ポケモン世界に転生したので好き勝手に生きてみる   作:にわか党

7 / 37
0007

 朝の微睡みの中、甘い匂いで目が覚める。

 昨日は食事の後、最初に目覚めた寝室でヒマナッツとラルトスと一緒に眠りに就いた。

 ガンタは睡眠は不要なので洋館の掃除などをすると言って別れた。

 

「ヒマー?」

 

 目を開けた先には仰向けで寝ている俺の胸辺りに乗っているヒマナッツとラルトスがいる。

 先に起きていたらしい。

 

「ふたり共、おはよう御座います。何やら甘い匂いがしますね。ガンタにお菓子でも作ってもらったんですか?」

 

 俺の問いにラルトスが首を振って否定し、ヒマナッツを突き出してきた。

 

「ヒッマー」

 

 そのヒマナッツが頭の葉っぱを揺らすと再び甘い匂いがしてくる。

 これはあれですかね。

 腕のポケモン図鑑をヒマナッツに向ける。

 

「ああ、やっぱり。あまいかおりを覚えたんですか」

 

「ヒマ!」

 

 ぶんぶんと更に葉っぱを振り、あまいかおりで部屋が甘い匂いに包まれる。

 

「良い香りですねー。でも、外では勝手に技を使ってはいけませんよ?」

 

「ヒマー」

 

 撫でながら注意するとヒマナッツは愛らしい笑顔で頷く。

 何て可愛いんザマしょ。

 

「ラル、ラル」

 

 ヒマナッツと戯れていた間にラルトスがねんりきを使い、ナイトテーブルにガンタが置いてくれたであろう洗面器を浮かばせて俺の前に持ってこようとしていた。

 うわー、嫌な予感…。

 

「ラル…!」

 

 予想通り浮かんで俺に高速で向かってきた洗面器が顔に直撃する。

 チートな身体のおかげで少し痛かったけど怪我は無い。

 

「ヒマヒマー」

 

 仲良く一緒に水を被ったヒマナッツは喜んでいる。

 まあ、目はしっかり覚めましたよ。

 

「ラル、ラル…」

 

 隠れた目に涙をいっぱいため、今にも泣き出しそうだった。

 

「大丈夫ですよ。顔を洗う手間が省けましたし」

 

 慰めるどさくさに紛れて頭を撫でる。

 うん、今のはかなり自然にいけた。

 

「ラル…」

 

「気分を変えるために朝の散歩にでもいきましょうか」

 

「ヒマ!」

 

 洗面器の隣にあったタオルで濡れたところを拭き、ヒマナッツとラルトスを抱えて寝室を出る。

 

『御早ウ御座イマス。朝食ニ、為サイマスカ?』

 

「今から散歩に行ってくるから、その後で食べるよ」

 

『デハ、私ハ準備ヲシテ御待チシテオリマス』

 

「うぃうぃ」

 

 適当に返事をしながら一階への階段を下りる。

 廊下を抜けて裏庭に続くウッドデッキに出た。

 

「今日も良い天気ですねー」

 

「ヒマー」

 

 ウッドデッキには外出用なのか、白いクロックスが準備されていた。

 こっちにもあるんすか。

 ウッドデッキから出た裏庭は、大きな池やポケモンの形をした植栽が並ぶ。

 更に、裏庭の奥には広々とした草原が見える。

 

「ちょっと運動でもしましょうか」

 

「ヒマ?」

 

「ラル?」

 

 裏庭を抜けて草原まで出てからヒマナッツとラルトスを地面に降ろした。

 

「ラルトスがねんりきで俺を浮かせて下さい」

 

「ラ、ラル…」

 

 首を左右に振り、無理だと伝えてくるラルトスを見て俺は続ける。

 

「大丈夫です。身体能力は高いので吹っ飛んでも着地は楽に出来ますから」

 

 多分、そのくらいは出来ますと思われる。

 確認の為にその場で宙返りやサマーソルトなどのアクロバティックな動きをしてみると楽々出来た。

 

「ヒマヒマー!」

 

 そんなに凄いですかな?

