「さて、どうするかな」
ここはエリア24かつてイタリアと呼ばれていた。
数年前、イタリアはライが所属する帝国、ブリタニア帝国と戦争をし、そして破れ、国名を奪われただの数字になった。だがそれを受け入れる事が出来ない者達がいた。彼らはレジスタンスとしてブリタニアに細やかな抵抗をしていた。
ナイトオブラウンズになったライはその人物達の対応をまかされていた。
「シュナイゼル殿下に命じられた以上、断れはしないがこういうのは僕の主義に反するな……」
「しかし、相手には例の未確認のKMFがある可能性が高い以上それを使われる前に空爆で一網打尽にする方が良いのではありませんか?アッシュフォード卿」
相手はただのレジスタンス。ナイトオブラウンズであるライが来るほどの敵ではないはずだった。だが彼らはあるKMFを入手したと報告があったため、シュナイゼル殿下が用心の為に二人を派遣した。
『アマネセール』
スペイン語で「夜明け」を意味する名前を与えられていた機体は黒の騎士団のエース機『紅蓮ニ式』と同等の性能を有していると情報が入っていた。それを入手しているとなればたかがレジスタンスでも油断するわけにはいかなかったが……
「でもそれだと無関係な人間が巻き込まれてしまう恐れがあるみたいだし‥…やっぱり投降勧告をしてから要求を聞きたいんだけどダメかな?」
ライは周りのことを考えないでたてられたこの作戦を受け入れる事は出来なかった。たとえナンバーズといえど人間は人間、ライはその考えを捨てたくはなかったし何より戦闘を避けたかった。それがライがこの作戦をやりたくない理由だった……
「それは……なんと申し上げますか……」この部隊の士官が申し訳なさそうに答えた。するとライの後ろにある扉が開き、1人の女性が入ってきた。ライと同じ騎士服を纏い、ライとは違う色のマントを羽織っていた。
「我が儘は言わない約束でしょ。アッシュフォード卿」
「クルシェフスキー卿……」
彼女の名前はモニカ・クルシェフスキー
ライと同じナイトオブラウンズのひとりで、皇帝陛下よりナイトオブトゥエルブの称号を与えられていた。
この人物の身がライがこの作戦をやりたくない理由だ……
「貴方がやらないなら私がやります。」
彼女はそういうとライに視線を向けた。ライはその視線の意味を理解した。ナイトオブラウンズ同士は対等の立場だ。だからナイトオブラウンズは他のラウンズに命令する事が出来ない。だからモニカは目でライに訴えていたのだ。
「……わかりました。空爆で一網打尽ですね……」
ライは渋々了解した。
「……ごめんね……モニカ……」
そう言ってライは司令室を後にした。モニカはそのライの様子を見て胸が苦しくなるのを感じた
「……ここを任せても大丈夫かしら?」
「はっ!お任せ下さい!クルシェフスキー卿!」
そう言ってモニカは司令室を後にした。
モニカは駆け足で自分の大切な者の後を追った……
「待って!ライ!」
ライはゆっくりと振り返った……
「……なんだい?クルシェフスキー卿……」
そのライを見たモニカは悲しそうな顔をした。モニカはライの心情を察した。それに気が付いた彼女はある「ルール」を使うことにした。
「……今は誰も回りにいないわ……ライ……」
それは二人の中だけのルール……
同僚としてではない……男と女のルール……
二人きりの時は名前で呼ぶ……二人の間には隠し事は無し……そしてお互い苦しい時は支え合う……
まるで子供のような決め事……
「すまない……モニカ……頭では理解してるんだ……でも……」
全てを言い終わる前にモニカはライを優しく抱きしめた。
「大丈夫……貴方が出来ないなら私がやるわ……」
モニカはライの為なら何でも出来る……そう確信しているからライは彼女にやらせたくなかった……
「いや大丈夫だよ。僕はやらなきゃいけないんだ……ノネットさん達の期待に答えるためにも……君を守るためにも……」
ナイトオブラウンズになるときに覚悟したはずなのに、最近それが揺らぎ始めていた。だからこそライは逃げたくなかった。強くなるために……彼女を守るためにも……彼女をもう傷付けさせないために……彼女を傷付いた時も相手は未確認だった……当時は彼女とは上司と部下の関係だった……だが今は男と女の関係……かつて彼女が命を失いかけた時と同じ状況……不安で仕方なかった……
「……貴方は優しいわ。それは貴方の魅力の一つよ……でも、優しさも過ぎればそれはだだのお節介になるのよライ……私を信じて……私が貴方を信じているように……」
そう言ってモニカはライに口づけをした。唇と唇が触れるだけの優しいキスだった……
「必ず無事に帰ってくるわ。それに貴方は私の……私だけの騎士なんでしょ……なら私を守りなさい!これは命令よ!」
良く見ると彼女は震えていた……ライは気が付いた……不安なのは自分だけではないことに……
「分かったよ。君は僕のお姫さまだったね。命令なら仕方ない!君を守るよ。そして無事に帰って来るよ……モニカ……」
二人の顔が自然に近づき、再び唇を重ねた……