ポケモン世界に転生したので好き勝手に生きてみる   作:にわか党

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どうも皆さん、こんばんワルビル。

バトル回で御座います。

今話もお読み頂き本当にありがとうございます。
 


0033

 

「ミズチと申します」

 

 昼間に会った時とは違い厳かにミズチと名乗った彼女が頭を下げます。

 改めて顔を拝見するとやっぱり美人です。

 表情的には怖いですけど。

 メニューにスマイルの追加を要求したい。

 価格は諭吉でも可。

 あ、こちらも名乗り返さないとですねー。

 ポケモンバトルをするならと怪盗スタイルの変装を解き、いつもの格好へと戻ります。

 

「昼間は名乗れませんでしたが、シローといいます」

 

「…………」

 

 一瞬で俺の姿が変わった事とその正体にミズチさんは目を見開いて驚いています。

 と思っていたらキッとにらみつけられました。

 

「おや、ミズチとは既に会われておりましたか」

 

「ええ、少し」

 

 わぁ、まだにらまれてるー。

 まあ、確かに八百年も待って現れたのが俺みたいなへらへらした奴だったらイラッとするかもしれませんねー。

 自分で言うのもなんですが。

 

「おい」

 

 ずっとにらんでいたミズチさんが俺に詰め寄るといきなり胸ぐらを掴まれました。

 

「言っとくけど、アタシが勝ったらいくら使徒でも宝玉は渡さねぇ。その時はアタシら一族がこれまで通り守り役を続ける」

 

「こ、これ、ミズチ! 使徒様に何という事を!」

 

 ミズチさんの行動に慌てて止めに入ろうとする老婆に手で制しを掛けます。

 

「その時は渡して頂かなくて結構ですよ」

 

「……チッ」

 

 舌打ちをしつつ少し乱暴に俺の胸ぐらを掴んでいた手を離し、ミズチさんは背を向けて離れた岩場に立ちました。

 そして、向かい合う位置にある岩場を指差します。

 

「そっちに立て。アタシが立ってるここと挟んで水中と岩場がバトルフィールドだ」

 

「分かりました」

 

 言われた通り俺は反対側の岩場に向かって立ちミズチさんと相対します。

 ミズチさんがゆったりとした装束の袖口からモンスターボールを取り出すと膨らませ中のポケモンを出しました。

 

「グラージ!」

 

 モンスターボールから出てきたのはしっとりした青い肌に頭と尻尾に付いた大きな鰭。

 みず、じめんタイプを持つラグラージですな。

 キモクナイです可愛いです。

 これ重要な案件。

 

「お前もさっさとポケモンを出しな」

 

「分かりましたー」

 

「……チッ、へらへらしやがって」

 

 小声でしたが聞こえました。

 申し訳ない、これでも割と真面目にやってるつもりなんです。

 

「では、ガンタさん。モンスターボールの転送お願いします」

 

『畏マリマシタ』

 

 ガンタの転送機能によりモンスターボールが送られてきます。

 手渡されたモンスターボールを受け取り俺もフィールドとなる水中にポケモンを出します。

 

「ヒ、ヒ!」

 

 俺が出したのはヒンバスです。

 

「……」

 

 ヒンバスを見てミズチさんの雰囲気が更に鋭くなりました。

 これで油断してくれたら楽だったんですけどねー。

 どうやらこの前の派手男とは違うようです。

 

『僭越ナガラ審判ハ私ガ』

 

 今回も審判を買って出るガンタは俺とミズチさんの中央へ位置取ります。

 

『使用ポケモン、ハ、一体。何方カノ、ポケモン、ガ、戦闘不能ニ、ナッタ時点デ、バトル終了トシマス。デハ、バトル開始』

 

 先手は頂きます。

 

「ヒンバス、あまごいです」

 

「ヒ、ヒ、ヒ!」

 

 ヒンバスの上空で雨雲が発生し、それが次第に広がって雨を降らせます。

 これで特性すいすいの効果が発動してヒンバスの素早さは倍増です。

 

「ヒ、ヒ!」

 

 水中を素早くすいすい泳ぐヒンバス。

 これはなかなか捉えるのは難しいんじゃないですかね。

 さて、どう出てきますか。

 

「洒落臭ぇ……ラグラージ、じしんだ」

 

「グッラー!」

 

 ミズチさんの指示でラグラージが両腕を振り上げ岩場に叩きつけます。

 そこから波紋のように強力な震動エネルギーが広がって辺りを揺らし始めました。

 なるほど、確かに広範囲攻撃なら素早く動けても躱し辛い。

 良いわざのチョイスですな。

 ですが、俺としても素直にくらうつもりはありません。

 水面や空気、地面の揺れを感じ取りじしんの震動エネルギーの流れを正確に読み取ります。

 

「ジャンプで躱して下さい」

 

「ヒ!」

 

 ヒンバスが水中から勢いよく飛び出し空中へと大ジャンプ。

 遅れてその下をじしんによる震動エネルギーが通り過ぎます。

 タイミングばっちり。

 ナイスジャンプです。

 

