ポケモン世界に転生したので好き勝手に生きてみる 作:にわか党
「いやー、紫のかみなりパンチなんて初めて見ましたよ。凄く綺麗でした」
かみなりパンチ自体、生で見るの初でしたけどね。
オウカさんのショーが終わった後、再び椅子とテーブルに着いて休憩していた。
「ありがとう。あの色を出せるようになるまでは大変だったけどね」
「フラーイ」
オウカさんが苦笑いしてフライゴンを撫でる。
どちらも羨ましい。
「ヒマヒマ!」
「ええ、また見たいですね」
ばくおんぱの大音量で目を覚ましていたヒマナッツもフライゴンのかみなりパンチを目撃していた。
今は俺の膝でラルトスと仲良く寛いでます。
「喜んでもらえて嬉しいよ。ヒンバスも無事ゲット出来たしね」
オウカさんが、さっき捕まえたヒンバスの入ったモンスターボールを片手で遊ばせる。
俺も遊ばれたい。
「ヒマー」
膝のヒマナッツが俺の腹にもたれ掛かり、頭の葉っぱがしなっとなる。
「あらー」
「ヒマナッツ、どうかしたのかな?」
「お腹が空いた様です」
今度は俺が苦笑いになる。
『昼食ナラ、コチラニ』
俺の背後に控えていたガンタがバスケットを取り出していた。
「…今のどこから取り出したのかな? 私には全く見えなかったんだけど」
「気にしたら負けです」
俺にも分かりません。
「オウカさんも一緒に食べませんか? ガンタの料理は凄く美味しいですよ」
「それは是非食べてみたいね。昼食は適当に済ませようと思ってたから有難いよ」
やっぱりリアルラックもチート仕様。
「ガンタのブレンドしたポケモンフーズも美味しいからフライゴンもきっと気に入りますよ」
「フラーイ!」
嬉しそうな鳴き声でスリスリされた。
やばい、ヘブンな表情になりそうだった。
「ヒマナッツ、空腹のところ悪いんですが、あまりかおりを使ってもらえますか?」
「ヒッマ!」
急な要求にも笑顔で応えてくれた。
可愛らしくヒマナッツの葉っぱが揺れ、甘い良い匂いが漂う。
しばらく待つと草陰から野生のポケモンが顔を出した。
寄って来たのはジグザグマとその進化形のマッスグマ、ラクライ、キャモメ、トロピウス。
予想よりも多くて嬉しい。
「一緒に食べませんか?」
ガンタからポケモンフーズの載った皿を受け取り、野生のポケモンの前に差し出す。
「ピゥ」
首の長いトロピウスが先ず置かれた皿に近付いて来てポケモンフーズを食べた。
「ピーウ!」
嬉しそうな鳴き声で他の野生のポケモン達も寄って来て食べ始めた。
「美味しいですか?」
「ラーイ!」
「キャモ!」
「ッグマ!」
こんなにポケモンに囲まれる生活を送りたいものですたい。
「薄々感じてはいたけど相当なお人好しのようだね、君は」
野生のポケモン達を愛でてテーブルに戻ってきたら言われてしまった。
「大勢で食べた方が美味しいですよ」
「そうだとしても、普通は態々、野生のポケモンを呼び寄せて御飯をあげるなんてしないと思うよ」
バトルなしでゲット出来るかもしれないという打算もありますがねー。
「まあ、いいじゃないですか。楽しいんですから。それよりこっちも昼食にしましょうよ」
「うん、そうだね」
ヒマナッツとラルトス、フライゴンに御飯をあげてから、ガンタから受け取ったバスケットを開けた。
中には色とりどりの中身が挟まれたたくさんのサンドイッチ。
「どうぞ、食べて下さい」
「じゃあ、お先に頂きます」
先にオウカさんに勧め、サンドイッチを頬張る姿を見る。
女性が食べる姿って良くないですか?
