ポケモン世界に転生したので好き勝手に生きてみる 作:にわか党
また更新の間隔が空いてしまって申し訳ないです。
「ミーロ!」
窮地の中でヒンバスから進化したミロカロス。
「グラァ!」
しかし、未だピンチには変わりありません。
ラグラージがじしんを繰り出そうとすぐ間近まで接近しています。
「ミロカロス、れいとうビームです」
「ミーロー!」
俺の指示とほぼ同時にミロカロスの口元から水色の光線が放たれます。
光線は大気と岩の槍を凍らせ、ミロカロスの前に厚い氷の壁が現れました。
「グラァージ!」
目の前に現れた氷の壁も御構い無しにラグラージはじしんを叩きつけます。
砕け散る氷。
同時に凍って繋がっていた岩の槍にも振動エネルギーが分散して砕け散りました。
「ミロッ」
直撃ではないにしろミロカロスにもじしんのダメージが入ったようです。
それでも自分を囲んでいた岩の槍が無くなり自由になった事で素早く長い体をしならせてラグラージから距離を取りました。
再度、ミロカロスとラグラージが相対します。
その間に俺は腕のポケモン図鑑でミロカロスのデータを拝見。
『ミロカロス』
性別:♀
特性:かちき
技:たいあたり、あまごい、れいとうビーム、どくどく
データを確認しミズチさんを見るとこちらの様子を伺いながら次の手を考えているようでした。
ミロカロスへの進化も予想の範疇だというように動じる事なくこちらを見据える彼女は威圧感の塊です。
「氷の壁でストーンエッジの岩に威力を逃しやがったか」
そう呟いて舌打ちを入れるミズチさん。
ラグラージにれいとうビームを当てても止まらずにじしんを直撃させられていたかもしれませんし、それならとダメージを最小限にするほうを選んでみました。
俺の考えを聞かないでも理解してくれたミロカロスさんマジ優秀ですな。
さて、それでは次は俺から行かせてもらいますか。
「れいとうビームです」
「ミロ!」
ミロカロスから放たれたれいとうビームがラグラージに向かっていきます。
それでもミズチさんとラグラージは動こうとはしませんでした。
れいとうビームが大気を凍てつかせ岩場に氷の塊を作ります。
「ミロ?」
技を放ったミロカロスが首を傾げています。
れいとうビームが直撃したと思われたラグラージが氷の中にいないからでしょうな。
ラグラージは当たる直前にれいとうビームを避け水中へと潜ったのでミロカロスには消えたように見えたのかもしれません。
水中に潜ったラグラージはそのままミロカロスへと近付いてきます。
「ミロカロス、下です」
「ミロ!?」
「遅ぇよ、たきのぼりだ」
「グラージ!」
ミロカロスの下から突き上げるように水を纏って飛び出したラグラージの突撃。
間一髪でミロカロスのガードが間に合いましたが、それでも後方へと吹き飛ばされてしまいます。
ダメージは負いましたがチャンスです。
「ミロカロス、どくどく」
「ミロ……ッ!」
飛ばされながらもラグラージに顔を向け、口から紫色の液体を吐き出すミロカロス。
「グラッ!?」
攻撃の直後だったラグラージに紫色の液体がかかり、もうどく状態に陥った反応が現れます。
これでラグラージは体力を徐々に奪われていく事になります。
進化と共に覚えたどくどくは流石に予想外だったようでミズチさんは眉を若干しかめました。
吹き飛ばされたミロカロスは体をしならせて衝撃を殺し体制を素早く立て直す。
「グラージ……ッ」
ラグラージはもうどく状態によるダメージを受けています。
これにより時間が経つにつれ俺達が有利です。
綺麗な花には毒といったところですかね。
「ラグラージ、ストーンエッジだ!」
「グラァ!」
もうどく状態のラグラージが先程と同様に拳を岩場に叩きつけます。
その前方から次々と岩が隆起しミロカロスへと向かって来ました。
ストーンエッジでの囲みはもう食らいません。
「ミロカロス、後方へ躱して下さい」
「ミロ!」
バネのように体をしならせ、後方へとジャンプしたミロカロス。
遅れて隆起した岩がミロカロスのいた場所を囲みます。
「そのまま、じしん!」
「グラージ!」
今度は両腕で岩場を叩いたラグラージからじしんによる震動エネルギーが発せられます。
ですが、ミロカロスとラグラージのいる位置とは距離があるので威力はそれほどではありません。
「れいとうビームです」
「ミーロー!」
タイミングを計りじしんをれいとうビームで相殺。
ダメージには繋がりません。
まあ、ミズチさんの狙いは別だと思いますけど。
それを証明するようにストーンエッジで隆起した岩からじしんを受けた事でミシッと音がした後、罅が入りミロカロスへと倒れてきました。
なるほど、これなら上にも横にも逃げるのは難しいですな。
ただ、躱せない事はありません。
「右斜め4.5mの位置へ」
「ミーロ!」
俺が言った場所へミロカロスは素早く移動してくれました。
大きな音と水飛沫を巻き上げて岩が倒れます。
巻き上がった水飛沫が散り、倒れた岩が次第に見えてきます。
「ミロ!」
そして、その岩の丁度隙間となった場所に無傷のミロカロスがいました。
「あの一瞬で岩の倒れない位置を把握しやがったのか……?」
目を見開いてミズチさんが驚いてます。
空間把握もチート級で、申し訳ない。
次はこちらの番ですかね。
