どうやら世界は、マッ缶のように甘くは出来ていないらしい   作:さめのひと
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オシゴトガツライ

ヤスミ、ホシイ


最近そんなことばっかり考えてるさめのひとです。
皆さんおはこんにちばんわ。

短めですが更新します。


第10話+Side Story

【第10話】

 今は昼休み。

 俺はいつものように、マイベストプレイスで昼食をとっていた。

 

 すると

 

 『え~、2年F組の比企谷八幡。今すぐ生徒指導室まで来るように』

 

 …校内放送使って呼び出された。

 そりゃないぜ平塚先生。

 

 まぁ、ボーダーとしての活動を阻害されない昼休みであれば問題ないか、と思い直した俺は

生徒指導室へ向かった。

 

 

 

 

 「すまんな、飯時に呼び出したりして。だが、昨日の事を思えば放課後では君と話をするのは

難しいと思ったんだよ」

 

 一番最初に詫びから入るとは。

 これを無碍にするのも少し憚られるな。

 

 「いえ、俺も時間がなかったとはいえ押し付けるような説明になったのは悪かったです。

申し訳ありませんでした。」

 

 年上に礼節をもって接されるのであれば此方も礼節をもって接するのが筋だろう。

 というわけで、俺もまず詫びから入ることにした。

 

 「それで、比企谷。言いづらいかもしれないが、君の両親は何をしているのかね?子供が家計

に貢献しなければならない程君の家が切迫している、というのであれば私としては両親への

指導も検討しなければいけない。君が部活そのものを嫌っていたとして、それを差し引いても

君の昨日の行動を見ると、解せない点が多くてな。」

 

 …このことから聞かれるとはな。

 予測していたことではあるが、この人は俺の両親がいないことを把握していなかったらしい。

 

 まぁ、ならこの前のやりとりも分からなくはない、な。

 

 「例の大規模侵攻で二人ともいなくなりましたね」

 

 俺としては、そこは別に隠したいとも思わないので、あっさり事実を告げた。

 

 すると、平塚先生の顔が軽く青ざめた。

 かと思うと、いきなり立ちあがり

 

 「済まなかった」

 

 と頭を下げてきた。

 

 「ちょ、とりあえず頭を上げてください!」

 

 俺がそういうと、居住まいが悪そうに頭を垂れたまま、椅子に座り直した。

 

 俺としては、とりあえず気になることが一つあるので質問をぶつけてみた。

 

 「…先程俺に頭下げたのはいいんですが、何に対して俺に謝罪したかったんですか?」

 

 この回答でこの先生の底が知れる気がする。

 

 俺は、なんとなくそんな気がしていた。

 

 「勿論、今の質問をしたことに対する謝罪というのもあるが、君の都合を無視して、部活を

押し付けてしまったことに対する非礼も含めて詫びたいと思ってな」

 

 お、この先生意外と器が広い先生なのかな?

 過去のことも遡って謝ってくれる目上の人間というのは存外少ないものである。

 

 「まぁ、ふざけた作文書いたのは俺のほうですし、俺の家の状況を知らなかった先生に非は

ないですよ。俺の家の状況を分かって頂けたなら、今のやり取りを見る限り、今後無理に俺に

部活を勧めたりだとかはしないでしょうから」

 

 まぁあの作文の再提出もまだしてないし、防衛任務がない日なら校内清掃くらいならやっても

いい気はするけどな。

 

 「そのことなんだが、担任としていくつか聞きたいことがあってな」

 「と、いいますと?」

 

 大方バイトの内容の話とかな気はするけどな。

 

 「流石にフリーペーパーに掲載されているようなバイトでは生計は立てれまい、と思ってな。

君は昨日、”家族の面倒を”と言っていたし、それも考慮すると非合法なバイトをしている

可能性も考えられる、というのが普通の大人の考え方だ。君のその目や考え方を汲み取ると

可能性としては低そうだが、教師としてバイトの内容は聞かざるを得ない、という訳だ」

 

 そう言われて俺は納得してしまう。

 

 そして、素直に心配してくれるこの先生、案外情が深そうだなとも思ったし、この人は”人”を

よく見ている。観察眼に優れているとも言い換えれるが。

 

