ポケモン世界に転生したので好き勝手に生きてみる 作:にわか党
「行ってしまいましたねー」
ポケモンセンターから出て行ったカトリーナさんを見送った俺はヒマナッツ達の待つ席へ戻って来ていた。
『上手ク、イキマシタカ?』
「ああ、うん。ガンタのおかげでマジックもこっちも両方上手くいったと思いますねー」
薔薇を取った時に一緒に渡されていた小さな機械をガンタへ手渡す。
渡されたそれはガンタの目から出た赤い光がスキャンするようにすり抜ける。
『データ、ヲ、抽出シタ結果、目標ノ、データ、ダト、確認シマシタ』
「それは何より」
いやー、こんなに上手く行くとは自分でもびっくり。
「ヒマー?」
俺とガンタが何を言っているのか分からないヒマナッツとラルトスが聞いてくるので説明しましょう。
「大きい声では言えませんが、実はこの小さな機械は近くの端末からデータを抜き取る事が可能なんです。俺もガンタから渡されてボソッと聞かされた時は半信半疑でしたが、それが今、証明されました」
「ラルー?」
って言っても分からないですよねー。
「まあ、その事は置いといて」
咳払いをしつつ、俺は椅子に座っていたラルトスを抱き上げた。
「ラルトスさん、俺のポケモンになりませんか?」
「……ラル!」
少し迷いを見せた後、頷いた。
「では、一度これに入ってくれます?」
空のモンスターボールをガンタから受け取り、ラルトスの前に差し出すと、小さな両手で真ん中のボタンを押してくれた。
モンスターボールが開くとラルトスを光が包み、その光と共にラルトスがモンスターボールの中へ入った。
ボタンが赤く点滅しながらモンスターボールが揺れる。
了承済みとはいえ、この瞬間は緊張ですわ。
そして、直ぐに揺れが収まる。
「ラルトス、ゲットですね」
「ヒマ!」
『御目出トウ御座イマス』
「ありがとう」
早速、モンスターボールから出してみる。
「ラルー!」
出て来たラルトスが抱き付いて来るのを受け止めた。
コレ何て俺得?
「今日から宜しくお願いしますね」
「ラルラルー!」
「ヒマヒッマ!」
ヒマナッツも新しい仲間にすごく喜んでくれている可愛い。
ゲットしたラルトスをポケモン図鑑で見てみた。
『ラルトス』
性別:♀
特性:トレース
技:ねんりき、テレポート、かげぶんしん
「ラル……?」
ラルトスの不安な気持ちが伝わってくる。
「大丈夫ですよ。強い弱いなんて関係ないんです。もし、バトルが嫌ならしなくても全然いいですし。ただ一緒に居てくれるだけで俺はすごく幸せな気持ちになれますから」
出来れば撫でたり遊んだりしたいですが。
「ラル、ラルゥ……」
「あー、泣かないで下さい。よし、よし、笑ったほうが断然可愛いですよ」
泣き出してしまったラルトスをあやし、何とか愛らしい笑顔を取り戻す事に成功した後、ポケモンセンターを出た。
今はヒマナッツとラルトスを両手に抱え、ヘリがある森の中を歩いていた。
「この先に俺達が乗ってきたヘリがあるんですよ」
「ラルー?」
何処へ行くのか疑問に思っていたラルトスへ説明するが、ラルトスはヘリが分からない様子。
「ヒマヒマ」
「ラル?」
「ヒマ、ヒマヒッマ、ヒマー!」
「ラルー」
ヒマナッツが懸命にヘリについてラルトスに伝えようとする姿に和みます。
手持ちのポケモンが増えるって最高ですなー。
『シロー様、到着シマシタ』
微笑ましいポケモン同士の会話を楽しんでいると、もうヘリのある場所に着いてしまったようだ。
「開けてくれる?」
『了解シマシタ』
ガンタが遠隔でヘリを操作し、何も無いように見える空間からヘリが現れた。
「ラルラルー!」
急に出て来たヘリに驚くラルトスがまた可愛いんです。
「これでひとっ飛びで帰るんですよ」
「ラルー」
信じられないですか。
普通はそう思いますよねー。
「ラルラル!」
ヘリに乗り込むと辺りをキョロキョロと見渡し興奮気味のラルトス。
ヒマナッツと同じで、ラルトスも初めてのヘリが珍しくて興味深々だ。
離陸したヘリは島に向けて飛行し始め、上空からの景色にラルトスとヒマナッツが喜ぶ姿を見てまた和む。
