ポケモン世界に転生したので好き勝手に生きてみる   作:にわか党

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「ラルトスの傷はすっかり良くなりましたよ」

 

「有難う御座いました、ジョーイさん」

 

 お日様のような笑顔のジョーイさんに続いてプクリンが傷の癒えたラルトスを乗せた台車を引いて来た。

 

「ここ一週間くらい碌に食べていなかったみたいでしたので点滴も打っておきました」

 

 やっぱりでしたかー。

 

「ラル……」

 

 傷や体調が良くなったはずのラルトスは、それでも元気がなさそうに俯いている。

 

「このラルトスは近くの森にトレーナーが放していったようですね」

 

 ガンタの推測をさも自分の意見として言ってみる。

 

「そうですね。私もあの森にラルトスが生息しているという話は聞いた事がありません。全く、最近は生態系の事も考えず、自分勝手にポケモンを放していくトレーナーが多くなって困ったものです」

 

 ぷりぷりしているジョーイさんも良いですな。

 

「ラルトスさん、お腹が空いているのではありませんか?」

 

「ラル……?」

 

「ガンタ」

 

『ハイ』

 

 最後まで言わずともガンタには伝わると思った俺、正解。

 またまた何処からか取り出した材料で、恐らくラルトス用にブレンドしたポケモンフーズが載った皿を渡される。

 

「良かったら召し上がりませんか? 美味しいですよ」

 

 多分。

 

「ラル……」

 

 食べたそうにしているが、どうもまだ警戒されている感じ。

 ここは試しにと、俺が皿に載ったポケモンフーズを一つ掴み、口に放って見せる。

 

「ほら、やっぱり美味しい」

 

 正直、複雑な味でそんなに美味しいとは言えなかったが、ここはポーカーフェイスを忘れずに全力のスマイルでアピールしてみた。

 そね甲斐あってか、ラルトスが恐る恐るという様子でポケモンフーズを一つ、小さな両手で掴み、噛り付いた。

 

「ラル!」

 

「美味しいですか。それは何より」

 

 噛り付いた一つを勢い良くもうひと齧りし、あっという間に食べてしまった。

 

「はい、まだまだあるのでいっぱい食べて下さいね」

 

「ラルラル!」

 

 よし、ポケモンフーズの手渡しに成功した。

 このまま上手くやれば撫でるくらいなら許してくれそう。

 

「とっても優しいんですね」

 

「それ程です。それはそうと、ジョーイさん。宜しければ、野生のポケモンの生態系を守る事についてゆっくりとお茶でも飲みながら談義しませんか?」

 

「ふふ、次の診察がありますので、私はこれで失礼しますね」

 

 さっきのジュンサーさん宜しく、ジョーイさんは奥にそそくさと行ってしまった。

 

「あらー、二連敗」

 

「プクプック」

 

 今度は台車を引いていたプクリンに慰められた。

 流石はジョーイさんの助手、良く出来てらっしゃる。

 

「ラルトスさん、あっちの席で一緒に食べませんか?」

 

「ヒマヒマ!」

 

 ヒマナッツにも加勢してもらった。

 

「ラル!」

 

 警戒心も和らいだラルトスは快く了承してくれる。

 抱えているヒマナッツの愛らしさの効果ですかね。

 

「では、行きましょうか」

 

 ヒマナッツを抱えている手とは反対の手を差し伸べてゆっくりとラルトスを抱き上げた俺はそのままさっきまで座っていた席に着いた。

 ポケモンフーズはガンタが運んで来てくれた。

 椅子に座った俺の膝にヒマナッツとラルトスを乗せると、その愛らしさが相俟って再び天に戻りそうな気分だ。

 

「ヒッマ」

 

「ラルー!」

 

 テーブルに置かれた皿からヒマナッツがポケモンフーズを頭の葉っぱに器用に載せ、それをラルトスにあげる優しい姿に鼻血が出そうになりました。

 紳士として何とか鼻血は堪えましたがね、ええ。

 しかし、どちらも直ぐに仲良くなって本当に良い子達ですわー。

 

「ガンタさん、もしかしなくてもカメラ機能が付いてたりは」

 

『超高画質、撮影機能ガ搭載サレテイマス』

 

 ぐっじょぶ神様。

 

「撮って撮って」

 

『了解シマシタ』

 

 高ぶってきました。

 

「ヒマナッツ、ラルトスさん。ちょっとガンタの方を向いて笑ってみましょうか」

 

「ヒマ?」

 

「ラル?」

 

 まあ、急にロボットに向かって笑えとか言われたら何言ってんだコイツってなりますよねー。

 さっきみたいに笑顔を撮って欲しいんだけど。

 そんな事を願いながらガンタに視線を送ると、何やら動きを見せた。

 人間と同じ五本の指がある手を開いて見せてからグッと握り込み、次の瞬間、パッと両手に白い薔薇を出現させた。

 本当にマジシャンだった。

 

「ヒマヒッマ!」

 

「ラルラルー!」

 

