ポケモン世界に転生したので好き勝手に生きてみる   作:にわか党

8 / 37
0008

「ガンター、ヒンバスを出しても大丈夫?」

 

『ハイ、外傷ハ無イ為、コノ、オボンノ実ヲ与エレバ、回復スルハズデス』

 

 今日もどこから出したか分からなかったオボンの実を受け取った。

 

「ショッピングモールで見掛けた物より大きいような…」

 

『今朝、島デ採ッテ来タ物デス。神様ガ御創リニナッタ島ノ物デスノデ、大キサ、味、効力、ドレヲ取ッテモ、他ノ物ヨリ上ナノハ当然デス』

 

 さいですか。

 まあ、良い物なら文句は無いんですけどね。

 

「ヒマ! ヒマ!」

 

「はいはい、直ぐ出しますから」

 

 ヒマナッツの催促でモンスターボールに入っているヒンバスを川に出した。

 

「ヒ…ヒ…」

 

 半身で浮かんでグロッキー状態。

 何かすいませんね、ウチの子が。

 

「さあ、このオボンの実を食べて下さい。元気になりますよ」

 

「ヒ…」

 

 服が濡れるのも構わず川に入り、ヒンバスの口にオボンの実を千切って入れた。

 ヒンバスの口が動き、再び開く度にオボンの実を入れていく。

 

「ヒ、ヒ、ヒ!」

 

「元気になった様ですね」

 

 勢い良く飛び跳ねて水飛沫を上げた。

 わー、濡れるー。

 

「ええっと…、シローです。今日から宜しく御願いしますね」

 

「ヒ、ヒ!」

 

 再度、目の前で跳ねられて頭から水を被った。

 これは拒否ではなくヒンバスなりのあいさつのようだ。

 実際、鼻頭を撫でると甘えてくる。

 

「では、ポケモン図鑑で調べさせてもらいますね」

 

 ヒンバスにポケモン図鑑をかざす。

 

『ヒンバス』

性別:♀

特性:すいすい

技:たいあたり、あまごい

 

「特性と相性の良い技を覚えているんですねー」

 

「ヒ、ヒ、ヒ!」

 

 随分と甘えるのが好きな性格の様で、今も擦り寄って来ている。

 それとも余程さっきのオボンの実が気に入ったとか?

 ありそうですな。

 

「ラルトスも濡れてしまいましたね」

 

「ラルー」

 

 肩にいたラルトスも一緒に水を被ったが、気持ち良かったらしい。

 ヒンバスは川でそのまま泳がせておく事にし、岸へ上がる。

 

『シロー様、暫シ、ソノママデ』

 

 動くなと言うなら動きません。

 

『終ワリマシタ』

 

 何が、と聞く前に気付いた。

 服も髪もラルトスも完全に乾いてる。

 

「ラルラル!」

 

 ラルトスを折りたたみ椅子に座らせ、俺も休憩にする。

 特に疲れてないけども。

 既に椅子に戻っていたヒマナッツは疲れたのかお昼寝中。

 寝顔も可愛いです。

 

『シロー様、御茶ヲ、ドウゾ』

 

「ありがとう」

 

 ガンタから受け取った御茶を飲みながらこれから何をしようか考える。

 今日は一日中ヒンバス釣りで潰れると思っていた。

 他には何も考えていなかったりする。

 

『他ノ、ポケモン、ヲ、ゲット、為サレバ、宜シイノデハ?』

 

「考えてる事は筒抜けなんですね。でも、そうなりますよねー」

 

 他のポケモンも是非ゲットしたい。

 

「まあ、ヒマナッツが起きるまではダラダラしましょー」

 

「ラルラル」

 

 俺は椅子の背もたれに背中を預けてグデーっと座る。

 その俺の膝の上にちょこちょこ寄って来たラルトスが乗って同じ様な座り方をする可愛い。

 

「寝ちゃいそうですねー」

 

「ラルー」

 

 寝てもガンタがいれば安心。

 例え、ミサイルが来ても音も無く処理してくれそうだし。

 

「休憩中のところ失礼。少しいいかな?」

 

 ラルトスとまったりしているところに背後から声を掛けられた。

 座った状態で振り向くと、黒髪ショートカットで俺と同等かそれ以上の背丈のボーイッシュな印象を受ける女性が立っていた。

 目付きが鋭いが、それ以上に印象的なのはウインドブレーカー越しでも分かる二つの膨らみ。

 

「ええ、少しと言わず、宜しければ座って一緒に御茶でもいかがですか?」

 

「ありがとう、頂くよ」

 

 俺が御茶に誘う前にガンタが用意した椅子を勧めると座って頂けた。

 昨日に続いて今日も美人と出会えるとは…。

 これはあれだ。

 きっと神様が俺のリアルラックを激上げしてくれたんでしょーな。

 

「美味しいよ」

 

『恐縮デス』

 

 ガンタならきっと百均で買っても同じ味に出来ましてよ?