 俺は更に高く跳躍し、回転に捻りも加える。

 

「こんな感じで着地しますから遠慮なくねんりきを使って下さい」

 

「ラル…」

 

 ラルトスはしぶしぶ両手を前に突き出し、俺にねんりきを使う。

 

「わー、浮きましたねー」

 

 ゆっくりと浮き上がり、二メートル程で止まった。

 ねんりきを使っているラルトスは物凄い真剣な様子。

 

「もっと肩の力を抜いてリラックスしてやっていいんですよ。次は、ゆっくりで良いのでこのまま動かしてみて下さい」

 

「ラル」

 

 ラルトスが頷くと本当にゆっくりと動き出した。

 

「ちゃんと出来てますよ。では、もう少し動かすスピードを上げてみましょう」

 

「ラル…ッ!」

 

 スピードを少しだけ上げた瞬間、その進行方向へそれまでとは比べものにならないスピードで吹き飛ばされた。

 いきなりで崩れた体制を空中で立て直し、回転して見事に着地してみせた。

 

「ヒマヒッマー!」

 

 俺の動きに飛び跳ねて喜ぶヒマナッツ可愛い。

 

「ほらね? 大丈夫でした」

 

 ラルトスに駆け寄り、手を広げて怪我が無い事をアピールした。

 

「ラルトスはねんりきをもっと上手く使いたいんですよね」

 

 ポケモンの気持ちが伝わってくる俺には分かる。

 

「練習すればきっと上手くなりますよ」

 

 俯き気味のラルトスの頭を撫でて励ます。

 この角っぽいのがまた可愛いんすよねー。

 

「ラル…?」

 

「失敗しても何度でも付き合います」

 

「ラル、ラル!」

 

 やる気になってくれたようだ。

 

「では、もう一度ゆっくりやってみましょう」

 

「ラル!」

 

 それから俺はヒマナッツが空腹を訴えるまで吹っ飛び続けた。

 

「ラル…」

 

「一日で駄目ならまた明日練習すれば良いんです。一緒に頑張りましょう?」

 

「ラル!」

 

 素直な良い子だわー。

 この子の為なら何千回でも吹っ飛びます。

 

『御帰リナサイマセ。朝食の準備ハ出来テオリマス』

 

 家に着くとガンタが朝食と共に迎えてくれた。

 メニューはベーコンエッグと焼きたてのパン。

 俺が朝はパン派なのも知っているんですね。

 

『今日ノ御予定ハ、如何ナサイマスカ?』

 

 朝食を食べ終わり、ガンタが淹れてくれたコーヒーで一息ついていた時にガンタからの質問。

 

「今日はねー、ホウエン地方の119番道路に釣りに行きたいと思ってます」

 

『了解シマシタ。釣具ハ、私ガ用意シテオキマス。シロー様ハ、御着替エヲ御願イ致シマス』

 

「了解でーす」

 

 コーヒーを飲み終わった後、ヒマナッツとラルトスを連れて二階へ向かう。

 服の部屋に入り、今日もガンタにコーディネート頼んでおけば良かったと後悔したが、既に今日着る服は用意されていた。

 なんて気が効くんでしょ。

 

「どうですか?」

 

 着替えた俺はヒマナッツてラルトスに向き直る。

 服装は白いシャツに黒系のパンツ。

 

「ヒマヒマ!」

 

「ラル!」

 

 可愛い天使ふたりに褒められて良い気分になってから一階へ降りていく。

 因みに、今日も移動はヘリ。

 既に一階で待っていたガンタに続けてヘリに乗り込み、ホウエン地方を目指す。

 

「今日もゲット出来ると良いんですけどねー」

 

「ヒマー」

 

 何せバトル以外の方法でやらなければない。

 ヒマナッツが、あまりかおりを覚えたおかげで釣りが駄目でも野生のポケモンに出会うだけなら出来ると思うんすけど。

 

『ホウエン地方ガ見エマシタ』

 

「早いー」

 

「ヒマー」

 

「ラルー」

 

 輪唱みたいになった。

 それから直ぐに119番道路の上空に着き、近くの森の中に着陸した。

 

『釣リニ、絶好ノ、ポイント、マデ、御案内、致シマス』

 

 そんな事も分かるんですね。

 黙って俺達はガンタに付いて行く。

 ただ、少し違うのは俺が抱いているのがヒマナッツだけで、ラルトスは肩に乗せているという事。

 当たり前だがしっかりガンタにこの姿を撮影させている。

 

『コノ辺リガ、良イト思ワレマス』

 

 着いたのは水草や岩場の多い大きな川。

 

『デハ、コチラガ釣竿ト、ルアー、ニ、ナリマス』

 

 渡された釣竿は良い感じにしなる白銀一色の物。

 ルアーは片手で隠れる程のキャタピールアー。

 

『コノ、ルアー、ガ、シロー様ガ釣ロウト、思ワレテイル、ポケモン、ノ、食イ付キガ良イデス。更ニ、ソノ、ポケモン、ノ、好ム匂イモ、出ルヨウ、細工シテ、オキマシタ』

 

 …ガンタは俺の全てを熟知してるの?