「ああ、そうだ。ガンタが撮った画像は何で見ればいい?」
『私ノ撮影シタ画像ハ、シロー様ノポケモン図鑑ニ自動的ニ送ラレルノデ、何時デモ確認可能デス。又、ソノ、ポケモン図鑑ハ、電話、メール機能ニ加エ、ネット端末トシテモ使用出来キ、完全防水ニナッテイマス』
「了解でーす」
腕輪型のケータイって感じなんすねー。
直ぐに画像データの入ったファイルを開き、今日の画像を見てガンタの撮影技術に驚いた。
ヒマナッツとラルトスの愛らしさが画像から溢れてくるようだ。
良い仕事しますわ。
「ラルラルー!」
「ええ、本当に綺麗な海ですねー」
「ヒマー?」
「あれはホエルコですよ。進化すると現在確認されている中では最大のポケモン、ホエルオーになります」
画像を確認しながらもヒマナッツとラルトスとの触れ合いに抜かりはない。
しばらく空の旅を楽しんだ後、島を守る霧が見えてきた。
「あの霧を抜けた先に俺達の島があります。今日からラルトスの帰る場所です」
「ラルー!」
「はは、俺もラルトスが来てくれて嬉しいですよ」
この調子でポケモンをゲットしていけば、いつかは島がポケモンでいっぱいになるかもなー。
そしたら、色々なポケモン達と毎日イチャコラ出来る楽園みたいになるのでは?
夢が広がりますな。
『到着シマシタ』
我が家に着いた。
我が家とは言ってもまだどんな部屋があるかも把握してないんですけどね。
外から見た感じ、部屋数はかなり多そうというのは分かる。
「どうですか? 気に入って頂けましたか?」
当然の様に抱えたままのラルトスに家の感想を聞いてみる。
「ラルー」
呆気に取られているラルトスも実に愛らしい。
「さ、早く中へ入りましょ。ガンタ、ついでに家の中案内してー」
『了解シマシタ』
ヒマナッツとラルトスを抱えたままガンタの案内を受ける。
最初は一階の豪華なダイニングから厨房と呼んで良いレベルのキッチン、10人いたとしても窮屈にならなそうなダイニング、裏庭へと続く広いウッドデッキ。
そして、様々な洋間を見せられ、体力的には問題なくても精神的に若干疲れてきたところで二階へ上がる。
「ふたり共、疲れてませんか?」
「ヒッマ!」
「ラル!」
まだまだ元気いっぱい。
探検気分なんでしょーかね。
二階はこれまた様々な寝室があり、書斎にサンルーム、テラス、和室もあった。
「ガンター、シャワー室完備の寝室はあったけど、浴室はないの?」
『浴室ハ、地下ニ御座イマス』
地下とな?
行ってみましょう。
『コチラカラ地下へ行ケマス』
俺達の前には取っ手の無い大きな木製の扉。
ヒマナッツ、ラルトスと首を傾げていると、自動的にその扉がスライドした。
自動ドアだったんですね。
中は何もない空間。
ガンタが中へ入った時に何となくこれが何なのか理解した。
「エレベーターでしたか」
「ヒマ?」
「この部屋が自動的に下へ降りて地下に行けるんですよ」
ヒマナッツの葉っぱに、はてなマークが浮かぶのが見えてくるような気がします。
ラルトスはエレベーター知ってるみたい。
自動ドアが閉まり、エレベーターが地下へと降りていく。
チーン、という音の後に自動ドアが開き、先導するガンタへ続く。
『コチラガ、浴室ニ、ナリマス』
銭湯の様な脱衣所を通り、曇りガラスの扉を開けた先にはスパ施設を思わせる大浴場。
ジェットバスやアロマバスまで揃っている。
『日モ傾イテ来マシタノデ、コノママ入浴サレテハ、如何デショウカ。ソノ間ニ、私ハ御食事ノ用意ヲ済マセテ、オキマス』
「ヒマナッツとラルトスも一緒でいいの?」
『問題アリマセン』
では、入りましょー。
俺は脱衣所で服を脱ぎ捨て、ヒマナッツとラルトスを連れて浴室へ入る。
ちゃんと物はタオルで隠しました。
身体を洗い、湯船へ入って寛ぐ。
お湯の吹き出し口がギャラドスなのは神様の趣向だろうなー。
「気持ち良いですねー」
「ヒマー」
「ラルー」
一緒に百数えてから浴場を出て脱衣所へ戻ると、脱いだはずの服がなくなっていた。
代わりに白いスウェットとバスローブ、浴衣、バスタオルが置かれている。
ガンタが用意してくれたのかな?
