「時間です。アッシュフォード卿」
「全軍攻撃開始」
その言葉を皮切りにレジスタンスのアジト周辺への爆撃が始まった。予想外の攻撃にレジスタンスはうろたえ始めた。それを見たライは周辺に潜伏していた部隊に命令を下した。
「残存兵力の掃討を開始……敵性KMFの排除!及びレジスタンスの殲滅!」レジスタンスは突然の攻撃で他の部隊との連携がとれなくなった。空爆によりどうやら敵の指揮官も死んだようだ。指揮官を失なった部隊はもう部隊と呼べるものではなくただの烏合の衆になりさがった。それを見たライは自ら出陣することを決め、クラブがある格納庫に向かった。モニカは一足先に出陣したようだった。
「ランスロット・クラブ発艦する!」
ライは旗艦から発進し、自分も掃討作戦に参加し目の前にいるKMFを手当たり次第倒していった。
ヴァリスを撃ち込み、MVSで切り裂き、メッサーモードに切り替え相手に手刀を突き刺す。単純作業の繰返し……これはもう戦闘ではなく一方的な虐殺だった……
「一般人と無抵抗の人間は攻撃するな!!」
この一言がライの精一杯の優しさにだった。
アジト周辺のKMFを全て撃破し、ライはレジスタンスのアジトに突入した。かつてのスペイン軍が使用していた基地を要塞にしたアジト内部は意外にもそっけないものだった……
(この程度の戦力でブリタニアに歯向かうなんて……)
基地のなかはもぬけの殻状態だった。そんな中、ライはこの場所には不自然なコンテナを見つけた。近くには恐らくこの機体のパイロットであったものが転がっていた。空爆の衝撃で落ちてきた瓦礫に潰されて右腕しか形をとどめていなかった……右手にはコンテナの中身の起動キーが握られていた。女性らしい長い指でしっかりと……
(これが彼らの希望だったのか……動かなければただの鉄の塊だな……)ライは作戦本部がある旗艦に通信を入れた
「こちらナイトオブエイト。報告のあったKMFを発見した。回収部隊を……!?」その瞬間、瓦礫の物陰から弾丸が飛んできた。ライはブレイズルミナスを起動しその弾丸を弾き、弾丸がきた方向にクラブを向けた。そこにはカレンの紅蓮に似た機体がたっていた。異形の右腕、頭部にある昆虫のような角、ライは知っていた。なんどもその機体の資料に目を通し、シミュレーションで何度も闘った相手……モニカの命を奪いかけた憎き相手がそこにいた。
「こいつは……モニカをやった……そうかそちらから来てくれるとは探す手間が省けたよ!」
ライは自分の中でどす黒いものが支配し始めるのが分かった。これは……憎しみだ……
心の中は憎しみで満たされた時。ライは白いKMFに挑んだ
ヴァリスを使い瓦礫を吹き飛ばし相手に隠れる場所をなくし一対一の状況に引きずり込んだ。ライはMVSを、白いKMFは右腕を大砲からナイフの様なものに可変させた。MVSとぶつかり合い火花が飛び、MVS特有の金属音が基地の中に響く。
白いKMFはナイフを鋏に変更しクラブを両断しにかかる。ライはその鋏を避け相手のKMFの足をクラブの足で凪ぎ払った
白いKMFは倒れた。その瞬間、ライはクラブを相手のKMFの上に覆い被さった。
「これで終わりだ!」
MVSを白いKMFの胸に突き立てようとした瞬間、白いKMFの頭部の角が開き、そこに見覚えがある機構構造が現れた。
(あれは輻射機構、マズイ!!)
赤い光がクラブを包んだ。だがクラブは弾け飛ばなかった。
ライは不思議に思ったがこの攻撃の意味がすぐに分かった
「なんだ!?クラブが動かない!?」クラブは何も壊れていない。機体状態のデータにも壊れた箇所はないと出ていた。だかライはこれが何か知っていた。親友のスザクが苦しめられた兵器
(ゲフィオンディスターバー!)