 まぁ、そんな訳で。

 先生がしたような質問に対して、俺はテンプレ的回答を既に用意していた。

 

 「なるほど、先生の仰ることは分かりました。それを踏まえて現状の生計の立て方を説明させて

もらいます。まず、俺と妹はボーダーからの被災助成金を受け取っています。それに加えて

俺はボーダー内での事務と雑用をバイトとしてやってますんで、先生が先に仰られたような

非合法なバイトではありませんよ」

 

 …ボーダーから金をもらって生活してる、という意味では間違ってない。

 

 戦闘員か非戦闘員かの差でしかないから、ほら。

 

 ハチマン、ウソツカナイ。

 

 「そんな求人の話、ボーダーと提携してるこの学校内ですら聞いたことないが…?」

 

 此方を疑うように眺めてくる平塚先生。

 

 …この辺のフォローは、俺が中学生のときに、ボーダー隊員であることがキッカケでトラブルが

起きた時に忍田さんに”何か尋ねられたら、こういうことにしておいてください”的に話を付けて

あるので、調べられる分には問題ない。

 

 「まぁ、そんなに気になるのであればボーダー側に問い合わせてもらっても結構ですよ。

実際、被災者が未成年の場合にのみ適応される職業斡旋みたいなモンですから、一般には

公開されてない求人ですし、疑うのも無理はないと思いますけど」

 

 ということにしてある。

 

 「なるほどな、ただ被災者に保障するだけじゃなく、そういった形で自立を促す措置もボーダー

にはあるのか」

 「斡旋には一定の基準があるっぽいですけどね。職業斡旋とは言えど、ボーダー内の機密

にも若干触れますし、適性検査とかもありますから」

 

 そんな話をしているうちに、予鈴のチャイムが鳴り響いた。

 

 「君の周りを取り巻く環境の概要は分かったよ。知らなかったとはいえ、無理を押し付けて

申し訳ない」

 「知らないのは俺もひた隠しにしてきたことなんでしょうがないですよ」

 

 失礼します、と最後に付け加えて俺は生徒指導室を後にした。

 

 

 

 そんな昼休みを過ごし、学校が終わった今、今日も元気に社畜ライフを楽しむべく

俺はボーダー本部へ向かっていた。

 

 すると

 「あれっ?比企谷じゃん。久しぶりっ」

 

 金髪の学生が俺に話しかけてきた。

 それも挨拶と称して「ケェーッ!」とか言いそうな学生だな。

 

 「誰がいつそんなことしたんだよ…」

 「ナチュラルに人の心を読まないでくれますか、春原先輩」

 

 朋也さんの悪友の春原先輩とエンカウントした。

 

 「ってか春原先輩がこの辺うろついてるなんて珍しいですね。どうしたんっすか?」

 

 俺達は、歩きながら話す。

 

 「ここからもうちょっといったところに新しいゲーセンが出来るらしいからね。今日はサッカー

部休みだし、ランニングがてら遊びに行こうかなって思ってさ」

 「んで格ゲーでカモられるんすねわかります」

 「なぁに、大丈夫さっ!この日のためにファミ通の攻略本読み込んだからねっ!真・春原の

名前を新しいゲーセンに轟かせる時が来たのさ!」

 「大丈夫ですか?ファミ痛の攻略本ですよ?」

 「…きっとなんとかなるさっ!」

 

 別に春原先輩がゲーセンでカモられようがどうでもいいっちゃどうでもいいが、なんだかこっち

まで不安になってきた。ある意味春原先輩すげえな。

 

 「まぁ、俺や朋也さんはこれから防衛任務なんでお付き合いできないですけどまた今度結果

聞かせてくださいよ。ファミ痛の攻略本が効果的なのかどうか気になりますから」

 「ふっ。ファミ通の攻略本はバカに出来ないって証明してくるから顔洗って待ってな!」

 

 それただの洗顔じゃないですか。

 

 ふと気になったので腕時計に目を通すと、ワリと時間がやばかった。

 

 「じゃあ俺、そろそろ時間ヤバいんでいきますね」

 「比企谷、あの…悪いんだけどさ」

 

 なんだろう、なんかいやな予感がする。春原先輩ニヤニヤしてるし。

 