俺は着慣れているスウェットを選ぶ。
着替える前に濡れたままのラルトスをまず拭いてあげた。
「ラルラルー!」
そして、拭き終わったラルトスが濡れているヒマナッツを拭くのは自分に任せろと言うのでお願いした。
俺は自分の着替えと洗面台に置かれたドライヤーで髪を乾かす。
「ヒッマ!」
「拭いてもらえて良かったですねー。ラルトスも御苦労様でした」
「ラッル!」
床にいたふたりを抱き上げながら言うと、どちらも嬉しそうに笑う。
思わず抱き締めてしまったが嫌がられる事はなかった。
危ない危ない。
「上に戻りますよー」
脱衣所から出てエレベーターに向かう前に地下の別の部屋を覗いて見た。
そこにはドデカいプールやスポーツジムばりの設備、更にはよく分からない機械でいっぱいの部屋。
「凄まじい家ですねー」
「ラルラル」
「ヒマー?」
エレベーターに乗って一階へ上がり、ダイニングへ入ると既に食事の準備を済ませたガンタが控えていた。
『本日ノ、ディナー、ハ、シロー様ノ御好キナ、グラタン、デス』
何で知ってるし。
ヒマナッツとラルトスのポケモンフーズはファミレスで見掛ける子供用のハイチェアに準備されていた。
「じゃあ、座りましょうか」
「ラルラル!」
「椅子を引いてくれるんですか? ラルトスには重いと思いますよ?」
俺用の椅子はとても小さなラルトスでは動かせないような重厚な物だ。
無理だろうと思っていたらラルトスは椅子には近付かず、両手を前に突き出す。
「ああ、ねんりきですか」
なるほど、それなら出来ますわ。
そういえば、初めてポケモンの技を見るのは初めてだ。
「ラルゥ……!」
ラルトスの両手と椅子が紫っぽいオーラの様な光に包まれ、椅子が引かれていく。
「おお! 凄いですね、ラルトーーーー」
俺の言葉を遮るように目の前の椅子が消えた。
いや、実際には消えたと錯覚する程のスピードで壁に吹き飛んでいった。
最も驚くべきは、それ以上のスピードで椅子が壁にぶつかる前に先回りして椅子を受け止めたガンタの手腕。
流石、チートタンク。
『パワー、ハ、素晴ラシイデスガ、細ヤカナ、コントロール、ハ、苦手ナヨウデスネ』
何事も無かったかの如く椅子を俺の座り易い位置に戻したガンタの説明に納得した。
「ラル……」
落ち込むラルトスは俯き、肩を震わせている。
「御手伝いしようとしてくれたんですよね」
「ラルラル……」
「その気持ちだけで嬉しいです。さ、食事にしましょう」
「ヒマ!」
抱えていたヒマナッツとラルトスをハイチェアに座らせ、俺も席に着く。
「では、頂きます」
「ヒマヒマ」
「ラルラル」
スプーンでまず一口。
「んー、ゴロゴロ入った野菜がまた俺好み」
『ハイ、把握シテオリマス』
だから、何故知ってるし。
「ふたり共、美味しいですか?」
「ヒッマ!」
「ラルー!」
息をするのも忘れる程の極上笑顔。
かーわーいーいっ。
美味い料理に可愛いポケモン達、マジ最高ですわ。
「明日も良い日になると良いですねー」