「グラージ!」

 

「ヒ!?」

 

 ジャンプでじしんを躱したのもつかの間、ラグラージが空中のヒンバスに肉薄していました。

 

「れいとうパンチ」

 

「グラァ!」

 

 ラグラージの振りかぶった右拳から冷気が発生しているのが分かります。

 目を見張るような素早さではなかったのですが、動き出しが早かったですね。

 空中に躱すのを読んでいたんでしょう。

 やりますな。

 

「ヒンバス、体を斜めに回転です」

 

「ヒッ!」

 

 迫るラグラージのれいとうパンチに合わせて体を捻って回転したヒンバス。

 冷気を発する拳がヒンバスの体を擦れ擦れに通り過ぎる。

 

「ヒ、ヒ!」

 

 回転した勢いを利用して尾鰭でラグラージの腕を叩いたヒンバスが水中へと逃れます。

 ぎりぎり躱すことに成功しました。

 

「今のは少し驚きました」

 

「チッ」

 

 今日何度目かの舌打ち頂きました。

 あまごいによる雨で濡れた髪をかき上げながらこちらをにらんでくる視線は隙を見せたら一瞬でやるという殺気めいたものを感じます。

 いやいや、俺はエムじゃないんで気持ち良くなったりしませんことよ?

 ノーマルタイプです。

 それにしてもミズチさんのラグラージは良く育てられていますな。

 今の攻防だけでもポケモンの能力、トレーナーの技量、エッグカップでバトルした誰よりも圧倒的です。

 

「巫女は一族で最強のトレーナーだ。楽に勝てると思うなよ」

 

 俺の思考を読んだように掛けられた言葉に納得します。

 確かに楽に勝てる相手ではないでしょうな。

 でも、何故ですかね。

 

「……なに笑ってやがる」

 

「いえ、すいません。何だか楽しくなってきてしまって」

 

 これまでもバトルは経験してきましたが、はっきりと高揚した気分になったのは初めてでした。

 ギリギリの勝負。

 ヒンバスから勝ちたいという気持ちがビシビシ伝わってきます。

 カトリーナさんの気持ちが少し分かりました。

 ヒンバスを勝たせてあげたい。

 そう思うと胸が熱くなってきます。

 

「そうかよ。やっぱりアタシはお前が気にいらねぇ……次で終わらせてやる」

 

 剣吞さの増したミズチさん。

 何か仕掛けて来そうですね。

 

「ラグラージ、ストーンエッジ」

 

「グラージ!」

 

 咆哮をあげて右拳を岩場に叩き付けたラグラージのいる場所から揺れが起こります。

 じしんの揺れよりは小さいです。

 それが水中を泳ぐヒンバスに一直線に向かう。

 

「ヒッ!?」

 

 ズガンと一層大きな揺れが起きた後、水色に光る岩の槍が突き上がる。

 何とか躱したヒンバスの行く手を阻むように更にもう一本。

 躱せば躱すほどに行動範囲が狭まれて最後にはヒンバスを囲むように岩の槍が並び、逃げ場を塞がれました。

 全方位を塞がれたヒンバスはたいあたりで脱出を計りますが狭い場所ではスピードも活かせず岩はビクともしません。

 唯一空いているのは上だけ。

 それも高さがある為そこから逃れるのは無理だと思われます。

 

「無駄だ。もうそこからは逃げられねぇ」

 

「そうみたいですね」

 

 ピンチですが焦っても仕方がないので取り敢えずポーカーフェイスで返します。

 そんな俺に若干イラッとした様子のミズチさんですが一瞬で気持ちの波を鎮めたようです。

 バトル開始から外見からは意外なほどミズチさんは冷静で凪のような精神状態でした。

 本当に優秀なトレーナーなのだと思います。

 

「これで沈め。ヒンバスに直接じしんだ」

 

「グラァ!」

 

 ラグラージが岩の槍の上へと飛び上がりました。

 空いている上からヒンバスのいる場所へと降下していきます。

 さっきのように振りかぶっている両腕からのじしんを岩場ではなく直接ヒンバスに叩き込むつもりみたいです。

 避けるスペースもなく、耐久も低いヒンバスなら確1で倒れてしまうでしょう。

 絶対絶命の大ピンチ。

 客観的に見て詰みの状態。

 それでもヒンバスに諦める様子はありません。

 なら俺も信じて最後まで戦います。

 それに俺の感覚ではそろそろあれが来る頃合いの筈です。

 

「ヒ!」

 

 真上のラグラージを見上げるヒンバスの体が光り出します。

 待ってました。

 進化タイムです。

 体全体が長く伸びていき後半から青や赤などの色に輝く鱗、尻尾の先は扇状に鰭が広がる。

 頭部からは対となる赤い触覚と特徴的な鰭が伸びていく。

 

「ミーロ!」

 

 光が収まったそこには目を奪われずにはいられないほど美しいポケモンがいました。

 

 

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