「美味しい! いや、これ本当に美味しいよ!」
来ましたこれ。
この素敵笑顔が見たかった。
本当にご馳走様です。
「…私の顔に何か付いてるのかな?」
しまった。
ちょっと見過ぎてしまったようだ。
「左側に付いてますよ」
実は本当にソースが付いていたりする。
助かった。
そして、いそいそとこれもガンタが用意した紙ナプキンで拭いている姿が可愛らしいのですよ。
「ほ、本当に付いてるとは…」
赤くなった顔がまたトキメク。
「俺も頂きます」
オウカさんが食べたサンドイッチと同じ種類の物を手に取り、頬張る。
「うん、美味しいです」
ついでに俺も態とソースを付けてみたり。
「ふふ、君も付いてるよ」
流石に態とだとバレている様子だが、それも含めて可笑しそうに笑ってくれた。
それだけでなく、オウカさんが拭いてくれるという嬉しい誤算。
優しいっすわー。
「ラルー」
「ヒマヒマ」
ヒマナッツとラルトスの声に視線を移すと、既にポケモンフーズを食べ終え、お代わりを要求された。
『食後ノ、デザート、トシテ、ポケモン、ニハ、ポフレ、ヲ。シロー様、オウカ様ニハ、フルーツ、ヲ、用意シテオリマス』
ガンタに死角なし。
俺達の前はフルーツの皿が、ポケモン達には様々なポフレが山済みになった木皿が差し出された。
「皆さんもどうぞ」
「キャモキャー」
ポフレの登場で周りに寄って来たキャモメにポフレをあげた。
クチバシで器用に掴んで口に入れ、嬉しそうに翼を伸ばしている。
「シロー君はポケモンが大好きなんだね」
微笑ましいものを見るような目で見られた。
「当然です。こんなに可愛いんですよ?」
何を当たり前の事を。
「ふふ、そうだね」
微笑えむオウカさんも同じくらい可愛いですがね。
そっちは撫でられないからポケモン達とイチャつきます。
サンドイッチを食べ終えたオウカさんも野生のポケモン達と戯れ始めた。
「あ! こら、くすぐったいよ」
ラクライがオウカさんの顔を舐めている。
ぐぬぬ…羨まし過ぎる。
「ラルー」
ラクライに羨ましい視線を送っていた俺の脚をラルトスが軽く叩いた。
「ラルラル」
「ああ、朝のあれをやりたいんですか?」
「ラル」
ラルトスが可愛らしく頷いた。
練習熱心な良い子です。
「シロー君、何かするの?」
「技の練習です」
ヒマナッツやオウカさん、野生のポケモン達から距離を取る。
「この辺りなら大丈夫でしょう」
「ラッル!」
ラルトスが両手を前に、集中する。
朝と同じ様に光が俺を包み、身体がゆっくりと地面から離れていく。
今朝の特訓の成果もあり、少しはコツを掴めた様子。
何度も飛ばされた甲斐があった。
「おっと!」
子供の成長を喜ぶ親の気持ちに浸っていたら飛ばされました。
進行方向には皆がいる。
身体を捻って体勢を立て直し、回転して速度を殺す。
「よっと」
オウカさんの目の前で着地を決め、最後に両手を伸ばして決めポーズ。
「ヒマヒマ!」
はしゃぐヒマナッツを皮切りに、オーディエンスのポケモン達から歓声を貰った。
照れますわー。
「君は、もしかして忍者か何かなのかな?」
若干、呆れた顔で溜め息を吐かれた。
「結構、楽しいですよ。ラルトスの練習にもなりますし、一石二鳥ですね」
更に溜め息を吐かれた。
あんまり溜め息を吐くと幸せが逃げて行きますよ?
「練習は良いけど、シロー君じゃなくて何か物を使えば良いんじゃないかな? もし君が怪我をしたらラルトスも悲しむだろう」
やだ、心配されちゃった。
「確かにそうですね。だから、これは俺の自己満足です。ラルトスが頑張ってる時に見てるだけじゃなく、役に立ちたいんですよ」
我が儘で申し訳ない。
「…困ったトレーナーだね。でも、そういうの嫌いじゃないよ」
嫌いじゃない頂きました。
もう好きでいいんじゃないですかね?
「では、もう一度やってきます」
「気を付けてね」
手を振るオウカさんに俺も手を振り返す。
ちょくちょく可愛いな、この人。
ラルトスのいる場所に戻り、練習を再開する。
繰り返す度にコントロール出来る時間が伸びている。
真剣なラルトスもやっぱり良いなー。
「練習する前よりもずっと上手くなりましたね」
「ラルラル!」
褒めて伸びる子なんです。
まあ、俺が褒めたいだけなんですが。
『シロー様、何カ来マス』
俺なんかより余程、忍者並の隠形で背後に忍び寄っていたガンタからの警告。
その直ぐ後に草陰から何かが勢い良く飛び出した。
「コル、コルッ!」
青紫の体色に鋭く吊り上がった目、尻尾の先には強靱そうな爪がある。
「スコルピですね」
それも何故か興奮状態の。
今も爪を振り回して周りを威嚇しまくってるし。
「あのスコルピ、かなり興奮してるみたいだね」
突然の状況にも冷静な態度のオウカさんが隣まで来てくれた。
「説得は恐らく応じないだろうね。少々、手荒だけど…フライゴン!」
「フラーイ!」
バトルで戦闘不能にして一度鎮めるつもりの様ですねー。
確かに、あのままだと野生のポケモン達にも襲い掛かるかもしれないと思い、下がっているように警告しようと振り向く。
「あれ?」
今の今までポケモン達で賑わっていたのに、そこにはヒマナッツが椅子にいるだけだ。
目の錯覚ってやつですかね?