 

「俺の名前はシローといいます。それで、俺達に何か御用でしたか?」

 

「ああ、そうだった。私はオウカ。これでも一応はプロのコーディネーターなんだ」

 

「コーディネーターというと、ポケモンコンテストの?」

 

 あのリボンを集めていくやつね。

 

「いや、そっちはアマチュアの人達の大会。プロは出場出来ないよ」

 

「そうなんですかー」

 

 確かに成りたてのトレーナーも出場してるくらいですしね。

 

「なら、プロのオウカさんは凄い人なんですねー」

 

「まだまだ新米だけどね」

 

 微笑むオウカさんを見てるとお姉様と呼びたくなってきますわ。

 

「で、今日は久々の休みにヒンバス釣りをしに来たんだけど、恥ずかしながら釣り自体初めてで全く釣れなくてね。そこに、たまたま君が直ぐにヒンバスを釣り上げた場面を目撃して、良ければ少しご教授願えないかと思って声を掛けたという訳さ」

 

 べ、別に逆ナンなんて期待してなかったんだからね。

 …すいません、ちょっと期待しました。

 

「そうですか。では、ガンタの出番ですね」

 

 俺よりもガンタの方が適切な事を言ってくれるはず。

 

『了解シマシタ。デハ、先ズ釣具ニツイテ。オウカ様ノ御持チノ竿ハ、確カニ良イ物デスガ、女性向ケデハ、アリマセン。明ラカニ馬鹿力デ釣リ上ゲル様ナ方向ケデス』

 

 俺みたいな奴の事ですね、分かります。

 

『ソシテ、ルアー、モ、ヒンバス、用デハ、アリマスガ、コノ場所ニハ、余リ適シテイル物トハ言エマセン。道具ニ関シテハ以上デス』

 

 ガンタさん、滅多斬りです。

 

「ショップで店員に進められるまま買ってしまった私が悪いね」

 

 ガンタの滅多斬りにも顔色一つ変えずに御茶を飲むオウカさんもぱないっすわ。

 

「俺の竿とルアー貸しましょうか?」

 

「いいのかい? 随分と高級な物だと思うけど」

 

 やっぱりそう見えますか。

 何しろチートそのものみたいな奴が作った物ですからね。

 

「どうぞ、どうぞ」

 

 椅子の横に立て掛けておいた竿をオウカさんに渡してあげる。

 

「有難く使わせてもらうよ」

 

 席を立つオウカさんを追う。

 いや、釣り初心者らしいですし、ここは俺が手取り足取り完全密着で教えないとね?

 立ってラルトスを肩に乗せようと持ち上げると、何故かさっきヒンバスにあげたオボンの実を持っていた。

 ガンタに貰ったんだろうけど、いつの間に…。

 俺があげたかった、という本音は仕舞ってそのまま肩に乗せた。

 

「ラルー!」

 

 美味しそうに頬張るラルトスの可愛さギャラクシー。

 

「釣る前からポケモンを出してバトルの準備をしておいた方がいいですよ」

 

 そのまま釣ろうとしているオウカさんに神様知識を振りかざしてみたり。

 

「ああ、釣る事しか頭になかったよ」

 

 少し抜けてる人なのかな?

 オウカさんがモンスターボールを取り出し、中からポケモンが出て来た。

 

「フラーイ!」

 

「フライゴンですか」

 

「私の一番のパートナーだよ」

 

 いいなー、フライゴンいいなー。

 次はナックラーをゲットに行きたくなってきた。

 

「フライ?」

 

 滞空していたフライゴンが俺達の前まで来てラルトスが持つオボンの実を凝視している。

 

『シロー様、コレヲ』

 

 音も無く背後に立っていたガンタから受け取ったのはラルトスが持っているのと同じオボンの実。

 

「フライゴンにあげてもいいですか?」

 

「何から何まですまないね。いつもはそんなに食い意地の張った子じゃないんだけど」

 

「ウチで採れる物は他とは比べ物にならないですから」

 

 ですよね、ガンタさん。

 

「フラーイ!」

 

 オボンの実を頬張り、尻尾を左右に激しく振って嬉しそう。

 代わりと言っては何ですが、ちょっとだけ撫でさせてもらえません?