 俺の膝の天使達はお気に召したようで、きゃっきゃと喜んでいる。

 その光景は至福。

 正にその言葉しかなかった。

 

『シロー様、コチラガ、今撮レタ画像ニ、ナリマス』

 

 ガンタの手からホログラムの写真が投影される。

 そこには最高の瞬間が収まっていた。

 

「これからシャッターチャンスがあったら、分かっていますね?」

 

『了解デス』

 

 二度美味しいとはこの事ですな。

 

「それにしても、薔薇なんてよく持っていましたねー」

 

『造花デスガ、ショッピングモール、デ、サービス、トシテ、頂キマシタ』

 

 貰える物は貰っておいて損はないって事ですか。

 

「ラルー」

 

「ああ、食べ終わったんですか。お腹はいっぱいになりました?」

 

「ラルラル!」

 

 両手を広げてアピールしてくるラルトスが可愛過ぎて辛い。

 ここはもう撫でにいっても大丈夫な雰囲気では?

 なるべく優しくを心掛けて撫でてみる。

 

「ラルー」

 

 ごはっ、気持ち良さそうなラルトスに俺のHPは耐えられんかった……。

 

「ヒマヒマ!」

 

 ヒマナッツも撫でて欲しいと。

 何だこの俺得祭り。

 両方とも撫でながらガンタにシャッターチャンスだと視線を向けると無言のサムズアップが返って来た。

 なんて優秀なカメラマンなんでしょ。

 

「ちょっと、そこの貴方」

 

 デジタルフォトフレームとかガンタに言ったらあるかな?

 

「聞こえないんですの?」

 

 どうでもいいけど、誰か呼ばれてますよー。

 左右を見渡し、呼ばれている誰かを探してあげる。

 

「貴方です! 灰色の髪の貴方!」

 

「ああ、俺ですか。なら、最初からそう言ってくれればのにー。お茶飲みます?」

 

「どう考えても貴方の前で! 貴方を見て! 話し掛けていたでしょう! あと、お茶は頂きます!」

 

 声おっきい人ってちょっと苦手だなー。

 容姿は透き通るような薄い桃色の髪に綺麗な顔立ちなのにどこか残念な感じに見えてくる。

 

「何か失礼な事を考えていませんか?」

 

「いいえ、別に」

 

 年頃は今の俺と同じくらいか、少し上。

 身に付けている物と話し方からは育ちの良さが窺える。

 

「それで、何か御用ですか? ナンパなら喜んで御受けしますが」

 

「違います。私が御用があるのは、そちらのラルトスです」

 

 おやおや?

 何やら俺の膝にいるラルトスを凝視し始めましたね。

 

「……やっぱり。この子は私が一週間前にバトルしたラルトス。あの時とは別のトレーナーといるという事は交換しましたの?」

 

 ジュンサーさんとジョーイさんにした説明を更なる脚色を加えて話してあげた。

 

「自分のポケモンをその辺に適当に放していくなんて、無責任にも程があります……!」

 

「まあ、貴女に負けた事が原因かもしれませんけどねー」

 

「し、仕方が無いではありませんか! バトルで手を抜く事は相手に失礼なのです! 確かに私にも責任が無いとは言い切れませんが、それは何といいましょうか……ふ、不可抗力です!」

 

 憤慨していたところへ冷や水を浴びせる俺の発言で急激にオロオロし出した。

 何この可愛い生き物。

 

「……何故ニヤニヤしているのですか?」

 

「してませんー、ぷっ」

 

「今、笑いましたわね!?」

 

 細かい人ってやーねー。

 

「まあまあ、そう熱くならず。今はラルトスさんの話じゃないですかー」

 

「誰の所為だと……!」

 

 誰の所為ですかね?

 もちろん、俺ではない。

 

「で、では、こうしましょう。私がラルトスを引き取ります」

 

 わー、勝手に話進めるー。

 

「必ずや元のトレーナーが放したのを悔やむような立派なポケモンに育て上げてみせます。いかがかしら?」

 

 そう言ってラルトスに手を差し伸べた。

 何か無理矢理に良い話みたいに持って行こうとしてません?

 当のラルトスは差し伸べられた手をじーっと見つめている。

 

「ラルッ」

 

 プイッとされた。

 

「……」

 

『「ぷっ」』

 

「また笑いましたわね!? しかも、今度はロボットまで!」

 

 いや、俺は素で吹いたけど、ガンタは意図的だ。

 

「ラルー!」

 

 そして、ラルトスはクルっと俺の方を向き、抱き付いてきた。

 大切な事だからもう一度言う、抱き付いてきた。

 お、落ち着け俺、ここで愚を犯せばせっかく懐いてくれたのに台無しになってしまう。

 大丈夫、俺は紳士。

 

「ま、まあ、自分を助けてくれた人に懐くのは当然と言えば当然かしら? ですから、これは決して私が嫌われているとかそういう事ではないのです、宜しくて?」

 

 決壊寸前のダムみたいな目で言われても。

 

「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。俺はシローといいます」

 

「ヒマヒマ!」

 

「こっちは俺のポケモンのヒマナッツに」

 