 まあ、別にいいんだけど。

 

「釣れるといいですねー」

 

 ヒマナッツとラルトスはガンタが用意してくれた折りたたみ椅子に座らせている。

 折りたたみ椅子だけでなく、テーブルや日差し避けのパラソルに俺の分の椅子まで用意し、いつでも休憩出来るように準備してくれた。

 

「ヒマー!」

 

「ラル!」

 

 釣り竿を構える俺に後ろから声援を送ってくれる天使達。

 子供に良いとこ見せようとする父親ってこんな気持ちなんだろうなー。

 

「では、いきますよー」

 

 構えた竿を軽くしならせて岩場のポイントにキャスティングする。

 後は揺らしたりしながらリールを少しづつ巻いて掛かるのを待つだけ。

 掛かるまでの時間で釣れてからの事を考えないと。

 

『シロー様、獲物ガ来マシタ』

 

 考える間もなく来ちゃったかー。

 そして、ガンタさん獲物て。

 

「早くない?」

 

『私ガ作ッタ竿ト、ルアー、デスヨ?』

 

 当然だ、と言いたいんですね。

 

「うわ、もうこれ本格的に食い付いてますよ。まだどうやってゲットするか考えてないんですけど」

 

 右へ左へ激しく引っ張られる。

 

『取リ敢エズ、岸へ釣リ上ゲレバ、何トデモナルカト』

 

 本当に?

 信じちゃいますよ?

 

「よい…っしょーっと!」

 

 技術も何もなしの力技で竿を引っ張り、ルアーに食い付いたままのポケモンが宙を舞う。

 

「ラルー!」

 

「ヒッマー!」

 

 盛大に釣り上げると、大はしゃぎの御二方。

 岸に上がったポケモンは薄い土色の身体にボロボロの青い尾鰭。

 

「ヒ、ヒ!」

 

「見事にヒンバスですねー」

 

 一発で釣れるとは。

 さて、これからどうしたもんか。

 一応、モンスターボールはガンタから貰っているけど、いくら何でもこのまま投げても入らないよねー。

 

「ヒッマ、ヒマー!」

 

「ラル!?」

 

 元気の良いヒマナッツの鳴き声が聞こえたと思ったら、今度はラルトスの驚いた声が聞こえた。

 直ぐにヒンバスからラルトス達に視線を移すと、ヒマナッツが椅子から飛び降りてヒンバスに飛び跳ねながら近付いているのが見えた。

 静止を呼び掛けるより前にヒンバスに辿り着いたヒマナッツは頭の葉っぱを緑色に光らせた。

 

「ヒーマー!」

 

 その光はヒンバスも包み、ヒマナッツの葉っぱに光が吸収されていく。

 

「すいとる、ですね」

 

 動きの鈍っているヒンバスに一方的に攻める。

 ヒマナッツ、恐ろしい子…。

 

「ヒ…」

 

「ヒマヒマ!」

 

 ヒンバスが目を回し、ヒマナッツが勝利を飛び跳ねて喜ぶ。

 そのまま飛び跳ねて来たヒマナッツを受け止め、撫でる。

 

「勝手にバトルをしては駄目ですよ」

 

「ヒマヒマ!」

 

「ああ、ラルトスみたいにお手伝いがしたかったんですか」

 

 何て健気な。

 

「ありがとう、ヒマナッツ」

 

「ヒッマ!」

 

 もしかしてメロメロも覚えたかな?

 俺専用の。

 

「では、ヒンバスをゲットしましょうか」

 

「ヒマヒマ」

 

 小さいサイズから膨らませたモンスターボールをヒンバス向かって投げる。

 ダウンして動かないヒンバスにモンスターボールが命中し、中へ入った。

 ラルトスの時と同じくボタンが赤く点滅しながら揺れる。

 そして、それが収まる。

 

「ヒンバス、ゲット」

 

「ヒッマ!」

 

 予想外に上手くいった。

 

「ラルー」

 

 寄って来たラルトスがジャンプして俺の肩にぶら下がった。

 

「新しい仲間ですよ」

 

「ラルラル!」

 

 にこっと笑って喜んでくれる。

 頰を寄せると嬉しそうにラルトスも寄せてスリスリされた。

 鼻血を我慢し過ぎて目から溢れてきそうなんですけど…。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。