「フィールドに向けてれいとうビームです」
「ミーロ!」
ミロカロスから放たれたれいとうビームか岩場と水辺を含めたフィールド全体を凍らせていきます。
凍結は直ぐに広がりあっという間に氷のフィールドへと変貌しました。
「グ、グラ」
雨により濡れた氷上は滑り易くラグラージは動きにくそうです。
逆に滑るように移動するミロカロスはすいすいと動いております。
「グラ……ッ」
そして、もうどくによるダメージも増加しながら着実にラグラージの体力を奪っています。
「そんな氷、じしんで叩き割れ!」
「グーラ!」
滑り易くなっている氷上にも関わらずしっかりとラグラージは技のモーションに入っています。
ですが、させません。
「れいとうビームをラグラージの腕へ」
「ミロー!」
水色の光線が振り上げられたラグラージの腕へと向かい凍結させました。
「グラァ!」
それでも構わず凍ったままの腕を叩き付けたラグラージですが、技は不発。
腕の氷を砕き、叩き付けた場所の氷が削れたのみ。
悪い足場では踏ん張りが利きにくく技の威力も削がれた所為でしょう。
「グラァ、グラァ」
ラグラージの呼吸が上がり始めました。
雨もそろそろ止みそうですし、頃合いですな。
「ミロカロス、ラグラージの上空の雨雲にれいとうビームです」
「ミーロー!」
ラグラージの上空にある雨雲に向かって放たれたれいとうビーム。
雨を降らせていた厚い雲が凍結し、巨大な氷塊となってラグラージへと落下して行きます。
技で迎え撃ったとしてもダメージは必須です。
「躱せ!」
「グラ!」
回避行動を開始したラグラージですが氷上では動きは鈍い。
激しい轟音と水飛沫を上げながら落下した氷塊。
直撃したラグラージには相当なダメージが入っているはずです。
落下した衝撃で砕け散った氷塊の残骸の中で倒れているラグラージ。
「まだだ……お前なら立てる」
「グ、ラァー!」
低く力強いミズチさんの呼び掛けにラグラージは応えて腕を踏ん張りながら立ち上がりました。
その姿はバトルをしている相手ながら実に美しく見えます。
「力を振り絞れ! ストーンエッジ!」
「グラァーーージ!」
気合いの怒号と共に放たれたストーンエッジ。
ミロカロスに向かって突き上がる光る岩の槍が1本2本と迫ります。
俺とミロカロスは迫り来るストーンエッジをその場所から動かずにただ眺めていました。
そして、突き上がる岩の槍がミロカロスの目の前まで迫り、そこでストーンエッジが静止します。
ドサリ。
数秒遅れて腕を下げた状態で動かなかったラグラージが倒れました。
『ラグラージ、戦闘不能。ヨッテ、勝者、シロー様』
決着です。
「ミーロ!」
ガンタが勝者を告げた瞬間にミロカロスが振り返り俺へ向けて突撃して来ました。
「おっと」
「ミィロー」
ミロカロスが痛みを感じないようにそっと受け止めると褒めて欲しいと言わんばかりに頭を擦り付けて甘えています。
もちろん俺は全力で撫でまくりですとも。
この可愛さは永遠にイチャついてても飽きませんな。
「お疲れ様です、よく頑張りましたね。それと進化おめでとう御座います」
「ミロ!」
進化して長くなった身体を巻き付けて甘えてくるミロカロスを一頻り撫でまくった後、モンスターボールへと戻し島へとガンタに転送して貰います。
そのガンタさんは俺がミロカロスと戯れている間にフィールドとなった岩場と水辺の氷を溶かして元に戻してくれていました。
仕事が早い。
そのフィールドでは倒れたラグラージをモンスターボールへと戻したミズチさんが立ち尽くしています。
俺は彼女へ近付いて行き、手を差し出しました。
「良いバトルでした」
「……」
差し出した俺の手を数秒見つめていたミズチさんが手を伸ばし、勢いよく弾かれました。
凄い良い音しましたねー。
「……アタシはお前なんか認めねぇ」
ミズチさんは踵を返し通路の方へ向かって行きました。
代わりに老婆が宝玉を持って慌てて来ます。
「申し訳ありません、使徒様」
「気にしないで下さい」
「慈悲に感謝を。そして、早速ですがあいいろのたまを御受け取り下さい」
老婆が大事そうに差し出した藍色に輝く宝玉を受け取ります。
「永きに渡り宝玉を守って頂いて本当にありがとう御座いました」
「……私などには勿体無き御言葉。どうかその言葉は彼女らへ掛けては頂けないでしょうか」
涙を流す老婆の視線の先には先程まであいいろのたまが安置されていた祠があるのみで誰もいません。
「この祠には代々巫女の魂が宿っていると伝えられているのです。死して尚、宝玉を守護していく為だと」
なるほど、この祠は代々の巫女を祀っている場所みたいです。
ならば神様に代わって感謝の意を込めて祈るくらいはしないと駄目でしょうな。
俺はあいいろのたまをガンタに預けて祠へと歩み寄ります。
右手を胸に当て暫く黙祷を捧げた後、″ありがとう御座いました″と感謝を述べました。
すると次の瞬間、祠から光が漏れ出し次第に洞窟内全体が淡い光を帯び始めます。
続いて蛍のような光がふわりと何個も浮かび上がりました。
やがて周りの光が空へと伸び、蛍のような光もそれを追っていきます。
「御先祖様たちの魂が役目を終えた事で天へと向かって行くのでしょう……」
その光は夜空に散らばる星々の輝きにも劣らず最後まで美しく輝いていました。