『私ハ、シロー様ニ仕エル、ガンタ、ト、申シマス』

 

「……先程から気になっていましたが、随分と高性能なロボットですのね」

 

 科学者達が土下座する程の性能があります。

 

「ごほん。申し遅れましたが、私の名前はカトリーナ。今はポケモンリーグ出場の為にジム巡りをしているところです」

 

 ほうほう、ポケモンリーグとな。

 あの八個集めるやつですね。

 

「シローはこの街に住んでいるのですか?」

 

「いえ、ミアレには買い物に来ただけですよ」

 

「そう。ところで、貴方もポケモンを持っているという事はトレーナーですわよね。宜しければバトルの相手をして頂けません?」

 

 カトリーナさんの気の強そうな目が光る。

 あれれ、この人何故にこんな好戦的なんです?

 

「申し訳ない。実はトレーナーになったばかりで、手持ちのポケモンはヒマナッツだけなんですよ。なので、バトルはちょっと」

 

「あら、そうでしたの。随分とポケモンと接するのに慣れている様に見えましたので、てっきりトレーナー歴が長いのだと思いましたわ」

 

「知識だけはそれなりに持っているつもりです」

 

 なんせ神様から貰ったんでね。

 

「そうだ。後学の為にカトリーナさんのポケモンを見せて頂けませんか?」

 

 我ながらナイスアイディア。

 これなら極自然に新たなポケモンと戯れる事が出来る。

 

「ええ、もちろん宜しくてよ」

 

 二つ返事で快く了承してくれたカトリーナさん素敵。

 

「では、先日ミアレジム戦で活躍してくれた子を御見せしますわ」

 

 カトリーナさんが腰のポーチから取り出したモンスターボールからポケモンが出てくる。

 

「ノンド!」

 

 口から飛び出す程の大きな牙に太い尻尾、大きな目は吊り上り気味だが何処か愛嬌も感じられる。

 

「オノンドですかー」

 

「私のポケモンの中でも自慢の子ですのよ」

 

 大きめのポケモンもこれはこれで可愛いですな。

 

「ただ、少し気難しいというか私以外にはあまり気を許さないところがあってーーーー」

 

「よーしよし、良い子ですねー」

 

「ノンドー」

 

 手を出してみたら擦り寄って来たので、頭を撫でてみると顎下の方もして欲しそうにしているのが伝わってきた。

 撫でてやると目を細めて気持ち良さそうにしている。

 見た目とギャップがあるところがまた可愛いわー。

 

「いやー、素直で良い子ですねー。どちらかというと気性が荒い個体が多いドラゴンタイプなのに初めて会った俺と接していてもすごく落ち着いていますし。あ、すいません、何の話でしたっけ?」

 

「……いえ、別に」

 

 夢中になっていたオノンドからカトリーナさんへ視線を移すと、何故か頰を膨らませて拗ねた子供のようになっている。

 

「どうかしました?」

 

「何でもありませんわ! 私でも懐くまでに時間が掛かったのに初めて会ったシローに懐いているから納得いかないとか子供のような事は全く思っていませんからね!」

 

 思ってる事ダダ漏れです。

 

「それでは、私達はそろそろ失礼します! 行きますわよ、オノンド! 美味しいハーブティー御馳走様でした!」

 

「ノンドー」

 

 急に怒り出して席を立つカトリーナさんに付いて行くオノンドに手を振ると赤い掌を振り返してくれた可愛い。

 

「ガンタ、サービスで貰った造花の薔薇は白だけ?」

 

『イエ、数種類ノ、カラーバリエーション、ガ、御座イマス』

 

 さっきのマジックと同じように様々な色の薔薇が出てきた中からピンクの薔薇を取り、ヒマナッツとラルトスを俺が座っていた椅子に座らせ、去って行くカトリーナさんを追う。

 どうでもいいけど、あの人脚長いから歩くの速いな。

 

「カトリーナさん」

 

「……まだ何か御用が御有りですの?」

 

 俺の呼び止めに振り向いた彼女の顔は不機嫌ですと書かれているような表情だった。

 

「用という程ではありませんが、オノンドを見せてくれた御礼がまだでしたので」

 

 ガンタと同じように掌を見せてから握り、あたかも何も持っていない手からいきなりピンクの薔薇が出てきたような演出付きで、その薔薇を手渡す。

 

「造花で申し訳ないですが、綺麗な桃色の髪の貴女に良く似合うと思いまして」

 

「あ、ありがとう存じますわ」

 

 さっきまでの不機嫌そうな顔は既に消え、一般的な薔薇のように真っ赤になったカトリーナさんも可愛いですわー。

 さて、そろそろオチを。

 

「因みに、ピンクローズの花言葉は、上品としとやかさ、だそうですよ」

 

 俺の言葉に最初は惚けていた様子だったが時間が経つにつれ、今度はさっきとは違う意味で顔が赤くなっていく。

 

「余計な御世話です!」

 

 予想通り、悪い意味で捉えたカトリーナさんはそのままズカズカとポケモンセンターから出て行った。

 

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