 「1000円、かしてく」

 「失礼しますね」

 

 俺は何も聞いてない。そう、聞いてない。

 

 後ろで「この薄情モノぉ~!」とか聞こえてるのはきっと気のせいだな。

 

 そう思い直し、俺は再びボーダー本部へと歩みを進めるのであった。

 

 

 

 「よう、比企谷。遅かったじゃねぇか」

 「比企谷君が時間ギリギリというのは珍しいですね~」

 「どこで道草食ってたのごみぃちゃん」

 

 三者三様の反応で出迎えられた。

 というか、小町はごみいちゃん呼びをやめなさい。

 

 「春原先輩とバッタリ会って、ちょっと話し込んでたから遅れる羽目に…」

 「とりあえず春原締めるか」

 

 朋也さん、血の気が多いんじゃないですかねぇ。

 

 「春原さんなら仕方ないね、お兄ちゃん」

 

 小町は小町でひどい。

 

 「まぁ、春原さんも悪気が合って引き止めたわけじゃないでしょうし」

 

 ゆきちゃんは流石である。

 器が大きすぎる。

 

 「まぁ、話し込んでた俺も悪いし、とりあえず朋也さんは春原先輩締めなくてもいいんじゃない

ですかね。あと小町、とりあえず明日にでも那須か熊谷に連絡してみるから」

 「お、りょーかい。楽しみに待ってるね!」

 

 そうこうしてるうちに、俺たちの受け持つ時間になった。

 

 「よし、じゃあ今日も元気にダラダラ社畜ライフを堪能しますか」

 「お前それ堪能する気ないよな」

 

 …朋也さんが何か言った気がするけどきっと気のせいだろう。

 

 そうだ、そうに違いない。

 

 きっとそうだろう。

 

 

 

【Side story:春原陽平①】

 

 

 「やっぱりファミ痛の攻略本は当てにならないなぁ」

 

 そうボヤキながら、僕は帰路についていた。

 

 「よっ。春原じゃねぇか」

 

 呼び止められた先に視線を向けると、有紀寧ちゃんの”お友達”の須藤さんがいた。

 

 「須藤さんじゃないっすか。ちわっす」

 「相変わらずチャラいなお前は…」

 

 後輩の葉山もこんな感じなのにチャラいってのもひどい話だ。

 

 「俺の後輩もこんな感じですし、そんなチャラくないと思うんすけど」

 「あ゙?」

 「ヒィィィッ!」

 

 有紀寧ちゃんの”お友達は”相変わらず怖い。

 

 こういう人達の姐御みたいな立ち居地の有紀寧ちゃんってなんだかんだ言っても只者じゃない

と僕はふと思うのだった。

 

 「んで、なんでコッチのほうにいるんだよ。確か春原の家ってこっちのほうじゃねぇだろ?」

 「新しいゲーセンできたんでそっちのほうに遊びに行ってたんすよ」

 「なるほどな。どーせ攻略本買ったはいいけどボコボコにされたってオチだろ?」

 

 ズバリ言い当てられた。

 

 「なんで分かるんですかねぇ…」

 「ハッハッハッ!カンってやつだな、こればっかは。あとお前の普段のチャラさ」

 「チャラさは関係ないっすよね!?」

 

 そんな抗議も、快活に笑い飛ばされて無かった事にされてしまった。

 

 「まぁ、ファミ痛の攻略本なら仕方ない気もするけどな」

 「あれ、なんで攻略本がファミ痛って分かったんですか?」

 「いや、お前ならファミ痛買うだろうなってなんとなく思ったからな」

 

 笑いながら言われてしまった…

 

 「とりあえず、今日はもう大人しく帰る事にするっす」

 「おう、またなカモ原」

 

 ものすっごいこといわれた気がするけど気の所為気の所為。

 

 そう思い込んで僕は、再び帰路についたのだった。




今回は平塚先生と春原くんの回でした。

サッカー部のクソ先輩,同期がいないため普通にサッカー部に所属しています。

この春原君は、エースでありストライカーでもあり、キャプテンではありません。

そんな春原っぽさも含めて、ある種「IFの春原」を堪能していただけますようこれからも精進いたします。







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