 

「フラー」

 

 許可を得て首辺りを撫でる。

 オノンドも可愛かったし、ドラゴンタイプは可愛いのばかりですなー。

 

「君はポケモンに好かれ易いみたいだね」

 

 もしかして神様がそんな感じの力をくれたのかも。

 取り敢えず、川にいるヒンバスは間違って釣られないように今の内にモンスターボールに戻しておきました。

 先ずはキャスティングから思い切り竿を振り被ってるオウカさんに教えますかね。

 

「そんなに振りかぶらなくて大丈夫です。今、オウカさんがやろうとしたみたいにルアーを水に投げ入れる事をキャスティングと言うんですけど」

 

 オウカさんから竿を受け取る。

 

「こういう感じでしならせて、その反発力で押し出すようにするとルアーが綺麗に飛んで行きますよ」

 

 前に見た釣り漫画で言ってました。

 

「わかった」

 

 竿を渡し、オウカさんがキャスティングするのを見守る。

 

「ふっ」

 

 ルアーが綺麗に飛び、岩場に入った。

 あれ?

 俺より上手くないです?

 

「おお! 凄いね、ちゃんと狙った場所に行ったよ! シロー君の言った通りだ」

 

 いや、多分凄いのは貴女でしてよ。

 

「オウカさん、直ぐにヒットすると思いますから心の準備をしておいて下さい」

 

「いや、幾ら何でもそんなに直ぐには…っ!?」

 

 オウカさんの持つ竿の先が少し下がった。

 

「シ、シロー君! 来た! どうすればいい!?」

 

「まだです。もっと食い付いてから竿を立てて下さい」

 

「わ、わかった…!」

 

 勝気そうな顔の人が焦るとこってギャップ萌えしますわー。

 

「来た!」

 

 何度かの小さな反応の後、大きく竿の先が下がり、オウカさんが竿を立てた。

 

「これは結構、重いな…!」

 

 見ていて不安になるくらいフラついている。

 

「焦らないでリールを巻いて下さい」

 

 さりげなく、オウカさんの後ろから抱き締めるように竿を支えて手伝う。

 断じてセクハラではないのですよ?

 

「シロー君! ドンドン重くなる!」

 

「もう少しで釣れそうですね」

 

 俺の言葉通り、水面から影が見えてきた。

 軽く引っ張ってみるとルアーが外れ、ヒンバスが水面から飛び出した。

 

「ヒ、ヒ、ヒ!」

 

 あら、ヒンバスさん少し怒ってらっしゃる様で。

 バトルする気で睨んできた。

 

「シロー君、ありがとう。ここからは私とフライゴンでやるよ」

 

 もう少しくっついていたかった…。

 しぶしぶオウカさんから離れ、後ろに下がる。

 

「御礼に私のバトルで君を楽しませてみせよう」

 

 立ってる姿だけでも充分、楽しませてもらっています。

 

「フライゴン、たつまき!」

 

「フラーイ!」

 

 フライゴンの力強く羽ばたく。

 水面から顔を出していたヒンバスを中心に風が集まり、上へ向かう気流となって竜巻を生む。

 更に、その竜巻は川の水とヒンバスを巻き込んで小規模なサイクロンへと昇華した。

 

「凄いですねー」

 

「ラルー…」

 

 迫力のある光景にラルトスも驚いている。

 

「まだこんなものじゃないよ。あれに飛び込んでばくおんぱ!」

 

「フラー!」

 

 フライゴンがサイクロンの中へ飛び込んだ。

 その直ぐ後にここまで響く大音量と衝撃。

 発生源のサイクロンが爆発し、ヒンバスと水飛沫が舞う。

 

「仕上げだ、かみなりパンチ!」

 

 水上にいたフライゴンが真上にいるヒンバスへ急上昇で接近、その右手からは紫電が迸る。

 

「フーラー!」

 

 宙空のヒンバスに炸裂した渾身のかみなりパンチ。

 パンチの威力と電流のダメージでヒンバスは戦闘不能で岸へ落ちる。

 それだけでは終わらず、ヒンバスに流れた電気は弾けて周りを舞う水飛沫へ流れて更に弾けた。

 

「フラーイ」

 

 弾けた水飛沫と電気が紫の光の雨を降らせて滞空するフライゴンをまさに精霊の様に輝かせている。

 

「これにて終幕。どうだろう、楽しんで頂けたかな?」

 

 左手を前に持ってくるボウアンドスクレイプでお辞儀をするオウカさんマジイケメン。

 しばらく、俺達はオウカさんとフライゴンへ拍手喝采を送った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。