを貼り付け、そこにケース内が空に見える映像を流しただけ。

 俺はただニスラ氏が自慢のショーケースを開けてくれるのを待てば良い。

 

「開錠して頂き有難う御座います」

 

「ッ!?」

 

 全員が混乱している隙を突いて接着機能が先に付いたワイヤーでライトストーンを引き寄せる。

 空かさず近くの機動隊員を白い怪盗姿に変装させた。

 

「奴だ、総員掛かれー!」

 

「ち、ちがっ」

 

「「「「「「「「「ウォォォォォオオオー!」」」」」」」」」

 

 変声した俺の叫びで機動隊員達は偽物の俺に飛びかかります。

 最大の混乱の中、俺は悠々と美術館を脱出。

 向かった先は最上階展望フロア。

 ここの警備は美術館に集中して無人な為、楽に点検用の出口から外へと出る。

 超スペックの体のおかげで簡単にアンテナ部であるゲイン塔天辺まで登る事に成功しました。

 うひゃー、高いっすな。

 下にはひしめく観客という名の野次馬達。

 彼らには今までの館内の映像をガンタがジャックしたモニターで見せている。

 今もゲイン塔天辺に佇む俺の姿がライブ中継されています。

 

『予告通りライトストーンは我が手中に』

 

 湧き上がる大歓声。

 

「すっげー! あいつ、マジで盗りやがった!」

 

「きゃー! 素敵ー!」

 

「もっとお顔をよく見せてー!」

 

 女の子の歓声には応えたいところですが、もちろん見せませんよ。

 

『では皆さん、またいつか月下の淡い光の下で御会いしましょう』

 

 その言葉と共にプリズムタワーから飛び降り、直ぐにハンググライダーを展開して夜空へと飛び去った。

 まだ、今日はやらなきゃならない事もあるのでさっさと退散です。

 

 

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