「野生のポケモン達ならスコルピに驚いて逃げてしまったよ」
なん…だと…。
折角、打ち解けていたのに…。
「がっかりするのは後にして、今はあのスコルピを大人しくさせないと」
「そうですねー…」
テンション下がっちゃうなー。
「取り敢えず、動きを止めないと…フライゴン!」
「はい、ストップ」
フライゴンに技の指示しようとしていたオウカさんを止める。
「バトルは必要ないみたいです」
「どういう意味かな?」
暴れるスコルピの苦しそうな鳴き声を聞いて分かった。
「ガンタ」
『ハイ、コチラヲ、御使イ下サイ』
言わずとも理解していたガンタから液体の入った片手で持てる程の容器を受け取った。
中身は多分、キズぐすり。
ガンタの事だから自前で調合したやつかな?
「では、行ってきます」
「あ、ちょっと!?」
オウカさんの静止をやんわり躱し、暴れているスコルピへ近付く。
「コル!」
近付く俺に気付き、触肢と尻尾の爪を向けて威嚇する。
「怪我をしているんでしょう? 治療するので近付かせて下さい」
ここからはまだ見えないけど、恐らく脚のどこかを怪我している。
「コル、コル!」
近付くな、と更に威嚇された。
そう言われても近付かないと治療出来ないんだよねー。
なので、気にせず近付く事にした。
「コルッ!」
スコルピの尻尾の爪が光り、そこから光の槍が発射された。
ミサイルばりですかね?
まあ、避けます。
「コル!」
もう一発来た。
避ける。
「コルッ!?」
天使様が創った身体の身体能力なら避けるくらい軽いものですよ。
なんて余裕かましていたら、今度はいっぱい来た。
あらー。
「ラル!」
数発一気に発射されたミサイルばりが途中で止まる。
「コ…ル…!」
同時にスコルピもピクリとも動かなくなった。
ラルトスがねんりきで押さえてくれているのだ。
コントロールが苦手な筈なのに、それなりのスピードで迫っていたミサイルばりを止めるなんて…。
それも俺の為に。
ニヤけそうになる顔を必死に堪えるのが厳しい。
「ちょっと失礼しますねー」
ねんりきで動けないスコルピに駆け寄り、身体を調べて傷のある箇所にキズぐすりを吹き掛ける。
小さな傷は直ぐに治り、脚の傷は一日安静にしていれば治りそう。
「ラルトス、もう良いですよ」
「ラ、ルッ!」
ねんりきで縛っていたミサイルばりを空へ飛ばし、治療の終わったスコルピは拘束が解かれて自由になった。
「コル…?」
「もう痛くないですよ」
「コル、コル!」
ぴょん、とジャンプしたスコルピに飛び付かれ、咄嗟に受け止めた。
スコルピなりに感謝を伝えようとしているみたい。
身体は硬いけど、これはこれで可愛い。
「暴れてお腹が空いていませんか? あっちでポケモンフーズを貰えますよ」
「コル!」
ポケモンフーズの載った皿を持って既にスタンばっていたガンタを指差すと、頷いて嬉しそうに向かって行った。
ちょこちょこ動く脚も、なかなか良いですな。
「無茶をするね」
「男は無茶をしたがる生き物なんです」
すぐ傍に来て、またまた苦笑いのオウカさんに戯けて返す。
「確かにシロー君を見てると、そうなのかもしれないと思えてくるよ」
褒められてる?
これは褒められてますよ、俺。
照れますな。
「それにしても、スコルピの怪我は少し変でしたね」
「私はどうやってスコルピの怪我に気付いたのか先ず聞きたいけど、何が変なのかな?」
「怪我の場所、状態から見てバトル等で付いた傷じゃないんですよねー」
もちろん、分かったのは神様知識のおかげ。
「何処かで何かしらの事故に遭った、という事は?」
「いやー、それにしては作為的と言いますか…。恐らく、仕掛けられた罠に掛かって負った怪我ではないかと」
「察しが良いな、ガキ」
スコルピが飛び出して来た方の草陰から声がした直後、俺とオウカさんのいる場所に光線が襲来して爆発した。