動けなくなったクラブを確認し、白いKMFは右腕を鋏からドリルのようなものに切り替えた。そしてそれをクラブのコックピットに当ててクラブに穴を開け始めた
「クソ!こんな所で……」
ライは死を確信した……自分の死を……
(ここまでか……モニカすまない……)ライは静かに目を閉じた……その時だった
「ライから離れなさい!」
一機のヴィンセントが白いKMFに向かってニードルスピアを起動し突撃してきた。誰の物かは直ぐに分かった。
「モニカ!?止めろ!ヴィンセントではそいつに勝てない!」
モニカの専用機体はまだ完成していなかった。そのため今回の任務では自分の部隊『ロイヤルガード』に試験的に導入された先行量産型試作機を使っていた。普通の相手ならそれで十分だがこの白いKMFはラウンズ級の性能を秘めていた。
白いKMFは急速旋回でニードルスピアを躱し、右腕をドリルから鋏に戻し、ヴィンセントの背後から襲った。
モニカを乗せたヴィンセントは白いKMFの鋏に捕まった。
上半身を両腕ごと挟んだ鋏は徐々にヴィンセントに食い込み始めた……ライの目の前で愛する女性が潰されて始めた。
モニカも逃げだそうと必死にランドスピナーを前方に向けタイヤを回していたが、砂煙が舞うだけだった。
徐々に食い込む鋏は衰える様子もなく一定の力で食い込んでいった。クラブは胸部にあったコアを破壊され通信、カメラなど機能は使えるがクラブ本体は動かなかった
「止めろ!やめてくれ!なんで動かないんだ!」
ライは何度もハンドルを動かしたがクラブは何の反応もしなかった…‥
モニカは潰されていくヴィンセントの中でライに謝っていた。いつものライならいくら白いKMFが相手であっても援軍を待ち、一対一で戦うような行動はしなかった。原因はモニカにあることに気が付いていた。かつてモニカは1度このKMFに対峙して敗れていた。その時自分を助け出してくれたのはライだった。当時はただの部下と上司の関係だったが、今は男女の関係になっていた。そして今回の任務、実はモニカは怯えていた。かつて自分が死にかけた状況に似ていたからだ……そしてライは、無意識でモニカが怯えていた事に気が付いていた……だから白いKMFに接触した時に本来の冷静さを無意識のうちに失っていた……
モニカはその事にライが戦っているときに気が付いた……
出撃前に「貴方が出来ないなら私がやるわ」といっていたのに、結局ライに頼ってしまった……甘えてしまった……
だからモニカは謝っていた……
(ライごめんなさい……貴方に甘えてばかりで……貴方の優しさに溺れてしまった……ライ貴方ともっと一緒にいたかった……)
ヴィンセントの腕は切り落とされ遂にコックピットに鋏が食い込んだ。あまりの力にモニターが壊れ爆発し、その衝撃でモニカは頭を強く打ち付け負傷した……また命の炎が消え始めた……
(いや……死にたくない……ライともっと一緒にいたい!ライに愛されたい!ライを愛したい!ライと一緒に生きていたい!)
そう心で叫んだ次の瞬間。強い衝撃がヴィンセントを襲った。その衝撃でヴィンセントは鋏から外れた。何が起きたか確認するためのモニカは後ろを振り返った。そこには白いKMFの、右腕武装に剣を突き立てる赤いKMFがいた。白いKMFと同系統のフレームにマントような装甲、そして印象的な3本の角が頭部にあった。
右腕を破損した白いKMFは赤いKMFを振り払い、頭部についている輻射機構を使用した。だがそのエネルギー波を赤いKMFはエネルギーフィールドで防いだ。
白いKMFは状況的に不利なのを感じたようだ。スモークを炊き逃走した。赤いKMFはそれを見送るとヴィンセントに顔を向けた。
(そうよね……敵が倒れてたら普通殺すわよね……)
赤いKMFはヴィンセントのコックピットを両断した
(私……死んだの……)
そう思った次の瞬間モニカは何か温かい物に包まれ、それに驚き目を開けた。そこには愛しの……愛する者の顔があった。
赤いKMFにはライが乗っていたのだ。
「また貴方に助けられたね……」
「あぁ。何度だって助けるさ……愛する君を」
ライは優しく微笑んだ
「ねぇ。ライ……一緒に暮らさない?」
モニカの唐突な提案にライは一瞬驚いたようだったが直ぐに微笑み答えた
「いいよ。一緒に暮らそう!」
そう言ってライはモニカを優しく抱いた……
エリア24
今作戦でレジスタンスの主力部隊を殲滅に成功
ナイトオブラウンズが本国に戻り、代わるようにきた新総督とその騎士団『グリンダ騎士団』によりエリア24のレジスタンスは完全に粛清された。